あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロのアトリエ-16


ふと、ヴィオラートが扉の方に視線を向ける。
「どうしたのです?」
「ちょっと、物音が…」
ヴィオラートの手が、慎重に扉を開けると…

ドアがばたーんと開いて、部屋の中にギーシュが飛び込んできた。
「姫殿下!その任務、是非ともこのギーシュ・ド・グラモンに仰せつけますよう!」
三人の視線がギーシュに集まる。そして、静寂。
「あ、あれ?」
「ギーシュくん。」
笑顔のヴィオラートが、核心を突いた。
「お姫様のあとをつけてきたの?」
空気が冷える。

「どうしますか?」
「そうね。今の話を聞かれたのはまずいわね…」
アンリエッタの射抜くような視線がギーシュに突き刺さる。
浮かれていたギーシュも、さすがに自分の置かれた立場というものに気づいた。

殺られる。

「グラモン…あの、グラモン元帥の?」
神はギーシュを見捨てなかった。アンリエッタがギーシュの父を思い出してくれたのだ。
「息子でございます、姫殿下!」
ギーシュは生命を賭してアンリエッタに跪いた。
「任務の一員に加えてくださるなら、これはもう望外の幸せにございます!」
熱の篭ったギーシュの口調に、アンリエッタは微笑みを返す。
「では、お願いしますわ、ギーシュさん。あなたもお父上の勇敢さを受け継いでいるようね。」
「姫殿下が僕の名前を呼んで下さった!姫殿下が!
 トリステインの可憐な花、薔薇の微笑みの君がこの僕に微笑んでくださった!」
ギーシュは感激と安堵のあまり、後ろにのけぞって失神した。

「いいんですか?姫殿下。」
問うルイズに、アンリエッタは笑みを崩さずに言い放つ。
「わたくしに心酔しているというのなら、それを証明してもらいましょう。」

ギーシュは、未だ床にのびたまま気色の悪いうわごとを呟き続けている。

「ウェールズ皇太子にお会いしたらこの手紙を渡してください。すぐに件の手紙を返してくれます。」
アンリエッタは、右手の薬指から指輪を引き抜いてルイズに手渡した。
「母君からいただいた『水のルビー』です。あなた方の身の証となるでしょう。」
ルイズは深々と頭を下げた。
「この任務にはトリステインの未来が掛かっています。母君の指輪が、猛き風からあなた方を守りますように」


