あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

虚無と狂信者-16



「うーん、ここは」

平賀才人の眼前に見なれた景色が飛び込む。
そこは日本の街のど真ん中だった。突然の帰郷に才人は戸惑う。

「あれ?俺、ワルドと戦って、そっから……」
 ぼんやりとした頭で思い返す。
ふと目の前を見ると彼の目の前に一人の少女がいる。黒い髪の、見なれた少女だ。
この少女に話を聞こうと声を掛ける。
「あ、シエスタ。俺」
「あら、サイトさん、どうされたんですか」
彼女は何故かセーラー服を着ていて、普通なら魅了される所だが、そうはならなかった。

少女に不釣り合いな程の野太い声によって。

「な、何で」
後ろからルイズが駆け寄って来る。彼女はナースだがそれよりも気になるのは。

「ちょっとエロ犬! 何メイドと話をしてるのよ」
犬ってナニ?とかメイドだから?とかよりも、やはりこの少女達の声がおかしい。

「お兄様! お兄様! 御飯なのね!」
いつもは甲高い声のシルフィードも同じ声だった。

「何で」
タバサが本を読みながら近づいてくる。もしかしてこの子も…。
「おはよう」
「何で皆神父とおんなじ声なんだーーー!!?」


全員がCV若本ではいくらこの子達がセーラーだろうとナースだろうとブレザーだろうと台無しである。
これがCV那智でも結果は同じであろう。
「と、とにかく逃げなきゃ」
可愛い少女が五十越したおっさんと同じ声では耐えられない。心の中の何かが壊れる。
そして、走り去る彼に神父声とぶるあぁぁぁの混声合唱である。走った。彼は走った。
するとしばらく行った所に、長身の男がいる。

「神父!!」

こちらを振り向く、身長2メートル、推定年齢60歳前後。髭に頬傷、丸眼鏡の男。
思わず声をかけた所でふと気づく。彼女らが神父の声ならば、彼は。

「いやあ、サイト。元気ですか」

「ぎいいいいいいいいやああああああああああ!!!!!!!!」
もはやザキである。



「うわあ!!」
サイトは風竜の上で目を覚まし、突然暴れ始めた。
さっきまでうなされていた彼が今度はまるで神父に追い立てられた
吸血鬼のように脅えきっている。シエスタが慌てて静止するも彼は叫び、耳を押さえるのみ。
「さ、サイトさん! どうしたんですか?落ちますって!!」
「み、皆声が! 声が! アナゴアナゴアナゴアナゴアナゴアナゴメカ沢アナゴアナゴアナゴ」
「アナゴがどうしたんですか!? サイトさん!!!」


シエスタの元通りの可愛らしい声で彼はようやく平静を取り戻す。
「し、神父!」
空を見ながらぼうっと考え事をしていた彼は何事かという風に振り向く。
「お、俺の名前呼んでください。」
 ともすれば誤解されかねない発言に顔を顰める。
「……大丈夫か? お前?」
それはいつもの野太い声だった。その瞬間ヘナヘナと倒れ込む。
「良かった。夢だった……。死ぬかと思った」
「どうしたのよ? アンタ」
ルイズの声に拒絶反応を示す才人。猫のように俊敏に跳ねる。
「ルイズ! た、頼むから話しかけないでくれ! 俺の中で何かが壊れる!!」
「ななな!! しししし失礼ね!!」
呪文を唱えようとするルイズをギーシュが慌てて取り抑える。
「あれ? キュルタバは?」
「何よその略は。あいつらはお宝を換金するから別行動だって、魔法学園で落ち合うの」
「ふーん……。そういやタバサの怪我ってどうなの?」
ふと、ワルドの風によって吹き飛ばされた少女が頭に浮かぶ。
「あのね。あんたよか千倍ましよ。それよりそろそろトリスタニアにつくわよ」
(何よ。私の心配はしなくていいっての?)
そっけなくルイズは答える。しかし、その実心のうちでは軽く焼きもちをやいていた。一方才人は未だ
回復しきって無いのか糸が切れたように眠り始めた。アンデルセンはそんな彼を見て溜息をつく。
「忙しい奴だな……」



