あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

THE GUN OF ZERO-05


 シエスタを手伝うべく厨房に入ってきたクォヴレー。
「クォヴレーさん、それじゃあこのお料理を出すの、手伝って下さい」
 そばかすは目立つが、シエスタの笑顔は人好きするそれだ。
「わかった」
 運搬用のトレイに皿を置いていく。
「よう、クォヴレー、主のメイジ様は見つかったか?」
 料理長のマルトーが、クォヴレーに声をかけてきた。
「ああ、おかげさまでな」
「まったく、こんな素直で良い奴を捕まえて使い魔にしたあげく、心配させるとは、つくづく貴族連中は腹が立つな!」
 やってきてからこれまでの間に交わした会話で、このマルトーという男は余程貴族が嫌いなのだろうというのは判っていたが、一応言っておいた。
「貴族にも気さくな連中は居る。俺も幾度か、戦友のとある貴族手ずからの料理を食べさせて貰ったことがある」
「へぇ!?貴族様が料理を!それも平民に喰わせてくれたって言うのかい?味の方はどうだった?」
「俺の居た部隊内では有名な腕利きだ。かつてトップとして別の部隊を率いていた時には、部下達はその男の作る料理によって戦意が高められていたとも聞く」
「ほう!そいつは聞き捨てならないな!クォヴレー、まかないだが後で俺の仕込んだ料理を食って、味比べをしてくれよ?」
 料理人として些かプライドが刺激されたらしい。
「楽しみにしている。マルトー」
 しかし、とため息をつく料理長。
「お前は良いところに居たんだなぁ……ここハルケギニアの貴族連中にそんな期待をしちゃいけないぜ。あいつらは俺たち平民のことを何とも思っちゃいないんだからな!」
「心に留めておこう」
 一つ頷き、トレイを持ちながらシエスタの後に付いて厨房を出る。
 先程、メイド達に一通りのレクチャーを受けていたクォヴレーは見事に給仕役をこなしていた。
 最初は、クォヴレーが自分の側にいないことに腹を立てていたルイズだが、その所作にふーんと感心する。
(掃除もやったこと無いって言ってたけど手際が良かったし、きっと教えたら教えるだけ吸収するのね……じゃあ、お茶の入れ方とか教えたら……)
 ふっと妄想の海に沈む。
 自分は実家のテラスで静かに本を読んでいる。
『ルイズ、お茶を入れてきた』
『ありがとう』
 そこへ執事姿のクォヴレーが現れ、そつなく午後のお茶の準備をする。
 各地を旅して知識の豊富なクォヴレーはふとした自分の問いにも何のよどみもなく即答してくれるのだ。
 何と大人っぽく、知的で、素敵な時間だろう。
 妄想に耽っている間に当のクォヴレーはルイズの前に皿を置いて先に進んでいってしまったが。
 その後もメイドや給仕に混じり、料理を出していたクォヴレーだが、デザートを出す段になって問題が発生した。

