あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロ 青い雪と赤い雨-03


翌朝アトリが目を覚ますと、見慣れぬ部屋を朝日が照らしていた。
一瞬呆けてしまったが昨日の事を思い出しベッドの方向を見やる。

そこでは、ご主人様である少女がかわいらしい寝息を立てていた。
これからこの少女の使い魔というわけである。
しかし、使い魔の仕事等肝心な事を何も聞いていない。
よって朝起きてすればいい事等解らない故、無為な時間を過ごす事になってしまった。

左目の端末でルイズの寝顔を覗きこむ。
端末は円状のモニターをアトリの左目の前に発生させ、ルイズの異時空同位体を映し出す。

(――――――――!!)

赤藤色(ウィステリア・レッド)の瞳に驚愕の表情が掠めたが即座に持ち直す。
ありえねぇ・・・。と思いはしたが、逆に納得できた部分もある。
だからこそ、こんなに遠くの時空に俺を呼び出す事ができたのだろう、と。

そしてまたその寝顔を眺める。
あどけない寝顔であった。
しゃべると煩い小娘に他ならないが、寝ている分には『絵本』に出てくる少女のようであった。
それだけでもアトリが穏やかな表情をその顔に湛えるのには充分な様にも思えるが、
その瞳にはどこか懐かしい物を眺める様な、どこか寂しい輝きを放っていた。

しかし、やはりご主人様であるこの小娘ことルイズが寝ているとあっては、こうして寝顔を眺める他に何もする事が無い。
情報収集が急務である現状、外の探索にでても良かったのだが
昨日聞き忘れたことを聞いておきたかった。
よってアトリは『絵本』に出てくる少女を煩い小娘に戻す事にした。

「起きろよ」
「な、なによ!なにごと!」
毛布を剥がれたルイズは『絵本の中の少女』を完全に駆逐してしまったかの如く、
身震いしながら叫んだ。

「朝だぜ」
「はえ?そ、そう・・・・・・。って誰よあんた!」
「チッ・・・お前が召喚したんだろうがよ」
吐き捨てるように言うアトリだったが、自分も寝起きに同じ様な状況に陥った為強く物を言えなかった。


「ああ、使い魔ね。そうね、昨日召喚したんだっけ」
ルイズは起き上がると、あくびをしながらその小さな手足を思いきり伸ばす。
そして短く命じる。

「服」

「あ?」
「椅子にかかってる制服よ、取って!」
「チッ・・・」

アトリは舌打ちをしながらぶっきら棒に服を掴む。
アトリとしては自分は使い魔にはなったが、召使になった覚えはなかったのである。
そしてそれをルイズに向かって放り投げると、昨夜から胸中に抱えていた疑問をぶつける。

「俺は何をすればいいんだよ」
「そういえば説明がまだだったわね・・・。いいわ!教えてあげる!」
ルイズは得意気に指を立てて言った。

「まず、使い魔には主人と目となり、耳となる能力が与えられるわ」
「意味がわからねーぜ」
「使い魔の見た物が主人にも見えるようになるのよ。でもあんたじゃ無理みたいね!私何も見えないもの!」
「そうかよ」

アトリは内心安堵した。
自分が見聞きしたものすべてが伝わるなんて、そんな能力付加されたらたまった物ではない。

「それから、使い魔は主人の望む物を見つけてくるのよ。例えば秘薬とかね!・・・・でもまぁ、あんたはこの世界の人じゃないし無理か」
その声と表情に落胆の表情が混じりつつルイズは続ける。

「そして、これが一番なんだけど・・・、使い魔は、主人を守る存在でもあるのよ!主人を敵から守るのが一番の役目!」

「守る・・・か」
どこか遠くを見つめるような眼をしている使い魔を置いてルイズは続ける。

「あんたなんか色々凄そうだしそこは大丈夫そうね。それに元軍人なんでしょ?」

ルイズは唯一この使い魔でも可能でありそうな事なので、声を弾ませ問うが返事は無い。
我が使い魔は何かを思い出しているような、どこか寂しげな表情のままである。
何か思い当たる事でもあるのだろうが、無視されてる側としては面白くない。
ここは仕事を1つ追加でもしてやろう。とルイズが思うのも無理はないのかもしれない。