トリステイン王宮より、中庭に風竜が降り立った。
魔法衛士隊マンティコア隊が彼らを取り囲む。
「お待ちください! 我々は姫様の密命を帯びたものです。姫様にルイズ・ヴァリエールが来たと仰ってください。」
隊長であろう人物が彼らをじっと見る。
風竜、少年、町娘、長身の中年男性。
あまりに信じがたい。一目で貴族とわかるのはこの少女と金髪の少年だけ。
「貴方達のような得体の知れない者達を取り次ぐ訳にはいきませんな。まずは杖と武器を預かりましょう。」
仕方ないかと、憮然としながらも随う一向。しかしアンデルセンは簡単には行かない。
出てくる出てくる。爆薬付きの銃剣が。預かろうとした兵士がその重みで潰れてしまった。
なにせ三十本以上も銃剣が出てくるのだからたまらない。そこで隊長もこの人物を危険な者と断定した。
「この者達を捕縛しろ!!」
この場にその言葉に喜んだ人物が一人だけいる。当のアンデルセン神父だ。
「しょうがないですねぇ。」
顔が明らかに喜んでいる。銃剣を二本取り出した彼を三人がかりで止める。
「待ちなさい―――!!」
「ちょっと神父様! ストップ!ストーップ!!」
「君達! 逃げたまえ! この人は本当に危険なんだ―――!!」
その余りの必死さに遠巻きになる衛士隊。必死に止める少女達。
目を覚ましたサイトはその光景に、健やかな眠りに逃避しようとした。
「こら!! 起きたなら手伝いなさい!!」
マンティコア隊隊長はその、どこかコミカルな風景にも冷や汗を出しっぱなしだった。
もはや確信にまで自分たちが敗れるだろうことが予想できる。
それほどまでにこの神父は危険だった。
だから、慌てた様子で広場にやって来たアンリエッタ姫に、彼は一層の忠誠を誓ったのだ。


手紙を渡した時、アンリエッタは静かに泣いた。
「ウェールズ様は、戦死したそうです。クロムウェルの陣地に、無謀な突撃を駆け……」
「姫殿下……。」
「ウェールズ様は……私のことなど……思って下さらなかったのでしょうか……?」
「違います! 姫!」
ルイズははっきりと言った。
「ウェールズ様は王族としての誇りと、ハルケギニア全土の未来と、姫様への愛を……同時に守ったのです。」
そして彼女は伝えた、今は亡き皇太子の遺志と、今ハルケギニアに起こっている重大な危機を。

「よかった! 目が覚めたんですね?!」
「うん………まあ………。」
サイトは言葉に詰まる。シエスタのけしからない胸が、自分の腕に当たっている。
(何?何で?何で?)
ギーシュは羨望の眼差しでこちらを見る。
「君は何だね?! 何故そんなにモテルんだね? コツを教えたまえコツを!」
「モテルって………誰に?」
自分の身の回りの女性で、キュルケは本当に何にもないし、ルイズは時たま爆撃してくるし、
セラスさんにはベルナドットさんがいる、タバサとシエスタは………よくわからないが友達だろう。
「カ―――ッッッ! 天然かね? 天然がいいのかね?」
シエスタはギーシュの言葉にうーんと唸る。
「それはやっぱり………モテようなんて考えだけで行動しないことですよ。」
「グハァ!!」
ちょっと抉ってしまったらしい。
「モンモランシーはダメだぞ! 駄目だからな!」
「………誰?」
付き合ってられないので外に出ようとするサイト。そこにアンデルセンが入って来る。
「あ、神父!」
嬉しそうに駆け寄るサイトにアンデルセンは……拳骨を見舞った。


「~~~何するんですか!?」
「……いいから寝てろ。」
その迫力に怯みながら、ベッドに潜り込む。
「………無茶しやがって。」
「………すいません………。」
その雰囲気にギーシュは遠巻きになり、さしものシエスタも口を挟まない。
「いいか? お前は不死身ではない。
心臓を突かれたり首を刎ねられたり頭を爆薬で吹き飛ばされたら死ぬ。
解ってるのか?」
サイトの顔から冷や汗が滴る。解っていなかったらしい。
アンデルセンは自身の説明不足に軽い自己嫌悪に陥る。
そして本題に入る。
「全く、無茶な戦いしやがって、もっと自分の身を大切にしろ」
*1
シエスタとギーシュは全く同じことを考えていた。サイトは神妙な面持ちでそれに答える。
「いや、その、何て言うか……。あそこで、ちょっとでも退いたりしたら……。
何かが終わってしまう気がして」
「………死ぬかもしれんぞ」
「………死にません」
何となく、その光景が仲の良い父子に見えたため、シエスタの顔に笑みが浮かんだ。

