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ジ・エルダースクロール外伝 ハルケギニア-13


13.手紙を届けよ

アンリエッタ姫殿下が学院にやってきて後、現在夜である。
マーティンは、ルイズが学んでいる教科書の一つを借りて、
ハルケギニアの魔法の理解を深めようと勉強していた。
主に『風』の系統についてである。
これだけは概念その物がタムリエルには無いのだ。
自身で闇雲に考えるよりも、知っている人から教えてもらう方が良い。
そんな訳でこれについては後回しにしていた。
他の系統魔法も憶測まじりでの理解だったので、
これの後に教えてもらう予定だった。

教科書と共に教えてくれる教師はルイズだった。
何とも言えない顔つきでぼうっとしていたが、
一声掛けるといつもの調子に戻ったので、まぁいいかと彼は教えを受けた。

勉強机に椅子を二つ並べてマーティンがルイズの講義を聴いている。

「なるほど、対人戦で威力を発揮する戦闘向きな魔法なんだね?」

ルイズ教諭の話を聞き、マーティンは言った。
なるほど、確かにギトー先生の放った魔法は風だった。
無形だから攻撃にも防御にも使える。便利な魔法だ。

「ええ。ある程度クラスが上がれば、風以外にも雷の魔法『ライトニング・クラウド』が使える様になるわ。
そこに行き着くまでは強い風で敵を吹き飛ばしたり、風に刃を付けて相手を切り刻んだりするわ。
そっちの方が使いやすいと聞くけれど。後は色々と特殊な魔法が使えるわね。『遍在』と言って…」

説明の途中に、扉がノックされた。始めに長く二回、それから短く三回。
扉に近かったマーティンがドアを開けると、
真っ黒な頭巾をすっぽりとかぶった少女が中に入ってきた。

「その、あなたは…?」

マーティンの質問に答えず、少女は扉を閉めて魔法を使った。
探知魔法の光の粉が辺りに舞う。何も無い事を確認して少女は言った。

「お久しぶりね。ルイズ・フランソワーズ」

頭巾を取ってどうにか笑う彼女は、アンリエッタ王女だった。

「姫殿下!」

ルイズは慌てて椅子から立ち上がると膝をついた。

「ルイズ。あ、貴女にお話したい事があるのです」

ルイズに駆け寄りそうになったが、自身でそれを制してアンリエッタは言った。
どうにも様子が変だ。今日、彼女が馬車から降りて歩く姿をルイズは見たが、
その時から何となくの違和感があった。
それが何だったのかを、さっきルイズは考えていたのだ。

「話とは、何でございましょうか?」

ルイズは何が起こったのかを聞く為にも先を促す。
マーティンは、何が起こるのかを静かに見ている事にした。
この空気は以前感じた事がある。
友に色々と頼み事をした、あの時の空気だ。そう思いながら。


「ええ、その…ああ嫌になるわ」

アンリエッタは深く息を吸って吐いた。
紙とペンをルイズから借りると、それに何かを書き始めた。

「読んで下さいな。恥ずかしながら、自分で言うことが出来ないのです」

ため息を一つ吐いて、アンリエッタは悲しそうに笑って言った。
ルイズは紙を受け取り読み始めた。字は震えていた。

「これは…」

マーティンはルイズの後から手紙を見た。アルビオンと言う国へ行き、
ウェールズと言う皇太子から手紙を回収してきて欲しいとの事だ。

「王命です。おね…いいえ、従いなさい。ルイズ・フランソワーズ」

辛そうにアンリエッタは言った。まるで昔の彼女と違う。
ルイズは、どうにも何があったのかを聞きたくなった。

「何があったのですか?今の姫さまはとても辛そうですわ」

「それを貴女に言うことは叶いません…いえ、言うべきでしょうね。ルイズ。今のアルビオンの状況はご存じ?」

いくら俗世とは少々離れた魔法学院とはいえ、ある程度の情報は入ってきていた。
あまり信じたくない話だが、王家の壊滅は時間の問題だという事もルイズは知っている。

「ええ、そうよ。今、トリステインとゲルマニアで軍事同盟をする予定なのだけれども、
その手紙をどうにかしなければ、アルビオン王家に牙を剥いた連中が、
この同盟を妨害する為に手紙を大いに利用する事でしょう。
だから早急にそれを取りに行かねばならないのですが、信頼出来る者が王宮にいないのです。
私が今頼れるのは貴女だけで、だからこの様な事を…ごめんなさい。
謝ってはならぬと思ってここに来たのですが、やはり私は王家の生まれに相応しくはありませんね」