ゼロのアトリエ ~ハルケギニアの錬金術師16~


朝もやの中、ギーシュは馬に鞍をつけていた。
ヴィオラートはいつものようにデルフリンガーを背負い、フライングボードに腰掛けている。
それに加え、今日からは擬装用の杖を持つ事にしたようだ。
ルイズはホウキを片手ににおうだちになり、時折思い出したようにあたりを見回す。
そんな風に待っていると、ギーシュが困ったように言った。
「ぼくの使い魔を連れて行きたいんだが…」
「無理ね」
冷たく言い放つルイズ。
「そんな!僕に使い魔無しで任務をこなせというのかい!?」
「私たちアルビオンに行くのよ。モグラなんて連れて行けないでしょ。」
ルイズが正論を吐き、どうにかしてギーシュにモグラを諦めさせようとする。
「ねえルイズちゃん、アルビオンってモグラ駄目なの?」
ヴィオラートが疑問を口にしたと同時に、地面を掻き分けて巨大モグラが姿を現した。
ギーシュはすさっ!と膝をついて、それを抱きしめる。
「ヴェルダンデ!ああ、僕のかわいいヴェルダンデ!」
頬を摺り寄せ、全身で愛情を表現するギーシュ。
「ああヴェルダンデ、君はいつ見てもかわいいね。どばどばミミズはいっぱい食べてきたかい?」
ヴェルダンデはモグモグモグ、と嬉しそうに鼻をひくつかせる。
「そうか!そりゃ良かった!」
ギーシュは心底嬉しそうに、顔を輝かせた。
だが、当のヴェルダンデはギーシュから離れ、ルイズに擦り寄り始める。
「な、なによこのモグラ」
ルイズの右手に吸い寄せられるように近づくと、『水のルビー』の匂いをしきりに気にしている。
鼻先が、ルイズの指先に触れた。
「ひゃ!?」
ルイズが思わず手を後ろに引き、ヴェルダンデは引きずられるようにその手を追い…
巨大モグラが、ルイズを押し倒した格好になる。
「この!無礼なモグラね!姫様から頂いた指輪に鼻をくっつけないで!」
ルイズがモグラを引き剥がそうと暴れていると…
一陣の風が舞い上がり、ルイズに抱きつくモグラを吹き飛ばす。
「誰だ!」
ギーシュが激昂してわめいた。
「女王陛下の魔法衛士隊、グリフォン隊隊長、ワルド子爵だ。」
ワルドと名乗ったその男は帽子を取り、堂々とした一礼を返した。
「すまない。婚約者がモグラに襲われているのを見て見ぬフリはできなくてね。」
「婚約者?」
ヴィオラートが、ほんの少し眉を顰め…
「ワルド様…」
におうだちのルイズが、震える声で言った。
「久しぶりだな!ルイズ、僕のルイズ!」
僕のルイズ!?
ギーシュとヴィオラートはあっけにとられ、思わず顔を見合わせる。
「ルイズ。彼らを紹介してくれたまえ。」
慇懃なる態度のワルドが、ルイズを促した。
「あ、あの…ギーシュ・ド・グラモンと、使い魔のヴィオラートです。」
「僕の婚約者がお世話になっているよ。」
「それはどうも。」
ギーシュは上から下までその貴族を見つめた。
かっこいい。ああ、こいつかっこいい。僕には及ばないが。
目つきは鋭く、鷹のように光り、形のいい口ひげが男らしさを強調している。
僕の貴公子たるに相応しい風貌には遠く及ばないが。
そして何とも逞しい体つきだ。素手でのケンカなら、0.5秒で決着はつくだろう。
僕の美の化身が具現化したような身体の方が素晴らしいという事実には誰もが賛同するだろうが。
結論。僕のほうが素晴らしい。
ギーシュはそう答えを出すと、しかし、しばらくしてため息を一つついた。
「ごめんよ。全部…嘘さ。」
誰ともなく、謝った。
ワルドの方が全てにおいて上。本当は最初からわかっていたのだ。

泣けてきた。

「どうした?アルビオンに行くのが恐いのかい?なあに、何も恐い事なんかあるもんか!」
ワルドは並びの良い歯を見せつつ、豪快に笑った。
「危なくなったら隠れてもいい。一時的に逃げてもいい。とにかく君の最大の使命は生き残る事だ。」
ギーシュは悔しくなった。とってもいいやつじゃないか。
何だか勝てそうなところが何一つない。

ワルドは口笛を吹き、グリフォンを呼び寄せる。
ひらりとグリフォンに跨り、ルイズに手招きした。
「おいで、ルイズ。」
ルイズはちょっと躊躇うようにして、うつむいた。
首を傾げるワルドに、ルイズはまっすぐ向き直って告げる。
空飛ぶホウキを、前に掲げて。
「私、一人で飛べるのよ。」
「それは?」
「空飛ぶホウキよ」
「空飛ぶホウキ?」
「そう、空飛ぶホウキ。ヴィオラートが作ったものを、私にくれたの。」
「…作っ…た?ヴィオラート、君の使い魔が?」
ワルドは驚愕を隠そうともせずに、ヴィオラートに視線を移す。
「ヴィオラートの錬金術は凄いんだから!」
「ほう…錬金術?」
ヴィオラートへの視線に、探るようなニュアンスが混ざリ始める。
背中に剣を背負い、空飛ぶ板に乗った女性。
青く透明な玻璃をあしらった杖が、彼女がメイジである事を証明しているのだろうか。
少なくともワルドは、そう判断したようだ。