なぜ、自分はこうも思い悩んでいるのだろう。自分はただの人斬り包丁。それでよかった。
今は、ペースを乱されっぱなしだ。
面倒くさい。
彼はそう一人呟いた。



「そうですか………。吸血鬼。」
アンリエッタは憂慮する。
「あのレコンキスタと言う集団は、吸血鬼を広めることで、信奉者を増やしているのですね………。
何と嘆かわしい。民を守るという貴族の、王族の最低限の気位を……。そんなもので聖地を奪還し、
始祖ブリミルの遺志を継ぐなど……。茶番もいいところだわ。」
アンリエッタはルイズを見据える。その瞳はさっきまでの不幸に酔う姫では無い。
誇り高く国と民を愁う、真の王族そのものだった。
「あなたの使い魔と、サイトと言う少年は、吸血鬼を狩る者だそうですね?お話できませんか?」

「いい? あなた達はただの平民なんだからね? 姫様になんかしたら、リアルで首が飛ぶんだから!」
「わかってますよ。」
「そうそう、水洗トイレみたく流されるのはもう嫌だからな。ハハハ……。」
軽口を叩くもサイトは少し緊張しているようだった。一方アンデルセンは全く普段と変わりは無い。
そして謁見の間に入る二人。アンリエッタは正装であり、その美しさと気品にサイトは見とれた。
その後、全く動じないアンデルセンを見て、この男の鉄人振りを感じた。
(本当に神様と結婚してるんだな……。)
最も十七の少女にいちいち靡いていていてはそもそも成人男子としてアレである。

流れる水を越えられず、日光を忌避し、聖書や聖水に弱く、香草を嫌う。
白木の杭を心臓に打ち込んだり首を刎ねたり銀や祝福された武器で攻撃すれば倒せる。
「しかし、メイジはおそらく対吸血鬼戦でほとんど戦力にならないでしょう。」
それはサイトも感じる所だ。そもそもメイジ殺しとよばれる戦士の存在からもわかるように、メイジは近接戦に弱い。
呪文の詠唱の際に距離を詰めるなど吸血鬼にしてみれば造作も無いことだ。
速射性に魔法より段違いに優れている銃器を使うプロですら1対1ではほとんど吸血鬼を狩れないのだから。
さらにただの風の刃や吸血鬼に効くかと言われれば答えはNO
火も相当の腕でなければ燃やしつくせはしない。
流水も弱点ではあるが、実戦となればどうであろうか。
「つまり、我々は対吸血鬼戦専用の部隊をつくる必要がありますね…………。」
「ええ、そこで姫様に相談なのですが……。」


「教会?」
「ええ。教会を作り、装備に祝福を施せば通常兵器でも吸血鬼を倒すことができます。」
「ですが…………。」
ハルケギニアではブリミル教の総本山である宗教国家ロマリアが力を持っており、
もし異なった宗教の建造物の設立を認めたというのであれば、重大な外交問題となる。
「では、私が適当な所を見繕い、勝手に建てますので、あなたがたは黙認して下さい。」
「いいのですか?」
つまり、ロマリアが因縁をつけて来た場合、アンデルセン自身が責任を取り、
かつ祝福済みの武器を与えるというのだ。
「構いません。吸血鬼達はもともと我々の世界のものですから。ねえサイト君?」
サイトはその言葉に感動を覚える前に一つ仮定した。
ロマリアがアンデルセン神父を捕まえようとする。
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ロマリアオワタ
「ねえサイト君。我々は信仰の自由を勝ち取らねばなりませんなァ。」
「アハ、アハハハハハハハハハハハハハハアハアハ」(やべえこの人!完全に二つの意味でヤる気だ!)
その二人の様子をアンリエッタは不思議そうに見つめるのだった。

「あの、サイト殿」
姫に自分の名を呼ばれ、サイトは恐縮する。成程姫は可愛くて、もとから初心な彼は思わず赤面する。
「ありがとうございました。ウェールズ様や、私の大切な友達を救ってくださって。」
その屈託のない笑顔で感謝され、彼は嬉しかったが、ウェールズの名を聞き、一転神妙な面持ちとなる。
「これは約束の報酬と、謝礼として何か贈り物を……」
そう言われ、サイトは思案する。帰る方法の手助けというのも浮かんだが、
この国の権力者に自分が異世界人だと知られるのもどうかと思った。
「じゃあ、何か、異世界からの珍しいものとかで心当たりがあったら教えて下さい。できたらでいいので……」


