あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

虚無と狂信者-21



 杖の先から放たれる爆炎が、武装した男達を焼いていく。
突然現れたメイジに恐慌した男達はそれでも身構え、抵抗しようとする。
「山賊の皆さん。早く降伏なさい」
その女の姿は焼け放たれた柱の中に隠れている。赤く美しい髪がそこから洩れている。
これでは弓で狙撃することも叶わない。艶やかな声でメイジは告げる。
「今ならちゃんと警吏に引き渡し、我が国の法に則って正当に処断してあげるから」
それは山賊としては容認できない。死刑以外の刑に処される程度の罪では無いのだ。
今なら彼女は油断している。山賊とはいえ、その中にはメイジがいることがある。
これもまたそのケースである。杖を引き抜き、風が巻き上がる。
しかし、それより早く炎が杖を焼いた。
「な!」
男は驚愕する。今の風を破った火の出力と精度、そして威力。おそらくトライアングルであろう。
相手が悪い。
しかし、このまま縄につく訳にもいかない。
もはや部下は背中を見せ逃げ始めている。自分もそうするべきだろう。

逃げおおせた彼らを見てキュルケは溜息をつく。
休憩にと立ち寄った村でまさか山賊の襲撃に出くわすとは。
今仕方助けた少女の手を取り、引き起こした。
「あ、あの……。ありがとうございます。貴族さま」
おどおどした態度でキュルケに頭を下げる。
「いいわよ。領民を守るのは貴族に勤めでしょ?」
「え? じゃあ、あなたさまはツェルプストー様。も、申し訳……」
「いいのいいの。あんな連中をのさばらせたのも元はと言えば私達だし」
そして逃げて行った山賊達の方を見て溜息をつく。
「同情の余地は無いけど。ちょっと可愛そうね……」
その言葉に村娘は首を傾げる。
キュルケは知っている。今頃は彼女の使い魔が一人残らず彼らを、

鏖殺していることを。



なんなんだ!
さっきから声がしている。
悲鳴、怒号。
銃声が聞こえる。
激昂した声が聞こえる。
その後に必ず断末魔の声が聞こえる。

逃げ出した全員分の断末魔を聞き、彼らを束ねていた風のラインである男は、次こそは自分だと悟った。
フライの呪文で飛び立つ。とにかく精神力が尽きるまではこれで安心である。
はずだった。

森から大量の黒い何かが襲いかかる。
蝙蝠の群れ、それが彼に纏わりつく。
それに恐怖し、払おうとするもフライの詠唱中は他の呪文を唱えられない。

そして彼の前方で蝙蝠が集まり、それが
人の形へと変わった。

その男が自分を掴む、彼はどうしようも無く、風の刃でそれを裂く。
フライの詠唱が切れ、地面に落下するも、辛うじてレビテーションを唱え不時着する。
だが、今仕方風の刃で切り裂かれたそれは人間なら致命であろう傷を意に介さず男に向かう。
「ば、化け物」
その問掛けに、それは地獄から湧き上がるような声で答える。
「よく言われる。ではお前は何だ?
人か、狗か、化け物か?」
男は全精神力を振り絞り、雷撃の呪文を唱える。
絶叫し、心を震わせ、振り絞る。
そして精神を使い切った男は、それでも立っている敵を見て、失神した。

アーカードはどこか満足気に立っていた。



「アーカード、お帰り」
「ああ」
自分の使い魔が一人の男を持って来たので、キュルケは意外に思った。
「殺さなかったの?」
アーカードはニヤリと笑った。
「敢闘賞だ。なあに、これも一つの余興だよ」
そう言って男を縛りあげ、やって来た騎士団に引き渡した。

キュルケは馬車に揺られながら自分の使い魔について考える。
高貴で優雅で、残虐で非道で、最強で最悪で、弱い。
守るべき民も、治めるべき国も消え去った。
彼が闘争を望むのは彼が滅びを望んでいるからだ。
そんなものは強いとは言えない。
圧倒的な強さであっても、滅びの中でしか愉しさを享受できないならそれは。

だから拘るのだろう。
アンデルセンに、サイトに。
人間でありながら彼を打ち倒しうる存在に。

彼はいい使い魔だと思う。それは一個の生命、死人だが、として見れば不完全にしても。
戦闘能力は馬鹿のように高く、自分に対して異常なほど忠義である。
確かに時々制御不能になるものの、それは自分の力量であろう。
それはあの神父にも言えることだ。単独でみれば優秀な使い魔。
それに、こうして二人きりでいる分には冗談も言えるし、よく見れば顔は好みだ。

