あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロの工作員-07



ギーシュとフリーダの決闘事件から数日後。
「御機嫌よう。フリーダさん」
「御機嫌よう。ヴィリエ」
「御機嫌よう。ケティ」
彼女が決闘で力を示したことで、生徒達は不承不承ながらゼロの使い魔の存在を認めた。
ギーシュの怪我は投げられた打撲だけで済み、周囲は倒れたのが気絶と知って安堵した。
メイジ達の決闘は打撲だけでは済まない方が多い。
魔法を使うせいで骨折や火傷、凍傷、裂傷は日常茶飯事だ。
もっとも<水の魔法>による治癒は怪我を一瞬で治してまうのだが。
傷が軽いと知った生徒達の興味は別に移る。

女子達は浮気をされた彼女に同情を示し、魔法なしでギーシュをあしらい、
トリステインでも有数の権力者であるヴァリエール家の使い魔の彼女を<お姉さま>と祭り上げた。

貴族が平民に負けるのは屈辱だと感じていた一部の生徒達は、
<お姉さま>を信奉する生徒達にすり潰され、
男子達は怒らせたら<実際>に死ぬほど怖い(ギーシュ談)と畏怖し、
美人である彼女の姿を見て憧憬を感じた。

物腰も姿も上品で、勉強や運動も完璧にこなす姿を見て周囲は『フリーダさん』とさん付けで呼んだ。
貴族が大嫌いである料理長のマルトーは、魔法なしで平民が勝ったのをシエスタと喜び、
彼女を<我等の剣>と持て囃した。
貴族を撃退した記念に、フリーダへテーブル一杯の豪華な料理を振舞ったマルトーは
「みんなで一緒に食べましょう」
とフリーダが言ったのを謙虚な奴だと評価し、料理を食べながら他の下働きたちもそう思った。

面目が潰れたギーシュは大人しくなり、モンモランシーが優しく接するようになっていた。
もちろんケティとは分かれたが、ボロ負けした彼とはそれなりに良い女友達として修復された。
ギーシュは
「彼女に鍛えてもらいなさい」
とモンモランシーに諭され、フリーダに戦術講義を受けている。


「面目潰して御免なさいね」
フリーダが左手を差し出す。
「此方こそ申し訳ない。平民だと侮っていた。重ねて顔を忘れていたのも謝ろう」
右手を差し出し握手を交わす。

油断していたのは自身の非だ、話しの最中に顔に胡椒をかける相手の非情な手を責めるのは悪いと思った。
ギーシュも、自分が丸腰で相手が杖を持っていたら同じことをしただろうと思う。
決闘の勝者を否定するのは、誉れ高い軍人の家系であるグラモン家を侮辱することでもあった。
口説いた相手の顔を忘れているのも悪かったと思っている。

「僕は決闘で負けた、君は勝った。好きな望みを言いたまえ」
平民に決闘で負け、その上見逃されたのでは貴族の名折れだ。
フリーダはギーシュが負けてから数日間、何も求めなかった。
それは、ギーシュの誇りが許さない。

「私は、相手によって付き合い方を変えるだけよ」
「礼を欠いたのは済まなかった平民…は悪いな、ミス・フリーダ」
「ミスは要らないわ」
無茶な要求を突きつけられなくて安堵する。
思えば自身も、決闘で負けた相手に無理な要求を突きつけてきたものだ。
負けて知るものもあるのだと感じる。
「…それともう一つ」
ギーシュは身構える。
「ルイズとは仲良くしてあげて。…あの子一人だから」

フリーダは儚げに綻ぶ。

「お安いご用さ!」
ギーシュは白い歯を見せた。



ルイズにとって使い魔は、思ったより掘り出し物だった。
洗濯を除き掃除、炊事、雑用は完璧にこなすし、ギーシュを単独で倒したのは、
護衛の力として申し分ない。
掃除は髪の毛一本残さず、触った物も指のあと一つ残さないほど完璧。
ためしにつくらせた調理も実家のコック並で、出て来た料理は
ぺペロンチーノに牛肉とピーマンの炒め物とメープルグラスの沿岸風サラダ。
どれも見慣れない異国の料理だったが美味しかった。
朝に服を着るのを手伝うのも手馴れていて、実家のメイド達にしてもらうようであった。

腹が立つことがあるとすればフリーダがご主人様を全く敬うそぶりを見せず、
様付けで呼ばないのと、ご主人様を差し置いて学院内で<お姉さま>として
尊敬されていることぐらいである。

前にご主人様と呼ばせようと、餌付けで躾けようとしたが、
フリーダが学院から賄い飯を貰っていたのを思い出し諦めた。
次の日、賄い飯をやめるよう命令すると、ルイズがコルベールに呼び出されて怒られた。
フリーダは大切なゲストで、刺激しないようにときつく言われた。
三日目、杖を向けて魔法で脅すとご主人様と呼ぶようになったが、
ご主人様の前にいつも<ゼロの>が付くため諦めた。

