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ジ・エルダースクロール外伝 ハルケギニア-14


14,閃光のジャン・ジャック

姫殿下からの依頼を受けた翌日はとても良い天気だった。
未だ朝もやが残る中、マーティンとルイズは馬に鞍をつけている。
内容があまり人に知られるべきでない事もあって、
皆が動き出す前に行こうという話になったのだ。

「ここから、アルビオンまでは遠いのかい?」

地理の事はタムリエルからどの辺かを探す辺りでだいたい覚えたが、
距離的にどの程度かまではそれほど調べていなかった。
内陸よりもどこかタムリエルと関係が無いかについて調べていたのだから、
ある種当然かもしれない。

「そうね。まずは港町のラ・ロシェールに早馬で二日、そこから船に乗って何日か掛かってあっちの港に着くから、
早ければ三、四日程で行けると思うわ」

希望的観測で語るルイズ。五日後には全て終わって帰路についていることを望んでいた。
考えてみれば、結構えげつない事を安請負したかもしれない。
後悔は無いが、しかしもし失敗したらどうしよう。
ああああ、私ったら姫さまを窮地に立たせるような真似をしているんじゃないかしら。

ルイズは決して考えずに行動するタイプではない。
目先の事で一時的に思考能力が無くなるだけなのだ。しかしそれは常習化してしまっている。
無二の友人。しかも自身が慕う姫殿下の頼みとあらばそうなっても仕方ないが、
癖としてはあまりよろしくない物である。
治したくてもなかなか治せないのは辛いものだ。

「ルイズ?どうかしたのかい」

一人妄執を頭の中で繰り広げ、どこかの斧を振り回す狂エルフの様に、
ブツブツ何かを言い始めたルイズにマーティンは声をかけた。

「え、いや、な、なんでもないのよ?む、むむむ武者震いよ!」

震えてすらいなかったが、まぁいいかと出発の準備を進めるマーティンだった。
緊張しているのだろう。そっとしておいた方が良い。
生暖かい目で見守られるルイズは、ああああと頭を抱えた。
よく姉達や親にされた目であった。
最近はツェルプストーにその目で見られる事が多い。
またやってしまった。そう後悔してさらにブツブツ言いながら、
出発の準備を始めるルイズだった。

「お二人とも、どこへ行かれるんですか?」

そんな今から戦場へ行くなど考えられない穏やかな雰囲気をぶち壊すかの様に、
二人の背後から声が聞こえた。驚いて振り向くと黒髪のシエスタがいた。

「あ、ああ。君だったのか、シエスタ。しかし、驚いたな。急に現れるなんて」

妄想でワンテンポ遅れているルイズに代わり、マーティンが言った。
シエスタは笑っている。

「気配を消して仕事をするのも使用人の仕事の内ですから。それより、こんな朝早くからどこへ行くんですか?」

「すまないが、言えないんだ」


正直に言う。シエスタはそうですか。と言って笑う。
彼女の手にはバスケットがあり、それをマーティンに渡した。
昼食に食べてくださいとサンドイッチ等が入っていた。

「もし遠出されるのでしたら、スヴェルの月が近いのでそれを考えて動いた方が良いですよ?」

「何日後なのかしら。シエスタ?」

含みを持って笑う彼女にルイズは聞いた。気配を消すのも仕事と言ってのけたのだ。
おそらく昨日の話を聞いていたのだろう。
だが、それを二人に言う訳でもなく助言を呈す彼女に、
ルイズは使用人としての職務を全うしようとする、職業人の誇りを見出した。
決して口に出すべきでない。しかし感謝しなければ。彼女はそう思い、
おそらく聞かれたがっている事であり、自分達にとっても重要な事を聞いた。

まさか彼女が姫さまから聞くよりも先にこの件に関して知っているなんて、
そんな事思ってすらいない。さらに言うなら間諜とかもありえないと思っていた。
マーティンと医務室で話をしていたこのメイドの事を覚えて、
その後ある程度親しげに話したりしていたのだ。つまり信頼している。

