あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ご立派な使い魔-09


「すみません、やはり馬車で行くということで」
「そ、そうよ。馬車でいいじゃない馬車で」

外にでるや否やルイズ達を乗せようとしているマーラに向かっての言葉である。
なお、ロングビルもこの捜索に参加することになったので、こうして一緒にいる。
が、彼女もマーラに乗るのには抵抗があるらしかった。

「わたくしも女性ですし、こんなのに乗っているところを誰かに見られたら生きていけません」
「……生きていけないわよね」

ルイズがへこんだ。
ロングビルはそれに気づかないのか、無視しているのか。ともあれ続ける。

「フーケもきっと、こんなに早く見つけられるとは思っていないことでしょう。
 ですから下手に急いで体力を消耗するよりも、落ち着いて確実に追い詰めた方が……」
「ほほう、女。ワシを一発や二発で萎えるような小物と考えておるのかな」
「そういう意味では……その、急いだとしても女性として社会的な死を迎えるのは困ると……」
「……わたし、社会的に死んでるんだ」

ルイズがますますへこむ。
ロングビルに悪気は多分ない、と思う。きっと。あの日、外に出ていたかどうかは不明なのだし。
悪気はなくても、ロングビルも必死なのだ。
だって恥ずかしいし。

「拙速に勝る巧遅なしじゃぞ。賊に逃げられでもしたら大変じゃろうに」
「それはわかっていますが、馬車でも十分速いのですから。
 ミス・ヴァリエールは慣れているのかもしれませんが、わたくしはそうでないのですから」
「わたしだって慣れてないのに……」

ルイズが底にまで辿り着いた。
デルフリンガーは何と声をかけていいのか分からないので、黙っている。

「あの帰り道はなぁ……確かにそりゃ終わってるよな」
「思い出させないでぇぇぇ……」


たおやかに見えるロングビルだが、その実芯の強い女性らしい。
何しろ、こうしてマーラを押し問答をすること30分。一歩も退かないでいられるのだから。

「お主も頑固じゃのう。多少の羞恥くらい、よい刺激であろうに」
「そういう趣味はありません……! わたくしはノーマルです!
 ミス・ヴァリエールではあるまいし、進んで露出する趣味などありません!」
「なんの、なんの。ワシから言わせてもらえればじゃな」

くずおれていたルイズが立ち上がる。
その目には、奇妙な陰がねじれこんでいた。

「娘ッ子……だ、駄目だ! そっちに進んじゃ……おめ、本当に……」
「こ、こ、ここまで言われて黙ってはいられないわ。
 デルフ……女には負けると分かっていても戦わないといけない時があるの」
「だからって! あれをまたやったら、今度こそ……(社会的に)死ぬぞ!」
「こ、こ、この際、もう……や、やってやるわ。や、やってやろうじゃない。
 いい、デルフ。わたしの生き様しっかり見ていて。そして後世に……それは伝えなくていいから」
「娘ッ子ぉ……そこまで、そこまでして……くぅ、手も足も出ない俺が情けねぇ!」

そして、ルイズは息を大きく吸い込むと、堂々と己の使い魔に命令を下す。

「マーラ! 急がないといけないわ、ミス・ロングビルもしっかり!
 しぃぃぃっかり! 触手で捕まえて抑えてあげて!」
「おう、珍しいのう。ならばやるしかないわな」
「え!? ミス・ヴァリエール、そんな、馬車……馬車、馬車ぁ!?」

ロングビルがマーラの触手に捕まる。
そのまま持ち上げられて、背中にひょっこりと乗せられた。
一方ルイズは、そそくさと後ろの方にまたがる。

「わたしは後ろだからそんなに目立たない! ……まあ、それでも見られちゃうんだろうけど」
「娘ッ子ォ……それは死の道だぞ」
「や、やめてくださいミス・ヴァリエール! ってかやめろっ……きゃあ!?」

マーラが動き始める。
ルイズは、とにかく自分の顔を隠そうと、思いっきりうつむいた。
ロングビルは……触手でしっかりと固定されており、落ちる心配も、顔が見られない心配もない。
なお触手で固定されてはいるが、安全ベルトのようなイメージである。
期待してはいけません。