「後、主人の身の回りの世話も使い魔の仕事よ!洗濯、掃除、その他雑用!」

アトリの瞳に一瞬で表情が戻る。そして
「しらねぇよ」
と言ってそっぽを向く。

無視をしていたと思ったら、今度はそっぽを向かれてしまったとあってはますます面白くない。
ルイズは立ち上がりアトリに詰め寄る。

「何よその言い方!あんたは私の使い魔なんでしょ!?」

一応アトリを睨みつけているのだが、身長差のせいか上目使いになってしまい迫力に欠ける。
しかし怒っている事に変わりはない。
むううううううう・・・・・・・・・と腰に手をあて文句無しのご立腹である。

アトリはルイズを見下ろす様に睨んだ。
しかしその目線に怒気は無く、困惑の表情という方が正しいかもしれない。
ただし、それも一瞬でしかなくすぐにその表情を緩めた。





「俺には・・・できねぇんだよ。」





「へ?」
素っ頓狂な声でルイズは返す。
また召喚した時の様に怒気を孕んだ声で威嚇する物とばかり思っていたルイズには、
このような反応は甚だ意外だったのだ。

「俺はガキの頃から戦闘しかしてこなかった。俺がやっても返って邪魔になる」
そして、本当にすまなそうに言うアトリを叱り飛ばす程ルイズは鬼にはなれなかった。

「なんだそうなの?しょうがないわねぇ・・・、いいわ、メイドに頼むから」
洗濯くらい誰にでも練習すればできそうな物だが、その間にルイズの服の生地を何着もダメにしてくれるだろう。
それなら、メイドに頼んだ方が良い。
それに、欠点が1つくらいあった方が親しみが湧くという物ではないか。

腰に手をあて、手をヒラヒラと振りながらルイズは続ける。
「その代り、わたしを守る仕事はちゃんとやるのよ?」

「そうだな」
小さな主人の心遣いを感じたアトリは穏やかな表情で応えた。




話していたら時間がなくなってしまったらしいルイズは急いで着替えている。
そして、アトリは着替え終わったルイズに連れられて部屋の外に出る。
すると、似たような木で出来たドアが3つ並んでいた。
その一つが開いて、中から燃える様な緋色の髪の少女、いや女性が出てきた。
ルイズより背が高く、女性らしい体付きをしている。
恐らくルイズより3つ4つ年上なのだろう。
褐色の肌をしたその女性はルイズを見ると、にやっと笑った。

「おはよう。ルイズ」

ルイズは顔を顰めると、露骨に嫌悪感をその声に滲ませ応える。
「おはよう。キュルケ」

恐らく二人は友人なのだろうがルイズが嫌そうにしているのは何故だろうか。
二人が話している姿を黙って見ていると、
キュルケと呼ばれた女性の背後から虎程もある巨大なトカゲが現れる。
その尻尾には火が煌々と耀い、廊下の影を照らす。
「おはよう使い魔さん、私はキュルケ。二つ名は『微熱』。『微熱』のキュルケ。そしてこの子が私の使い魔、フレイムよ。あなた、お名前は?」


「ア」
「アトリよ!」
アトリの言葉を遮って代わりにルイズが応えた。

アトリにはルイズがキュルケ心無しか何かを警戒している様に見えたが、
目の前の女性を警戒する理由をアトリには見つけられなかった為流す事にした。

「アトリね。へー、いいじゃないの。ゼロのルイズにはお似合いだと思うわ」
と言うキュルケの目には穏やかな嘲弄の波が揺れているのが見て取れた。

しかし、ルイズに動揺は見られない。
むしろにやにやとキュルケを見ているではないか。
キュルケも普段と違うルイズの反応に戸惑いを感じている様子だ。

「耳を貸して」

ルイズからの要請に仕方なく、アトリは顔を下げると小声で食堂の場所を説明される。
一人で行けという事か?とアトリは思ったが、その後間もなくその推測は誤りであった事を知る事となった。


「アトリ、キュルケの相手なんかしていたら朝食に遅れちゃうわ!急いで連れてって!」
キュルケに向き直ったルイズは余裕たっぷりに言い放つ。

(そういう事かよ・・・・)

少し呆れたがマントの中にルイズを抱き走り出す。
その速さは飛んでいる時程ではない物の、『凄まじい速さ』というべき速さであり
なんの障害物もなく大空飛んでいる昨日とは違い、
室内ゆえに、狭く それでいて直角のカーブ等も存在する。
更に、人がいれば天井を通る必要がある。
そんな状況下で高速で移動した為、命じたルイズも肝が冷える思いをした。



そして一人廊下に残されたキュルケは、
視界から一瞬で走り消え去った二人を見て呆然と立ち尽くす他無いのだった。



新着情報

取得中です。