「ええ、今日を入れて三日後ですわミス・ヴァリエール。どうかお気をつけて…」

シエスタはそう言って頭を下げた。

「なら、このまま普通に行けば良い訳だね。ちょうど良いタイミングだ。これこそ始祖のご加護とか、そういうのかな?ルイズ」

幸先の良さに安心した風にマーティンは言った。

「問題はアルビオンに着いてからよ。それに何があるか分かった物じゃないわ。
早く行けるならそれに越した事ないわよ。さ、準備も出来たし早く行くわよ。じゃあね、シエスタ。」

御武運を、そういってまた礼をするシエスタを残して二人は学院を後にした。


「ああ、心配です。あの二人大丈夫でしょうか」

見送ってシエスタは小さな声で言った。
今回の仕事から担当を外されたので、ここで普通に仕事をしている事となっていた。

『お前は、今回の件で一悶着やらかすかもしれんからな。
確かに、王は非道だったと俺も思うが、しかしそれを殺すのは俺達の掟に反する。分かるな?』

痛い程分かっている。だが、確かにやらかしてしまうかもしれない。
暗殺のやり方は曽祖父から教わった。最後の手段としてだ。
罪の無い彼女らの親達を殺した王の話を聞き、つい、
懐のダガーに手をのばしたのがグレイ・フォックスにバレてしまった。

『お前は闇の兄弟達でなければ、モラグ・トングでもない。
技術の出自がそれらだったとしても、今は盗賊ギルドのメンバーだ。
掟破りは許されない。特に殺しは取り返しがつかんのだ』

優しく諭すように言う灰色頭巾のフォックスに、彼女は従うしかなかった。


「影よ、夜の女王ノクターナルよ。どうか困難に向かう二人をその闇で包み、彼らに災いもたらす者達から隠してくださいますよう…」

Shadow hide you.そう言ってシエスタは祈りを奉げた。
じっとその様子を眺めている赤い髪に気づかずに。

考えてやらないでもない。夜の女王は笑って言った。
影の声は誰にも聞こえてはいない。
同じように始祖へ祈りを奉げるアンリエッタにも。


そんなこんなで馬で走って一日過ぎ、二日目の昼過ぎ、
予定より早めにラ・ロシェールに着きつつある。
急ぎよ。と、泊まった宿駅でルイズが言うと、
ならばこいつを。と赤い馬を用意された。ありえない速さだった。
一体この馬は何なのかを聞くべきだっただろうか?
まぁ、速いから良いか。二人はそう思って馬を走らせる。

「おお、あれがラ・ロシェールか。あそこから空を飛ぶ船が出るのだね?」

当然ながら、マーティンがいたタムリエルには空に浮かぶ島など確認されてない。
北方地方スカイリムに住む、白い人間族ノルド達は、
自分達を天空から来たと自称する事もあるが、
それも伝説で語り継がれるだけの話。
酒の席での笑い話(彼らは酒飲みである事が多い)で言うくらいなものだ。

元いた世界、ニルンをくまなく探せば一つか二つあるかも知れないが、
今まで見たことのない空に浮かぶ島への期待で彼は一杯だった。

「ええ。船の予約に行かないと。夜までに来れて良かったわ」

無駄使いしていなくて良かった。そうルイズは思う。
金貨はまだそれなりに残っていたが、毎月来る仕送りが少し前に来たところだった。
両方を合わせればおそらく指輪を金に変えなくても問題はない。
姫さまからもらった物を金に変えるなんてバチ当たりな事をせずに済んで良かった――

そんな思考を遮るかの様に爆音が鳴り響く。火の秘薬が発したその音は、
戦の訓練を受けていない馬達を驚かせるには十分だった。
足を止めた馬へ向けて弓矢が、穏やかな風を裂いて飛んで来る。

