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ゲーッ!熊の爪の使い魔-05


第五話 人気者のクマ

さて、使い魔を召喚しての初めての朝、ルイズは不機嫌だった。
ベルモンドに抱きついているのに気がついて恥ずかしさの余り洗濯するよう言って追い出したのは、
いつも自分が起きる時間よりもずっと早かった。
おまけに頭に一度血が上ってしまったせいか目が冴えてしまい二度寝する気にもなれない。
ベッドに入ってもいないのにそのまま寝まきでいるのも何だったので結局自分で着替えた。
やはりあいつは床で眠らせるべきだったのだ。
そうすればこっちも朝飛び起きることはなかったしもっとちょうどいい時間にあいつに起こしてもらえて着替えもやらせておけたのに。
しかし自分のしもべである使い魔に抱きついて眠るなど何事だ。これでは主人としての威厳がないではないか。
そもそもあいつが悪いのだ。あんな、かわいくて、抱き心地がよくて、あったかくて、

ああ、昨日はほんとよく眠れたなあ……

「ってちがーーう!!」
ずれていた思考からはっと我に返り大声でどなりルイズは再びベルモンドへの文句を考え出す。
だが結局はクマちゃんのかわいさに心を奪われ、その後またどなる。
このサイクルはベルモンドが洗濯を終え戻ってくるまで続いた。
独り芝居をしていたこともありおなかも減ったということで早速ルイズはベルモンドをつれて食堂へと向かおうと部屋を出た。
そこで、またしても不機嫌な顔になった。

「あら、おはようルイズ」
「…おはよう。キュルケ」
朝早くから不愉快な顔を見たからだ。
「いつになくかわいらしいじゃないあなた」
「どういう意味よ?」
「だってそうじゃない、こっちが噂の使い魔のクマちゃんなんでしょ。こんな大きいクマちゃんを引き連れてると小さくておこちゃまなあなたがより引き立って一層子供らしく可愛く見えるわ。ほんとピッタリの使い魔を召喚したのね」
「う、うるさい!」
 そんな声を無視してキュルケは、今度はベルモンドのほうを見やる。

「でも改めて見るとほんとかわいいクマちゃんよねえ」
「おはよう、ボクベルモンドだよ」
「あら、きちんとしてるのね、主人とは大違いだわ。ルイズ、あんたにはもったいないんじゃないの?」
「なによ!うらやましがってもあげないんだからね!」
ルイズは先祖代々のいろいろなもの、特に男、を取られてきた因縁からとっさに声を上げた。
だが、キュルケはそんなルイズの危惧をあっさり否定した。
「別にうらやんでるわけじゃないわよ。別にかわいいのも嫌いじゃないけどあたしが真に求めているのは情熱。
あなたの様なお子様みたいにかわいいものにキャーキャー言うような安っぽい女じゃないの。
じゃあ、あたしの使い魔も紹介してあげる。まさに情熱にふさわしい使い魔よ。おいで、フレイム」
そう言ってキュルケは自分の召喚したサラマンダーを披露する。
そうして始まる自慢、それに対する文句。二人がぎゃあぎゃあ言っている中、
「遊ぼ、遊ぼ」
われ関せずとベルモンドは手をフレイムに差し出し話していた。
「はあ、はあ、もういいわ、行くわよベルモンドって何してんのよ、あんた!」
「何ってトカゲ君と遊んでるんだよ?ルイズも一緒に遊ぶ?」
言い合う二人が落ち着いた時にはベルモンドとフレイムはお手をしたりしてじゃれあっていた。
「するわけないでしょ!あんたもキュルケなんかの使い魔と遊ぶのなんかやめなさい!あんたもキュルケみたいに頭空っぽになるわよ!」
当然ルイズは怒鳴ってやめさせる。もともとベルモンドは賢そうにみえないと思ったのは内緒だ。
火トカゲと遊ぶクマちゃんの図というのもかわいいと思ったのはもっと内緒だ。
そんなこんなでルイズたちは食堂へ向かったのだった。


食堂ではルイズはもっと散々だった。
食堂に入るなり女子たちにベルモンドがキャーキャー言われ、やかましかったし、
今度こそ主人としての威厳を出そうと質素な食事を出したら女子たちに鬼畜外道を見るような目をむけられたり、
(正直これまでゼロと蔑まれてきたのが軽いくらいの強烈さだった)
挙句ちゃんとした食事を出そうとしたら
「僕は食事しなくても大丈夫だよ」
と言われてそもそもこんなことしなければよかったと後悔していた。
その後、ルイズの食事中ベルモンドは外に散歩に来ていた。
そこに飛来する一つの影があった。そしてそれはベルモンドの前に降り立った。
「きゅいきゅい」
それは大きい竜だった。
「わあ、おっきなドラゴンだ、すごーい」
「きゅいきゅい」
竜はベルモンドに顔を摺り寄せてくる。
「遊ぼ、遊ぼ」
そしてベルモンドも手を差し出して応える。
「きゅいー」
このまま二頭はしばらくの時間を戯れて過ごしたのだった。