 発端は、一人の男子生徒が落とした香水入りの瓶だった。
 バルシェムの類い希な身体能力でもって、反射的に床に落ちる前に瓶を拾い上げ、男子生徒ギーシュ・ド・グラモンの眼前に突き出す。
「落としたぞ」
 差し出されたギーシュは、一瞬ぎょっとしながらも瓶を手でおしやる。
「これは僕のじゃない」
「いや、確かに今そのポケットから……」
 クォヴレーが弁明を最後までするより先に、他の男子生徒がおお!と声を上げる。
「その香水は、もしやモンモランシーの香水じゃないのか!?」
「言われてみれば!」
「成る程、ギーシュは今モンモランシーと付き合っているのか!」
 口々に他の男子生徒が囃し立てる中クォヴレーは思った。
(モン、モランシー……噛みそうな名前だ)
 歴代スパロボ主人公至上名前間違えられ率No.1で、間違えられた名前から派生した呼び名が呼ばれ方の大半となっている久保がよく言うものである。
 そこへ、一人の少女が現れた。
「ギーシュさま……」
 何やら思い詰めた表情をしている
「やはり、ミス・モンモランシーと……」
「彼等は誤解しているんだ。ケティ。いいかい、僕の心の中に住んでいるのは、君だけ……」
「その話、詳しく聞かせて欲しいわね」
 別の方向からまた一人、少女が現れる。こちらは明らかに怒っていた。
「も、モンモランシー……」
 そこでようやくクォヴレーは事態を察する。
(成る程。これが二股の末の修羅場というやつか。直接目の当たりにするのは初めてだな)
 興味深げに三人の男女を見る。
「つ、つまりだね……僕はケティもモンモランシー、君も……」
 盛大に破裂音が響き、ギーシュはその両頬を赤くして倒れていた。
「ひどいですっ!ギーシュ様!」
「最っ低!」
 思い詰めていた表情の少女は泣きながらその場を去り。怒っていた少女もクォヴレーの手中の瓶をひったくるように取ると、その場を去っていった。
 怒りのオーラが見えそうなモンモランシーの背中を見やりながら、再びクォヴレーは思う。
(今朝の青い竜の主は彼女だろうか?)
 主に声的な意味で、青龍が似合いそうだった。実に必神火帝天魔降服。
「……さて、と。どうしてくれるんだい?」
 埃を払いながら立ち上がるギーシュ。真っ赤な頬が痛々しい。全く同情には値しないが。
「なにがだ」
 問われた意味が理解出来ず、聞き返す。

「僕は君が香水を落としたと声をかけた時に知らないフリをしたじゃないか。話しを合わせるぐらいの機転があってもよいだろう?」
「そういうものか?」
 首をかしげる。
「そうだとも!っと、ああ思い出した。君は確かゼロのルイズが呼び出した平民の使い魔だったね?まったく……呼び出したメイジがメイジなら、その使い魔も使い魔か……」
 ふぅと呆れたようなため息を露骨についてみせる。
「せめて謝罪の言葉ぐらいは欲しいものだね?僕と彼女たちに」
「そうか、すまなかったな」
「誠意が感じられないね?土下座くらいしてみ――!」
「ちょっとギーシュ!人の使い魔に、勝手な因縁付けないでちょうだい!」
 ずいとルイズが割って入り、ギーシュを睨み上げる。騒いでるのを聞きつけ、慌てて近づいて来たのだが、己の使い魔はこの二股男に反論するどころか謝る始末。見ていられなかった。
「クォヴレー!アンタもよ!今のはどう考えたって二股かけてたこいつが一方的に悪いんだから、軽々しく謝らないで!私まで軽んじられるわ!」
「わかった」
 びっと指を胸の辺りに向けてくるルイズに頷き返す。一方でギーシュは結構追いつめられていた。
 今まで責め続けていた平民が、ルイズの陰に入ってしまったため、言葉を続けあぐねている内に、級友共に二股のギーシュだと囃され始め、仕舞いには二人へ謝れコールが始まっていた。
「だから、美しい薔薇の華はより多くの女性を楽しませるためにだね……」
 必死の弁明を行うも、効果は薄い。
 浮気者の末路だわ、といい気味に思いつつクォヴレーを伴ってルイズはその場を去ろうとした。
「ま、待ち賜え!ルイズ、僕は決闘を申し込む!」
「はぁ?」
 何を言っているんだこいつはという表情で振り返る。周りもかなりしらけた様子である。
「ギーシュ、馬鹿なこと言わないでちょうだい。貴族同士の決闘は禁止よ」
「判っているとも。だから僕が決闘を申し込むのは君の使い魔だ!彼のために女性二人の名誉も、僕の名誉も傷つけられたのだからな!」
「しつこいわね。全部アンタが自分で蒔いた種じゃない」
「ぐ、くっ……フッ!そうやって逃げるつもりかい?」
「何ですって……?」
 すっとルイズの目が細くなる。
「いや、済まない。そうだったなぁ。ゼロのルイズが呼び出した平民の使い魔だ。それがメイジで軍人の家系に生まれた僕に勝てるはずもなかった!これでは決闘にならない!」
 歌うように、高らかにギーシュは言う。
 ギリ、とルイズは奥歯を噛み締める。

