あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロの工作員-08



図書館で許可証と名簿を記入し、いつも奥の席に座っている、
顔なじみとなった青く見える黒髪を持つ少女、タバサに話しかける。

「こんにちわ」
「・・・うん」

フリーダはオスマン達から正式に異世界の人間であると認められ、この世界の教育を受けている。
講師となるのは『雪風』の二つ名を持つ、眼鏡をかけた十代の小さなメイジだ。
齢は14歳、背は140cmほどで、魔法学院2年。無言、無表情。
発育が遅れ、背が小さく大人しいために12歳ほどに見える。
生徒の中では特別優秀な存在らしく、<トライアングル>の称号を貰っていた。

フリーダはタバサの元へ通い詰め、文字や文章の読み方といった基本的なものや、
地理政治文化、歴史といったものまで、ハルケギニアについて様々な知識を学んでいる。
魔法や魔道具などの異世界の知識は、物語の中に居るようで彼女にとって面白かった。
映画や小説の設定資料や使われた道具を生で目にするようなものだ。
彼女は真綿に水を染み込ませるように知識を吸収していった。

「問題、正式名称は「王立魔法研究所」。トリステインの王都トリスタニアにあって…」
「通称アカデミーね」
「正解」

タバサは非常に無口なものの、聞けばちゃんと答えてくれる。
教えてもらう代わりに、フリーダはトリステインでは未発達と思われる自然科学や数学の知識を教えていた。
レベルの低い学院の授業に半ば飽きていたのでタバサにとっても有意義な時間であった。

「tanθ = sinθ / …」
「飲み込みが速いわね、なら…」

古風な紙媒体の本を使い、鉛筆で紙に書き取り、覚える。
脳に埋め込んだ<<記憶領域>>経由で覚えてきたフリーダにとって、
手で覚えるのは古臭く非効率極まりないことである。
それでも彼女は嫌いではなかった。

図書室の壁に掛けてある時計を見ると、とっくに夕食の時間は過ぎていた。
熱が入りすぎて夕食を抜かしてしまったようだ。
一段落したのでタバサと一緒に休んでいると、
いつものようにキュルケが林檎やサンドイッチの入ったバスケットを持ってきた。
タバサと図書館に夜遅くまで入り浸るようになって以来、毎晩彼女は差し入れを持って来てくれるのだ。
彼女はタバサの体調が心配だから持ってきているのだそうだ。
服や男はだらしないように見えて、実はマメで世話焼きなのかもしれない。

「それにしても、たった一週間でずいぶん懐いたわね。タバサ」
「・・・・たぶん、違う」

タバサの頬が微妙に動いた。
表情が乏しいので判りづらい、多分喜んでいるのかもしれない。


「林檎。食べる」
タバサがバスケットから林檎とナイフを取り出し皮を剥く。
危なっかしい手付きで皮ごと身を剥ぐ。
角ばった林檎が出来そうだったので。

「貸して」
不器用な姿にフリーダは見ていられなくなり、手を貸した。
慣れた手で林檎の皮を剥く。

「へえ、上手いわね」
皿の上には林檎の兎が乗っていた。
遊び心で、瞳や毛の細工を無駄に凝ってみた。

「刃物の扱い、慣れてるの?」
「ええ、昔レストランで働いてたから」
「・・・そう」
キュルケは林檎の兎を頭から食べた。シャクシャクと子気味よい音がする。
「・・・もったいない」
タバサは残念そうに兎を食べる。
無表情に見えて、可愛いもの好きなのかもしれない。

「・・・・・・」
タバサがじっとフリーダの顔を見ている。
視線は眼鏡に注がれている。
放っておいたら黙っていつまでも見つめていそうなので、問いかける。
「…掛けたいの?」
「うん」
フリーダは眼鏡を外し、渡した。
タバサは歪みのないレンズの向こうでどんな世界を見ているのだろうか。
付けた心の仮面が外れそうで、ぎこちない微笑みを返した。

「・・・度が入っていない」
「レンズを一枚通したら、世界が綺麗になって見える気がするの」
彼女はレンズと同じ、薄っぺらい『自分』に対して苦笑いする。

「今週の休み、みんなで一緒に街にいかない?」
「あたしとタバサとルイズつれてさ、買い物に行くの。案内したげるわよ」
「そうね。この国を知るいい機会かもね」
「・・・シルフィード」


