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使い魔の炎-07


「ゴーレム!」
キュルケの叫びで、最初に冷静さを取り戻したのはタバサだった。呪文を唱える。
巨大な竜巻がゴーレムの体にぶつかるが、ゴーレムはびくともしない。
キュルケも杖を振り、ゴーレムを炎で包み込んだ。
しかし、ゴーレムはまったく意に介さない。
「無理よこんなの!」
「退却」
タバサが呟くと、ふたりは一目散に逃げ出した。
烈火も逃げようと後に続こうとしたが、思わず足を止めた。
ゴーレムめがけ、呪文を唱えようとする君主。 その姿を烈火は確認したのである。
烈火はゴーレムを挟んでルイズと対称となるような位置で足を止め、必死に叫んだ。
「姫、逃げろ! いくら何でも相手が悪すぎる!!」
ルイズは恐怖を振り払うように目を見開いていった。
「イヤよ! コイツを倒せば、誰も私のことを『ゼロ』なんて言わなくなるでしょ!」
その目はかつて見たことがないほど真剣で、烈火は戸惑いを覚えた。
「…死んじまったら、全部終わっちまうんだぞ!? それでもいいのかよ!?」
烈火の言葉を無視し、キッとルイズはゴーレムを睨みつけた。
「わたしは貴族よ。逃げるわけにはいかないわ…魔法が使える者を貴族を呼ぶんじゃない」
ルイズは杖をしっかりと握り直した。
「敵に後ろを見せないものを、貴族と呼ぶのよ!」
ゴーレムはルイズに目標を定め、詰め寄る。 同時にルイズは魔法を詠唱し、杖を振った。『ファイアーボール』でも唱えたのだろう。
しかし、ゴーレムは爆発した胸の部分からわずかに土をこぼしただけで、微動だにしない。
巨大な腕が振り上げられる。ゴーレムの拳が視界に広がり、思わずルイズは目をつぶった。
…終わった。 ルイズはそう思った。
しかし、覚悟していた衝撃はいつまでたっても襲ってこない。
恐る恐る目を開けると、いつの間にか烈火がルイズを守るように立ちふさがり、炎に包まれた右手でゴーレムの拳を破壊していた。
「姫に手ぇだすな」
静かに呟くと、背中に背負っていたデルフリンガーを引き抜く。
「逃げろ、姫」
「…じ、邪魔しなー」
「逃げろっていってんだろ!!」
かつてないほどの烈火の怒声に、ルイズの体が強張る。
「あのな! 貴族だか何だかしらねえけど、姫が死んだら俺が悲しいんだよ!!
姫は俺が守る! だから、姫に勝手に死ぬ権利はねえんだ!!」


ルイズの目から涙がこぼれる。
「だって、私、いつもみんなにバカにされて…悔しくて…逃げたら、またバカにされるじゃない…!」
烈火は、その言葉を聞いて、は?と目を開いた。
「何言ってんだお前? そんなこと俺がさせる訳ねえだろ」
「…え?」
「ここは俺が何とかする。 だからそんな顔すんな。
俺がコイツをぶっ倒して、お前が『ゼロ』なんかじゃないことを証明してやる」
「あ…」
ルイズは、過去に自分が言った言葉を思い出した。
『メイジの実力をはかるには使い魔を見ろって言われてるぐらいよ!』
この使い魔は、こんな情けない自分の為に命をかけてくれているのだ。
「俺は忍者だ。 姫を傷つけるやつは誰であろうと許さねえ」
ルイズは涙目で呟いた。
「守ってくれるの? 『ゼロ』の私を?」
烈火は、ルイズに目を向けると微笑みながら言った。
「当たり前だろ」
その言葉を聞いたルイズはぐじぐじと涙を拭って駆けだした。
タバサのシルフィードがルイズを拾い上げる。

ルイズが安全を確保したことを確認した烈火はゴーレムに向き直り、自分に気合いを入れ直す。
「行くぜ! ルイズに仕える忍、花菱烈火、参る!!」
デルフリンガーをかまえると、左手のルーンが輝いた。
体が軽くなり、こんなに大きな剣が体の一部のように感じられる。
この感覚、ギーシュと戦ったときと同じだ…
そう感じながら、烈火はゴーレムの足下に突っ込み、右足を切り裂いた。ゴーレムの巨体がゆっくりと崩れ落ちる。
倒せる! 烈火はそう思った。
が、倒れ込んだゴーレムの右足はすぐに周りの土を取り込んで再生し、すぐに立ち上がった。
烈火の顔から余裕が消える。
「…やっぱ、そう簡単にはいかねえか…」
ゴーレムの反撃が始まった。

