あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

第二話 『ゼロのルイズとドラエモン』


「はあぁ……」
 と、ルイズは重いため息をついた。
 そのため息の原因は、彼女の使い魔……いや、コントラクト・サーヴァントはしていないので
使い魔とは言えないかもしれないが、とにかく彼女が喚び出したモノに原因があった。

 見たこともない外見をして、さらに言葉まで話していたので、最初は高位の幻獣を引き当てたか、
と喜びもしたのだ。
 ――しかし、実際には大外れだった。
 全くもって、使えない。というかもう、使えない以前に言うことを聞かないのだ。

 この世界のことはよく知らないだろうと思って、
とりあえず簡単に出来そうな掃除や洗濯を命じると、
「そうじにせんたく? じぶんでやれよ。
 こんな子どものうちからひとをたよってばかりだと、しょう来ろくな大人にならないぞ」
 と逆に説教をしてくる始末。
 それならば、と、
「あんた、未来の秘密道具とやらが使えるんでしょ。
 だったらせめて洗濯する道具を出しなさいよ!」
 と言ってみれば、
「せんたく板とたらい~」
 とか何とかほざいて、それをルイズに押し付けてきた。
「……で、これは何?」
 こめかみの血管がピューピュー言いそうになるのを必死で抑えてルイズが聞いてやると、
「なにって見たらわかるだろ。せんたく板とたらいだよ」
 悪びれもせずに答えてくる。
「へぇー。それはとても興味ぶかい情報ね。……それで? これでどうやって洗濯するの?」
「ルイズ。きみはほんとうにばかだな。じぶんの手でこすってあらうにきまってるだろ」
「ふぅうん……」
 そこでルイズはにこっ、とびっきりの笑顔を見せて、

「ふざっけんじゃないわよこのイカレタヌキィイイイ!!!」
「ぼくはタヌキじゃなぁーい!!」

 ――結局、つかみ合いのケンカになった。


「しっかしほんと、どうしたもんかしらね」
 しっぽを引っ張って動かなくさせたドラえもんの顔に足を乗せ、ルイズは首をひねった。
 使い魔一匹満足に従えられないなんて、このヴァリエール家のルイズ、一生の名折れである。
 いや、それでなくてもとにかく、こんな妙ちくりんな顔したタヌキにバカにされるのは
貴族として人として一個の生き物として、どうにもがまんならないのであった。
「それに、ようやく呼び出した使い魔がこんなのだなんて、わたしまたみんなの笑いものに……」
 そこでルイズはハッと気づいた。
「しまった! こんなことしてる場合じゃないわ! もう朝食の時間すぎてるじゃない!」
 足の下にいるドラえもんを再起動させ、その頬を容赦なくバンバン叩く。
「こらあんた! ドラえもん! 起きなさい、食堂に行くわよ!」
 それでぼんやりと目を覚ましたドラえもんだが、
「いいよぼくは。のび太くんのことを思うとかわいそうでかわいそうで、
 ごはんなんてのどをとおらないよ」
 そう言って本格的に二度寝に入ろうとする。
「あんたが良くてもわたしが困るの! 朝食の後はすぐに授業に行くんだし、
 最初の授業に使い魔がいないとわたしの立場が悪くなるでしょうが!」
 言いながらヒゲをぎゅうぅ、と引っ張ってやると、ようやく根負けしたのか、
ドラえもんがのっそりと体を起こした。
「めんどくさいなあ。そこまでいうならすこしだけつきあってやるよ」
 などと言いながら、扉の方へ向かう。
 ルイズは、
(またこいつはこんな生意気な口を……)
 と思ったが、また機嫌を損ねられでもしたらそれこそ面倒なので、なんとか堪えた。
 ご主人様もなかなか楽ではないのである。

 二人が廊下に出ると、近くの部屋のドアの一つが、ちょうど開くところだった。
 そしてそこから顔をのぞかせた生き物を見て、
「ぎゃー! ネズミー!!」
 ドラえもんがすっとんきょうな叫び声をあげる。
「あいたっ!」
 突然足を止めたドラえもんにルイズがぶつかって、
「で、でっかいネズミ、ネズミネズミネズミー!」
 さらにドラえもんの狂乱は続く。
「ちょ、ちょっとあんた、どこに入って…!」
 ドラえもんが錯乱して、ルイズのスカートの中に隠れようとしたのだ。
 これにはルイズ、さすがに焦る。
「ちょ、やめなさ…! これは高貴な、きゃぁ!
 もう、とにかく離れなさいよ! しっぽ引っ張るわよ!」
 必死に引きはがそうとするが、半狂乱になったドラえもんの力は存外に強く、
すぐには振り払えない。
 しかしそこで、