(ダメよ……こんな安い挑発に乗っちゃ……ヴァリエール家末代までの恥だわ!)
 必死に自制する中、クォヴレーの言葉が耳に入った。
「よく、戦争に使われる手口だな」
 え?とそちらに振り返ると、淡々とした口調で告げていた。
「内政不安に陥った国家が、国内の不平不満を逸らすために外敵を求める。今もそれと同じだ。自身の失態を隠すため、他の注目すべき事を引き起こし、周りの目をそちらに集中させようとしている」
 クォヴレーの分析に、周囲も成る程と納得しつつ嘲笑をギーシュへ向け始める。
「……あんた、さっきまでコイツが悪いって事も理解しないで、謝ろうとしてなかった?」
「こういった手合いに一々目くじらを立てるのも無意味だ。適当に受け流すのが一番だろう」
 要するに、端から相手にしていなかったのである。
「なっ……!」
 先程から面目丸つぶれのギーシュが息を呑む。
「それじゃあ、私もアンタに倣ってまともに請け合わない方がいいのかしら?」
 ここにいたって、ルイズの方はかなり精神的に余裕が出来、サディスティックな気分になりつつあった。
「いや、この場合はむしろ積極的に挑発に乗り、乗った上で返り討ちにしてやるのが最も効果的だろう」
 不敵な笑みを口元に浮かべる。
「成る程ね。いいわ、ギーシュ。アンタの決闘の申し入れ、応じてあげる」

 決闘の場。ヴェストリの広場。
「非道いです!ミス・ヴァリエール!」
 涙目のメイドに非難され、そんなの判ってるわよ。とルイズは気まずそうに目を逸らした。
「判ってません!クォヴレーさんは、ただ巻き込まれただけじゃないですか!」
「……だってあいつが自分からこうすべきだって言ったんだもの」
 今から考えると何とも無茶なことをしてしまったと思う。ドットとはいえ、ギーシュはメイジなのだ。
「こんな……こんな……クォヴレーさんが、死んでしまいます……」
 涙を流して自分を非難するメイドを、疎ましく思い、同時に羨ましく思う。
 例え本人から推奨されたとはいえ、他でもない。クォヴレーの決闘に合意してしまったのは自分なのだ。
「心配するな、シエスタ」
 そこで、後ろから声をかけられた。
「クォヴレーさん!」
「クォヴレー……」
 武器を取りに行くと姿を消したクォヴレーが、ベルトの通った銃らしきものを二つ肩から提げていた。背中にもこれまた長い銃身の銃を背負っていて、その手にはまた銃の柄が覗いているリュックサックも持っている。

 そういえば銃が得意とか言っていたか。だが、ふと思い出す。
「……アンタ、召喚した時そんなもの持ってたっけ?」
「どこから持ってきたのかは内緒だ」
 フフフ……とまるでいたずらっ子のように笑いながら人差し指を口の前に立てる。割とお茶目である。そこでシエスタに向き直る。
「シエスタ、俺はこれまでにも魔法を使える者と戦ってきた事がある」
 穏やかに語りかけるクォヴレー。
(メイジと、戦ったことがある……?)
「そ、そう、なんですか?」
 しゃくり上げながら、尋ね返すシエスタ。
「ああ。だから心配するな」
「遅かったじゃないか。だが、逃げずに来た事は誉めてやる」
 広場の中心部にいるギーシュから、声がかけられた。
「悪いな。武器を取りに行くのに時間がかかった」
 平然とそう答えてやる。
「心配せずとも、死なない程度に手加減はしてやるから、遺言を残す必要は無いよ?」
「気を使わせるな。こちらは、ねらい所悪く死なせてしまうかもしれん」
 不敵な笑みを浮かべつつ、広場の中心へ歩を進める。
 クォヴレーの言に、口の端をぴくぴく痙攣させるように動かすギーシュ。
 使い魔の背を見つめながらルイズは思う。クォヴレーはメイジと戦ったことがあると言った。そして、今こうして生きている。
「メイジ殺し……」
 その単語が浮かんでくる。
 そして手にしているのは銃。それもこんなに沢山。当てられさえすれば、勝てるかも知れない!
 先程のクォヴレーの発言に一瞬頭に血が上ったギーシュだが、すぐにふっと髪をかき上げて意識の外へとおいやる。
「心配は無用さ。それにしても品のないものを決闘に持ち込むのだね、君は」
「俺の得物は銃でな」
 持ってきているのはキャリコM100にスペクトラM4、そして腰から下げたベレッタ90-Twoとコルト・パイソン6インチモデル、さらにリュックからはレミントンM870が見え、後ろに回されている長砲身はブラウニングM2だ。
 換えの弾薬も.22LRのヘリカルマガジン100発型、スピードローダー装備型の.357マグナム弾等々を、背負ったリュックに入るだけ入れている。加えて身体に直接付けているホルダーにも9mmパラベラム弾の弾倉が軽く10カートンは見える。まるで戦争である。
 しかしこの名称のラインナップにニューナンブが無いのは仕方ないとして、イングラムが欠けているのは何かしらのイジメだろうか。
 ギーシュから10メイルほど離れた場所でどさどさと腰からつるした拳銃を除いて全装備を下ろす。流石に重いらしい。なにせブラウニングだけでカタログスペック重量は38kgもある。全備重量は50kgを超えている。

