あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

不屈の使い魔~Love Hunter~

 彼は弱かった。冗談にもならないほどに、弱かった。
 肩を叩けば驚いて死ぬ。道を歩けば躓いて死ぬ。雑用もこなせぬ使い魔に、仕置きの鞭を与えればやはり、死ぬ。
 そして契約時に生じた異能――ガンダールヴのルーンさえ彼の弱さをカヴァーすることは適わなかった。武器を持たせれば達人の動きをするのだが、その素早い動きに彼の体は耐えられず、崩壊を始めるのだ。
 主人は嘆いた。無能な自分には無能な使い魔がお似合いなのか、きっと自分は何時までも無能なまま人生を終えてしまうのだ、と。そんな主を使い魔は慰めた。自分が呼び出された事には必ず意味があるはずだ。きっと君にも明日がくるはずさ――ナルシストの彼は気取って言ったが、主の気に触ったのか鞭で打ち殺され、間を置かずに復活した。

「今日も死人介護? ルイズも大変ねぇ」
「うるさい! ……さっさと起きなさい、カリト」
「あ゛ぃ」 ズルピチャジュリュグチャ

 主と使い魔は、周囲に馬鹿にされながらも、決して膝を屈することなく日々を過ごした。主は持ち前の負けん気と貴族の矜持で、使い魔はその身の不死性で。
 そんな主従にある日、転機が訪れた。主の幼馴染である、王女が持ち込んだ任務だ。
 王宮の醜聞を抑えるため、主の婚約者である衛士隊隊長を伴い、白の国アルビオンへ旅立つ二人。その道は険しく、遠く、困難極まるものだった(おもに使い魔のせいで)。漸く目的地に辿り着くも、這う這うの体の使い魔に冷たく一瞥を送る主。

「あんたのせいで、滅茶苦茶に時間がかかったじゃないの!」
「まぁまぁ、彼の分は私がフォローするから。それにしても、本当に大丈夫なのかね、使い魔君……?」
「は、は、は…だいジョうぶですよ。慣れっこですから……ゴフッ!」
「おでれーた……ほんとにおでれーた。こんなに弱っちぃ使い手は初めてだ」

 本来であれば恋敵になったであろう婚約者にも心配され、持ち物の剣にさえ馬鹿にされながらも、彼は微笑を崩さず、いつも通りに振舞った。主はその態度が卑屈に見えて気に食わず、いつものように折檻を加えた。当然いつものように死ぬ使い魔だが、確実に生き返るのだから彼女には既に遠慮は無かった。婚約者と剣はドン引きだった。
 王子に手紙を渡し、目的の物品を回収したその夜の事だ。城のホールで盛大なパーティが開かれる中、主は使い魔を呼び出し、告白した。

「私ね、結婚するのよ? 驚いた?」
「ふぐぉ! ……あぁ、心臓が止まるほどに、驚いたよ」
「……それだけ? 他には何もないの?」
「ワルド子爵はいい人だと思うよ。君をよく導いてくれるだろう。何より死に難いし」
「あんたを基準にするんじゃない! あんたは私の使い魔でしょう! もっと言う事が無いの? 君は僕が守るとか、彼に渡したりはしないとか!?」
「無理だよ、僕は弱い。きっとこれからも君の足を引っ張り続けるだろう。君は彼といるほうがいい。……帰る方法は自分で探すよ。何、心配は無用さ! 僕は死んでも死なないからね」
「――この意気地無し! 死に損ない!」

 いつもの如く彼をぶん殴って昏倒させ、走り去った主を、倒れたままで見送った使い魔。普段の微笑は、無かった。

 そして、次の日。始祖ブリミルの像が置かれた礼拝堂で婚約者――ワルドとの結婚式を迎える主。立会人は皇太子のみで、そこに彼女の使い魔の姿は無かった。
 暗い面持ちの彼女に、優しく言葉をかけるワルドだが、段々とその口調が凄みを帯びてきた。戸惑いながらも何事かと目を見張る主の肩を掴み、熱っぽい口調で叫んだ。世界を手に入れる、その為に君が必要だ、と。優しかったかつての彼の目は、爬虫類を思わせる鋭く気色の悪い物に豹変し、両手を広げて主に迫った。
 止めに入ったウェールズ皇太子は殺害され、漸く身の危険を確信した彼女は身を翻して逃げようとするが、凄まじい握力で手を掴まれて動けない。