「どうして私がツェルプストーなんかと」
ビルの2階ほどの大きさがある羽を広げた蒼い竜の背で、
ルイズがぶつぶつ小声で文句を言っている。
三人はタバサの使い魔、シェルフィードの背に乗り、
ハルケゲニアの王都トリスタニアへ向かっていた。
タバサが魔法で風の障壁を張るおかげで、
高度にも関わらず生身で外に出ても快適である。

ルイズはフリーダとの付き合い方を考えていた。
朝はルイズが着替えるのを手伝った後、洗濯に行き、
ルイズの授業がある昼間は平民のシエスタと共に雑用、
食事も別で、授業後はタバサと勉強、忌々しいツェルプストーとも仲がいい。
其処まで考え、気付く。自分は存在感がゼロのルイズではないのかと。

会話する暇がないじゃない!

そういえば、まだ学校から貰ったフリーダの下着の替えや
制服以外の服は用意していなかったなと思い出した。
先日、ツェルプストーがフリーダと一緒に買い物に行こうと粉をかけていた。
先祖代々寝取られてきたツェルプストー家に使い魔まで取られては堪らない。
焦ったルイズは主人の懐の深さと、偉大さを示すため、
街で物でも買い与えようかと思っていた。
その矢先の出来事であった。



「壮観な光景ね」
上空のシルフィードから街を見下ろす。
街の中央に聳え立つ、白い石造りの尖塔。
王城を中心に整備がなされた街路は巨大な人口を抱える都市にも関わらず、
一様に入り組み細く狭い。
街を二部する巨大な河を隔て、街と城に分かれている。
どうして街路を広くとらないのか彼女は不思議に思った。
旅なれた彼女には一目で判る。
こうした不自然な景色は、たいてい設立初期に戦争があったためだ。

「トリステインの王都よ。ここらじゃ一番大きな町なんだから。特産品は…」
ルイズが誇らしげに説明している。
だが、フリーダの冷静な目に映るそれは、ただの街だ。
そして人殺しの専門家、暗殺者であるである彼女は、
無価値なものを美しく飾ろうとするすべてが嫌いだった。



トリスタニアの大通りを歩く。
休日の通りには露天が出展し、元々5mほどしかない道を更に狭くしていた。
「狭いわね。これでも大通りなの?」
ルイズが怪訝な顔をする。
「アンタどんなとこに住んでたのよ」
「私の住んでいた街はこれの3倍はあったわ」
「ゲルマニアでもそんなものないわよ」
「…そう」



トリステインの王都、トリスタニア。
街の中央には、王城を始め石造りの白い美しい建物が立ち並び、多くの貴族が暮らす。、
街一番のブルドンネ通りの路地には色とりどりの安物の衣服や帽子をずらりと並べた露店や、
手製の首飾りや指輪を売る立ち売りの商人や、タライや包丁フライパンを置いた金物屋、
箱売りしている果物やザルに無造作に詰まれた野菜を売る露天商、
試験管に入った妖しい色の秘薬を売る屋台が立ち並ぶ。
肉を焼く臭いや、店主と客の競り合う声が聞こえ市場は騒々しい。
商品を搬入する台車や、忙しそうな買出し業者、子供連れの夫婦や学生、
空には風竜やグリフォン、ヒポグリフなどの使い魔や風船が飛び交い、混雑を通り越し猥雑だ。

「ほら、そんなに物珍しげにしてると、スリに狙われるわよ!」
フリーダはルイズに注意されるも、街の姿に気もそぞろだった。
様々な星の、街を見てきた彼女であったが、
本の中でしかなかった街の光景が現実のものとなっているのだ。
本好きな彼女としては実に魅惑的だ。


「アンタの服を買いに来たんだからね!」
今日の予定は学院から出て、街へフリーダの服を買いに行くことになっていた。
召還時の服はボロボロで替えの服や下着がなかった為だ。
当初はキュルケがフリーダの服の金を出すといっていたのだが、
ルイズが使い魔の面倒を見るのは主人の務めと首を縦に振らなかったため
全額、ルイズ持ちとなっている。

