あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロの工作員-04



シエスタが慣れた手付きでパンツを洗濯板にこすり付けている。
石鹸水の入った大ダライと綺麗な井戸水の入ったタライと洗濯籠を並べ、服を順番に浸して手際よく洗っていた。
メイド服の袖口を肩まで引っ張り、金ダライの中に左手で洗濯板を立てかけ、泡だらけになった右手で揉み洗いしている。


「困ったわ」
フリーダは洗い場に立ち尽くしていた。
洗濯機で済ませるのが当たり前だったのが突然、手で洗えと言われたわけで
血の付いた死体を片付けるのは慣れていても、下着についた体液には抵抗があった。

「どうしたんですか?」
シエスタが手を動かしながら聞いた。

「ルイズに洗濯物を頼まれたのだけど洗い方が判らなくて」
「いいですよ。今日は当番ですからまとめて洗っておきますよ」

広場の百鬼夜行に目を向ける。
「ところで、貴族は洗濯物をどうしているの?私が来る前まではどうしてたの?使い魔に任せるとしてもあんなのには無理だろうし」
「貴族の皆さんは魔法を使って洗濯してますよ。魔法って便利ですよね。フリーダさんのご主人様も………大変ですね」
同情するような視線を向けられた。
「………ん。何」
「いえいえ!何でもありません!」


塔の長い階段をしばらく登ると、ルイズの部屋へと着く。
流石上流階級のお嬢様の部屋。
寮の部屋にしてはいい家具が取り揃えられている。
黒桐のクローゼットに天蓋つきのベッド、毛足の長い絨毯に、しっかりとした木で出来た背の低い机、ランプ一つとっても細かい金の装飾

がなされている。
角にある本棚は小綺麗に整えられ、中の本も丁寧に使われているのが部屋の主の性格を窺わていた。

部屋へ入ると着替えを済ませたルイズがベッドの上に座り、フリーダを椅子に座らせるように促した。

「ねえ、フリーダ」
ルイズは恐る恐る呼び捨てにした。彼女の機嫌を損ねたらまた、正面から正論で叩き潰されてしまうかもしれないから。
「あなたには使い魔としてやっていってもらうんだけど、能力について確認したいの」
使い魔にはどんなことが出来るのか授業で習ったのを思い出す。
「まず、使い魔は目や耳を通して周囲の光景を伝えることができるんだけど………見える?」
「いえ、見えないわ」
ルイズは見えないと聞いてほっとする。見えたら見えたで秘密も何もあったものじゃないから。
「秘薬の材料集め、硫黄や宝石とか臭いで嗅ぎ分けられるらしいけど、出来る?」
「鉱物の臭いなんて嗅ぎ分けられないけど、調合なら出来るわ」
任務のため彼女は最初に人を殺してから8年間で28人の<<偽人格>>を受け入れた。
脳のチップに消した後も残る幽霊達はフリーダの逃れ得ない罪の証だ。
料理の上手なミカ・ラインバックは毒薬の調合を肌で覚えている。
フルート演奏者を目指していたファミール・ハジームは、いつも楽器ケースに爆弾を詰めていた。
「意外ね、そんなのが出来るんだ」
ルイズは満足そうに微笑む。
材料を集めてこれる使い魔は数あれど、調合できる人材はそんなに多くない。ましてやそれが使い魔ならなおさらだ。
調合には専門の知識が必要だし、メイジに秘薬は必要不可欠であった。

「後は雑用と護衛なんだけど。出来る?」
「料理は真似事程度、掃除はいつもやってるわ。洗濯は…駄目ね」
手で洗うのを見て驚いたフリーダだった。

「まあ、雑用はメイド達の仕事だからいいわよ。護衛はどうなの?」
「そこらの一般人よりは大分マシよ。護衛対象がよほどの馬鹿をしなければ大丈夫」
エゴの塊だったかつての同居人。
彼女は<<正しい>>ことのために街の住人全てを敵にしても一歩も引かなかった。


そろそろ朝食の時間である。学園の中央の鐘が鳴っている。
フリーダは貴族と同じ場所で食事をするわけにもいかず、
食堂の前で一旦別れ、下働きたちのまかないを分けてもらうことにした。

トリステインは広大な国土を持つ農業国家だ。
食卓に並ぶ食材も良いものが揃っている。

フリーダは前まで自炊が中心だったので他人の手の入った食事を食べるのは久しぶりだった。
どの料理も食材が新撰で手が込んで居る。

テーブルや椅子、食器やスプーン、フォークに至るまで木で出来ていて暖かみを感じる。
トマトやレタスがふんだんに盛り付けられたオリーブオイルの入りのオリジナルドレッシングが掛かったサラダに、
人参やジャガイモ、ブロッコリーが色とりどりに入っているスープ、焼き立てのパンは暖かくて香ばしい。
食べ終え、付いてきた安物の紅茶を飲んで一息ついて居るとシエスタを見つけた。

