あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

Louise and Little Familiar’s Order-08



沈みゆく夕日を背に、ルイズとミーを乗せた馬は学院へと走っていく。
その上、高度二百メイルぐらいの所をキュルケ達の乗ったシルフィードが飛んでいた。
ただ行きの時とは違い、シルフィードの両手には大量の重そうな荷物が抱えられている。
それらは全て主にギーシュがミーの為に洋裁店や製靴店、そして家具店等を往き来した結果であった。
頭の後ろに手を組み、色々終わって一安心とばかりにギーシュは呑気に呟く。

「あ~、今日は実に楽しい一日だったな。そうは思わないかね君達?」

しかし返答は返って来ない。
タバサは相変わらず小さめの本に夢中だし、キュルケはのんびりした雰囲気だったが時々下のルイズ達に目をやっているだけ。
さっきからそんな調子だった。
そんな中キュルケは思っていた。
自分達が来なくてもルイズ達二人の休日は上手くいったかもしれない。
だとすれば、そんな気は毛頭無かったにせよ自分達は完全に横から余計なちゃちゃを入れた事になる。
まあ、ちゃちゃを入れさせてしまうような行動を常日頃からとっているルイズにも問題はあるのだが。
ただ、今日という日が使い魔であるミーと良好な関係を持とうと決心し行動した日として、
重要なターニングポイントになる筈だったのなら、自分達は余計なお節介をしたも同然だ。
彼女はただ眼下を走る一頭の馬を見つめるしかないのだ。

今日キュルケ達と会ってからというもの、ルイズは不機嫌な顔をしたまま破顔することは一度も無かった。
当て事は向こうから外れるとは誰かが言った有名な台詞だし、彼女自身も今まで経験が無かった訳では無い。
だがこんな日にまで起きなくてもいいだろうと、ルイズは溜め息一つ吐いて空を仰いだ。
ミーはと言えば、街にいる間中ずっと子熊と一緒にいた。
聞くと子熊はただの子熊ではなく、彼女の世界でヒメグマと呼ばれているポケモンの一種という事らしい。
ポケモンというのが何なのかルイズにはよく分からなかったが、とにかくミーの世界では馴染み深い生き物である事は理解した。
またポケモン同士を闘わせる事によって、技を覚えたり経験値という物を貰ってレベルをあげる事が起きるらしい。
かいつまんで言うならば強くなるという事だが、ミーはレベルが上がって進化すると姿形が変わってしまうからヤダと言った。
ミーが無力な存在である以上、ルイズとしてはヒメグマに訓練をさせて強くさせたいが、ミーの機嫌を損ねるわけにもいかないので黙っておく事にした。
気になる事はもう一つある。
行商人が言っていたヴィンダールブの件である。
ミーが本当に伝説の使い魔ヴィンダールブなら自分はとんでもない当たりを引いた事になる。
実際、行商人でさえ手懐けるのが難しいとされている動物をあっさり手懐けさせた。
今だって馬の手綱を握らせたら、乗馬が得意な自分と同じくらいかそれ以上に馬を御するかもしれない。
大体あらゆる獣を手懐け望む所へ主を導くなど夢の様な話ではないか。
しかし、話は深く考えれば考える程馬鹿らしくなってくる。
ヴィンダールブがいたのは今の時代から六千年以上も前の話。
しかも主はハルケギニア大陸で広くそして篤く信仰されているブリミル教の始祖ブリミル・ヴァルトリなのだ。
かたやミーはどこからどう見ても平民の子供だし、
主である自分は魔法を使う度に爆発を起こして友人から「ゼロのルイズ」と嘲られる毎日を送っていたのだ。
一朝一夕で伝説の使い魔とその主などという大それた存在なんかになれる訳がない。
それにミーはまだ子供だ。ヴィンダールブの力をはっきり発揮させるのに大人になるまで待てというのか?幾ら何でも遅すぎる。

