あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

SnakeTales Z 蛇の使い魔-22


「私が詔を?」
「うむ。アンリエッタ姫殿下直々にお願いされてのう。
 どうじゃ?無理にとは言わないが。」

ここは学院長室。
二人の人影はルイズとオスマンである。
二人の間には国宝である『始祖の祈祷書』。

話があると呼び出されて頼まれたのは、王家の結婚式に参加し、そこで詔を詠んで欲しいというものだった。
無論、結婚式というのはアンリエッタのもの。
詔の草案についても考えて欲しいとの依頼だ。

「ミス・ヴァリエール、王族の結婚式に立会い、そこで詔を詠みあげるなど普通なら一生に一度もないものじゃ。
 本当に名誉な事だよ?受けてはくれんかのう。」

たしなめるように語るオスマン。
ルイズもそれ程嫌ではなさそうで、断ろうとは思っていないようだ。

「もちろん、お受けしますわ。」

古い友人が自分を頼ってくれている。
少し前ではそんな事は考えた事もなかったことに気がついた。
その頃は自分が魔法が使えない事にもっとも苦しんでいた頃だった。
今も魔法が使えない事が歯がゆく感じた事はある。
だが、使えないなら使えないなりにやれる事があると、『あいつ』に教えられた。
それに頼ってくれている人がいるならその頼みを断りたくはなかった。

「快く引き受けてくれるか。よかったよかった。姫も喜んでくれる事じゃろう。
 …おお、そうじゃ思い出した。君に手紙がきておるよ。」

祈祷書とともに渡された一通の手紙は、ルイズにとってとても嬉しいといえるものではなかったそうな。


げんなりした表情で手紙を見つめる。

―請求書―

なんど見てもそう書かれている。
見間違いではない。

「……どうしよ。」

この前の任務で破壊してしまった『女神の杵』の修理費の請求が来たのだ。
高い。高すぎる。
そりゃ、宿一軒、全壊させたわけではないが、破壊したのだから修理費だって高い。
当然、自分だけで払える額じゃない。

「……はぁ。」

深くため息をつく。
親に頼ることは出来ない。
頼れば原因を追求される。極秘の任務であるが故話せない。
理由を話せないのに金など貸してくれようか。

そして、姫に直談判と言うこの手。
まず使えないだろう。公式な支援が当てに出来るのなら、そもそもルイズたちにこの任務を頼まない。
スネークなら「割に合わない仕事だな。」とか言い出しそうだ。

「自分で何とかするしかないか。」

金の工面―なんとも頭の痛い話だ。
お小遣いでどうにかできるレベルじゃないだけに、アルバイトの必要がある。

「うえー。」

とりあえずうなり声を出すが状況は変わらないっ……!!
非情……!あまりにも非情な現実っ……!
金を持たないこと……それはこの世で一番の罪悪らしい。

「どうした?変な声出して。」

ちょうどそのときスネークが帰ってきた。
この使い魔はいったいどこで油を売っているのだろうか?

「……お金を稼ぐにはどうしたらいいの?」

スネークが目を丸くする。

「貴族でも金に困るんだな。」
「なに貴族に夢見てんのよ。貧乏な貴族なんて五万といるわ。
 ましてや子供なんてなおさらよ。」
「そうなのか。」

ほう、と納得したような声を出すスネーク。
なんかむかつく。
公爵令嬢が金に困っている時点で普通じゃないことを察して欲しい。

「で、どうしたらいいかな?」
「俺がわかるとでも思うか?
 この世界のアルバイトなんてわかるはずもなかろう。」

このオヤジ使えない。
だめだ。やっぱり自分しか頼りにならん。

「使えないわね。」
「……そこまで言うことないだろう。」

あ、少し傷ついてる。
意外とナイーヴなんだなぁ。

「本気じゃないわよ。」
「……気にしてない。」

沈んだ声で言っても説得力がないわ。

「ごめんってば。」
「大丈夫だといっている。」

そうだった。スネークは負けず嫌いだったんだ。
なんだか子供みたい。

「あー、どこかに宝物とか落ちてないかなぁ。」
「そんなうまい話があるわけないだろう。
 現実的に考えろ。地道に働くのが一番だ。」
「わかってるわよ。」

ちょうどそのとき、どこで聞き耳をたてていたのか知らないが、キュルケが部屋に飛び込んできた。

「話は全て聞かせてもらったわ!人類は滅亡すr…じゃなくて、宝探しに行くわよ!」
「盗み聞きはいい趣味とはいえないぞ。この年の貴族には盗み聞きが流行ってでもいるのか?」

