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ジ・エルダースクロール外伝 ハルケギニア-04


4,貴族の四男

「トリステインは平和じゃのぉ。ミス・ロングビルよ」
「ええ、そうですわね。オールド・オスマン」

学院長はおもむろに「うむ、うむ」と呟き、座っている机の引き出しから水ギセルを取り出す。
ロングビルと呼ばれた理知的な顔の女性は、何も言わずに自分の仕事を続ける。
まぁ、いいか。老い先短いのだから、と健康管理するのが面倒になったのと、
何とも言えない愛嬌のあるじいさんが、スネて仕事をサボタージュするのが嫌だったからだ。

「平和が一番じゃ。アルビオンで続く戦が早く終わってくれるといいのじゃがなぁ…」

白の国アルビオン。
空に浮かぶその島は、貴族派と呼ばれる、現在テューダー王家に反抗する者達で構成された組織によって、
甚大な被害を被っていた。クロムウェルと言う名の司祭を中心としたその組織は、
現在、アルビオンのほとんどを占領し、王家の命運はもうそろそろ終わりである。というのが、
非貴族のアルビオン情報通達の噂だった。
王家に忠実な貴族や、それに近しい人々は、そんな情報を信じられないし、信じたくなかったのだ。
故に、未だトリステインでは、あまり軍も動いていない。ある種の平和ボケと言えるが、
優秀な指導者であった王が亡くなり、その妻である王妃は政治に参加せず、娘はそういった事に疎かった。
遺憾ながら、王族をちゃんと支えようとする忠臣が、この国にはほとんどいないようだった。

アルビオンの件を聞き、内心、ざまぁみろ。そうロングビルは思う。彼女は今の王家に恨みがあった。
死んでくれて清々しい気分になる。とすら思っていた。すこしして思考を戻し、作業に戻る。
ふと、学院長が立った。
「どうかしましたか?オールド・オスマン」

 ウォッホンと大げさに咳をする。またか、このスケベジジイは。今日は3度目だ、くそ。
冗談交じりで言った一言を本気にしやがって、全く、ああ、もう。
ロングビルはそう思いながら何も考えず作業に戻る。
それを言った日は酒が入っていた、ちょっとしたヤケ酒だった。仕事前に少し煽ったのだ。
セクハラをどうにか止めさせるのが面倒だったのだ。言った後に後悔した。

「今の5倍のお給料払ってくれたならば、いくらでも触らせてさしあげますよ!」

 ああ、くそ。本当に払いやがったこのエロジジイ。結構な数の後悔をしている。
何も着ていない状態で、そう言わなくて本当に良かったとロングビルは思う。

「君はやはり美しいのう、ロングビル君」
「ええ、そりゃぁどうも…」

ねっとりと胸と尻を触る。民間療法だかなんだか知らないが、最近確実に胸が大きくなった。
妹ほどでないのは間違いないが、しかし、実際の所そこらの女より確実に体積が大きい。
肩こりがひどくなるのは勘弁して欲しいことだった。彼女は男を引っかけて遊ぶなど、
そんな趣味はなかった。


「大変ですぞ、オールド・オスマ…貴様ぁぁぁぁぁ!」

突然入ってきたコルベールは、密かに狙っていたロングビルに非道な行いをするオスマンに飛びかかった。
炎蛇と呼ばれた男の実力は、紛れもない本物である。彼が何かを言う前にオスマンの口を魔法で封じる。
着衣を乱したロングビルが絶妙のタイミングでオスマンの股間を蹴り上げ、
悶絶するオスマンにコルベールはボディブローを放った。身体が宙に浮くほどの一撃だった。
しかし未だロングビルは怒りが収まっていない。床からゴーレムの手が出てきたかと思うと、
そのままオスマンを潰した。