命令に私情をはさむのは駄目だと分かっていても、駄目ですわ。つい、言ってしまいます。
アンリエッタは瞳に涙を集めて笑った。とても悲しい表情だった。

「姫さま!何をおっしゃるのですか!戦場だろうが何だろうが、姫さまの為なら何処へなりと参りますわ!」

「いや、あー、すみません。アンリエッタ姫殿下?」

ルイズがどうにも危なっかしい事を言い出したので、マーティンは止めに入った。
彼女が貴族なのはマーティンも理解しているし、王命が絶対なのも分かっているが、
分が悪すぎる。失敗する可能性の方が高い。そう思った。
別段、もしかしたらこのまま自身が行くことになるかもしれない、
という点には問題を感じていない。純粋に主人を心配しての事である。

街での奇襲や友と戦ったモンスター達、そしてタムリエルに侵攻した多数のデイドラ、
そんな連中とやりあった彼と対等の力の人間は数えるほどもいない。
乱戦でも、そうそう負けない自信はあった。必ずとは言えなかったが。

「いくら何でも、学生に、その、戦場へ行け。というのは、無謀では、ないでしょうか…あ、いえ、その」

静かに涙を流すアンリエッタを見て、ああ、どうした物かとマーティンは頭に手を当てた。
自分も結構無茶な事を言った記憶はある。しかし、それは友に戦う力があり、
モンスターにも臆せず立ち向かう事ができたから、そう言うことが言えたのであって、
見習いメイジであるルイズに言うべき事ではないと思ってしまうのだ。
確かに何らかの才能がありそうだが、まだその時ではない。そう考えていた。


彼は知らない。シロディールの現メイジギルドの長は見習いを連れて、
何処かの危ない洞窟や古代遺跡、
はたまた怪物がいる未開の地を散策しているかもしれない事を。

ルイズがこっちを見て、水差したら駄目でしょうそこは!と言いたげな顔をしている。
彼女はアンリエッタの幼なじみであり、昔から王女の役に立ちたかったのだ。
決して認められたいからだとか、誉められたいからという思いでは無く、
純粋に姫さまを助けたかったのだ。今こそその時だと思っているのである。
戦場についてそこまで深くは考えていない。
ある種楽天家の気質があるらしい。使命感に燃えて分かっていない方だろうか。

「ええ、分かっていますわ。下手をすればルイズがどうなるかも。
ですが、宮廷内には常に不穏な動きがあって誰かに任せる事が出来ないのです。
そうで無ければ彼女へ頼みには来ませんわ。ところで、あなたは?」

涙を拭い、少々口を尖らしてアンリエッタは言った。
ああ、失礼しました。と言ってマーティンは簡単な自己紹介を行った。

決心は固いらしい。説得でどうにか出来る物ではないな。
自身の命をどうにかして助けてくれたルイズに、マーティンは恩義を感じている。
だから、彼女が戦場に行くと言うなら、行かねばならないと思った。

「司祭様ですのね。使い魔に人を呼び出すなんて、ルイズは昔と変わらず、変わり者ですね」

少し表情を明るくしてアンリエッタは言った。そしてマーティンの方へ顔を向ける。

「どうか、私の命を受けるルイズを助けてあげてはいただけないでしょうか?マーティン…さん」

ルイズが困った顔になった。夢でしか見ていないが、
その口調や魔法等様々な証拠から彼は皇帝だと思っている。
必ず彼の国であるタムリエル帝国に帰さなければならないというのに、
もし戦場で果ててしまったら国はどうなるか――
そんな事をルイズが思っている間に、マーティンは答えた。

「ええ。分かりました。姫様の命とあらばお受けしましょう」

使い魔ですからね。と笑って言っている。いや、待って。とルイズが止めに入った。
頭の中では、アンリエッタの任務は自分一人だけで行く予定だったのだ。
戦場という物を彼女はそこまでよく分かっていなかった。肌で感じた事が無いのだ。

「戦場は危険だ。ルイズでないと駄目だというのなら、使い魔として呼ばれた私も行くべきだろう?
何、デイドラ達と比べればどんな人間相手でも、まだマシだろう。
君を必ず守る。とは言えないが、しかしある程度はどうにかできると思う」