息をはきながらスネークが冷静に答える。
そういえば、スネークが声を上げるほど驚いたのを見たことがない。
そんな状況、とても見たくはないが。想像するだけでも恐ろしい。

「流行ってるわけないじゃない。で、どういう意味?宝探しって?」

キュルケの手には小汚い紙が握られている。
どうやら宝の地図らしい。

「……信用できるの?」
「さぁ?」

無責任なのものだ。

「まあもしかしたら本物があるかもしれないわね。
 あたったときの利益はでかいわよ。」
「時間の無駄だろう。」
「あんたは黙ってなさい。
 ……面白そうね。行ってみようかしら。」

スネークが頭を抑えてため息をつく。
頭痛がしてきた、とか聞こえたがそんなことはお構いなしにキュルケとルイズは話を進める。

「で、いつから行くの?私達だけ?」
「え~、ちょっと少なくない?タバサも誘いましょう。」

まるで「放課後どこ行く?あ、わたしクレープ食べたい!」みたいなノリだ。
さすがに不安になるスネーク。

「あ~。二、三質問しても良いか?」
「どうぞ?」
「第一に、出席日数とか大丈夫なのか?」

ルイズとキュルケが顔を見合わせる。
そして、全く何を言っているのかといった表情でルイズが返答した。

「そもそも私は素行は悪くないし、成績だって悪くないわよ。……実技以外は。だから問題ないわ。」
「そうよ。私だって筆記は勿論、実技だって悪いはずがないわ。少しくらい休んだって問題ないわよ。」

キュルケがその豊かな胸を張る。
ルイズも負けじと胸を張るがいかんせん迫力がない。
いや、足りないのはボリュームだな。

「そうか。それを聞いて安心した。
 それじゃ二つ目の質問だ。
 キュルケ、その宝がある場所っていうのは街の近くにあるのか?」
「そんなわけないじゃない。」

わかっていた返答だ。
仮に街の近くにあるのだとしたら、すでに誰かが取りに行っていることだろう。

「そこで三つ目の質問だ。
 食事はどうするつもりだったんだ?」
「「……あ。」」

二人の美少女がそろって間の抜けた声を出した。


厨房
普通、ここに貴族が来ることなど滅多にない。
だが今日は普通ではないようだ。
美しい桃色の長い髪をなびかせて、貴族の少女が厨房を訪れる。

「ごめんください。」

突然の貴族の来訪に水を打ったように静まり返る厨房。
その変貌に少々面食らったのは貴族の少女―ルイズだ。
なんだか悪いことをしている気分になる。

「えっと…シエスタって娘、いるかしら?」
「あ、私です。」

黒髪のメイドがおずおずと手を上げる―シエスタだ。

「あなたね。いつも使い魔がお世話になってるわ。ありがとう。」
「い、いいえ!そんなたいした事はやっていません。」

何をされるのかと身構えていたのでこれでは肩透かしを食らった気分だ。
面と向かって貴族に感謝されるという経験があまりないため不思議な感覚だ。

「それとね、悪いけどちょっと頼みたいことがあるの。」
「なんですか?私に出来ることなら何でも言ってください。」
「えっとね、いやだったら断っていいのだけど……。」

頼みごとをシエスタに伝え、おずおずとシエスタの顔をうかがう。
なんと、輝く笑顔だ。

「そういうことなら、お任せください!
 マルトーさん、しばらくお休みを貰います!」
「お、おう……。」

ものすごい剣幕に何も言い返せないマルトー。
このやり取りを見てルイズはスネークの紹介したメイドを連れて行くことに若干不安を覚えたという。


「おう若いの。暇そうだな?」

中庭で、退屈そうに座っていたギーシュにスネークが声をかけた。

「否定しないね。
 この年の男子なんて常に面白そうな事を求めているものさ。」

物憂げにため息をつくギーシュ。

「そいつは残念だな。
 そういえば、ルイズたちは宝探しに出かけるらしい。お前はそういうのに行かないのか?」
「誘われてもいないからね。ところで、君は行かないのかね?」
「ああ、残念ながらな。」
「男性が誰もいないのはさすがに不安だ。陽気なピクニック気分じゃないか。
 誰か男をつけてやってくれ。」
「ああ、そこでお前に頼みがあるんだが。
 さっきお前は陽気なピクニック気分といったな。」
「……まさか。」