「疲れてるのね……あんな根も葉も無い話をコロッと信じかけるなんて。どうかしてるのかしら、あたし。」


そんなルイズのモノローグに耳を傾ける者は一人としていない。
空に吸い込まれるは馬が走る音しかない夕暮れ時であった。

Louise&Little Familiar's Order「Principal's question」

学院に着いてすぐにルイズは、街で買ってきた荷物を部屋に運び入れる作業にとりかかる。
キュルケは手伝いましょうか?と訊いてきたが、ミーの手前ルイズはそれをやんわりと断った。
だが浮遊、飛行系の魔法が一切使えないルイズにとって仕事は思っていたより重労働となった。
しかも始めて暫くもしない内に、ルイズは廊下でコルベール氏によって呼び止められた。
聞くと、大事な話があるので今すぐ学院長室に来て欲しいとの事。
寮塔の廊下に放っておくわけにもいかないので、ミーに無理しない範囲で部屋に荷物を運んでおくように言いつけた。
今日は今の今に至るまで一度も怒られてはいない。出掛けに行く事も出来たしプレゼントも貰った。
こんなに良い日を台無しにする訳にはいかないと思ったミーはせっせと荷物を部屋まで運び始める。
その時犯した最大のミスは……何処かに繋いでもいないペットから目を離した事だった。

ルイズはコルベール氏の跡を追う様に学院長室に足を運ぶ。

「学院長、失礼します。」

そう言ってコルベール氏が扉を開けると、部屋の中ではオスマン氏が水煙草を吹かしながら、とある書物の一ページを見つめていた。
何処かに行ったのであろうか、秘書であるミス・ロングビルの姿は室内には見えない。

「オールド・オスマン。ミス・ヴァリエールをお連れ致しました。」
「うむ。御苦労であった。」

それからコルベール氏は戸口の所まで行き、廊下に誰もいない事を確認した後でそっと鍵をかける。
次いでオスマン氏が杖を軽く振って「ディティクトマジック」を使う。
部屋のどこにも覗き穴や盗み聞きが出来る様な物が無い事を確認した彼は、杖を側に置きルイズに話しかけた。

「ミス・ヴァリエール。夜分にここへ招いてすまんの。
さてと、これから話す事はくれぐれも内密にしてほしい。良いかな?
実は君の使い魔の事についてなんじゃが……」
「学院長先生。その事についてなんですが……」

ルイズの開口にオスマン氏は目を光らせるが、すぐにいつもの様な雰囲気に戻った。

「そうかそうか、もうすでに気付いておったのか。いやぁ君は実に聡い生徒じゃ。
そうじゃ。君が考えている通り、君の使い魔の右手に刻まれているルーンは伝説の使い魔の一人、ヴィンダールブに刻まれておったルーンと同じじゃった。
見つけたのはコルベール先生じゃがの。
まあ始めに言うておくが、それを戦好きな王室連中なぞには伝えはせんから安心するがよい。
わしらはこの数日長いこと討議をしたよ。事実を君に伝えるべきかどうかをな。
じゃがわしらは君を信用することにした。君がそろそろ気付くだろう、軽々しく公言しないだろうと考えてな。
君からこの件に関して何かしら質問はあるかな?」

ルイズはその時オスマン氏の話す話の内容が、昼間の行商人の話とほぼ一致していた事に驚いていた。
ただ仮にも魔法学院の教師という事を考えれば当然とも言えたが。
気を取り直してルイズは質問をしてみる。

「はい。学院長先生の話に因ればヴィンダールブとその主が現代に甦ったという事ですよね?
それが事実だとすれば、何故私の使い魔がヴィンダールブとなったのでしょうか?」
「ほっほ。そこまで考えておったとは。やはり君は賢明じゃな。
真に残念じゃがその答えはわしらの力をもってしても未だに謎のままじゃ。
これまでにもあれこれと考えた物も全て推測の域を出ないか、それでなければ荒唐無稽も良いところの代物ばかりでな。
少しも力になれんですまんの。ただ、わしなりに調べて解った事があったら真っ先に報告することを約束しよう。」
「有り難う御座います。学院長先生。」

ルイズはそう言って恭しく一礼をする。
オスマン氏は何事も無かったかの様に再び水煙草を吹かし始めた。


「はぁ。ミス・ロングビルのいない合間に吸えるだけ吸っておくとするか。
時にミス・ヴァリエール、君の使い魔は今何処にいるのかね?」
「あ、はい。今は寮塔で仕事をしている筈ですが何か?」
「いやぁ、その仕事は使い魔の実力できちんと済ませられる範囲内の仕事か気になってしもうての。」

言い終わると同時に視線が若干厳しいものになるオスマン氏にルイズはドキリとした。
コルベール氏も何の話なのか興味があるらしくちらとこちらを見やる。
ルイズの顔からは急速に気持ちの余裕が消え失せていった。
オスマン氏は表情を変える事無く続ける。