「おいたわしや、ミス・ロングビル。かの妖魔めが貴方にどれほどの心の傷を負わせた事か。
どうかお忘れ下さい。今までの事は悪しき夢だったのです」

彼もまた、トリステイン貴族の特徴である大げさな芝居をする事ができた。
ただ、するべき人が今までいなかっただけである。

「ええ、ありがとうございます。ミスタ・コルベール。悪夢は終わりました。
これからようやく――あら、どうかなさいましたか学院長?」

手を取り合い、見つめ合う二人。悪くない雰囲気であったが、ゴーレムの腕から抜け出した学院長がじぃ、と見ていた。

なんじゃい、なんじゃい。ワシ悪いことしてないもん。これ契約の内じゃもん。
ちょっと泣きが入っている。もう300年は生きた人間にはとうてい見えなかった。
よしよしと、ロングビルはオスマンの頭を撫でる。何というか、こう、愛嬌のある老人に対して、
常に怒りを抱えられるほど、彼女は暴虐では無かった。


「ふむ。で、どうしたのかね?コルベール君よ」

とりあえず、どう燃やせば誰にもバレないだろうか。
先ほどの争いの跡は消え、ちゃんと椅子に座って体裁を取り繕ったオスマンから事情を聞いた後、
彼はそんな物騒な事を考えた。死ねばいいのに。そう頭によぎる。

「ええ、これをごらん下さい」

努めて冷静に言って、マーティンのルーンのスケッチと、先ほど図書館で見つけた本を、
彼に見せた。

「ミス・ロングビル。席をはずしてくれんか?」
「5倍のお給金だけでは、私の傷は癒せませんよ?オールド・オスマン」

むぅ、とオスマンはうなる。まぁ、いいかと、他言無用を条件に、同室を許可した。



気絶したルイズとシュヴルーズが医務室へ搬送された後、
マーティンは黙々と爆発した教室の片づけと掃除をしていた。
まぁ、仕方がないか、一心同体なのだから。と思いながら。
魔法でスキャンプを召喚して手伝わせた。
小さな人型であるこのデイドラは、頭が悪く体臭もひどいが、一般的な人間よりは筋力がある。
デイドラの世界は厳しく、強くないと生きて行きにくいのだ。
簡単な炎の破壊魔法も使えるが、今使われたら困るので、
決して使わないようにとマーティンは念押しした。

マーティンは窓ガラスを運び、スキャンプは壊れた机を外に出し、新しい机を運んでくる。
煤だらけの教室と机を、一人と一匹で磨き、昼前には作業は終わっていた。
スキャンプに感謝の意を示し、解放してやる。さて、ルイズはどこに送られたのかと探そうとすると、
腹の虫が鳴った。空を見れば太陽が昼時であることを示している。
飯を食う前にルイズを探すか、飯を食ってからルイズを探すか。
ふむ、困ったとマーティンは一人悩む。そもそもまだ道を覚えていない。
友がよくやっていたように当てもなく歩いてしまった。ここはどこだろうか。

文字が読めぬ為誰かに聞かねばならないが、今日初めて学院を歩くのだから、見知った者などいない。
はてさて、頼みの綱であるご主人様は気絶している。困ったなぁ。
と歩いていると、たどり着いたのは、ヴェストリの広場であった。


そこには一人の少年がいた。あまり趣味のよろしいとは言えないシャツと、金髪の巻き髪のメイジは、
うぅ、と、うずくまって泣いていた。ここは普段あまり人が来ないようだ。他に誰もいない。

「どうかしたのか青年よ。どこか痛むのか?」

ごく普通に近づいて話しかける。
何かまずい自体なら声を上げて人を呼ばなければなるまい。
ついでに医務室に行くならついて行けばルイズに会えるだろう。
そこら辺も計算に入っていた。

「ほ、ほっといてくれ、君には関係の無いことだ」
「そうはいかん。もしどこか具合が悪いならこんな所でうずくまっているより、
医務室へ行くべきだ。」

そこはかとなく正論だが、しかし彼、ギーシュ・ド・グラモンにとってはどうでもいいことである。
彼は先ほど歩いているときポケットから紫色の液体が入った小瓶が落ちた。
モンモランシーからもらった香水の小瓶である。
それを拾ったのがモンモランシーであったなら、