はっとするギーシュ。
どうやらこっちの思惑に気がついたようだ。
だが時すでに遅し。
もうスネークの罠にはまった後だった。


巨大な煙突に空き地に詰まれた木材。
ここはアルビオン空軍工廠の街、ロサイス。
革命戦争と呼ばれる先の内戦時からここは王立の空軍の工廠であった。
赤レンガの大きな空軍の発令所には誇らしげに『レコン・キスタ』の三色の旗が翻っている。
そこに停泊する巨艦―『レキシントン』号だ。
全長200メイルにも及ぶその巨躯は現在、雨よけのために布をかぶせられてはいるが、
その荘厳さは覆われず、むしろ周囲の目を引いている。

その視察に訪れているのはアルビオン皇帝、オリヴァー・クロムウェル。
今日も秘書であるシェフィールドを従えての訪問だ。

「ほう。なんとも大きく、頼もしい艦ではないか。
 このような船があれば、われらの大志を果たすことなど造作もない。そうは思わんかね、艤装主任?」
「はっ!身に余る光栄であります!」

かしこまって答える艤装主任、サー・ヘンリー・ボーウッド。
彼は革命戦争の際に、レコン・キスタ側の巡洋艦の艦長を務め、
その功績が認められ現在の任を任されることになったのだ。
彼はこのまま『レキシントン』号の艦長に就任するだろう。そういう伝統がアルビオンにはあった。

「見たまえ。あの大砲を。
 あの新兵器はアルビオン中の錬金術師を集めて作らせた長砲身の大砲だ。」

感情のこもらない無機質な声で説明するクロムウェル。

「当初の設計ではトリステインやゲルマニアの戦列艦の装備するカノン砲の射程の、
 おおよそ一.五倍の射程を有します。」
「そのとおりだ、ミス・シェフィールド。」

シェフィールドはマントを身に着けていない。
これはメイジではないことをあらわしているのだが、妙に冷たい雰囲気をかもし出している。
東方からやってきたそうだが、それだけでこんな空気を纏えるのだろうか?

「ですが、本当にこの新兵器を結婚式の出席につんでいくのですか?
 下品な示威行為と取られてしまう可能性が……。」
「おっと、君にはまだ『親善訪問』について話していなかったか。これは失敬失敬。」

クロムウェルが二、三ボーウッドに耳打ちする。
たちまち青ざめるボーウッド。

「そ、そのような破廉恥なマネが許されるわけがありません!」
「許す許さないではないのだよ。これは軍事行動の一環だ。」

事も無げに言い返すクロムウェル。
ボーウッドの顔に血が上る。

「不可侵条約を破るおつもりですか!?このアルビオンの長い歴史において条約を破り捨てたことはありません!」

激昂してわめくボーウッド。
だが、クロムウェルの眼を見て、言葉を失った。
鋭く、冷酷なまなざし。
ただの政治家や、司祭がこんな目つきができるはずがない。

言い表すなら『強者』の眼。
他者に何も言わせぬ、蛇のような圧倒的威圧感。
この身にまとわりつく恐怖。

そう、これぞまさしく毒蛇だ。
音もなく忍び寄り、喉元に食らいつき、獲物に冷たい毒を流し込み仕留める。
この男を蛇と言わずして誰を蛇と言おうか。

「はて、君はいつ、政治家になったのかね?
 それ以上の政治批判は私が許さぬ。これは議会が決定し、私が承認したことなのだよ。
 議会に逆らうと言うとどうなるか、君にも理解できるだろう?
 彼らの意思は国民の総意なのだよ。」

クロムウェルの毒牙がボーウッドの胸に突き刺さる。
クロムウェルの言葉しか聞こえない。心に直接話しかけられているかのようだ。
頭に上った血が足まで下りてきた。
寒い。身体が震える。目を合わせていられない。

「どうかしたかね?顔色が悪いじゃないか。
 具合が悪いのだろう。今日はもう休みたまえ。」

ボーウッドはただ黙って頷くことしか出来なかった。


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