「奇襲か!」

すんでの所で当たる前に馬から放り出され、
彼はルイズと共に逃げ出そうとする。
しかし、数が多い。タムリエルの『破壊』の火魔法で、
いくつかの矢を、こっちに当たる前に燃やしたが身を隠す所も無い。

まさかトリステイン内で襲われるとは思っていなかった。
シロディールに比べ衛兵なんぞが辺りを周っていなかったから、
ここらの治安は良い方だと思っていたのだ。
マーティンはそんな自身の甘い考えを呪った。
相手がどこから矢を射っているのか全く分からない。
ならば逃げるしかないが、しかしどこから来るか分からない以上、
どこへ逃げれば良いというのか。絶体絶命である。
弓矢が二人へ殺到する。ルイズの前にマーティンが立つ。


さて、どうしたものか。炎を手から出そうとした。
一度これらを燃やしてから、範囲の広い魔法で敵の位置を特定するか。
分からないなら全て倒せばいい。
問題は弓矢をその時まで食らわずに済むかどうかだ。
そんな時、一陣の風と凍てついた吹雪が矢を吹き飛ばし、炎が全てを燃やした。

「ハァイ!二人とも大丈夫?大丈夫ね。良かった良かった」

空を見上げれば、青い竜に乗る赤き髪のキュルケと青き髪で制服姿のタバサが、
そして、あの時初めて見たグリフォンと呼ばれる幻獣に乗る男がいた。

「わ、ワルドさま!?」

「久しぶりだね僕のルイズ。だが、話は後だ。まだやるべき事が残っている」

二匹の獣が空に舞う。主を乗せたそれらは、息を合わせて敵陣へと突っ切っていく。
今度は襲ってきた盗賊達が驚く番だった。


「危ない所を助けていただいて、どうもありがとう。ミス・ツェルプストーにミス・タバサ。それと、ミスタ・ワルド?」

先ほどルイズが言った名前でマーティンは言った。
賊は近くで転がっている。タバサとワルドの風でここまで運ばれたのだ。
賊達の戦う意思はもう無いようだ。空から来るメイジ三人を相手に勝てる平民など、
普通はいない。ワルド、と言われた男は笑って握手を求める。

「女王陛下の魔法衛士隊、グリフォン隊隊長のジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルドです。僕の婚約者がお世話になっているようで」

「マーティンです、マーティン・セプティム。姫殿下から伺っているとは思いますが。
タムリエルと言う国で司祭をしています。なるほど、婚約者でしたか」

マーティンの手を握るワルドは、喜色のある笑みを浮かべている。
キュルケは何故こいつにこんな良い男が?とした風で呆然となり、
タバサは誰にも分からない様にふぁぁと欠伸をしながら本を読む。眠かった。
ルイズは顔を真っ赤にした。

「姫殿下が学院の寝室から抜け出した後、どうも様子がおかしくなったので、
それとなく聞いてみると僕のルイズに任務を与えたと聞いたものですから!
その後僕とルイズの関係をお聞きになられると、僕に彼女と貴方を守れと命じられたのです」

「ワ、ワルドさま。それは親が決めた事で…」

顔を真っ赤にして、後ろの方は消え入りそうな声で言うルイズ。
それを無視するかの様に、彼はルイズを抱きかかえた。

「久しぶりだな!ルイズ!相変わらず軽いなきみは!まるで羽のようだ!」

ルイズは頬を染めてされるがままになっている。満更でもないようだ。

「ミスタ・ワルドがここにいる理由は分かったが、では君達は?」

お互い使い魔使いの荒い主人で大変なのね。俺使い魔違うけどな。
とでも話しているのだろう二匹をよそに、
マーティンはキュルケに聞いた。ルイズとワルドは放っておく。
人の恋路を邪魔する奴はというやつだ。


「昨日、たまたまあなた達とメイドが話していたのを聞いたのですわ。
スヴェルの月。何て言ったらアルビオンに行くと言っているような物だと、
行った事の無い私にも分かるもの。そんな訳で今まで着いて来たって訳ですわ。ミスタ・セプティム」