「摺られて私に恥をかかせないでよ!」
財布は金貨が一杯に詰まっていて、重い。
スリが嫌なら私に財布を持たせるなとつきかえそうと思ったが、面倒なので止める。
ルイズの言葉に一々反応していたのでは日が暮れるから。

「いいじゃないの。楽しんでるんだから」
隣に歩いているキュルケがフォローを入れた。

「ルイズだって初めて街に来たとき同じだったでしょうが」
自分の身長ほどもある長い杖を抱え物静かに歩くタバサが首を縦に振った。

「あ、あれは子供のころの話しで」
ルイズがキュルケにからかわれている。いつもの通りだ。
そのうちルイズが一方的に興奮しだして杖を抜いて爆発させるだろう。
ほら、予想通り爆発させた。
それをキュルケが軽くあしらい、タバサが無言で被害が広がるのを抑える。
三人の日常風景だ。

服を大量に買いすぎたルイズがキュルケに
「シェルフィードじゃそんなに持ってけないわよ」
と諭されたり、ご主人様と使い魔の関係に気の大きくなったルイズが
アクセサリーを大人買いしようとしたのを
「・・・無謀」
とタバサに止められたり、彼女オススメのハシバミ味のアイスを食べて
「に、苦っ」
とルイズが悶絶したりと三人は買い物を楽しんでいる。
フリーダは目をそらし、眼鏡を直す。
はしゃぐ彼女達の中にいるのが、たまらなく場違いで、恥ずかしくなる。


「少し、辺りを見てきていいかしら?」
アイスを食べて一人を除き全員で悶絶した後、フリーダが切り出した。

「いいわよ。私達は店で待ってるから」
「待ってる」
「苦あいいい」

三人から離れ路地を歩く、中央通りから一本離れただけで街の本来の姿が見えた。
表通りとは反した整然と並んだ店舗は店主やその他の人々が数人、寒々と店番をしている。
客や騒々しい商品の搬入は少なく静かで活気のない市場。
早々と店仕舞いする店主や無人の店舗が所々に見える、
中には一区画丸ごと無人の地域もあった。

「…いろんなお店があるのね」
「どう?楽しかった」
ルイズは好物のクックベリーパイを口いっぱいに頬張っている。

「……………ええ」
「それにしてもフリーダって意外よね。何でも知ってるくせに何にも知らないもの」
タバサもキュルケに同意する。
「・・・アカデミーでも教えられる知識を持っているのに、普通のことで珍しがる」

からかわれているようだからフリーダは訓練して身に付けた不自然でない笑顔を作る。
「…………私の国ではこんな光景、なかったから」

「フリーダの国に私も行ってみたいわ」
ルイズの『フリーダの国』の言葉は彼女を不機嫌な現実へ引き戻す。
「無理をして外に出る必要もないわ。……ここは、平和だもの」
彼女は思う。少女達はこのトリステインという国が病んでいることを知らないのだろう。
同じ街で、同じ空気を吸いながら、彼女達は違う世界を生きている。
ここも、フリーダの居場所ではないのだ。

トリステインは彼女の故郷だ。
メイジと平民に見放され徐々に寂れつつあるけど、ルイズにとって守りたい場所である。
乱立する店の隙間から王宮の尖塔が見える。
その下には綺麗な白い石造りで出来た貴族達の屋敷と平民たちの街が広がっていた。
街は雑多で敷き詰まっていて、汚い。
それでも彼女は街が好きだった。

「落ち着いた街ね」
「もっと派手なのがいいわ。トリスタニアは地味すぎるわよ。」
ツェルプストーはゲルマニア生まれで派手好きだからトリステインの愚痴ばかりこぼす。
伝統と格式を守ってこその貴族なのに。

フリーダがじっと短剣を付けた平民の腰元を見ている。
完璧で、何事にも無関心に見えた外国の少女。
そんな彼女にも人間らしいところがあるのがわかって嬉しい。

「危うく忘れるとこだったわ」
「服も靴も下着もお菓子も買ったわよ」

まだ買うつもりかとツェルプストーが非難する。
いいじゃない。私だって久しぶりに街に来たんだから。
本当はまだまだ買いたかったが、シェルフィードが運べないのなら仕方がない。

「・・・武器」
タバサが店を指差した。




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