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使い魔の炎-03


粗末な昼食を早めに終えた烈火は、洗濯を手伝ってもらってお礼にシエスタのケーキ配りを手伝うことにした。

烈火がケーキを貴族たちに配っていると、視界の端の方にシエスタがしゃがみこむのが見えた。
ふと、そちらに視線を向けてみる。
「すいません、ポケットからビンが落ちましたよ」
シエスタは、それをテーブルの上に置いた。
「それは僕のじゃない。君は何を言っているんだね?」
金髪の少年が苦々しい顔をしてシエスタの方を見ている。
「おお? その香水はモンモランシーのものではないか?」
「そいつがお前のポケットから落ちたってことは、ギーシュ、お前は今モンモランシーとつきあっている、ということだな?」
一気に騒がしくなるテーブル。
しかし、二人の女の子が次々に表れ、金髪の少年にビンタをはっていくのを見て、烈火は思わず笑ってしまった。
最低!や嘘つき!などの言葉を彼女たちは発していたので、おそらくさっきのやりとりで金髪の浮気がバレてしまったのだろう。
騒動がひと段落し、野次馬たちもひいていく。
金髪は「あのレディたちは、薔薇の存在の意味を理解していないようだ」
と呟いていた。
その言葉に再び吹き出しそうになるのを堪え、烈火がその場を立ち去ろうとしたとき、
「待ちたまえ、君」
金髪の冷たい声が響いた。
「な、なんでしょう?」シエスタが緊張した声で振り返る。
「君が軽率に香水を拾い上げたおかげで、二人のレディの名誉に傷が付いた。どうしてくれるんだね?」
あいつ、何バカなこと言ってやがんだ!?
思わず、烈火は駆け寄ってシエスタをかばった。
「待てよ!この子は全然悪くねえだろ!!」
「君は…ゼロのルイズの使い魔か。やはり、平民に気遣いを求めるのが間違いのようだな。
その子が少し気をまわしてくれれば、二人のレディが傷つかずにすんだ」
「…ふざけんな。全部てめえが浮気したせいだろ!! 自業自得だ」
「そりゃそうだ。ギーシュ、お前が悪い!」
周りから失笑が起きる。
「…ど、どうやら、君は貴族に対する礼儀を知らないようだな」
顔を赤くした金髪の少年が、眉をひくつかせながら呟いた。
「うっせえんだよ!! 浮気がバレた腹いせに立場の弱いやつに八つ当たりするようなやつに礼儀知らず呼ばわりされるほど、俺は腐ってねえ」
烈火は吐き捨てるように言った。
少年はぐぬぬ…とうなった後、
「決闘だ!!礼儀知らずの平民に、貴族自らが礼節を叩き込んでやる!」
と言い放った。
「ヴェストリの広場にて待つ」


そう言い残し、少年は歩きだした。ギャラリーもずらずらと動き出す。
「上等だ。てめえなんかに負ける気がしねえぜ」シエスタが、ぶるぶる震えていた。
「ん、どうした?」
「あ、あなた、殺されちゃう…」
「は?」
「貴族を本気で怒らせたら…」
シエスタはだーっと逃げ出してしまった。
なんだ…貴族ってそんなに強いのか?
"錬金"の魔法しか見たことがない烈火は、魔法の真の力を知らなかった。
「あんた、何してんのよ! 見てたわよ!」
騒動を聞きつけ、ルイズがやってきた。
「お、姫。飯食い終わったのか?」
「お、じゃないわよ! なに勝手に決闘なんか約束してんのよ!」
「いや、だって、あれは全然シエスタは悪くないし…」
気まずさを感じて、少し口ごもる烈火。
ルイズはやれやれと肩をすくめた。
「怪我したくなかったら、謝ってきなさい。今なら許してくれるかもしれないわ」
「…ゴメン、姫の命令でも、ここは引けねえ」
「わからずやね…あのね? 絶対に勝てないし、あんたは怪我するわ。 いや、怪我で済んだら運がいいわよ!」
「けど、あいつがやったことはやっぱ許せねえよ」
「…聞いて?メイジに平民は絶対に勝てないの!」
「…」
烈火はしばらく考えたあと、ルイズに向かって頭を下げた。
「ゴメン、姫! やっぱ俺、納得できねえ。
…ヴェストリの広場ってとこまで案内してくれ」
烈火は金髪の取り巻きのひとりに声をかけた。
「こっちだ。平民」
「ああもう! 私を君主とか言っておきながら、勝手なことばっかりするんだから!」
ルイズは、烈火の後を追いかけた。