「ネズミだなんて失礼ね。この子はサラマンダー。火トカゲよ」

 ドラえもんが見た生き物と同じ部屋から出てきた赤髪の少女が、
笑いながらドラえもんの勘違いを指摘する。
 それでようやく、ドラえもんの暴走は止まった。


「キュルケ! そのサラマンダーもしかしてあなたの…?」
 しかし、聞こえてきたその声に、今度は仇敵の姿を認めたルイズが叫び声をあげる。
「ええ。フレイムって言うの。サラマンダー、それもまず間違いなく、火竜山脈の火トカゲね。
 うふふ。この子ってば火の系統の使い魔の中でもかなりのものなんじゃないかしら」
 動揺するルイズに、ふふん、とルイズとは月と銭亀くらいにサイズの違う胸を張るキュルケ。
 そんな中、ようやくドラえもんがわれに返って、
「なんだ、トカゲか。おどかすなよ」
 おそるおそるフレイムに近づいていく。
「うんうん。よく見るとなかなかかわいいじゃないか。
 ネズミなんかとまちがえてわるかった。
 そうだ。ほらおいで。ぼくがおいしいおだんごをあげよう」
 ドラえもんはそう言ってフレイムをあやしながら、ポケットから桃の絵が描かれた袋を出して
フレイムに食べさせようとしている。
「あら、あんまり変な物を食べさせないでよね。くせにするから」
 一方キュルケは一応制止しているが、その態度はおざなりで、本気で困っているようには見えない。
 そんなほほえましく見えなくもない自分の使い魔と仇敵の様子を苦々しく見つめながら、ルイズがほえる。
「こらドラえもん! ツェルプストーの使い魔なんかに物をあげるんじゃないわ!
 で、キュルケ、何の用?! 何も用事がないなら、さっさとどっかに行ってくれる?」
 しかし、使い魔の差か、胸の差か、ルイズのとけとげしい態度にも、キュルケは余裕の表情を崩さない。
「あら、そんなにつれないこと言わないでよルイズ。あたしとあんたの仲じゃないの」
 笑いを含んだ声でキュルケが言って、
「なにがあたしとあんたの仲よ! 先祖代々から続く仇敵でしょ、あたしたちは!」
 ルイズが憤慨する。
 まったくいつもの光景であった。
 しかし、いつもと違うところがひとつ。
「にしても、これがルイズの使い魔、ねぇ…」
 それはサラマンダーに団子を与えながら、よしよしと目を細めているロボットの姿。
 キュルケはゆかいそうにそれを眺めている。
 ルイズはその視線に侮辱されたと感じて、
「なに見てんのよ! あたしが喚び出した使い魔に文句でもあるわけ?!」
 そうキュルケに食ってかかる。
 しかしその言葉に、キュルケはさらに嘲りの色を深くして、
「だって、ゼロ――魔法の成功率ゼロパーセントのあんたが召喚した使い魔よ。
 やっぱりもう一度じっくり見ておきたいじゃない?」
 なんてことを言ってくる。
 一瞬ぐっと詰まったルイズだったが、
「ぜ、ゼロじゃないわよ! サモン・サーヴァントは成功させたでしょ!」
 出てきたのはこんな役立たずだけど、と心の中だけでつぶやきながら、強気な台詞を吐く。
「あら、そうね」
 意外にもキュルケは納得したようにうなずいて、しかし、
「でもだいじょうぶよ、まだ残ってるじゃない」
 すぐに悪だくみを思いついたかのようににやりと顔をゆがめ、

「ほら、ゼロのルイズ」

 ルイズの絶壁を指差して、そう口にした。
「な、なななななななな…!」
 あまりのことに、ルイズはとっさに言葉が出ない。
「それじゃ、失礼。……ほらフレイム。何してるの、置いていくわよ」
 使い魔のサラマンダーと共に、悠然と歩き去っていってしまった。


 キュルケの姿が見えなくなってから、あふれる悔しさを飲み込んで、
ルイズはしわがれたような声を出す。
「ほら、ドラえもん。そんなとこでぼうっとしてないで、さっさと行くわよ」
 しかし、返事がない。
「……ドラえもん?」
 いぶかしげにドラえもんの顔を覗き込むと、
「あんなこといわれて、きみはくやしくないのか!
 みかえしてやろうとはおもわないのか!」
 なぜか怒り狂っていた。
 急にドラえもんが怒り出した理由はよくわからないが、苛立つ気持ちはルイズも一緒だった。
 しかし、
「わたしだって見返してやりたいわよ!
 ……でも、やっぱり魔法は使えないし、せっかくのチャンスだった使い魔召喚の儀式でも、
 出てきたのはあんたみたいなおかしなタヌ…ネコだったし」
 いじけた顔でルイズは言う。
 その言葉に何か感じるものがあったのか、ドラえもんは自分がバカにされたにも関わらず、
菩薩のような丸顔で同情の言葉を口にする。
「それはきのどくだったなあ」

 ガツン!