「レッカ!」
ルイズは苦戦する烈火をはらはらしながら見つめていた。
あのボロ剣を使って何とか攻撃をしのいでいるが、防戦一方に見える。
レッカを助けないと…私には、私にできることがあるはず…!!
そう思い、必死に自分にできることを探す。
ふと、ルイズはタバサが抱えた『破壊の杖』の杖に気付いた。
「タバサ! それを!」
タバサは『破壊の杖』をルイズに手渡した。
「私に『レビテーション』をかけて!」
言うが早いか、ルイズは『破壊の杖』を抱えてシルフィードの背中から飛び降りた。
タバサは、慌てて杖を振った。


ゴーレムの拳を紙一重で避けながら、烈火は考えていた。
…このままじゃマズい。
所詮は土。最大火力で燃やし尽くせば再生は不可能だろう。
しかし、体の一部を灰にした程度では周りの土を取り込んでゴーレムはすぐに再生してしまう。
勝つには、一気に体全体を燃やし尽くすしかない。
しかし、一度に燃やすにはゴーレムの体は大きすぎる。
せめて奴を小さく分裂させる手があれば…
斬っても斬っても再生を繰り返すゴーレム。
炎もずっと使っていれるわけではないし、長期戦になればさらに不利になるのは明らかだ。
一体どうすればいいんだ…?
そのとき、烈火の思考を視界にはいってきたルイズが中断した。
「あのおてんば姫…」
思わず毒づいてしまう。
ルイズは『破壊の杖』を抱えているが、使い方がわからないらしくもたついている。
烈火は、ルイズの降りてくる方向に全速力で走った。

「えいっ!えいっ…!!」
ルイズは懸命に『破壊の杖』を振るが、魔法は発動しない。沈黙したままだ。
これ本当に魔法の杖なの!?
私は使い魔を助けることもできないの!?
動きなさい!動きなさいよ!!
「姫っ!! 何してんだよ!? 早く逃げろ!」
そこに烈火が駆け寄ってくる。
「レッカ!!」
烈火はルイズの手から『破壊の杖』を奪い取った。瞬間、左手のルーンが輝く。烈火は目をつぶった。
「これを使って助けようと…でも、使い方がわかんないの!!」
ルイズが叫ぶ。
しかし、烈火は目を瞑ったまま、頭の中で描いていた。
左手のルーンが教えてくれる。『破壊の杖』の使い方。これを使って、ゴーレムを倒す。その手順を。
…いける。 烈火は目を開けた。
「姫、これはな…こう使うんだ!!」
烈火は、破壊の杖を地面に突き立てた。
地中で何かがうごめく音がした。不穏な雰囲気に、ゴーレムの動きが一瞬止まる。
瞬間。
石でできた巨大な腕が地面から姿を現し、ゴーレムの体を貫いた。

烈火の隣にいるルイズ、上空で見守るキュルケとタバサは唖然としている。
ゴーレムの体を構成していた土が、四方八方に散らばる…かに見えた。
しかし、今度は石で作られた壁がゴーレムを囲み、ゴーレムの残骸の散らばりが抑えられた。
烈火は杖を投げ捨て、飛び上がる。
「天誅!」
石の囲みの中のゴーレムの残骸めがけて、ありったけの力を込めた炎を放出した。
「うおおおおらあぁぁぁぁぁぁ!!!」
ゴーレムを構成していた土の欠片は、全て灰と化し、風に吹かれて消えた。

「ふいー、キツかった」
戦いを終えた烈火は思わずしゃがみこみ、ようやく一息ついた。
勝つには勝ったが…戦闘にここまで炎を酷使したのは初めてだったため、烈火はかつてないほどの疲労を感じていた。
「レッカ!」
使い魔の元に、駆け寄ろうとするルイズ…しかし。
「炎を操る上、『破壊の杖』まで使いこなしちゃうなんて…流石ダーリンね!!」
ルイズが烈火のもとにたどり着くより先に、烈火の顔はキュルケの胸元に押し込まれていた。
「ち、違うわ! 武器を持ったら使い方が勝手にわかって…」
烈火は顔を赤くしながらジタバタもがいている。
そんな烈火の様子に、ルイズは不満を感じた。