使い魔を呼び出してから、周囲の態度が変わりルイズに優しくなった。
優しくなったのは、フリーダへの尊敬や畏怖、口利きからであるのだが、
それを知らないルイズは凄い使い魔を呼び出したメイジへの尊敬であるとし、
多少の欠陥はあるものの概ね使い魔には満足していた。


フリーダは多少の不便はあったもの、潜入工作で培った経験を使い
普通の女学生として過ごしつつ、元の世界へ帰還する方法を探した。
しばらくすると、この星が何処か判らない上技術も未成熟で、
星間技術の欠片も見つからず、帰るのは悲観的になっていた。
アリスの身が心配だが、組織の手が届かない世界に居るのは、
それはそれでいいのではないかと考え始めていた。



「な、なんじゃと!グラモン伯爵のせがれとミス・ヴァリエールの使い魔が決闘じゃと!」
場所はどこじゃとオロオロし、遠見の鏡を見つめている。
「が、数日前に終わっています」
「もっとはやく言わんか!」
ロングビルは片眉を上げ応じる。
「事件当時、執務室はロックとサイレンスで閉まってましたが」
「…すまんのう」

コルベールが部屋へ一冊の本を抱えてやって来る。
「ミスタ・コルベールと大切な話があるんじゃ。退出してくれんか」
「書類は置いておきますから昼までに仕上げておいてください」
ロングビルが部屋から出て行く。

「追加調査はどうなったかのう」
「これをご覧ください」
薄く小さな本には始祖ブリミルの使い魔達と書いてある。
オスマンはパラパラとめくった後、
「子供向けの絵本か?」
絵本の中央に描いてある人物の左手にルーンが刻まれている。
「はい。『ガンダールヴ』と『始祖ブリミルの盾』です」
「他には書いてあったか?」
周囲に魔法を掛けつつ尋ねる。

「いいえ、同じルーンが載っている唯一の本でした。
『魔力文字大全』を調べましたが、該当するルーンはありません」
「あれに載っていないとは忘れられたか、それとも歴史の闇に葬られたか」
コルベールはかぶりをふった。
「勘弁してください、異国の工作員だけでも手一杯なのに」
「金と暇がある奴等はそれぐらいいくらでもやるぞ。
君も揉み消された事件の心当たりの一つや二つしっておろうが」
オスマンの目が細くなる。
「発行年月日は?」
「不明です。数百年以上前なのは確かです」
「盾と書いてあるからには戦闘関係のルーンじゃな」
「模擬戦でもやらせますか?」
オスマンは気まぐれにロングビルの持ってきた報告書をつまんだ。

「………あたりじゃ」
紙にはフリーダ・ゲーベルの右手が光っていたと書かれていた。



朝、目が覚める。
洗濯物をシエスタに出しに行き、授業を受けて、賄い飯を食べて、
適当にルイズの世話を焼いて、特別授業後洗濯物を回収して、
たまにコルベールの機械製作に助言をする。
組織の暗殺も、命令もない。時間がゆっくり流れる平凡な毎日。
そこには任務達成のために取り繕う必要や、敵や監視に怯える日々はない。

彼女は惑星エリオの反政府ゲリラが戦費を稼ぐ為に試験管で生産され、
脳に埋め込んだチップ<<記憶領域>>に知識を埋め込まれ教育された暗殺者だ。
犯罪組織<<コーポ>>にレンタルされ暗殺を行なっていた。
脳に埋め込んだ<<記憶領域>>へ<知識や経験>を直接埋め込むチップシステムに、
星間文明は支えられている。
大きくなりすぎた社会には、ものすごい数の専門技術者が必要だ。
手術で埋め込んだチップへ情報を書き込めば、分厚い説明書を一瞬で覚えられるから
技術者は増えた。

彼女はその技術を悪用し<<偽人格>>を埋め込み、別人になりきって暗殺するのが仕事だ。
任務のため彼女は、最初に人を殺してから八年で二十七人の<<偽人格>>を受け入れた。
フリーダ・ゲーベルは<<偽人格>>達の基礎部分で、素の彼女だ。

彼女は見てきた。多くの死を。ゲリラとして、最低限の装備で
機械兵に立ち向かった故郷の仲間。
犯罪組織に貸し出され、理想に程遠い犯罪者として蔑まれながら逝った
同僚のエージェント達。
そして、誰かに「死ね」と命令された彼女の標的。


そんな彼等を差し置いてのうのうと生きるのは彼女にとって落ち着かないことであった。
だから紛らわすために歩く。


食堂からずっとキュルケの使い魔、サラマンダーのフレイムが
トカゲの短い足でちょこちょこついて来ている。
バレバレの尾行なので放っておき、学園の隅に居る青い竜の元へ向かう。
青い竜、シェルフィードとの会話は最近の彼女のお気に入りだ。
ビルの2階ほどの背と鋭い爪を持ったそれは、ゴツイ見た目の割りに
きゅいきゅいと舌足らずな可愛い少女の声で話す。
「きゅい?そーきたのね!ならここに白を置くのね」
「きゅいーっ、角を取られちゃったのね」