「貴女のような淑女を使い魔にしたとは。婚約者の無礼、僕からも謝罪させてくれたまえ。」 
ヴィオラートを貴族と見て取ったか、儀礼的に謝罪をするワルド。
「たしかにびっくりしましたけど、あたしルイズちゃんのこと嫌いじゃないですから…」
カナーラントを虜にした、無敵の営業スマイルで応戦するヴィオラート。
「そうですか。そう言っていただけると、肩の荷が下りるような気がします。」
そして二人は、礼儀として笑顔を見せる。

ワルドの微笑のようなものとヴィオラートの営業スマイル。
感情を操る技術を持った二人のせめぎあいに、ギーシュは底知れぬ寒気をおぼえ、心中こっそり呟いていた。 
これが戦慄というものか、と。

たっぷり数分の探りあいを終わらせると、ワルドは手綱を握り、杖を掲げ叫ぶ。
「では諸君、出撃だ!」
グリフォンが駆け出し、その後をルイズのホウキとヴィオラートのフライングボードが追いかける。

遥に後方、ギーシュだけが一心不乱に馬を走らせていた。


港町ラ・ロシェール。峡谷の間の山道に設けられた小さな町である。
夜の帳が下りたその入り口に、ルイズたちの姿があった。
「ギーシュくん、大丈夫かな。」
かなり前に見失ってから、姿が見えない。
…見失ったというより、一人だけ遅いので置いて行かれたのだが。
「まあ、自分で何とかするんじゃない?仮にもあんなに熱意を持って志願したんだし。」
ルイズのその言葉に、二人とも生暖かく同意した。
「元々今日の所はラ・ロシェールで一泊の予定だ。彼も追いついてくるだろう。」
ワルドが言った、そのとき。
崖の上から松明が降り注ぎ、ルイズたちを照らす。
「奇襲!」
ルイズが叫ぶと、ルイズ目掛けて何本もの矢が降り注いだ。
「ルイズちゃん!」
ヴィオラートは瞬時に反応してルイズと矢の間に入り、
額のルーンと杖を同色の輝きに包むと、横薙ぎになぎ払う。
杖の玻璃から横長の火球が飛び出し、降り注いだ矢の全てが焼き尽くされて、消える。
「この地形なら!」
火球の灯で崖の上に動くものを発見したヴィオラートは、返す刀で杖をもう一薙ぎ。
崖の上に横一列の火柱が立ち昇り、複数の悲鳴が峡谷に響き渡る。
恐慌状態に陥った残りの野盗は、即座に逃げ去った。

何かを詠唱していたらしいワルドが、ぎこちない動作でヴィオラートに向き直る。
「ミス・プラターネ…質問してもいいだろうか?」
「ん?何かな。」
「好奇心からお伺いしますが…貴女の実力をお聞かせ願いたい。」
「こっちの分類とかよくわからないけど、ルイズちゃんたちには土のスクエアクラスだって言われたよ。」
ヴィオラートはとりあえず不自然でないようにと、ルイズに決めてもらった設定を名乗ってみる。
ワルドの微笑が一瞬、ひきつったような気がした。
「あたしが得意なのは、こういうマジックアイテムを作る事かな。」
杖を地面について、強調する。
「ヴィオラートは遠くから来たのよ。だから、このあたりの魔法とはちょっと違うの。」
ルイズが補足し、ワルドもようやく自己解決したようだ。
「これは…たのもしい限りです、レィディ。我ら協調するなら、解決できぬ事など何もないでしょう。」

もう一度儀礼的な冷戦を始めようというのか。ルイズが思わず目をそらすと、空の彼方から何かが飛んでくるのが見えた。
「ウィンドドラゴン?」
ルイズの漏らした声にワルドが反応し、杖を構えた。
「待って、あれは…」
風竜の上に、月明かりだけで本を読む人影が確認できる。
「タバサちゃん!」
タバサが、本を読みながら地面に降り立つ。
続いてキュルケがぴょんと飛び降りて、髪をかき上げた。

道の向こうに、両脇を峡谷で挟まれたラ・ロシェールの灯が怪しく輝いていた。


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