烈火はなんとかキュルケをふりほどくと、ルイズの様子には目も向けず自分の使った『破壊の杖』を見つめた。
…どうみてもこれはこの世界のものではない。
この道具のことは全く知らない…しかし、左手のルーンの力が教えてくれる。これは、間違いなく俺の世界の武器だ…!!
だが、今はそんなことを考える前に烈火にはやらなければいけないことがあった。
烈火はルイズに向き直り、言った。
「姫が『破壊の杖』持ってきてくれなかったら、勝てなかったかもしれねえ。 ありがとな、姫」
ルイズはしばらく呆然としたあと、頬を染めた。
「あ、当たり前でしょ…使い魔を見捨てる主人なんていないんだから」
顔を伏せながら言う。

少し遅れて、シルフィードが地上に降りてきた。
タバサは、周りを冷静に見回して呟いた。
「…フーケはどこ?」
その言葉で皆に緊張が戻る。
そのとき、森からミス・ロングビルが姿を現し、ルイズたちの方へ歩み寄ってきた。
「ミス・ロングビル、無事だったのね! フーケが何処にいるかわかる?」
ミス・ロングビルはキュルケの問いかけには答えず微笑みを浮かべ、無言で『破壊の杖』を拾い上げて烈火たちに突きつけた。
「ご苦労様」
ミス・ロングビルが冷たい声で言った。
「ど、どういうこと!?」
戸惑うルイズたち。
「…やっぱりお前がフーケだったのか」
烈火だけが冷静に、真実を口にした。
「へえ、気付いてたのかい。バカな割に勘はいいんだね」
「ほっとけよ。…目的は何だ?」
フーケは淡々と、『破壊の杖』の使い方を学院の人間を利用して突き止めようとしたことを明かした。
「討伐隊が生徒ばかりになるとは思ってなかったから不安だったけどね…けど、助かったわ。あなたのおかげよ、使い魔くん。 でもね…」
フーケは破壊の杖を振り上げる。
「残念だけど、あんたたちはもう用なしなのよ。さようなら」
観念し、ルイズたちは目をつむった。
しかし、烈火はフーケから視線を外そうとしない。
「勇気があるのね?」
「うっせえよバカ」
烈火は小馬鹿にしたような口振りで言った。
フーケは舌打ちをした。
「…死になさい」
フーケが地面に『破壊の杖』を突き立てようとした。
「させるか!」
とっさに烈火は右手を振り上げ、フーケに炎を見舞う。
「無駄よ!」
しかし、フーケは素早く『破壊の杖』で防御し、炎を跳ね返した
烈火の表情が歪む。それを見て、フーケは自分の勝利を確信した。
「悪あがきもこれで打ち止め…今度こそ、死になさい!」
フーケは勢いよく『破壊の杖』を地面に突き立てた。
しかし、先ほど烈火が使ったときのように魔法が発動しない。
「な、どうして!?」
何度も杖を動かしてみる。しかし、杖はフーケの意志にまったく反応しない。
フーケがはっと顔をあげると、烈火は唇の端に笑みを浮かべていた。
ふと、『破壊の杖』にはめ込まれた宝石のようなものが割れていることに気付く。
しまった…武器破壊!?
このガキ、さっきの攻撃はこれを狙って…!!
「くっ!」
慌ててローブから杖を引っ張りだしたものの、既に手遅れ。
烈火はデルフリンガーを拾い上げて一足飛びで距離を詰め、柄をフーケのわき腹に叩き込んだ。
「く…そ…」
フーケが地面に崩れ落ちる。
烈火は地面に転がった『破壊の杖』を拾い上げて、言った。
「フーケを捕まえて、『破壊の杖』を取り戻したぜ…杖、ちょっと壊しちまったけど」
「何してくれてんのよこのバカー!!」
疲れきった烈火の体に、ルイズのハイキックが炸裂した。


「こ…これが、私の使い魔?」
エルフの少女は、目を見張った。
まだ時刻は夕刻といっていい頃だったが、木や草が鬱蒼と生い茂ったこの辺りには一筋も光が入ってこない。
少女は友達がほしかった。
遊び心で、噂に聞く使い魔の召喚儀式を真似してみただけだ。
しかし彼女の予想に反して、召喚は成功してしまった。
その結果、彼女の眼前には、面妖な仮面で顔を隠した男が立っている。
…人間の使い魔なんて、噂にも聞いたことがない。
顔の上半分は仮面で見えないものの、覗く口元からは美麗な容姿が容易に想像できる。
しかし、男の瞳は仮面の上からでもわかるほど冷たいものだった。
彼は、周りを見、自らを見、そして彼女を見て、つぶやいた。
「…どうやら私に、"平穏"は許されないらしい…」



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