「素敵な学校ね」
「私が生まれたときからお世話になっているんですよ」
「シエスタの嬢ちゃんが初めてきたときはちっこかったからな。こんなにおおきくなっちまってよう」

料理長のマルトーが厨房の奥から出てくると節くれ立った指でシエスタの頭をガシガシと撫でる。
浅黒い角ばった顎と毛むくじゃらの太い腕は熊みたいだ。
豪快に笑いながらマルトーは冗談交じりにシエスタに声を掛け、手を伸ばす。

「やらしい目で胸見ないで下さい」
シエスタは胸を押さえつつ、赤くなった顔でマルトーの鳩尾を叩き、マルトーは大げさに仰け反って避ける。
仲良くじゃれあっている様は仲の良い親子であった。

「よう。フリーダの嬢ちゃん。俺の料理どうだったかい?」
「ご馳走様でした。とても美味しかったわ」
「そうかい。そうかい。異国の人にも満足してもらえて光栄だ。腹が減ったらいつでも来てくれよ。美人は大歓迎だ」
マルトーは満足そうに頷いた。

「そうだろ!お前ら!」
厨房の奥へ声を掛けるとうぃ~っすと他のコック達の野太い声が響いてくる。
「今度は私が料理をご馳走しますわ」
「おう!フリーダ嬢ちゃんの国の料理、食べるの楽しみだぜ」


教室は石造りで中央の教師が居る場所が一番低く、段上になっていて円周上に机が配置されている。
その様は大学の講堂のようで、お坊ちゃまお嬢様が集まる学校に相応しかった。
中央に黒板と、上下を紫色で揃え、尖がった帽子を被り、
ローブを着てマントを羽織り、杖を持った50代ほどの太った魔女が壇上に立っている。

魔法使いに黒板なんて益々ファンタジーね。
本や映画で見たのと殆ど同じ魔法使いの日常を見ていると次第に授業に興味が沸いてくる。

ルイズを含む全生徒の使い魔が揃ったため、教師と生徒の使い魔達の顔合わせと前学期の復習をかねて授業が行なわれていた。
使い魔の見立ては、魔法を使える者<<メイジ>>の資質を測る上で重要だ。
強力なメイジは強い使い魔を持つとされている、一生のパートナーたる使い魔によって将来が決まるとしても過言ではない。
たとえばグリフォンを召還した者は王族付きの宮廷魔術師になるだろうし、ゴーレムを召還した者は建築に高い才能を示すだろう。
今年は雪風のタバサが風竜を召還し、竜騎士として将来を期待されている。

フリーダは教室内の動物達を興味深く見つめていた。
白いフェレットやイタチやネズミ、鰐などが所狭しと並んでいる。
教室に入りきらない竜やバグベアードやゴーレムなどの大きな生き物は外で待機しているのが窓から見えた。
「ああ窓に!窓に!なんてね」
まだ見ぬ巨大生物に想いをはせる。
「…きっと、見ると発狂する大蛸や上半身が魚で下半身が人間の人魚もいるのでしょうね」

おのぼりさんのフリーダを見てルイズは呆れてため息をつく。
「メイジが使い魔を持つのは常識でしょ。アンタどんな場所に住んでたのよ」
「…遠い…ずっと遠い国よ」
他の国なら違うのも当然かと納得する。
「きょろきょろ見るのはいいけど目立たないようにね」
「ええ」
口では答えつつもフリーダはうわのそらだ。


「ああ~ら。ミス・ヴァリエール、召還失敗して平民を使い魔にしたの?」
艶のある女性の声。大人びた健康的な小麦色の肌に黄色の瞳の炎のような赤毛が特徴的な学生が居た。
体に自信があるのか、制服をだらしなく着崩し、ワイシャツのボタンを上から3つ外し、胸元を見せ付けている。
足元には赤く分厚い鱗で覆われた緑の瞳の、尻尾に火が点いた赤い鰐ほどの大きさがあるトカゲ。
「キュルケ!」
ルイズが即座に反応した。

「あなたの使い魔より私の使い魔の方がよほど高等よ!調合だって出来るんだから!」
「ふーん?」
キュルケがフリーダへ向き直る。

「私の使い魔は火竜山脈のサラマンダーよ。見なさいこの大きさと鱗のつや、好事家に見せたら値段は付けられないわね」
サラマンダーはのしのしと歩くと口から赤い炎を吐いた。
「あいさつがまだだったわね。私は<<微熱>>のキュルケ、使い魔のサラマンダーはフレイムよ」
「フリーダ・ゲーベルよ。宜しく」
フリーダは頭を下げる。

「ツェルプストーの奴なんかにいちいち頭を下げなくていいわよ」
ルイズは不機嫌に曾曾叔父の彼女がツェルプストーに寝取られた、祖母の婚約者が寝取られた、などとずっと口げんかをしている。
ヴァリエール家の歴史は寝取られの歴史であるらしい。

