あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロのロリカード-20


 アーカードが例によって、銀縁メガネで棺桶に腰掛けて足を組みつつ本を読んでいる。
『イーヴァルディの勇者』。学術書などではなく、たまたま目にとまっただけの本。
特筆すべき点はない、よくある物語だがそれも暇潰しであった。

 ノックなしに扉が開く、入ってきたのは部屋の主であるルイズである。
しかしルイズはその場から動かなかった、何かにとり憑かれたように虚ろな瞳でアーカードを見つめていた。
「どうした?ルイズ、ボーッと突っ立って・・・」
「ん・・・・・・うん・・・なんかアーカードを見たら、よく・・わかんないけど・・・・・・」
そう言ってルイズは立ったまま俯く。

 アーカードは疑問符を浮かべた、ルイズが何を言ってるのか意味がわからない。
「んんっ・・・」
ルイズが艶っぽい声をあげ、体を震えさせた。下に向けていた顔をゆっくりとあげる。
「・・・・・・?」
「ふふっ」
いきなりルイズが笑った。目をトロンとさせて、ゆったりと歩を進め距離を詰めてくる。


 アーカードの中で何かピンとくるものがあった。そう、前にもこのような有様を見せた事があった。
「ねぇ、アーカード。あなたはわたしの従僕よね?」
「・・・・・・んむ」
ルイズがアーカードの肩にしだれかかってくる。アーカードの手を取り本を閉じさせ、ぎゅっと握り締める。
「なら他の子と仲良くするのはもうやめて?ご主人さまだけを見てくれないとイヤ・・・」

 アーカードは確信する、惚れ薬だ。何故かまたどこかでルイズは惚れ薬を飲んできたのだ。
どうしたもんかと、黙っているアーカードの目をルイズは艶やかな瞳で見つめる。
「また前みたく、愛してほしいの・・・・・・」
「ん~む」
「もしかして・・・女の子同士はイヤになったの?でも女の喜びを教えてくれたのはアーカードじゃない」




 アーカードは一度だけ嘆息をつく、そして少し大きめの声で言った。
「そうだな・・・とりあえず、外にいる二人さっさと入って来い」

 暫しの間の後、扉が開く。
「い・・・いやぁ・・・・・・邪魔しちゃ悪いかと思って。別に後学の為に覗こうとか、そんなことは思ってないよ。ハハ・・ハハッハ」
「私は別に・・その・・・」
乾いた笑いをしながら頭を掻きつつ入ってきたのはギーシュ、そして顔を赤くしているモンモランシーであった。

「なんでルイズに飲ませた?」
アーカードは単刀直入にモンモランシーに聞いた。惚れ薬なんて作るのは、目の前のモンモランシーくらいなものだ。
「べっ、別に私が飲ませたわけじゃないのよ!ルイズがいきなり現れたと思ったら、突然飲んじゃうんだものワイン」
アーカードはモンモランシーを疑わしげに半眼で見つめ、いまいち事情の飲み込めないギーシュは首を傾げていた。

「いきなりルイズが僕の持ってきたワインを飲んだのは間違いないよ、それで・・・何が起こってるんだい?」
「さっ、説明せい」
アーカードの妙な迫力にモンモランシーは素直に話し始める。

 要約するとこうだ。ギーシュの浮気癖にモンモランシーは辟易し、堪忍袋の緒を緩めていた。
結果、惚れ薬を作る目処が立ったのでつい使ってしまいたくなった。ワインに入れて飲まそうとするも、突然現れたルイズがそれを飲んでしまった。
万年発情期のギーシュが惚れ薬を飲んでも誰も違和感は抱かないだろうが、堅物であるルイズがいきなり変貌したら誰もが訝しむ。
少し悩んだあと、さすがにやばいと思ったモンモランシーはルイズの後を追った。ギーシュもわけがわからないまま、とりあえずそれについていった。
夜だったとはいえ広場からルイズの部屋まで、他の誰とも会わなかったのは奇跡としか言いようがない。結局、部屋にいたアーカードを見て発動してしまった。
そして部屋からいかがわしい会話が聞こえてきたので、とりあえず邪魔するのもアレだったし、二人ともそういうお年頃だった所為か、盗み聞きをしようとしていた次第である。