「では出発進行といくかの。グワッハッハッハ!」
「やめろって言ってんだろ……お、お願いだからやめ……ミス・ヴァリエール、やめて止めてやめ……とめった」


ロングビルはくずおれていた。
ルイズもくずおれている。
二人揃って。目的地についたというのに、その表情は完全に絶望のそれだ。

「合計54人に……見られてしまうなんて……」

怜悧な美貌から、とめどなく涙が零れ落ちている。
時折、

「こんな汚れた私を許して……」

だとか。

「身体は汚れたけど心までは……ええ、それでも私は……」

だとか。何か悲痛なことを呟いているようだった。
一方、こうなることをある程度覚悟していたルイズまでくずおれているのには、理由がある。
率直に言うと、気まずそうな顔で二人を見下ろしている、キュルケとタバサの存在だ。

「いや、あの……ルイズ。あたしはまあ……貴方にそういう趣味があっても偏見の目では……」
「ツツツツェルプストー以下じゃないのよこれぇ……」
「あたし以下って言われてもね。まだ羞恥プレイは手出してないわよ」
「うわあぁぁぁぁ!」

涙というのは、尽きたと思っていても溢れ続けるものなのか。
ルイズは、このまま自分が涙になって、消えてなくなってしまえばいいと、そう思う。

「……ああ、娘ッ子。お前はさ、ちょいと焦りすぎたんだよ。
 志はきっと間違っちゃいなかった……だが、もう少し人を、未来を信じればよかったんだよ……」
「うわぁぁぁぁぁ! あああああ!」

バッチリ、キュルケに目撃されてしまった訳である。
マーラに両足開いてまたがっているその姿を。
それは……まあ。デルフリンガーも、どう言えばいいのかわからなかった。
つうか自業自得だもんな。


「それにしてもお主らはどうしてここに来たんじゃ。小娘が心配にでもなったか」
「違いましてよ、殿方。あたしは貴方のそのご立派なモノと是非一手、手合わせ願いたく……」

そう言うキュルケを、タバサが掴んで止める。

「入らない。死ぬ」
「……わかってるわよ。でもそこをあえてやるのが乙女の本懐でしょう」

タバサは、首を振ってたしなめた。

「無駄死に」
「ああ……そう。そうね、貴方がそう言うんなら……もう、仕方ないわね」

ふむ、とマーラは頷いた。
タバサの反応を見てのことである。

「なるほどのう。そちらの青い小娘が昨夜現れおったのは、ワシを値踏みするためであったか」
「え? そうなの、タバサ?」

タバサはこくりと頷いた。
昨日のあのルイズの狂宴の最中、不意に現れたのには、そういう理由があったのだ。
近頃友人のキュルケがご執心の、あのルイズの使い魔。
それがどれほどのモノか、己の目で見極める為に。

「まあ、無難な結論じゃな。赤毛の小娘よ、お主では確かにワシのモノは受け入れきれまいぞ」
「もう……残念ね」

ようやくキュルケが身を引いたのを確認して、タバサは明らかに安堵のため息を漏らした。
友人がズタズタに引き裂かれるのを目撃せずにすんだ。それは、喜んでいいことなのだろう。

マーラは遠い目で語る。

「そもワシを受け入れきれるモノなど、いまだあやつしか知らぬわ」
「あやつ? それは、一体……?」

キュルケはその姿を見て、どことなく陰があって素敵、などと考えている。
絶対に節穴だ。

「うむ。我が同胞、アリオク……奴だけじゃったのう。ワシと互角であったのは」
「それはどんな方?」
「大きかったぞ。何より大きかった。いや、懐かしい思い出じゃ」
「郷里に思い人を残していらっしゃるのね、殿方」

タバサは、友人とマーラの姿にため息をついた。
きっと、よくはわからないけれど、多分。なんか違う。噛みあってない。

「そんなことより……もうさっさとフーケを捕まえましょう」

ようやく立ち直ったらしいロングビルが、眼鏡を直しながらやってきた。

「あたし達は別に、フーケの退治に来た訳ではありませんけど」
「……そんなことは言わないで。せっかくですからお二人ともフーケの捜索を手伝ってください」

ロングビルは、泣きはらしたせいですっかり目を赤く充血させているのだが、その目が妙に怪しく光っている。
キュルケとタバサの二人、この目撃者二人を決して逃すまいとするかのように。

「ミス・タバサは騎士の称号を持っておられるのでしょう?
 それにミス・ツェルプストーも並ぶもののない火の使い手とか。
 確かにあの、ミス・ヴァリエールの使い魔の方だけでも十分過ぎるでしょうが、人手は多いに越したことはありませんわ」