「あら、結局そこに行きつくのかしら?」
「? 何がだ?」
「何でも」


そうね。確かにね。一人だけならいい使い魔だと思うの。
でもね、二人ともはいらないの。

ここは酒場
座っているのは赤い髪の少女、赤ずくめの吸血鬼。
そして神父。

嫌過ぎる……。

用事を済ませ学院に戻ろうとヴァリエール領に入ったと思えばこれである。
酒場を見つけ、店内が満席ゆえに合い席となり、いたのは神父だった。
これなんてバトルフラグ?

「偶然だな」
「ああ」
これが本当に偶然ならば神様は相当にキュルケのことが嫌いらしい。
「相棒……。そんな睨んでないでとっとと飯食おうぜ」
この場で一番分かり合えそうなのが喋る剣というのも物哀しい。

しばらくの沈黙。

「ねえ? 何してたの? あなた?」
空気に耐えきれずキュルケが会話を試みる。アンデルセンも応えてくれた。
「……教会を建てようという話でな」
「ほう、武器に祝福でも施すのか」
「そんな所だ」
「それで、何処に建てるの?」
「……できれば学院の近くか、先のことを考えればヴァリエール領の中だな……」
キュルケは内心で感心する。彼もまた主人のことを考えるという点では良き使い魔なのだ。


「で、お前らは何をしていた?」
アンデルセンが話題をこちらに振る。
「あなたに頼まれた件。それに銃弾の製造と、ハルコンネンの修復にね」
ルイズの任務を手伝ったことで報酬として学院長から公休が貰え、実家に戻りそれらを手配した。
それだけで彼らに貰った金のほとんどを費やしてしまった。
しかも自動小銃の弾は作れずリボルバーの弾だけでほとんど消え、ハルコンネン用の弾薬も
焼夷弾頭十数発で限界だった。それでもツェルプストー家お抱え鍛冶ギルドと、方々から集めた
土メイジの総掛りでの結果である。その代りツェルプストー家の財力でリボルバーが
実用化され、利益が出たならベルナドット達に特許料という形で支払うということにした。
キュルケは手で試作品のリボルバーをいじりながら説明する。
「そうか、結構なことだ」
普通は武器を製造した何てことは顔を顰めてしかるべきだが、別にこの神父はそういう所もないようだ。
まあ、もしそんなことをしたらこの場に居る人間全てで総ツッコミであろうが。


「で? 目ぼしい所は見つかったの? アンデルセン」
アンデルセンは地図を広げた。
「一から建造もできんからな。金が無い。打ち捨てられたブリミル教の寺院なら少し改築
すれば済む。となると学院の近くに一件、この辺りに一件、さてどちらか。」
「ふーん……学院の近くにしたら? あの子が卒業すれば移ればいいんだし」
「そうだな……。ただ学院の近くの寺院にはオーク鬼の巣があるらしい。
掃除する必要があるな」
オークの群れを掃除などとは簡単には言えないことだがこの神父ならばさもありな話であろう。

「ふむ。中々どうして、主思いだな。あのヤンデレ崩れに」
「お前こそ、この売女(ベイベロン)に忠義だな」
瞬間立ち上がる二人。
(何故呼吸をするように喧嘩を始めるのよ!)


「アーカード! 私は気にしないから!」
「貴様。売女などよくも言えたものだ。マスターは百パーセント純血の処―――」
「チェストォオオ!!」
いらんことを言おうとしたアーカードを思いっきりグーで殴る。
「何であなた知ってるのよ!」
「血を貰ったことがあるだろう? 血を吸った相手のことは大体分かる」
「だからって言うことないでしょ!」
「すいませんお嬢さん」
「あんたも急に神妙になるな!」
いつもの余裕ある態度とは裏腹にキュルケは少し泣きそうな顔をしている。
周りの客達も突然繰り広げられた珍劇に視線を集める。
「いっそ私を消して……」
ふと前を見ると、聖書の紙片が散乱し、彼の姿が掻き消えていた。