「もう、落としたりなんかしたらダメでしょ、ギーシュ」

なんて笑って言ってくれたんだろうが、しかし現実は非情である。
最もそれを持っていると知られたくなかった相手、ケティが何の気無しに拾ってしまったのだ。
モンモランシーは小銭稼ぎに自分の香水を他人に売っていた。ケティもそれを何度か見たのだろう。
即座にギーシュの頬に平手を放つと、泣きながら走っていった。
ああ、可憐なる花よ。どうか許して欲しい。そう心の中で思っていると、背後から修羅の気配がした。
モンモランシー・マルガリタ・ラ・フェールド・モンモランシと言う名の鬼であった。


「なるほどな。その、心情お察しするよ。グラモン君」

うう、と未ださめざめと嘆くギーシュから事情を聞いて、どうにも助けてやるべきかどうか。
その判断を決めかねていた。完全に自業自得である。むしろそれで済んで良かったと思うべきだ。
マーティンはそう考えるが、しかしこいつはまたやりかねないか。として、
再発防止の為にも火遊びの怖さを教えるべきかとマーティンは思った。

「私の昔の話をしようか」

そう彼は切り出した。遠く向こうをみている目だった。

「私はあるデイドラと呼ばれる異世界の住人達、さっきみたあのクランフィアというのもそれなんだがな。
それを統べる王の一人、サングインというのを信仰していた。君らブリミル教からしてみれば異教だから
異端だろうか?」

彼が先ほどルイズに呼ばれた異国のメイジと分かると、背筋をただしてギーシュは座り、
いえ、貴方は異国のメイジですから。と言って後、異世界なぞあるのですかとギーシュは聞いた。

「こっちからしてみれば割と普通だ。海に船で出ると稀にその異世界に迷い込む事もある。
そうして帰ってこなかった連中も結構多いな」

タムリエルの近海は怖いのですねとギーシュは言った。

「まぁ、そこに入るのは、そうついてない連中だけだがね。話を戻そう。そのデイドラと言うのは、
まぁ、私たちからしてみたら、何を考えているのか分からない連中でね。彼らは死なないし、
いつでも私たちの世界で、何か面白いことをしようと企んでいる。面白い、と言っても
彼らにとっての、だから私たちにとってはまずいことかもしれないのだ」

ではどうやって倒すのですか?とギーシュは問い、何故そのような物を信仰していたのか聞いた。

「彼らは肉体が滅びると彼らの領地、異世界のオブリビオンに逃げる。
そこで復活するにはしばらく時間がかかるからその間にオブリビオンとこっちに空いた穴をふさげばいい。
信仰していた理由か、今の君と似たような物だよ。若気の至りだった…」

遠くを見る彼にギーシュは言葉をかけられなかった。

「若いときは誰でもそうだが、力と名声こそが神になる。
16人いるデイドラ王の中で私がサングインを選んだ理由は、
彼が快楽を司るデイドラの王だったからだ。
ああ、説明しよう。デイドラの王達は各々人間に関係する何らかの事象と関わっているんだ。
そしてデイドラは人間と関係を持つことで力を増大させることが出来る。
だから、彼らは信者を大切に扱う。まぁ、彼らにとっての大切な扱い方なのだが」

悪くはなかったんだろうな、比較的には。そうマーティンは呟いた。バカ騒ぎの毎日を思い出す。
ギーシュはなんにもいえず、黙っている。


「快楽、君もそういった行動を取ったと言うことは、まぁ、その、
男として色々したかったからだろう?それが悪いこととは言わないが、
時としてそれは死に繋がるかもしれない」

ギーシュはどきりとした、どういう事ですかと問う。

「私と同じようにサングインを信仰していた者の話だ。
彼とは比較的話していたが、女癖が非情に悪かった。
毎日のようにとっかえひっかえを繰り返してね。
彼は人に受ける話をとてもおもしろおかしく話すことが出来た。
もともとの話はそうおもしろくないものでも、彼がはなすとおもしろくなった。
それにここらでは『水』の系統の魔法に属するのかな?それに当たる幻惑
という魔法の使い手で、人の意志を魔法でコントロールできた。
とても力のある使い手だった。ここらじゃスクウェアという位に位置すると思う」