「ミス・ヴァリエールよ、学院長という役職の存在はただここに座ったまま執務をしているだけで良いというわけにはいかないのじゃ。
時にはこの部屋から出て教え子達と交わり合い、学業や生活における悩み事を聞いて解決策を与え導いてやるのも学院長の仕事の一つじゃ。
その過程において耳にする事には当然、君と君の使い魔に関しての事も多少なりとはあるものじゃ。
わしがもう何を言わんとしているかは……君のことじゃ。分かるじゃろう?」
「はい……」
「使い魔は主を支え一生を共にする。
ある時は恭順な従者として、またある時は唯一無二の友として……これは古からの伝統じゃ。
君の場合、古今東西人間の、それも平民を使い魔にした例が無いために何もかもが手探りの状態になるのは否めない。
しかしじゃ、平民は必ず何処かの領地に属するものでもある。
そこから無理矢理連れて来るわけじゃ。
使い魔召喚の儀においてミスタ・コルベールは気にしておらんかったそうじゃが、領主が異国の貴族なら事によると国際問題に発展しかねん。
じゃが如何せん君の使い魔はそれをどうこう説明出来る年齢には達しておらん。
それよりも故郷を思って枕を濡らす時がある方がもっと直接的に訴えるものがあるじゃろうの。
繰り返すようじゃが君が召喚した平民は未だ幼い。
親元から使い魔として引き離した以上、君が親の代わりとなって養育をしていかなければならん。
わしも嘗て幼き姪の世話をやった事があるからの。苦労も分かるというものじゃ。
よいか。親の愛に飢える童子が求めるは鞭ではない。何物をも犠牲にしても構わないと感じさせる程の無償の愛情じゃ。
……問おう。君は使い魔に対して無償の愛情を注いで接しているかね?」

ルイズは少し俯き、口を真一文字に結んでおし黙った。
ここで何の躊躇いも無く「はい」と言えたらどれだけ気が楽になるか知れない。
しかし恐らくオスマン氏は全てを知っていることだろう。今、隠しだてをしたところで何の意味も無い。
ルイズの頭の中では学院へ入ってからの一年間が、今までの自分の人生の中で思い出す限り最も惨めな一年間が走馬灯の様に思い出されていた。
今でも友達と呼べる同級生なぞ一人もいない。
最初はキュルケ、次にギーシュ、そして最後は学院長。
まるで下に海を臨む断崖絶壁に、たった一人で立たされている様な心境。
いつの間に強く下唇を噛んでいたのか、血が細く一筋唇から流れ出る。
その時、学院長室の扉が短く四回叩かれた。

「私です、オールド・オスマン。ロングビルです。入って宜しいでしょうか?」
「ん?ああ別に構わんが、どうかしたのかね?」

オスマン氏の問いかけに、ミス・ロングビルは鍵を開けて扉を開き中に入る形で応対する。
いつに無く慌てた調子でミス・ロングビルは

「先程食堂で騒ぎが起きまして……どの生徒の使い魔かは分からないのですが、子熊が一匹食堂に入り込んだようです……」

子熊という言葉にルイズは胃にバケツ一杯の氷水を流し込まれた様な感覚に陥った。
しかもミス・ロングビルの報告はまだ続く。

「生徒職員に用意されていた夕食の料理や飲み物を尽く食い散らかしまして……
見つかるや否や手が付けられない程暴れだしまして……
テーブル掛けを剥がす、皿を投げる。
あまりの惨状に生徒という生徒が憤慨していて、子熊を殺しかねないという大変危険な状態に……」


もう十分だ。そう思ったルイズは底冷えのする様な声で学院長に向かって言った。

「学院長先生。」
「何かね、ミス・ヴァリエール?」
「この一件は私の責任です。その子熊は今日私の使い魔に買い与えた物です。使い魔の不始末は私の不始末です。
ですから……この件は私が責任を持って何とかします。」

そう言ってルイズはオスマン氏に御辞儀をすると、脱兎の如く階下へ降りて行った。
コルベール氏は少しの間呆気に取られていたが、
やがて直ぐに気を取り直しオスマン氏に質問をする。

「オールド・オスマン、良かったのですか?質問の答も聞かずにミス・ヴァリエールを行かせて……」
「ミスタ・コルベール。あの様子ならあの子の答えは一も二も無く『いいえ』じゃったろう。
今回の一件であの子がどう振る舞うか、それが今後の大事な要となる。
失敗すればそこまでじゃ。」

オスマン氏は再び水煙草を吹かし始める。
だがその視線は相変わらず厳しい物であった。




新着情報

取得中です。