「なぁルイズ、ちょっと答えて欲しいんだが・・・」
「愛しのルイズって呼んでくれなきゃヤダ」
ギーシュとモンモランシーは唖然と見つめている、あのルイズがここまで変わるのかと。
「モ・・・モンモランシー、君はあのルイズがここまで変わってしまうシロモノを僕に飲ませようと・・・・・・」
ギーシュはゾッとした、これほどの効果なのだから禁制品になるのも頷ける。アーカードは特に気にせず続けた。

「なぁ愛しのルイズ、どうしてワインを飲んだのか教えてくれないか?」
ルイズはフフッと無垢な笑顔を向けたあと、次にムスッと何かが気に入らないような顔になる。
「もうすぐ夏休みでしょ?それで実は姫さまから夏期休暇中にお仕事頼まれたの。でも実家に帰ってくるようにも言われてたの。
 それで私が事情があるから帰れません、って言ったの。そしたら理由を聞かれて・・・・・・。
 でもそれはゼロ機関としてのお手伝いだから、もちろん家族にだって言えないでしょ?」

「ゼロ機関?」
ギーシュがルイズの言葉に疑問を返すと、アーカードが人差し指を唇に当てて「しっ」と、話の腰を折るなと注意する。
ギーシュとモンモランシーはよくわからないまま、ルイズの話は続けられる。
「そしたら、そしたらね?わたしに男ができたんじゃないかって言うの。それを隠しているんじゃないのかって。
 わたしにはアーカードしかいないのにひどいよね?それでムカムカしてたの、それでたまたま目の前にあったワインを飲んだの」


「そうか、ありがとうルイズ」
「撫でて」
「ん?」
「いい子いい子して」

 アーカードは何も言わず、膝枕してルイズを頭を撫でてあげる。
「どれくらいで効果は切れる?また一日か?」
「それが・・・その・・」
モンモランシーは言い淀む。



「前にあなたに渡した試作品と違ってこれは完成品で・・・効果は個人差があって・・・・・・その・・・」
「歯切れが悪いな」
「・・・・・・早ければ1ヶ月くらいで、遅ければ・・・1年くらい・・」
アーカードは溜息をつく。そんな悠長に待っていられるわけがない。

「いくらなんでもそれは長すぎる、解除薬は作れないのか?」
詳細はわからないが、アンリエッタ女王からの密命をルイズは受けているのだ。
内容次第でもあるが、夏期休暇までに治らないと十中八九任務どころの話ではないだろう。


「それが・・・秘薬はもう売り切れてて、しかも次回入荷も絶望的らしくて。ラグドリアン湖に住む水の精霊の涙だけど、連絡が取れなくなったらしいの」
ラグドリアン湖、ウェールズの記憶にある。ガリアとの国境付近に存在する広大な湖。誓約の水精霊、その涙。

「モンモランシー、君は解除薬が作れないものを僕に飲まそうと・・・・・・!?」
「だってあなたが浮気するからじゃない!」
「僕は永久の奉仕者だ!浮気なんてするわけないじゃないか!」
「してたじゃない!ケティって子と!」
「だからあれは――――」
「ストップ」

 モンモランシーとギーシュの言い争いを、アーカードは制す。
「水の精霊と連絡を取るにはどうすればいい?」
「え?普通の人には無理よ。代々交渉役がいて、昔は私の家系もそうだったんだけど今は・・・・・・」

 そこまで言って、モンモランシーはハッとした顔になる。頭に血が上っていて余計なことまで口走ってしまった。
時既に遅し、アーカードは自分を見てニヤ~ッと笑っていた。
「なるほど、昔は交渉役だったわけか」
「い・・・今は無理よ!それに私は昔に一度会ったくらいで――――」
「明日出発する、諸々準備しておけ」



 モンモランシーはガックリと肩を落とし観念する。
「なぁに、僕もついていくから大丈夫さモンモランシー」
「あなたじゃ頼りにならないわよ、よわっちいし」


「モンモランシーとばっかりイチャイチャして・・・・・・わたしのことなんてどうでもいいんだわ」
頭を撫でられたまま、ルイズが突然口を開く。
「イチャイチャしてるわけじゃない」
「じゃぁなんで、わたしを放っておくの?」
「それはな、放置プレイだからだ」
アーカードは少し考えてからそう答えた。