『水』の系統は主に治療手段として用いられるが、まさかそんな風に使うなんて。
あまり授業を熱心に聞かないギーシュには少々モンモランシーが怖くなった。

「さて、ついに彼と遊んでいた女性達が、彼をどうにかしようと団結した。
彼は焦ったよ。何せいくらスクウェアとはいえ、彼と関係を結んだ女性も、
なかなかの強者揃いだったんだ。その分とても美しい方々だったが。
困りに困った彼は我らが神サングインに頼ったよ。助けてくれとね。
さて、かの神は何と言ったと思うかね?」

助けてくれるのでしょう?何せ神様なのですから。ギーシュはそう祈るように言った。

「この呪文を授ける。と、サングインは彼に呪文を教えた。さて、果たしてその呪文を彼女たちに使えば、
何故か己の着ていた服が全て消え、彼女たちは普段見せないような凶暴な顔つきになった。
特殊なデイドラの魔法が掛けられたんだ。抵抗はしたのだろうが、やがて魔法力、ここでは精神力だったかね?それは消える。
可哀想に、彼の死に様はとても無惨だったよ。よろしければ説明しても良いが――?」


いえ、結構!しかし何故そのような非道い仕打ちを?そうギーシュは彼に聞かなければならなかった。
今後の自分の身の振り方の為に。

「サングインは全ての快楽に繋がる物に関係を持つ。普段は酒好きのバカ騒ぎが好きな恰幅の良い男だ。
悪魔の顔をしているそいつは、時折遊びで人を殺す。快楽殺人という奴だ。実際、かの魔法にかけられた
女性達は、ひどく恍惚とした顔で、彼の死肉を漁っていたよ。それを見て、楽しいと笑うのだ。
サングインというデイドラ王は」

背筋から凍った。ただそれだけの為に殺すのか。デイドラというのは何と恐ろしいのだろう。
ギーシュは怖くて仕方がなかった。

「さて、君はサングインの信奉者でもなければ、彼のようにとっかえひっかえ遊んでいたわけでもない。
キス以上していなかったのはまぁ、結果から見て幸いだろう。今から誠心誠意心を込めて謝れば、
どうにか彼女らとの仲も、以前程ではないにせよ、マシになるかもしれない。
しかし、ここで反省せずに突き進めば、別にサングインでなくても嫉妬深い女性が、
君を背後から刃物で刺す事だろう。快楽の代価という奴だ。
それでも良いならこのまま進むと良い。本来私は九大神という神々の司祭だから、
そういうのを正さなくてはいけないが、君にその気がなければ、
ハッキリ言って無理だ。特にこういう色恋沙汰は」

ギーシュは丁寧に頭を下げる。ありがとうございましたと言って、
急いで二人の元へ走っていった。
これで二度と起こすまい。本当は彼が全員の女性と平等に『遊んだ』のを見て、
サングインはそーらもっとやれもっとやれと楽しんでいただけだが、
これくらいの方が良い薬となる。マーティンはギーシュの走って行った方を向いて、
そういえば、医務室と食堂の場所を聞くのを忘れていたのを思い出した。

「ああ、ミスタ・セプティム。こんな所に。医務室はこちらです。
そろそろミス・ヴァリエールもお目覚めになる事でしょう。」


見知らぬ使用人に声を掛けられた。平凡な顔つきの男である。
何でも異国のメイジが呼ばれたとして、使用人達の間で
噂になっているらしい。案内された後、医務室に入ると、
そこには桃色髪の愛らしいご主人様が眠っていた。

「お食事はこちらまで持ってきましょう。グッデイ!」

どこかで聞いた事がある結びの語を言うと、彼は去っていった。
さて、食事が来るまではしばらくここにいるとしよう。
マーティンは気づいていなかった。彼が扉を閉めた時に「影のご加護を」と囁いたことを。





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