その子の説得が面倒でしたけれどね。そう言って彼女は艶やかに笑う。
そう言われたタバサは無表情で本を読み続ける。いや、読んだまま寝ているようだ。

「一日中飛びっぱなしでしたから。それに行く必要ないと言ってほっとけと聞かなかったのですわよ?
こんなおもしろそうな事を放っておけだなんて、ツェルプストーには無理な相談ですわ。
先に着いてルイズを驚かせようかと思いましたの。もちろん、あなた様方に気づかれない様にして。
それで空の上で後を追っている内に、後からあの素敵な殿方がやって来たと言う訳ですの」

どうにも好みからは少しはずれていますけれどね。と彼女はつけ加える。
格好の良い男だが、良く見れば何か嫌な感じがした。

彼女は日々の日常より、時たま来る刺激的な非日常を愛しているらしい。
そうだったか。マーティンは礼を言って後盗賊達の方へ行き、
賊の長らしき風貌の人間と向き合った。

「やぁ。私が言うのもなんだが、災難だったな」

「ははは、仕方ねぇわ。こんな日もあらぁね。ここで終わりってなぁ残念だが」

やってる事がやってる事だ。今更命乞いなんざできねぇわな。
平民で傭兵家業や盗賊やらをやっている彼らは、
平民が貴族に歯向かえばどうなるかは良く知っている。
命を狙われたのだ。自分達を殺すのは目に見えている。

「変な事を聞くが、私達以外が通ってもここで誰かを襲ったのかい?」

運が向いているらしい。こいつは話が分かる方のようだ。
賊の長はあえて知らない風に言った。

「ん?あーどうだろうな。何か忘れている様な気がするが、思い出せねぇなぁ」

へっへっへと笑う。ふむ、とマーティンは先ほど出掛けに、
ルイズから雑費としてもらったエキュー金貨をいくつか握らせる。
すると小さな声で話し始めた。

「頼まれたんだよ。白い仮面の貴族にな。あんた達が何するかは知らねぇ。
聞いちゃいけねぇ、俺達の事教えちゃいけねぇ、逃げちゃいけねぇ、代わりに金は言い値を払う。
そんな話だったって訳よ。ありがとうよ。んじゃ、あっちの人らにはよろしくな。
ああ、それとこっから先には、俺らみたいなのはいないと思うぜ?少なくても昨日はいなかった」

たまには始祖も良い仕事しやがる。そういって賊は笑った。


「彼らはただの物取りのようです。捨て置きましょうミスタ・ワルド」

盗賊達から離れ、マーティンはワルドへ言った。

「そうですか、分かりました。今日は休んで明日の朝一番の便でアルビオンへ渡りましょう」

ルイズを抱えたまま彼はにこやかに言う。彼女をグリフォンに乗せようとしたところで、
わ、わわわたしには馬がありますから。と言われたので彼は高速の赤い馬に乗せた。

「じゃ、出発ね?ほら、タバサ起きて。ラ・ロシェールへ行くわよ」

キュルケはぶんぶん揺らしてタバサを起こす。ぱちりと目を開け、青い竜に乗った彼女達は空に舞った。

「では、ラ・ロシェールで!」

グリフォンも飛ぶ。また二人となった。

「私達も行くとしよう、ルイズ」

「え、ええ。その、さっきの事なんだけど」

ん?と、まだ顔を赤くしているルイズをマーティンは見た。

「あ、あの時私の前に立ってくれた事。その、守ってくれて…」

マーティンは優しく笑った。

「使い魔は主人を守るものだ。前もそう聞いたが?それに大人は子どもを守るものだ」

「こ、子どもじゃないもん。16だから。立派なレディなんだからね!」

またマーティンは笑った。

「子どもくらいなものさ。大人になりたがるのはね」

大人は子どもになりたがる。そんな物だと彼は言う。
う~とルイズは唸るが、どうしようもないので黙った。
そうして、二人もラ・ロシェールへ向かう。空に舞う二つの幻獣の後を追って。




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