以前、あの化け物達と一戦交えたんだ。
ブルーマと呼ばれる街の近くの決戦場でね。
そう言って笑う彼と、いつか見た夢の彼が被った。
皇帝として、配下に命令をしていた鋭い目つきのマーティンは、
とても格好の良かった事を覚えている。


「で、でも」

尚も食い下がる。しかしマーティンはキッパリ言った。

「使い魔と主人は一心同体。君が言った言葉だ。君が卒業したら、私は国へ帰る為に君の元を離れる。
しかし、それまでは使い魔でいると言ったはずだよ。まぁ、もちろん人間扱いであって欲しいし、
その点は君の理解もあるからありがたいけれどね」

国の人々は私が死んだと思っているから、ここで死んでしまっても何も問題はない。
と言って笑う。それはどうなのだろうかと思うルイズだが、
しかし、彼は一度決めた事はやり通す方なのだろう。説得は難しそうだ。
一緒に来てもらった方が、ありがたい事だと言うのは分かるが、しかし――
そうやって思案に明け暮れるところに、アンリエッタが彼女に手紙を渡して言った。

「では、この手紙を届けて下さい。今、ウェールズ皇太子は、
ニューカッスル城の付近で陣を構えていると聞きます。そこへ向かい、
この手紙を渡せば件の手紙をあなたに渡してくれるでしょう。
そしてお守り代わりにこれを。もしお金に困ったら、
売り払って旅の資金にして下さい。」

ルイズの葛藤を知らぬアンリエッタが、彼女に水のルビーを渡す。
どうか出来るだけ何事もなく、無事に行けますようにと始祖に祈るルイズであった。
自身の命より、主に使い魔の命について。


「どうでしたか?殿下」

帰り道、真っ黒なフードを被ったアンリエッタに、
一緒に抜け出した女官が言った。
最近宮廷入りした彼女は、比較的アンリエッタと歳が近い事もあって、
姫殿下とは仲が良かった。たまたまアンリエッタが漏らした今回の件を聞いて、
それがどういうような連中か、姫殿下に言った上で許可をもらい、
王宮にまで忍び込み、盗めない物はない。といわれる連中に依頼した。
王宮内でも徒党を組んだ盗賊達の噂はよくされるのだ。

ゲルマニアからの帰り、警備が薄くなった時間帯に馬を『借りて』、
事前の打ち合わせ通りに彼らの隠れ家まで移動。
そこで細かい状況を説明した後、どうしても信頼できる人物が必要となり、
ルイズとその使い魔に依頼することを彼らに言った。

内容と人物に何人かいた盗賊の内、二人が反対したが、
指導者らしい黒で統一しているフードの女性が説得。
緑の髪の女性は心底嫌そうだったが、どうにか承諾。
頭巾の男もしたくはなさそうだったが、納得したらしかった。
黒と緑の女性は、王家に何か由縁があり色々あったらしいが、
そんな事はアンリエッタにも女官にも関係無い。
だが、ここで盗賊達の話を聞いたアンリエッタは、
自身が起こそうとしている事を理解した。
友に死ねと命じようとしている事を。
だが、それでも命じなければならなかった。

自分が結婚したって構わない。あの人が生きていてくれるなら。
生きてさえいてくれるなら、他のどんな物だって代わりに差し出しましょう――
彼女にとって、彼は絶対だった。絶対に救わねばならない人だった。
だからこそ、唯一と言える友人すら犠牲に出来た。
しかしその胸中は荒れに荒れて、どこまでも自分を嫌っている。


別の何かをしなければならなくなったらしい連中は、
女官が持ってきた前金を受け取って去っていった。
その後彼らが言ったように時間を調整して帰り、
着いて後、マザリーニのお説教をアンリエッタは聞いたのだ。

「ええ。ルイズは私の命を受けてくれました。しかし、私は何と言う事を…」

最初から、この命令は私情の物である。
頭の良いウェールズ様は、あの手紙が残る事による不利益など百も承知のはず。
私が何も言わなくても、燃やして処分くらいはするでしょう。
そう思うと自分が心の底から嫌になる。友達を死ぬかも知れない所に自分の意志で送ったのだ。
愛する人を死なせたくない。その思いだけで。

仕方の無いことです。そう言って女官は彼女を慰める。

「そうですわ。そうですとも。けれど、もしもの事があれば私は自分を許せないでしょうね」

ため息混じりにそう答える。女官はとりあえず、出来うる限り慰めた。

クエストが追加されました『ウェールズ様の救出』




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