説得力のある言であって、キュルケもタバサも頷かざるを得ない。
ただ、同時にロングビルが、小声で

「まとめて……まとめて始末……目撃者は減らさないと、減らさないと」

などと言っていたのが、まあ、致命的に黒く見えたが。


破壊の戦車はそれはもう、あっさりと見つかった。
というか、フーケが潜んでいるらしい小屋の、外においてあったのだから見つからない訳がない。
なんでそんな無防備かといえば、まあ、それはわかりやすい。
大きすぎるのだ、これは。

「これじゃあ小屋には入らないわね。でも確かに以前宝物庫で見た通りの破壊の戦車だわ」

キュルケが頷いていると、マーラが目を見開いた。

「なんと。これがここにあるとはのう」
「あら殿方。これをご存知なの?」
「ご存知も何もな。これは元々、ワシの愛車じゃぞ」
「ええ?」

マーラは、するすると動いて破壊の戦車の上に載った。
凶暴そうな装飾のついた、いかにも怪しい戦車であったのだが、マーラが乗ると、なんと。
これはどういう魔法であろうか。凄まじいフィット感により、あたかも一億年前から一つであるように見えてきた。

「なんて……ピッタリなの」

キュルケも驚く。圧倒的なピッタリぶりである。

「うむうむ。やっぱりこれだわな。
 三十年ばかり前、部下の不始末で失っておったが、ここにあったとはのう……」
「殿方……部下もいらっしゃるのね。その部下の方はご立派で?」
「あやつは鼻が立派なくらいじゃな。ワシには及ばぬわ」
「素敵な部下ですこと」

うっとりとマーラに身をすりよせるキュルケに、タバサは眉をひそめた。
が、同時に頬を赤く染める。
やはり、このマーラの姿を正面から見るのは刺激が大きいものだ。
タバサの使い魔、シルフィードなどはマーラの姿を見てパニックになったように騒いでいたものだったが……

それはさておき、マーラ、キュルケ、タバサの三人が後ろを振り向く。
すると、そこには。巨大な影と……そして。

「さあ土くれのフーケ! マーラを倒すのよ!」
「そーだ! やっちめぇ! 今度こそ、今度こそだぜ!」

巨大なゴーレムの後ろから、声援を送っているルイズの姿があった。

「なっ……ルイズ! あんた何考えてるのよ!?」
「ついでに色ボケのツェルプストーも始末なさい、フーケ!」
「そーだそーだ! まあ、フーケが聞いてるのか知らねえけどな!」

どうもこれは……なんというべきだろうか。
マーラ達が破壊の戦車を手にした直後に、突如ゴーレムが出現したのだが。
それを見た瞬間、ルイズの顔が喜びに染まったのだ。

「凄いゴーレム……! これならきっと!」

後は見ての通りである。
間違いなくフーケの仕業と見たルイズは、もうほとんど無意識のまま応援を開始していたのだ。
ギーシュのワルキューレとは比べ物にならないゴーレムである。
これならば、あれほど夢見ていたことが叶うかもしれないと。

「ルイズ……あんたそこまで……」
「追い詰められてたから」

タバサの冷静な分析に、キュルケはふんと鼻を鳴らした。

「あんなご立派な使い魔がいて追い詰められる方がおかしいでしょ」
「人それぞれ」

その二人の少女に、マーラはゆるやかに声をかけた。

「お主らは後ろに下がっておるがよいぞ。ワシが片付けるからのう」
「まあ、殿方……お一人で大丈夫?」
「なに、どうということもなし。それに小娘の照れ屋ぶりは慣れておるから気にする必要はないわ」
「本当にご立派ね、殿方」
「無論じゃわな。さあ、お主らはじっと見ておれ」

そして、マーラとゴーレムは対峙する。
大きさを比べるなら、マーラの分が悪い。そのように見えた。

無言でゴーレムが近づく。
マーラも無言で近づいた。
そして、互いの距離が接近すると。

殴る。
頭突きをする。
殴る。
頭突きをする。

ノーガードでの打ち合いが始まったのだ。
一撃一撃が、周囲に衝撃となって走り抜ける。
巨大なモノ同士の戦いは、大地を揺らがせていく。

「殿方……本当に大丈夫かしら……」
「…………」

こればかりは、タバサも判断を下すのが難しいようだ。
固唾を呑んで勝負の行方を見守っている。

「くっ……マーラ、なかなかやるじゃない。でも、フーケなら……フーケならやってくれるわ」
「俺達に残された希望だもんな……頼むぜフーケ、おい」

ルイズもデルフリンガーも。
今は、見守ることしか出来ないのだ。
一撃一撃が、大地を、身体を揺らすこの戦場の中で。
気づけば、一人として言葉を発さなくなっていた。
まさに重量級の、偉大なる打ち合いは、延々と続いていく。