「諸君! 決闘だ!」
ギーシュと呼ばれていた少年がキザに薔薇の造花をかかげた。歓声があがる。
「ギーシュが決闘するぞ! 相手はルイズの平民だ!」
「だああああ!平民平民うるせえ! 俺は姫の忍、花菱烈火だ!!」
烈火は叫んだ。
ギーシュは腕を振って、歓声にこたえている。
烈火とギーシュは、距離をとってぐっとにらみ合った。
「とりあえず、逃げずに来たことは、誉めてやろうじゃないか」
ギーシュは歌うように言った。
「逃げる必要ねえよ。5秒でブチのめしてやるぜ!」
「さてと、では始めようか」
次の瞬間、烈火は正面からギーシュに突っ込んでいった。
普段、土門や風子といった一般人を遥かに上回る相手とケンカしてきた烈火である。
こんなヤツに、負けるはずがない。一発でのしてやる自信があった。


ギーシュは、突っ込んでくる烈火に対して余裕の笑みを浮かべながら薔薇の花を振った。
すると、甲冑を着た女戦士の人形が五体、出現した。
烈火の動きが止まる。
「なんだこいつら!?」
ギーシュは口元に冷酷な笑みを浮かべた。
「言い忘れいたな。僕は土のメイジ"青銅"のギーシュ。
従って、青銅のゴーレム『ワルキューレ』がお相手するよ」
女戦士のゴーレム5体が、烈火に突っ込んでくる。
「マジかよ…」
ゴーレムが繰り出す攻撃を、紙一重でかわす烈火。
「ちくしょう!! この…野郎!!」
烈火は、自ら花火の部品を改造して作った複数の火薬玉をワルキューレに投げつける。
爆発が起こった。しかし、ワルキューレには傷ひとつついていない。
「全然効いてねえっ!?」
「その程度の爆薬で、僕のワルキューレに傷をつけれると思っているのかい!!」
ギーシュが余裕を持った口調で言う。
ならば、と烈火は再度火薬玉を爆発させる。
「そんな手が通用すると…むっ!?」
ギーシュがうなる。烈火の姿が突然、視界から消えたのだ。
「煙幕か!」
辺りを見回すと、ギーシュの頭上まで烈火が飛び上がっていた。
「これで…どーだっ!!」落下の勢いそのままに、烈火は渾身のパンチをワルキューレの顔面部分に叩き込んだ。
ふらつくワルキューレ。だが、
「かてぇっ! なんつー強度だよ!?」
殴った烈火の方の拳にダメージがいくほど、ギーシュのゴーレムの装甲は堅固だった。
烈火の手が止まるのを確認するやいなや、5体のワルキューレは猛攻を始める。
必死に避ける烈火。
「くそっ…」
何か手を考えないと。このままじゃ、体力を削られてこっちが不利になるだけだ!
一体どうすれば…

「がっ!?」
強烈な痛みに、烈火は思考を中断させられた。
いつの間にか烈火の背後に、六体目のワルキューレが作り出され、その拳が烈火の背中にめり込んでいた。
強烈な不意打ちに、思わず倒れこむ。
しかし、ギーシュは攻撃をやめなかった。
「言ったはずだ。"礼節をたたき込んでやる"と。平民が、貴族を侮辱した罰だ!」