 いつも思うことだがあの男の逃げ足はかなり早い。
 そういえば最初の出会いもそんな感じだった気がする。


 とりあえず彼が居なくなったことでやっと普通に食事ができる。
ようやくここの料理が旨いということがわかった。
ふと後ろから声が聞こえ、振り向くと老婆が傭兵に縋りついていた。
「ドラゴンですじゃ。退治して下さいませんか?」
「おい、婆さん。またかよ」
酒場の主人が怪訝な顔をする。
「また?」
「ああ、何でも寺院にドラゴンが住み始めたなんつってね? しかもその頃から村の人間やらが居なくなるっつって」
「そう……」
アーカードがふらりと老婆に近づく。いい暇つぶしを見つけたとでも言うように。
「どこだ?」
その言葉に主人が慄く。
「おい! あんた正気か? ドラゴンなんてメイジ何人がかりでも手がかかるんだぜ?」
キュルケは思案する。彼がドラゴンに後れをとるとは考えにくいものの、どう倒すのかは興味がある。
それに。

この事件は不審だ。竜が人知れずいなくなるような綺麗な殺し方をするなどあり得ない。
アーカードも行きたそうにしていたので了承した。



村人は竜が住み始めた三日前から五人いなくなったという。
老若男女バラバラな五人。
その現場を抑えたものはいない。

老婆によって連れられてきたキュルケは村人に歓迎された。
村長に話を聞く、寺院はこの辺りの村が寂れたため、打ち捨てられたと聞く。
いつか取り壊そうとしていたが、つい最近、竜が住み始めたという。

「竜がやったとは考えにくいわね」
獣道を通り、寺院へと向かう。女性には苦な道だが、意外にもキュルケはアーカードの
ペースに軽々とついていっている。この少女、結構なお転婆である。
アーカードはその姿を敬愛する女王陛下に重ねていた。
あのお転婆は、あの美しい姫君は、今もまた五十年前のあのころのままだろう。
しばらくすると、寺院の屋根が見えてきた、そしてその庭先には成程、巨大な、珍しい白の風竜の姿がある。
同じ風竜であるシルフィードとは大人と子ども程の体格差があるだろう。
「こんなのが人知れず村の中から人を攫える訳ないじゃない……」
竜はと言えば威嚇するように羽を広げる。それがどこか脅えているように見えるのは気のせいではあるまい。
銃を向けようとするアーカードを押しとどめる。
「かわいそうじゃない」
危害を加えて来る山賊や傭兵、兵士なら一片の容赦も無く殺すよう命令できる彼女だが、
そこにただ座っていただけの竜にそんな気分にならない、それに。
「鞍が付いてるじゃない。きっと竜騎士の竜よ」
といっても、この不穏な情勢の時に竜騎士がいるものだろうか。
竜騎士というのは正に一騎当千という戦闘遂行能力を持っている。
機動力、攻撃力、展開力。軍の中でも相当なウェイトを占める兵科なのだ。


竜はその口を大きく開け、木々まで揺らす咆哮を彼らに向ける。
だが、彼は全く動じることなく口の端を歪めるのみ。
それにより竜が脅えと共に後退した時。

「ちょっと君達! 僕のアズーロに何してるんだ!」

森から薪を両手に抱えた、神官風の青年が出てきた。


アーカードがその神官に警戒の構えをとる。青年は薪をそこらに落とし、
両手を上げ、半ばやけっぱちといった声を上げる。
「君達は何だ? 物取りか!? 金は出すから殺さないでください!」
キュルケはその青年が害意の無いことを悟り、アーカードを制する。
「いいえ。ところで、これはあなたの竜?」
青年はキュルケの胸元を凝視し、生唾を飲んでいたが、慌ててその質問に答えた。
「ああ! 僕の相棒のアズーロだ! なあ、今度はこっちの質問に答えてくれるか?」
キュルケは首肯する。
「君達は何者だ?」
「通りすがりのさるところの子女」
「その従者」
使い魔と言うといちいち面倒ゆえに表向きはそういう事にしてある。
「……物取りでは無いのか?」
「次は私の番。あなたは何者?」
青年はしばらく考えて言葉を紡ぐ。
「僕はジュリオ・チェザーレ。ロマリアの神官だ。
まあ……内緒のお仕事でね。ここで雨風を凌いでいたんだ。
何せコイツとの相部屋を認めてくれる宿屋なんてないからね」
アズーロはアーカードを避ける用にジュリオの影にすり寄っている。可愛いと言えなくもない。