「放しなさい、この裏切り者! あなたが貴族派だったなんて……一体どうしてこんなことを!?」
「数奇な運命のめぐり合わせさ。さぁ僕の手を取るんだ、ルイズ。共にに世界を手に入れようではないか!」
「いやよ!」

 あくまで拒否の姿勢を崩さない彼女に業を煮やし、彼女を突き飛ばすワルド。呻き声を上げながら下がろうとする彼女に、ワルドは『ウィンドブレイク』で追い討ちをかけた。壁に叩きつけられ、涙を流しながら彼女は叫んだ。

「――助けてぇ! カリトぉっ!」

 その瞬間、礼拝堂の壁が轟音を立てて崩れ去り、彼女の前に赤い肉塊が飛び込んできた。その肉塊は即座に再生を始め、人の形を取る。彼女の使い魔――愛野狩人だった。
 いつもの微笑を主に送った彼は、剣を構え裏切り者に向き直った。……剣の重みで腕が変に曲がっているのが少し情けない。
 彼は、嘲笑を浮かべてすぐさま襲い掛かってきたワルドの魔法をその身に受け、当然のように吹き飛ばされた。
 しかし――

「な、何で死なないの……?」

 普段ならどんな弱い衝撃にも即座に昏倒し、復活までに時間がかかる筈。にもかかわらず、彼は立ったままだった。頭から血を垂れ流しながら、首を「コキリ」と鳴らし、楽しげに言い放つ。

「いやー、流石に痛いね。死にそうだよ」
「貴様……!」
「カリト! 逃げるのよ!」
「そうしたいのはやまやまだけどね。彼は逃がしてくれないだろう。だから、さぁルイズ、立つんだ」
「……え?」
「彼の攻撃は『全て』僕が引き受けよう。だから君は安心して魔法を使うんだ。いつものやつをね」

 彼は全身の傷を何とでも無いように振る舞い、ルイズの前に立つ。激昂したワルドは風の刃を放って彼を切り刻んだ。当然、狩人の手足は千切れ飛び、床に倒れ伏す。しかし、彼はすぐに復活し立ち上がる。折れている上に、風の刃のせいで千切れそうな腕で剣を握り、ワルドを睨む。

「殺してみたまえよ。刺殺、絞殺、撲殺、斬殺、圧殺、完殺、全殺、惨殺、狂殺、どれでも殺せ、どれかで殺せ。……なんてね」
「一体何なのだ、お前は!」
「……ルイズ、この通り僕は平気だ。でもこいつを倒すには一つ足りない。『盾』だけじゃ駄目なんだ」

 その言葉に、主――ルイズは顔を上げ、決心した。私の魔法でワルドを倒す!
 立ち上がり、呪文を唱えるルイズを横目に、狩人は笑みを深め、剣を構えなおした。ワルドはそんな彼を恐怖の目でみて、次々と魔法を放つ。吹き飛ばされ、潰され、分身に切り刻まれ、たまにルイズを襲おうとするものがあれば、即座にルーンの力で主の前に戻り、仁王立ちしてその身を晒す。彼の在り様は、まさに伝説の通り『神の盾』だった。

 そして、完成するルイズの失敗魔法。詠唱に詠唱を重ね、常とは比較にならぬほど膨れ上がった魔力は、極大の爆発を起こし、礼拝堂の半分とワルドを完全に吹き飛ばした。
 疲れのために膝から崩れ落ちるルイズを、狩人は華麗に受け止め――ようとして腰椎を骨折し、そのまま二人は折り重なって倒れた。

「……締まらない奴ね」
「ははは、申し訳ない」

『神の左手ガンダールヴ。勇猛果敢な神の盾。
 左に握った大剣と、右に掴んだ長槍で、導きし我を守りきる』

不屈の使い魔~Love Hunter~ 

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