「まごまごと弾ごめの時間など僕は与えないから、そのつもりでいたまえ」
「そうか」
 ギーシュの言葉に気にした風もなくまずは使い慣れたベレッタの弾倉を確認し安全装置を外す。
「この決闘は僕と二人の少女の名誉を汚してくれた君を許さないという僕の心の現れだ」
 コルト・パイソンのドラム部分をスライドさせ、弾の残数を確認。続けて地面に下ろしてあるキャリコとスペクトラをセミオートに切り替えておく。
「故に、僕はいかな手段を用いても、そして僕の命に代えても、君を打ち倒してみせる!」
 レミントンの給弾口に12ゲージ弾を次々と入れ、ポンプを動かして装填する。
「そして必ずや……って聞いているのかね!?君はーっ!」
「聞いている」
 ギーシュの方は向かないまま、リュックからジャラリとベルト弾倉を引きずり出してブラウニングの給弾口に噛ませる。
「ど……どうやら君には貴族に対する礼儀というものを教える必要が有りそうだ!では諸君、決闘だ!」
 ギーシュが手にした薔薇の造花を掲げ上げ、そう宣言した。とたんあちこちから歓声が上がった。大半はやりすぎるなよ、だの女に振られた腹いせはみっともないぞだのといったギーシュに対するからかい半分の言葉だ。
「クォヴレー!」
 そんな中、後ろから自分にかけられた声に振り返る。
「殺しちゃダメよ!そいつには後でたっぷり謝って貰うんだから!狙うんだったら手にしなさい!杖を落としても、アンタの勝ちよ!」
 勝てるかも知れないと解り、笑顔で呼びかけるルイズ。
「杖……?あの造花か。わかった」
 頷き返し、正面に向き直る。
「フッ、僕を狙うか。ゼロのルイズにしては中々の着眼点だが……悪いが、そうはいかないよ」
 すっとギーシュが造花の杖を掲げる。
「出でよ!ワルキューレ!」
 その名の通りの戦乙女が二体、顕現する。
「僕の二つ名は『青銅』!そしてごらんの通り、君の相手はワルキューレが務める!」
 一騎はクォヴレーに接近し、もう一騎はギーシュの前に立つ。オフェンスとディフェンスらしい。
「そんな……これじゃあ狙えないじゃない!」
 クォヴレーの後ろにいるルイズは悔しそうに拳を作る。
「二つ名が青銅……成る程。このワルキューレというのも青銅で作られたゴーレムという訳か」
 左のホルスターから右手でコルト・パイソンを抜き、左手を添える。
 時たま次元の狭間ですれ違うロリペド旧神はモーゼルカスタムとマテバカスタムで二丁拳銃などと味なことをしているが、給弾のことも考えて、クォヴレーは基本的に一度に一挺ずつである。