「次は僕の番だな。君達が物取りでないなら何の用だ? コイツが噛みついたっていうなら謝るけど?」
ジュリオの下手なジョークに愛想笑いで返す。
「この竜がそこの村の娘達を食べたっていうから、退治にね」
キュルケの説明にジュリオは大袈裟な仕草で膝を叩く。
「娘? アズーロはそこまで悪食じゃない! それにちゃんと三食やってるよ! 高価な羊肉をね!
そのお陰で君達に渡すお金もほとんど無いんだ!」
まあ、嘘では無いだろう。元々この竜の仕業というのも疑わしかったのだ。
キュルケとしても他を当たろうと思ったのだが、青年は意外な申し出をする。
「そうだ! 僕もその娘達の捜索を手伝おう! なあに、始祖ブリミルもそうせよと仰るはずさ!」

「……何でまた?」
キュルケは怪訝な顔で聞く。大体ロマリアの神官というのは普段は威張り腐っているがその実、
何の役にも立たないというのがハルケギニアの一般常識であり、また、キュルケが実際見て来た
神官もその例に漏れなかったからだ。ましてこんな一銭の得にも成らぬ仕事をするとは思えない。
「何で? 始祖ブリミルの敬虔なる僕である僕が、同胞の訴えを聞かぬ訳がないだろう」

「まあいいわ。勝手に頑張ってね」
「へ?」
キュルケとしては自分とアーカードさえいれば大抵の敵には戦えるし、神官、竜に乗って
いるということはおそらくはメイジだろうが。いてもいなくてもどっちでもいい。
「ちょっ! ちょっと待ってくれ!」
ジュリオの叫びにキュルケは考えを中断され、機嫌を悪くする。
「まあ待ってくれ! 君みたいな、か弱い少女をほおっておける訳ないだろ?
それに、仕事も一段落して暇なんだ。どうせだったら人様と、美女のために…ね?」
そう言ってジュリオはその左右の色が異なる瞳、ハルケギニアで言う月目でキュルケを見つめる。
キュルケはその瞳を細め、唇に指を当て、さり気なく腕で胸元を強調する。
だが、ジュリオはそれに惑わされることなく、キュルケの瞳だけをじっと見つめる。


「……慣れてるのね」
「……体は一時の魅力だが、瞳は一生の魅力さ」
キュルケは肩に伸ばされた手を優しく払う。
「ついてこれば?」
「謹んで。ミス……」
「キュルケでいいわよ」
「ではキュルケ。このアズーロにてお送りしよう」
アズーロがゆっくりとジュリオに跪いた。
(処女の癖に……)
アーカードは声には出してはいなかったが、しっかりとファイアーボールを喰らった。

風竜は凄まじいスピードで飛んで行く。キュルケは以前シルフィードに乗ったことを思い出すが、
それよりも断然速い。シルフィードは幼竜であるが、アズーロは立派な成竜である。
「で? 内緒のお仕事って?」
キュルケはジュリオにしなだれかかり訊ねる。ジュリオは困ったように笑いを漏らす。
「勘弁してくれよ。言えないから内緒なのさ」
「そう……つれないのね」
口では残念そうに言いながらも、キュルケは
ロマリアがハルケギニアの国家の中でも、陰謀に長けた国であることは知っている。
竜に乗れるほどの能力を持つ人間が任される任務とは、あまり首を突っ込まない方がいいだろう。
それにキュルケはジュリオに対して、それで信用しないというのも変な話だが、自分と同じものを感じた。

恋だの愛だのに執心に見えて。どこか一つ身を置いている。そんな感覚。

ジュリオはこっちの番だとキュルケに訊ねる。
「君の従者だが……。アズーロを怯えさせるなんて何者だい?」
キュルケとしても本当のことを言う気はない。言っても信じないだろうが。

「東方からやって来たの。とっても強いのよ」
アーカードはといえば何をするでもなく座っている。彼にとってはいつものことだ。
ジュリオは大袈裟に驚いてみせる。
「あのエルフの住まう土地を抜けて来たのか? 大したものだ!
しかし東方か……。向こうではどんな生活をしてるんだい?」
その問にアーカードはそのままの態勢で答える。
「そうだな……。食い倒れ通りというやつが大きな町に一つずつあってな……。
そこでは食べ物を貰えるかわりに絶対に通りすがった人間とフルドッキングヘッドロックを……」
異世界からの少年が聞けば首を高速で横に振ること請け合いの出鱈目を街に着くまで話し続けた。