オセロで遊ぶ。シェルフィードとの勝率は五分。意外に頭がいい。
齢200年ほど生きている竜で、竜族の中では子供。
飼い主は無口なタバサお姉さま。
シェルフィードは韻竜と呼ばれる種族で例外的に人間と会話が出来るのだとか。
バレると注目が集まるので、話してはいけないとキツく言い付けられている。
なので、彼女は話す相手が出来て嬉しいらしかった。

フリーダもルイズの元で働く使い魔だ。
シェルフィードとは種族の差はあれ境遇はよく似ている。
何百年も寿命がある知的な種族がどうして格下の人間の下で、
使い魔として甘んじているか疑問に思い聞いてみる。
「人生はひとときの戯れときまぐれでできているのね。きゅい」
と深いことを言っていた。子供に見えるが伊達に長くは生きていないようだ。
私が生きてきたのも一時の戯れなのだろうか。
全てを否定されてしまう気がして首を振った。



フリーダは執務室に呼び出されていた。
室内には緊迫した空気が漂っている。
オスマンとコルベールが杖を構え、
フリーダが偽装ホルスターから取り出した拳銃を構えながら遮蔽を探す。

コルベールが魔法で火がついた杖を向ける。
「単刀直入に聞こう。君は暗殺者かね」
「どうして?根拠は?」

オスマンは構えながら片手で箱を開く。
「これはフリーダ君の世界の武器じゃろう?」

箱には薬莢と精巧に出来たスナイパーライフルが入っていた。
「ライフルに比べ長過ぎる銃身、精密に出来た銃眼。これは狙撃のための武器じゃ」

「それがどうかしたのかしら?」
コルベールはいつでも呪文を放てる体勢に入り彼女の動きを注意深く監視する。
妙な動きをしたらためらわず撃つつもりだ。

「君は学生だね。それがどうしてこんな武器を持っているんだい?」
「護身用よ」
「護身に持つのは不自然だ。取り回しが悪すぎる」
君が構えている銃だけ持っていたのなら信用できた話だったのだけどね、との言葉を飲み込む。

「勘違いしてるんじゃないかしら?護身といっても私自身への護身とは違う」
「護衛のためよ」
彼は言葉の意味を考える。
杖は向けたままだ。

「敵が暗殺のために長射程の武器を用意してくるかもしれない。だから私も同じ武器を使った」
「あなたの国でも護衛のために、暗殺者が使う武器や魔法に対抗するため、
同じ技能を持った護衛官に監視や指揮をさせるでしょ?それと同じよ」
なるほど。確かにハルキゲニアでも、
女王への空襲を想定した衛士グリフォン隊や女王の食事の安全を守る役が居る。
彼等は対空襲の訓練や解毒に対する知識を持っている。
彼女の国で狙撃が有効な暗殺方法とされているなら、
対狙撃に特化した技能を持った護衛が居ても不思議ではない。

「そういえば、君が巻き込まれた事件を聞いていなかったね」
「護衛対象の名前や状況を明かすのは対象に危険が及ぶから…概要だけでもいいかしら」
エグバードの記念式典中に襲ってきた海賊、地下に逃げ延び、西と東の住人が協力して撃退した
歴史的事件を、彼女とアリスについてのことをぼかし、所々脚色を混ぜながら説明する。

「・・・君はレジャイナと呼ばれる異世界の国から飛ばされてきたわけか」
「…そうよ」
「護衛の技能を持っている君が異世界から呼び出されるとなると『ガンダールヴ』が
真実味を帯びてくるわけだ。オスマン校長」


杖をしまったオスマンが頷く
「フリーダ君の右手には『ガンダールヴ』とルーンが刻まれていての、あらゆる武器を使いこなす、
『始祖ブリミルの盾』と呼ばれておる」
「君は我々の及びも付かない武器の知識と、護衛としての能力を持った異界からの人間だ。
それは伝説と一致する。君を暗殺者と疑ったのは申し訳なかった」

腕を組み頭に手を当てる。
「腕を見込んで、さしあたって頼みたいことがあるのだが。いいかね」

オスマンは眼鏡をかけ彼女から視線を外した。
「君の主人、ミス・ヴァリエールは使い魔の君がガンダールヴであるからして、
『始祖ブリミル』と同じ『虚無の使い手』の可能性が高い。歴史から消された系統じゃ。
これからどんなことが彼女に降りかかるかも判らん。彼女を守ってやってくれんか」

「断ったら?」
「ワシが困る」

暗殺者が護衛とは皮肉なものね。

フリーダには断ることも、無視することもできた。
だけど、自身の<<正しい事>>を通そうとするルイズの姿は
どこかアリスに似ていて興味を持った。

それは一時の戯れ、きまぐれなのかもしれない。

「素敵な提案ね。オスマン」




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