「強度を試すか」
 凄まじい轟音と共に飛び出した弾丸は、いともたやすくオフェンスワルキューレの頭部上半分を吹き飛ばし、それでもなお威力は衰えずギーシュの頭の横をすり抜けてそのまま後ろの壁にぶち当たった。
「……え?」
 一瞬、全員がぽかんとしていた。
 ギーシュからの命令が途絶えて、二体のワルキューレも動きを停止させている。
「いかんな。貫通力が高すぎる。マグナムは危険か」
 コルト・パイソンをホルスターに戻しながら呟く。
「な……何だそれはぁぁぁぁあああ!?」
「銃、だが?お前の言うとおり、品のない武器だ。ただ、その中でもリボルバー型は上品な方だが」
 西部劇的意味で。
「き、聞いていないぞ!?そんな威力の高い銃が有るだなんて!」
「? ルイズ。ここの銃というものは、一体どんな代物なんだ?」
 どうも今ひとつ理解出来ない状況に、主へ説明を求める。
 突然話を振られたルイズも、すこし動揺しながら答える。
「え?えっと……私も詳しくは知らないけど……火薬と、火打ち石を使って弾を撃つのよ」
「火打ち石?」
 驚きの声を上げるクォヴレー。
「……成る程。せいぜいマスケットレベルの銃しか無いということか……」
 苦い表情でつぶやく。
「道理で銃が得意だと言った後、ルイズの反応が薄かった訳だ」
「き、気づいてたの……?」
「ああ」
 バツの悪そうなルイズに頷く。
「ではルイズ、改めてだ。自分の呼び出した力というものをその目で見てくれ」
 足下のキャリコを拾い上げる。
「ギーシュといったか、悪いが、もう少し付き合って貰うぞ」
 本当に悪い笑みを浮かべるクォヴレー。なのに何故か髪は銀髪のままだ。
「ば、馬鹿にするんじゃない!少々威力の高い銃を持つぐらいで!」
 頭部を破損したままのワルキューレが突っ込んでくる。
 反射的にフルオートに切り替え、キャリコを撃ち込む。貫通には至らないものの、前面がおろし金のようにずくずくになったワルキューレは、かろうじて敵との格闘距離にたどり着いた。
「あと一歩だったな」
 がすぐにクォヴレーに蹴り倒され、いい加減5.56mm弾の内部からの破壊により痛めつけられていたボディが、その衝撃でバラバラになってしまった。

「……連射も利くぞ」
 全く容赦のない射撃であった。
 何しろクォヴレー、弾に関しては補給の途絶える心配がほぼ無い。
 カルネアデス計画後に時間軸を調整しつつクォヴレーの元居た世界、つまり我々で言うところのサルファの世界に戻れば、GGGによって彼の口座には給料が振り込まれ続けている。
 その金で弾を買えるのだ。
 電子マネーであるため、用途の追跡も容易なのかGGGの方でもクォヴレーが時たま武器弾薬の補給に戻ってきていることは気づいているらしい。
 今朝、コインランドリー使用のために戻った時には、それらを経費にしようかというメールがGGG本部内であてがわれている部屋に残してある携帯端末のDコンに入っていた。
 流石にそれは結構と断ったが、そもそも大半の戦闘をディス・アストラナガンでこなしているクォヴレーが、白兵戦で弾薬を消費すること自体稀だ。そして元々が高額なパイロットの給料である。
 加えて生活の大半を異世界で過ごすクォヴレーには他に使い道がないため、金は貯まる一方となっており、割と平気でバカスカ撃ててしまう。
「う、うわぁぁぁぁぁあああああ!?」
 半狂乱となったギーシュが、更に五体のワルキューレを作り出す。
 既に出ていたディフェンス用だったワルキューレはいち早くクォヴレーに向かってきた。
 キャリコを放し、レミントンを持ち上げる。
「砕け散るんだ……!」
 射線上にギーシュがいないように移動して散弾を撃ち込む。
 全身に弾を浴び、穴だらけになったところへ跳び蹴りを浴びせて粉砕する。
 蹴りの反動で再び銃をおいた場所へ跳び帰ると、レミントンを下ろして今度はブラウニングの三脚を立ててグリップを握る。
「狙いはもうついている……!」
 迫り来る残り五体に銃口を向ける。単射に切り替えて、ワルキューレが照準に入るが先か、問答無用でぶっ放す。
 12.7mm50口径弾を使うブラウニングM2は、対軽装甲車両用に開発された傑作品とも言われる重機関銃である。あくまでも対物使用として、対人使用の自粛が求められるほどの威力は、この至近距離においてたかが銅像などものの数ではない。
 確実に胴の部分に五発ずつ当てられ、見るも無惨に上半身と下半身が50口径弾に引き裂かれていくワルキューレ。分速650発のスピードの、僅か五発分である。一体当たりの処理にかかる所要時間は0.5秒未満。クォヴレーの元にたどり着くより先に全てが撃破される。
 しかも弾の威力はそれでも収まらず、そのまま直進して壁に弾痕を残した。
 しーんと静まりかえる広場の中、いつの間にかうずくまっていたギーシュに、ブラウニングから離れてクォヴレーが近づく。
 ベレッタを抜いてジャキッと弾を装填し、足下のギーシュへ向ける。
「まだまいったとは聞いていないが、まだやるか?」