横たわる烈火の体を、ワルキューレが踏みつけ、蹴り上げる。
「がはっ!! ぐっ、ぐあああぁぁぁあ!!」
容赦のない攻撃に、烈火のうめき声が響く。
「なんだよ。もう終わりかい?」
ギーシュが呆れた声で言った。人混みから、ルイズが飛び出してくる。
「ギーシュ!」
「やあルイズ! 悪いな、君の使い魔を少しお借りしているよ!」
ルイズは、よく通る声でギーシュを怒鳴りつけた。
「いい加減にして! 決闘は校則で禁止されているはずよ!」
「禁止されているのは、貴族同士の決闘のみだよ。貴族と平民の決闘は禁止されていない」
ルイズは口ごもってしまう。
「そ、それは、そんなこと今までなかったから…」
「ルイズ、君はこの平民が好きなのかい?」
ギーシュはからかうように言った。
「だ、誰がよ! やめてよね!
自分の使い魔が、みすみす怪我するのを黙って見てられるわけないじゃない!」
そのとき、
「…姫。俺は大丈夫だ。下がっててくれ」
ワルキューレの足から逃れるように、烈火が立ち上がった。
「レッカ!!」
「姫、やっと俺を名前で呼んでくれたな。ありがと…こいよ。お前なんか全然怖くねえ!」
烈火はギーシュをにらみつけた。
「レッカ、やめて!」
ルイズが叫ぶ。
ギーシュの顔から笑みが消えた。
「素直に寝ていればよかったものを…」

殴られ、倒れ、立ち上がる。それが際限なく繰り返された。
再び地面に横たわった烈火の頭部を、ワルキューレが蹴り上げる。
吹っ飛ばされても、烈火はもはやうめき声さえ出せない。
もはやギーシュは、シエスタのことなどとっくに忘れ、烈火を狩ることだけに集中していた。
そろそろとどめを刺そうか…ギーシュがそう考えたとき、
「お願い。もうやめて」
ルイズが、ギーシュの前に立ちふさがった。
「ルイズ、邪魔をしないでくれ。 例え君がその平民の主人だとしても、決闘の邪魔をする権利はない」
「お願い…やめて…このままじゃ、コイツ、本当に死んじゃうわ」
ルイズの目が潤む。


はあ、と呆れたように息をつくギーシュ。
「まったく、この主人にしてこの使い魔ありか。
魔法の才能ゼロのくせに決闘のルールも守らない主人と、礼節をわきまえない下品な平民の使い魔。
お似合いといっちゃお似合いだが、とっとと神聖なこの学院から消えてくれないか」
ルイズはしゃがみこみ、声をあげて泣き始めてしまった。
ギーシュに自分がバカにされたのが悔しかったのではない。
唯一自分の味方をしてくれる使い魔を侮辱され、殺されかけているのに、何もできない無力な自分が悔しかったのだ。
「まあ、僕も非力な平民を殺してしまうほど残酷じゃない。
今なら君が一言謝れば許してやる。 ごめんなさい、とな」
ルイズは、涙も拭わずに立ち上がった。
「…ふざけないで! コイツは、何も悪いことしてないじゃない!!
力がないものを傷つけて…それが本当に貴族なの!? ギーシュ、あなたこそ私の使い魔に、レッカに誤りなさい!!」
ギーシュの表情がさらに険しくなる。
「…ルイズ、君までそんなことを言うのかい?
それ以上、僕の邪魔をするのなら、容赦はしないよ」
ギーシュは薔薇の花を振り上げ、呪文を詠唱しようとする。思わずルイズは目を瞑った。
そのとき、

「待てよ」
ゆらり、とルイズの後ろに倒れていた烈火が静かに立ち上がった。
「レッカ…」
へなへなとしゃがみ込むルイズ。
「ごめんな。姫…心配かけてさ。もう泣かないでくれ」
ルイズの肩に手をかけ、烈火は彼女に優しく語りかける。
涙は止まらなかったが、不思議とルイズは安らぎを覚えた。
しかし…
「…アンタ、まさかまだ戦う気なの?」
「すぐに終わらせるから」
「だめ! 絶対だめなんだから! これ以上刃向かったら、ギーシュは容赦しないわ」
ルイズは必死に止めようとする。
「別に、俺のことはいいよ。でもシエスタ…さっきのメイドの子に、あいつがしたことはやっぱ許せねえ。
それになにより…」