その後一旦戻ったのち、
「ねえルイズ、おっきな竜さんとお友達になったよ」
「勝手に知らない使い魔と遊ぶんじゃない!」

「きゅいきゅい、おねえさま、とってもかわいいクマちゃんと遊んだのね!とっても楽しかったのね!」
「静かにして、出ないとお昼抜き」

それからルイズはベルモンドと一緒に授業へと向かった。
そこで待っていたのは、正反対の二つの反応だった。
「おい、なんだよルイズ、その使い魔は。そこらのやつに着ぐるみでも着せてきたのか?」
「キャー、かわいー!クマちゃんこっち向いてー!」
ルイズを馬鹿にするもの、ベルモンドに熱を上げるもの。
そんな中、ギーシュはそれまで話していたモンモランシーが自分そっちのけでクマに夢中になり出したことにショックを受けていた。
その後、教師のシュヴルーズによって強制的に黙らされたことでようやく授業が始まった。
そして系統やランクについての話が進み生徒たちがそれを聴く中、ベルモンドは、
「遊ぼ、遊ぼ」
他の使い魔の動物たちにちょっかいを掛けていた。

「ちょっとやめなさい、静かにできないの」
さすがに声をかけ咎めるルイズだったが、
「ミス・ヴァリエール、今は授業中ですよ。そんなかわいいクマちゃ…ゴホンゴホン、使い魔とおしゃべりしていい時間じゃありません」
それをシュヴルーズに見咎められ、そのまま錬金の魔法の実演を行わされることになったのだった。
それを聞いた瞬間生徒たちに恐慌が走った。
必死に止める生徒達。だが、シュヴルーズはそれを無視して強行させる。
生徒は遠ざかりルイズの近くにはシュヴルーズと、
「わーい、魔法?近くで見せて、見せて」
いつの間にか他の使い魔と戯れるのを止めていたベルモンドだけだった。
そしてルイズが呪文を唱えた瞬間爆発が起きた。
「ああーっっ!ルイズが錬金を失敗!いつも通りの爆発を起こしたー!
爆煙でよく見えないが彼女たちは無事なのかー!?」
出番だとばかりに「実況」の二つ名をもつ生徒が声を上げる。
「あ、あれ?なんともなってない。それになんだかあったかいものに包まれているみたいな」
だが、そんな心配をよそにルイズとシュヴルーズは無事だった。煙が晴れることで生徒たちにもその様子が見えてくる。
「ベ、ベルモンドだー!ベルモンドが二人を抱えてかばっているー!まさに使い魔の鏡だーー!」
二人を腕で抱え、背中が穴があいたりして少しばかりボロボロになったベルモンドを。
そんな様子にルイズも気付く。
「あ、あんた大丈夫なの?」
しかしそんなルイズの様子をよそにベルモンドは、
「くうーん」
と鳴くだけだった。
次の瞬間教室は生徒たちの声に包まれる。いつものように失敗して爆発を起こしたルイズを責める声、そして身を呈して二人をかばったベルモンドへの歓声や怪我を心配する声だった。
シュヴルーズも、
「な、なんてお利口で立派で勇敢なクマちゃんなんでしょう……」
とベルモンドに熱い視線を送っていたのだった。


結局騒ぎが落ち着いた後、爆発の片づけを罰としてルイズとベルモンドが行うことになった。
シュヴルーズはベルモンドも働くことになることが不満な様子だったが使い魔と主人の関係を考えしぶしぶ指示を下していた。
そうして二人で片付けをする中、ルイズは口を開き、話し始めた。
自分をいつもこのように魔法に失敗して爆発を起こすこと。
そのため成功率ゼロということでゼロのルイズと呼ばれるようになったこと。
これまで必死に勉強してきたこと。
それでもどうにもならなかったこと。
さらに話を進め、笑わば笑えと自虐的になってきたルイズに対して、珍しく静かに話を聞いていたベルモンドが口を開いた。
「魔法のことはよくわからないけどルイズは今まで頑張ってきたんだよね、ならこれからも頑張っていくべきじゃないかな」
「そんな知った風な口を利かないで!今までずっとやってきて、でもだめだったのよ!それをそんなに軽々しく!」
「じゃあ、なんでルイズはこれまで頑張ってきたの?ずっと成果が出なかったのに。
ルイズ、君も分かってるんじゃない、それでも今の自分を変えていくのに自分に出来ることはもっと勉強してもっと頑張ることだって。
そうやって前に進もうとすることだって。
だから今まで結果が出ていなくてもずっと頑張ってきたんでしょ。
だったらこれからもがんばっていこうよ」
「そんなの」
奇麗事だ、とは言えなかった。ベルモンドの言葉にはなぜだか強い説得力があった。
ステカセのかませにされ、牛のかませにされ、体内をリングにされ、真っ先にマスクを狩られ、象にはウギャアされ、
それでも進み続けて20年余り、ルイズの人生よりも長い年月を経てようやく扱いも良くなり人気投票も一位になった経験からくる説得力が。
結局ルイズは続きは口にできず、代わりにもっと前に言うべきセリフを口にした。
「あの、さっきはかばってくれてありがとう。背中もそんな穴が空いちゃって」
「気にしないで、ルイズ。さっきも言ったけど僕は平気だよ、鍛えてるからね。そんなことより怪我がなくてよかった」
そんな風に答えるのを聞いてルイズは、可愛らしいからとか愛玩的な意味ではなく初めて、
ベルモンドを召喚できてよかったと感じていた。




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