アンリエッタはその申し出の訳が分からずポカンとしたが、すぐに取り繕い頷いた。
そして虚空を見上げ、悲しそうに聞いた。
「ウェールズ様は私を……愛して下さらなかったのでしょうか?」
「あ、愛してました!」
サイトは自分でもなぜこんなに焦っているのかは分からなかった。目の前の姫もキョトンとしている。
「あの人はあなたを愛して、けれどあそこで退いたら、あなたが愛したあの人で無くなってしまうから。
あなたが愛した勇敢な皇太子、ウェールズ・テューダーで無くなってしまうから……。
だから……」
たかだか数時間一緒に居た人間になぜこうも感情移入し、焦っているかはわからない。
ただこれはどうしても自分がやらなければならないことに彼は感じたのだ。
その拙い、けれど必死な訴えにアンリエッタは儚くも優しい表情を浮かべる。
「そうね……私が愛したあの人は、そう……とても勇敢で……」
思い人に対する懐かしさと共に、新たな決意を瞳に宿す。
「あの人が勇敢に死んだのなら、あの人が愛した私は…………。
勇敢に生きてみようと思います」

「あれで良かったんでしょうか……?」
サイトは廊下を歩きながらアンデルセンに問う。
「さあ、わからん」
そっけない返事だった。
「だが、悪くないんじゃないか」
その言葉に一瞬呆けて立ち止った後、先を行く彼に慌てて付いていった。


「なんだー? サイトー? いっちょまえに悩み事か!」
「ええまあ………てかベルナドットさん完全に出来上がってますね。」
「馬鹿野郎――隊長と呼べ隊長とー。」
ここは城下町の酒場、ベルナドットに奢ると言われ酒場に連れてこられた。
(あああ、なんで俺の回りの大人はみんな一味厄介なんだろう。神父といいアーカードさんといい)
 近いうちに行われる宗教戦争のことを思うと憂鬱になってしまう。


「………お前なんか失礼なこと考えてるだろ。」
(酩酊しててもスルドサはそのまま!さすが隊長厄介だぜ!)
心の中で無理やりハイテンションになりつつ、赤ワインをちびちびやる。
「んだ、そんな女みてえな飲み方は! マスターテキーラ! ロックで!」
「隊長。俺未成年なんで………。」
「何言ってんだ! 俺がお前位の頃はバーボン三本やって救急車呼んだんだぞ!」
「ぶっ倒れてるじゃないっすか!」
「まあ今日は俺の奢りだ。パーっとやろうぜ。」
「そういやお宝どうしたんですか。」
「ああ、欲しいモンがあるんで大体はキュルケ嬢ちゃんに預けた。
それよりお前酒駄目か………。じゃあ綺麗なお姉ちゃんが一緒に寝てくれるトコの方がいいか?」
「隊長!!」
「悪い悪い。怒った?」
「一生付いていきます!!!!」
「なんだお前も男かコノ生臭坊主―!」
その後二人でつつき合う。絶好調に出来上がっている。テキーラはいつのまにか無い。
ふとサイトの隣に誰かが座る。
「あ、すいませ………………。」
「どうし…………。」
そこにいたのは、赤い服、赤い帽子、サングラス、眼。
アーカード、思い起こされるのは、ラ・ロシェールの一悶着。
思考を埋める、サイトは五文字、ベルナドットは六文字の言葉。
(オレオワタ)
(サイトオワタ)



サイト終了のお知らせに身を固くするベルナドット。サイトはというと聖書をパラパラしている。
「おっかしーなぁ。瞬間移動できないぞぉー」
「………落ち着け。そして戻って来い」
アーカードはと言えば優雅にワインをテイスティングしている。
成程ワインは味だけでは無く、色合いや香りを楽しむもの。その仕草には気品が溢れている。
(ひょっとして怒ってない? というか忘れちゃった?)
サイトはその姿に淡い期待を覚えてみる。
「……どうだった? 闘争の味は」
その問いにドキリとする。どの闘争かで意味合いはガラリと変わる。
「あの………誰との?」
「私とのだ」
(はいどう考えても俺終わりです。どうもありがとうございました。)
「あのよ、旦那。」
マッサージ機のように震えるサイトにベルナドットは流石に哀れになったのか助け舟を出す。
「その、旦那は、サイトをどうこうしようと思ってんのか?」
「さあ、何のことだ? 私は何もしていないが。」
アーカードはサイトを見て可笑しそうに話した。
「なあ、こいつはこんなにも私が怖いにも関わらず、私に立ち向かったのだ。素晴らしいとは思わんか?」
ベルナドットは頷く。確かにこの少年は自殺行為ともとれることをするが、それらは全て他人のためだ。
「おそらく、私がお前を殺そうとすれば、こいつはまた燃えたぎる油の様に闘争の炎を巻き上げるのだろうな」
「……冗談でも止めてくれ」
しばらく沈黙が続いた後、ふいにサイトが呟いた。
「あの、なんていうか………。いきなり、あの、ぶった切ったのは、その、良くなかったですよね?
一応、仲間なのに。その所為で結局タバサまで危ない目に遭わせたし……。スイマセン」
その言葉にアーカードは一瞬呆けた後、小刻みに震え始めた。