 言われた瞬間、ルイズは思わずドラえもんを殴りつけていた。
「な、なにをするっ!」
 当然再び怒り狂うドラえもん。
「いや、その……」
 詰め寄られ、ルイズは口ごもる。
 ルイズにも何か理由があった訳ではなく、ドラえもんの顔を見た瞬間、
つい衝動的にやってしまったのだった。
「ご、ごめんなさい。なんかあんたの顔見たら、無性に殴りたくなって…」
 めったに謝らないルイズだが、ここはさすがに自分の非を認めた。
「そんないいわけがあるか!」
 ただ、ドラえもんが怒るのはまあもっともだ。
(だってあんたの顔があんまりにもむかついたんだもん)
 とはいくらルイズでも口に出来ないし、言ってもまた怒られるに決まっていた。
「それにしても、急に怒り出してどうしたのよ。
 今までわたしのことなんてどうでもいい、って感じだったのに」
 だからとりあえず、ルイズは全力で話を逸らすことにした。
 すると、ドラえもんは急にしゅんとなって、
「ごめんよ。きみのそのどうにもたんじゅんでだまされやすそうなところとか、
 なにをやってもだめなところとか、ついのび太くんを思いだしてしまって…」
(……こいつ、一度絞め殺してやろうかしら?)
 ルイズは一瞬本気でそんなことを思って、すぐにそんな場合でないことを思い出す。
「まずいわ。今のでまた時間を取っちゃった。すぐに朝ごはん。それから授業よ!」


 ルイズはそう言って歩き出すが、すぐにドラえもんがついてこないことに気づいた。
 振り返ると、まだ扉の近くで立ち止まっている。
「ルイズ。いや、ルイズちゃん。いやいや、ルイズさん。
ぼくはここでるすばんしているから、きにしないでいってきなよ」
 気味の悪い笑顔でそんなことを言ってルイズを送り出そうとするが、
「ダメよ。わたしだって不本意だけど、とにかく使い魔を連れてかなくちゃまたバカにされるの。
 ていうかあんた、さっきまではわたしがのび太とかいうのに似てるとか言って、
 すごくやる気だったじゃない!」
 ルイズはそう言って促すが、ドラえもんは一向に動こうとしない。
 あいかわらずの気持ちの悪い態度で何か言い始めた。
「いや、なんでもこの学えんにはつかいまがおおくいるそうじゃないか。
 そんな中、ぼくがいくとおびえさせてしまうんじゃないかと…」
「そんな訳ないでしょ。あんたを怖がるのなんて、せいぜい小鳥とかネズミとか…ん?」
 ネズミ、と口にした途端ドラえもんがびくんと反応して、ルイズは勘付いた。
「あんたまさか、学校の使い魔にネズミがいるかもしれないって思って、それで嫌がってるの?」
「ま、まままさかそんな! ぼくはネコ型ロボットだぞ! ネズミなんて……」
「はいはい。じゃ、行きましょうね」
 ルイズは嫌がるドラえもんの手を引いて、問答無用で進んでいく。
(ああ、なんでこんなことになっちゃったんだろう…)
 張り切って廊下を進んでいくルイズの背中を見ながら、ドラえもんはため息をつく。
(なんだかのび太くんのきもちがわかるきがするよ。学校って、じつにいやなところだなあ)
 しかし、それがドラえもんにひらめきをもたらした。
(そうだ。こういうときはのび太くんのまねをして……)
「い、いたい!」
 いきなりを大声を出したかと思うと、突然ドラえもんがうずくまっておなかを押さえる。
「イテ、イテテテテテ! きゅうにおなかがいたくなってきた。
 はやくトイレにいかないと、イテ、イテテテテ!」
 あからさまに怪しいドラえもんの態度に、さすがのルイズも不審な目をする。
「トイレならあっちだけど、あんたまさか仮病を使って…」
 しかし、ルイズが何も言い終わらない内に、
「えへへ。ではすぐもどりますので」
 急に元気になったドラえもんが不気味ににやけながら駆けていき、
「あ、ちょっと?! そろそろ時間がないんだから、勝手に……ああもう!」
 ルイズの制止も聞かずに廊下の角を曲がって、

「オマタセ シマシタ」

 なぜかたったの数秒で戻って来た。


「なによ。やけに早かったわね」
 今度はどんな駄々をこねるつもりかとルイズはうろんな目つきで身構えるが、
「イヤ ボクハ ドラエモン ダヨ?」
「そんなことわかってるわよ。変なやつね」
 おかしな返事が返ってきて、調子を崩された。
「ジャア キョウシツヘ イコウ」
 しかしドラエモンは、そんなことお構いなしな様子で先に立って廊下を歩き始める。
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ! 教室はそっちじゃないから。ああ、もう!
 行きたくないって言ったり急に行く気になったり、なんなのよあんたは!」
 どんどんと先を行くドラエモンを追いかけるように、ルイズもその後を早足で歩いていく。

 ……やがて。
 視界からルイズたちの姿が消えたのを確認すると、曲がり角からドラえもんが顔を出した。
「しめしめ。すっかりニセモノにだまされたみたいだな。
 ……さて、へやにもどってひるねでもするか」
 そうしてドラえもんは来た道を戻り、部屋へと帰っていくのだった。


 ――その後、教室ではルイズが錬金に失敗して爆発を起こしたりしたそうだが、
 それはドラえもんには全く関係のないお話である。


第二話『ゼロのルイズとドラエモン』 完



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