「ほうちぷれい?」
「そうだ、精神的距離を置くことで、相手をより愛おしく感じることが出来るようになる」
「でもさびしいよ・・・・・・アーカード」
「私もつらい、だが二人の為なんだ」
アーカードは巧みにルイズを説き伏せる。

「うん、わかった。二人のためなら、さびしいけど我慢する」
「よしよし、明日は早いから寝るといい」
そう言うとルイズはすごすごと、ベッドへと潜り込む。アーカードはモンモランシー達へと目をやった。

「それじゃ、また明日」
大きな溜息を吐いてモンモランシーは部屋から出て行き、ギーシュもそれに続いた。


「一緒に寝てくれないの?」
ルイズが布団から顔半分だして、せつなげに言った。放置プレイに早くも耐えられなくなったようであった。
「本を読んでいた途中だからな、一区切りつくまでは寝ない」
「わたしにも読んで、じゃないと寝ないもん」
「しょうがないな」



 アーカードは穏やかに笑って、ベッドへと一緒に入ってやる。
読んでいるとすぐルイズは寝入ってしまいそうになるが、それでも健気に睡魔と闘って耐えようとしていた。
そんな主の可愛い様子に、たまにはこういうのも悪くないなと思いつつ、夜は更けていった。




「襲撃者ってのはいつくるんだろうねえ・・・」
ギーシュがぼやく。ラグドリアン湖で無事水の精霊と連絡を取ることができた。
しかし水の精霊の涙を提供してもらうかわりに、襲撃者の撃退を条件として出されたのである。
ルイズは先ほどまで喚いていたのだが、既に陽も落ちていて辺りは暗い。今は疲れも相まってか、木にもたれかかってスヤスヤと寝息を立てている。

 ギーシュは楽観視していた。アーカードの強さは身をもって知っている。
オーク鬼を殲滅した時の破格の強さも目にしている、タルブの決戦で大活躍した話も知っている。
よっぽどの相手ではない限り、アーカードが負けることはない。だからこそ自分達は安全だと、半ば確信していた。

 一方モンモランシーは気が気ではなかった。自分が前に出るわけではない、アーカードが襲撃者と戦う手筈である。
だがもしもアーカードが負けてしまったら、役立たずのギーシュなんかすぐにやられて、自分にも火の粉が降りかかる。
下手したら命のやり取りになりかねない。極々一般的な学院生活を送っていたモンモランシーにとって、今の事態は異常としか言えなかった。


(むっ・・・・・・)
アーカードのセンサーが反応する、吸血鬼の鋭敏な感覚による索敵範囲に何者かが引っ掛かった。
「来た」
アーカードはスッと立ち上がる、デルフリンガーを背負って周囲を窺った。
モンモランシーはいよいよもって覚悟を決めようとするも、現実感のない不思議な心境でいた。
ギーシュも敵の出現に、多少なりと緊張しているようだった。



「ルイズを頼んだぞ」
「・・ぁ・・・あぁ、任せたまえ」
アーカードは一気に飛び上がり、周囲の森の中で特に高い木のてっぺんに立った。
吸血鬼の目は夜でも関係ない。むしろ夜の方が良く見えるくらいである。
「ん~・・・?」

 アーカードは唸る、目を細めてさらに凝視する。
(あれは・・ふむぅ・・・・・・はてさて、どうするか)
アーカードは考える、襲撃者の姿を捉えて。暫く考えた後、アーカードは頭の帽子を取った。
コートと上着を脱いでネクタイをはずし、その上からシュヴァリエのマントを羽織る。
髪を後ろでアップにまとめてポニーテールにした後、最後にマフラーをくるくると巻いて口元を隠した。

 普段のアーカードの面影は薄れ、一見しては誰なのかわからない。
デルフリンガーを右手に持って肩に担いだアーカードはマフラーの下で静かに笑い、闇夜の空へと躍り出た。



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