「アハ、アハハハハハ」
髪を掻き毟って笑う彼を店内の全ての人間が注目する。
唯一ベルナドットは異質なものを見る目でサイトを眺めていたが。
「フウ…成程……全く以て人間は不可思議極まり無いな」
そしてアーカードはワインを眺める。
「…飲まないんですか?」
「余り旨くない。」
元貴族であり、舌の肥えたアーカードが場末の居酒屋に置いてあるワインで満足する訳が無い。
「そうだな………。仲直りというなら、御馳走してもらおうか」
そう言い、ワイングラスをサイトの前に置く。察したサイトは懐の銃剣で掌を斬り、
その手を握りしめ、血をそこに垂らした。血の数滴垂らされたワインをアーカードは呷る。
「不味い…しかも薄い。出血し過ぎたな。」
「おいしいとか言われたらどうしようと思いましたよ……。あと薄さの何割かはあんたのせいです」
「フン、貴様が私に与えたダメージなど、この血の一滴よりも些細だ。元より気にするな。」
そしてアーカードはお代を置いて出て行った。ベルナドットはその姿を見送る。
「しかし…お前も大したもんだな………。サイト?」
言われたサイトは呆然と自分の脚をさする。
「ベルナドットさん、俺生きてます。」
「ああ、そうだな。」
その途端滝のような汗をかくサイト。顔が完全に蒼白である。
「寒い!寒い!」
ベルナドットはそんな彼に魔法の言葉をかけてやる。
「落ち着け!今から綺麗なお姉ちゃんとこいって暖めてもらおうぜ。性的な意味で」
その一言に一転して震えが止まりサイトの顔が輝く。
「うおー!! 隊長俺一生付いていきます!!」
「良し!! サイト副長!! 今より出撃する!!」
そして意気揚々振り向いた彼らの目に映った者達。
ルイズ、シエスタ、タバサ、そしてセラス。キュルケが楽しそうにそれを見ている。
思考を支配する7文字の言葉
オレタチオワタ



ふーん、そう、へえ。神父の代わりに守るとか何とかカッコいいこと言っといてそうですかそうよね
ずっとずうっとグースカ寝てやっと起きたらこれって全くもうしょうが無いわねえ

ええ全くしょうがないですねー。人をさんざ心配させといてこの天然タラシムッツリスケベは

FUCK

「痛え――!! てかそもそも何でお前らが怒るんだよ!! おかしいだろ?!」
「うっさい馬鹿犬! あんた私を守るとか言ったくせに何処いこうとしてんの?! 
罪なので罰としてチ○コもぐ!」
「サイトさんの! 浮気者―――!!」
「子どもになに吹き込んでるんですかあ?」
「犯罪」
「ギブ! ギブ! ギブ!」
「理不尽だよー!別に誰とも付き合ってないのに!」
「「いいから黙る!!」」



「で? ゾーリン? 本当に何があったか覚えてないの?」
「あ? ああ……」
シュレティンガー准尉はぼんやりとした調子で話すゾーリン・ブリッツ中尉を不思議そうに見つめた。
彼女を片田舎の土地にマジックアイテムをとらせにいったら、ふらふらと何も持たず帰って来た。
片腕を失くした状態で。無論、今は傷の再生を終えているが。
彼女にはその時の記憶が完全に欠如していた。
「忘れさせる力……か。」
ヴェオヴォルフの力でもそんなものは聞いたことがない。で、あれば……。
「どうします?シェフィールドさん」
そう呼ばれた女性はしばし黙考して言う。
「そいつがもう一度捕捉できたなら、手に入れるわ……」
その額には、何やら刺青のようなものが施されている。
黒い長髪に、どこかハルケギニアとは異質な風貌をしている。
「すいませんねー。迷惑かけてー。ウチのゾーリン脳みそ筋肉で出来てるからさ」
ギリギリギリ
「ま! 間接! 間接技は無し!」
寂れた隠れ家に少年兵の悲鳴が響き渡った。






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