結局、村人に事情を話し、一連の失踪が竜の仕業では無いと納得させた。
村人は巨大な風竜に慄いた様子だったが、ジュリオの話を聞き納得した。
しかし、これで失踪事件が解決した訳でも無いため、さてどうしようかと思い悩む。
「どうする? アーカード?」
聞いた物の、元々アーカードは生粋の戦闘屋であり、頭を用いて事件を解決するというような事には向かない。
HELLSINGゴミ処理係時代も暴れている吸血鬼を狩る位で、隠れながら巧妙に人を殺すような輩を、
探し出し殺すというのは不得意だ。そもそもの問題として、
「本当に化け物の仕業か? 村人同士で殺し合ったのかもしれんだろう?」
そう。普通に考えたらそちらの可能性の方が高い。そもそも人間に見つからないように殺すなどという発想は
人間位がするものだ。オーク鬼やドラゴンがそんなことを気にするまでも無い。また、妖魔だって普通は死体を残すものだ。
「あるいは、人攫いとかかもね」
ならば、急げば助けられるかもしれない。
「ただそうだとして、誰にも悟られずに攫えると思う?」
悲鳴を聞いた者も、姿を見た者もいない。一体どうやってやったのか。
キュルケは頭を捻った。


アーカードは夜闇の中を佇んでいる。夜、感覚を鋭敏にさせ、何か起これば分かるよう気を張る。
念の為自身の分身である蝙蝠を家々の軒先にぶら下げ、これにより、何かがあれば彼らが異変を
知らせてくれる。正統なる吸血鬼の持つ様々な特殊能力の内の一つだ。キュルケはと言えば、
アーカードと一緒にいようとしたが、体を冷やすと言うことでジュリオに諭され、部屋にて待機している。

ふと、アーカードは蝙蝠からの交信を察知した。

キュルケと同じ年頃であろう村の娘が、闇夜の森におずおずと向かって行く。
キュルケは不審に思う。そもそも村に不穏な噂が流れているのに、わざわざ危険を冒すだろうか。
足取りはしっかりとしている為、水の魔法で操られた訳でも無さそうだ。
明らかに自分の意思で歩いている。

しばらくして着いた先は、村の外れにある屋敷だった。
その中から一人の、茶色い癖毛の青年が出てくる。
「こんにちは。リースです。どうかいれて下さい」
「おお、リース。待ちわびていたよ。どうか中へ」
娘の顔が仄かに赤らんでいたのを見て、キュルケがポツリと呟く。
「何よ。夜這い?」
「さあ、どうだろう。あまり覗くのもね」
そう言って三人は竜を呼びつけ、それに送って貰った。


翌朝。
キュルケは昨晩の疲れからか、日中までぐっすりと眠っていた。それでも眠たい目を擦り、
あくびをしながら外に出る。彼女は呆ける頭で、騒がしい村人達をただ、見ていた。
ジュリオがそんなキュルケに水桶を持ってくる。
それでパシャパシャと顔を洗い、タオルで拭う。
「何かあったの?」
「ああ、リースって子。昨日見ただろ」
「夜の?」
「うん、まだ帰ってこないって」
キュルケの瞳がカッと開く。だがジュリオはそんな彼女を他所にどこかのんびりした様子だ。
「何でそんな余裕なのよ?」
「だって君の自慢の従者があの屋敷に行ってるからね。僕らが行く必要も無いだろう?」
キュルケは言葉につまるも、気を取りなおし、その赤い髪を靡かせる。
「どうするんだい?」
「決まってるわ! 私も行くわよ!」

ジュリオはしかたないというように手を空に向け、口笛を吹きアズーロを呼び出した。


別に彼女が桃色の少女のように使い魔と常に一緒にいるのがメイジの務めと思っている訳ではない。
キュルケは想像する。はたして犠牲者達が生きているとして、彼が生存者を助けるだろうか。

答えはNO
率先して殺しはしないが、積極的に助けもしない。
彼はそれにより吸血鬼を増やした前科がある。セラスから聞いたことだが。
これ以上吸血鬼を増やしたら学院の空気が偉いことになるし、面倒を見切れない。


「急いで!」
キュルケに怒鳴られ、ジュリオは眉をひそめる。
「怒鳴らなくても五分とかからないよ。大体、そんな心配しなくてもあの従者なら心配無いと思うんだけど」
「彼の心配をしているんじゃ無いの!」
「じゃあ誰の?」
「……生存者よ」





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