 クォヴレーの言葉に慌てて顔を上げ、言葉もないままにぶんぶんと頭を振るギーシュ。
 ならばと表情を和らげながら、腰のホルスターへベレッタを戻した。
「勝ったぞ。ルイズ」
 そう主に告げながら、彼は散らかった銃器の片づけを始めた。

 同じトリステイン魔法学院敷地内。学院長室。
「…………」
「…………」
 学院長であるオスマンとコルベールが、絶句していた。
 つい先程、コルベールが発見してきた古い児童向けの本よりのルーンの比較から、クォヴレーが伝説の使い魔ガンダールヴである可能性を見出した二人は、
学院長秘書のロングビルよりギーシュと使い魔の少年の決闘騒ぎの報告を受けたのをこれ幸いと、彼が本当にガンダールヴであるのか見極めようと遠見の鏡で決闘をのぞき見していた。
 クォヴレーが真にガンダールヴであるのなら、ドットクラスのメイジであるギーシュ・ド・グラモンは倒されるかも知れない、とは考えていた。
 だが、この戦いは、ガンダールヴがどうとかというレベルではない。
 使い魔の圧倒的な勝利、それが伝説の能力ではなく手にした武器そのものの力であることを、二人は理解していた。
 そして最も重要な点。おそらくあの使い魔の持つ銃は、平民が持つだけでメイジにとって驚異となりうる。
 ギーシュの後ろに穿たれたいくつもの弾痕。特にブラウニングM2の弾痕は壁の表面が一部衝撃で滑落してしまっている。一体、壁がなければ弾はどこまで飛んでいっているのだろう。
「……どう、みるかね?コルベールくん」
 かろうじて、オスマンが尋ねる。
「……どうやら、我々を遙かに上回る技術で制作された銃のようです」
 既に二人にとってガンダールヴなど二の次である。
「君なら勝てるかね?」
「状況にも寄りますが、少なくともギーシュと同じ距離に立って決闘形式で戦うのであれば、詠唱中に撃たれて私が死ぬでしょう」
 スクエアクラスのメイジが、ドットクラスの魔法を唱えるとかなり短い時間で発動出来るが、あの使い魔の銃はメイジが杖を抜くのと同時に既に発射されていると見ていいだろう。
「あの使い魔の少年が飛び散る弾を撃った時など、明らかにギーシュに当たらぬように位置取っておりました。殺さぬよう手加減されての結果と見るべきでしょう」
 戦士の目で、オスマンに応じるコルベール。
「ふむ……ともかく現状として情報が圧倒的に不足している。コルベールくん、幸いにして彼はミス・ヴァリエールに対して友好的だとのことだな?彼の出身と、そして出来ればあの銃の技術解明を頼みたい」
「はい。では早速……」
 今度は、知的好奇心の塊のような顔で頷くと、そそくさとコルベールは部屋を出た。




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