烈火は、ボロボロの顔をひきつらせて笑った。
「大切な君主を泣かされて、忍は黙ってられねえんだよ」
「レッカ…」
烈火は、ゆっくりとギーシュの方を振り返った。
「…まだやる気かい? いいかげん、君もあきらめ」
言葉を続けようとして、ギーシュは目を見張った。
目の前の平民がボロボロの体全体から、火のような怒りと闘気を迸らせていたからである。
「リミッター外れちまったぜ…覚悟しろよ、てめえ」
烈火に気圧されたギーシュは、後ずさる。
「…姫に悲しい顔をさせるやつは、絶対に許さねえ」
烈火は右手を握りしめた。

この力のことは、やがて自分が守ると決意した君主の前以外では、例え決闘であろうと人前で使うつもりはなかった。
しかし、その誓いを今、破る。
目の前に現れた、誰よりも優しい君主の涙を拭うために。

指と指を強くこすり合わせる。
摩擦によって生まれた火種は周りの酸素を吸い込み、一瞬にして紅く、大きく、
燃え上った。
まるで、術者の心を写すように。
「いざ、尋常に勝負!」

「バカな!なんだあれは!?」
「火系統の魔法? あいつ、メイジだったのか!?」
「けど、杖もなしに体から直接炎を出すなんて…」
「まさか…先住魔法!?」
ギャラリーがざわめく。
杖なしで体から火をだすなんて、聞いたことがない。
主人であるルイズも、目の前で起きている事態が理解できていない。
決闘の行方を暢気に見ていたキュルケは驚き、隣にいた青い髪の小柄な少女が僅かに目を見張った。

「…魔法を使えるやつがそんなにエラいのか?」
烈火はギーシュに問う。
「こ…コケ脅しだ!! そうに決まっている!
行け、ワルキューレ!!」


身の危険を感じたギーシュは、必死でワルキューレを動かす。
烈火は、突っ込んでくるワルキューレを見据える。
火の形と火力を調整し、一気に二体のワルキューレを灰に変えた。
「う、うわわわわわわああああ!? 僕のワルキューレが!?」
混乱したギーシュは、残りのワルキューレ全てを正面から烈火に向かわせてしまう。
「邪魔だあぁぁぁあ!!!」
烈火は手のひらを前方に突き出し、そこから放出した炎で4体のワルキューレを一気に吹き飛ばした。

「俺の君主を泣かした罪は大きいぜ」
後ずさりしながら逃げようとするギーシュを、烈火はジャンプして追いかけた。
「ひっ!」
半端じゃない跳躍力。烈火はひと跳びでギーシュを射程圏内にとらえた。
「天誅!!」
とどめの右ストレートを、ギーシュの顔面に叩き込む。
ギーシュは吹っ飛び、地面に転がった。
それを烈火はゆっくりと歩いて追いかける。
「続けるか?」
ギーシュはすでに完全に戦意を喪失していた。
「ま、参った」
震えた声で、ギーシュが呟いた。

わああああ、と歓声が巻き起こる。
「あの平民、いったい何者だ!?」
「右手から炎をだしてたぞ!」
「負けた! ギーシュが平民に負けたぞ!」
ギャラリーがざわめく。
そんな騒ぎを、上の空で烈火は聞いていた。
実戦で炎を使うのは初めてだったが、上手くいってよかった。
しかし、そのことよりも烈火には気になることがあった。
炎をだして戦っている間、何だかいつもより体が軽かった気がしたのである。


…まあ、いいか。
めんどくさくなった烈火は、考えることを放棄した。
「おい」
烈火はギーシュに声をかけた。
「な、なんだ?」
恐る恐る返事をするギーシュ。
「あとでシエスタ…さっきのメイドの子と、姫に謝っとけよ」
それだけを告げると、烈火はルイズの方に向かって歩き出した。
残されたギーシュは、
「…僕の、完敗だな」
と呟いた。

体はボロボロだが、烈火の頭は不思議なほどすっきりしていた。
ルイズが駆け寄ってくるのが見える。
良かった、もう泣きやんでる。
謝らなきゃ。姫が泣いたのは、俺が命令を無視して戦ったせいでもあるし。
ああ、助けてくれようとしたお礼も言わなきゃな。
そんなことを考えていると、不意に足がふらついた。
あれ、急に体が…重…

烈火は、再び地面に倒れこんだ。



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