やがて、マーラの頭突きがあたった場所が、ぼろりと崩れ落ちた。
これにはルイズも思わず悲鳴をあげようとして、思いとどまる。
崩れ落ちたそばから再生していくのだ。

「そんな! あれじゃあ、殿方の勝ち目なんてないじゃない!」
「…………」

反対にキュルケは悲鳴をあげた。タバサは、難しい顔をしたままだ。


その一方、物陰からゴーレムを操るフーケだけは、うっすらと笑いを浮かべていた。

「ご立派なんて言ってもだらしないわね。これくらいならこっちの再生が上よ」

そう言いながら、同時にうつむく。

「……あんな恥ずかしい姿をさせられるなんて……
 まったくご立派も何も……ああ、まったく……」

色々盗賊も思い悩むところはあるのだろう。
それから、また顔を上げると、マーラが乗っている戦車に目をやった。

「……結局あれ、魔法も何もないんじゃない。ただの戦車。
 まさかあの立派の乗り物とは思わなかったけど、どっちにしても私の獲物じゃないね……」

そう思うと、ますます疲労が溜まってきたようにフーケには思えた。
それでも首を振って、その悪夢を振り払う。
今は魔法に集中しなければ。ここが瀬戸際なのだ。

「ふん、それにしても粘るわね。あんな単調な頭突きばかりで……」

マーラの頭突きは大地を揺らす。
その振動はフーケにも伝わっていた。
深く浅く。深く深く浅く。
どうも……一定のリズムを刻んでいる、ような。

「……え? 待って、このリズム……」

そのリズムに、フーケは気づいた。
そうだ、このリズム。あのマーラの頭突きのリズムは、これは……

「そんな、まさか……見抜いたっていうの? 私の……私の……」

フーケは、それに気づいてしまった時に、最早敗北していた。
マーラの技は一体どこまで立派だというのだろう。
今や振動は全身に伝わってきている。……そうだ、これは。

「……私に一番効く……じゃない、の……」


「あら」
「あ」

キュルケとタバサが同時に声をあげた。
なんと、唐突にゴーレムが消滅してしまったのだ。

「ええ、そんな!?」
「な、何が起こりやがったんだ!?」

ルイズとデルフリンガーも悲鳴をあげる。
優勢に見えていたのだが、呆気ない時は呆気ないものか。

「そんなぁ……トライアングルでも勝てないなんて……」
「くそぅ……せめて使い手さえいればよぅ……」

嘆くルイズとその剣だったが、そこにキュルケがやってくる。
そして、一発頭をぽかりと叩いた。

「な、何よ!」
「敵を応援するんじゃないわよ」
「……う。で、でも、せっかくのチャンスが……」
「チャンスも何もないわ。貴方ね、あたしも怒るわよ?」
「だ、だって!」
「まあまあ、仲良くせんといかぬぞ、小娘よ」

割って入ったマーラに。

「だ、だからなんでそんなに強いのよ、あんたはぁ!
 いい加減、サモン・サーヴァントのやりなおしをさせてよぉぉ!」
「なんのなんの。小娘の照れ屋具合も堂に入ってきたものよな」
「照れてないって言ってるでしょうがぁ!」

結局、いつも通りになってしまった。
ルイズの夢は砕かれたのである。


その後、フーケことロングビルが、近くの木陰で気絶しているのが発見された。
何故か痙攣していたが、どうしてそのようになったかは定かではない。

「きっとあの地面の揺れ方がミス・ロングビル……フーケのツボにはまったから」

タバサはそう言っていたが。ツボとはなんのことやら。

「肩こりとかにきくツボ」

だそうである。なるほど。
それ以上の意味は決してない。のだ。

「なるほどねえ。あたしもあれにはウットリしちゃったものね」

これはキュルケの言だが、追求すると問題がありそうなので追及してはならない。

「フーケ……出会い方が違っていれば、友達になれたのかしら?」
「かも、な……」

ルイズとデルフリンガーは黄昏ていた。これも理由は不明である。


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