ルイズが一方的に噛み付き、当のキュルケは涼しい顔をして受け流している。
猫に猫じゃらしを振って遊んでいる感覚だ。
ルイズはムキになり過ぎて遊ばれているのに気付いてない。
キュルケはそれがまた面白くていじるのである。

「みなさん、春の使い魔召還は大成功のようですね」
教室の中央の壇上に教師が立っている。
紫色の帽子にローブを纏い太った中年女性の姿は、物語から抜け出してきたそのままの魔女の姿でフリーダは少し笑ってしまった。


ミセス・シェヴルーズは部屋に居る使い魔を見渡した。
彼女は歴史あるトリステイン魔法学園で才能ある貴族の生徒達に魔法を教えられるのを誇りに思っている。
使い魔の存在はそのまま主人の資質を現す。
今年はミス・タバサが風竜を呼び出し、教師達を大いに湧かせた。
他の生徒達も無難に使い魔と契約を結んでいる。
だが一人例外が居た、ヴァリエールである。

名門ヴァリエール家の三女でありながら魔法の成功率はゼロ。
平民を使い魔として使役している。
ヴァリエールの担任であるコルベール先生は人間の使い魔だと言い張っているが、
彼女の目から見て、本物の使い魔かどうかも妖しい。
学業は優秀、素行も良好、実技は壊滅の問題児。
どんなに勉強が出来ても、魔法を使えない貴族は貴族としての価値なしと彼女は考えている。
できもしない御託を並べるのは学者の仕事であって、学生には十年速い。

「まあ、とっても変わった使い魔を召喚した方もいるのですね」
皮肉である。ヴァリエールの素晴らしい血を引きながら魔法が使えない貴族であるルイズへのあてつけ。

彼女の希望通りにルイズへの野次が飛ぶ。
「ゼロのルイズ! 召喚できないからって、実家からメイド呼んでくんなよ!」
ルイズは歯噛みして言い返した。
「煩いわね!風邪っぴきのマリコルヌ!」
「僕は風上だ!ゼロのルイズ!」
嘲笑や侮蔑が入り乱れる教室の中でルイズはテーブルの下で手を力いっぱい握り締めていた。

シェヴルーズは自尊心が満たされたので生徒を黙らせようと思った。
「ミスタ・マリコルヌ。これ以上授業の邪魔をするなら退席していただきますよ」
彼女は杖を一振り。煩い生徒の口に粘土を詰めた。

「…下種な教師も居たものね」
はっきりとした声に教室が凍りつく。
ゼロの使い魔、フリーダの声だ。
「…学期初めに生徒の人気取り、駄目な生徒をダシにつかうなんてね」

「も、申し訳ありませんでした…ミス・ヴァリエール」
シェヴルーズは引きつった笑みを浮かべる。


「では授業を始めます。皆さんは私とこれから一年間『土』属性の魔法について…」
魔法の授業はフリーダにとって見るのも聞くのも新しい発見の連続だ。
この国では魔法は生活に密接に関わっている。
特に『土』属性の魔法は<<錬金>>を使った鉱物の精製、建築、運搬など生活に欠かせない役割を担っている。

何処にでもある地面の土でゴーレムを生み出し、重機として使い、
クレーンやトラック、ショベルカー代わりとして使う。
堤防補強などの単純な作業の場合、構造計算などを抜きにした場合土のメイジ数人で数日で完成させられる。
土を自在に動かし、壁や土台を容易に造れる。
<<錬金>>は生産設備もなしに鉄や銅を生産、これら全てを個人レベルでできるといった夢の世界であった。
レンガや窓ガラス、鍬の金部に至るまで全てメイジによるものであるらしい。
建築技術などに無理があっても、魔法による力技で造れるのだ。

薬品の調合や火薬などの化合物や、ランプや家具といった複数の素材を組み合わせ内部構造が複雑なもの、
ステンドグラスなどの繊細な調整が必要なものは<<錬金>>による制作が難しく、専門家の手を借りなければならない。
おそらく、ゴムなどの分子構造の特殊なものも造り辛い部類にはいるのだろう。

「………なるほどね」
馬や牛などが重宝される17世紀レベルの文化なのに、
黒板の一部のチョークや大きい窓ガラス、洗剤などの19世紀のオーバーテクノロジーがあるのは
魔法が使えるメイジが社会の中心に立っているのと大きく関係しているようだ。
洗剤や大窓ガラスなどは貴族が使うものである。
黒板やチョークは貴族の需要を満たす贅沢品であり、高すぎて貴族しか使えないものである。
魔法が使えない人々のための技術、例えば運搬や医療、作業機械などは
全てゴーレムや錬金などが代わりにやってしまい、
平民にあたる下層階級の底上げが行なわれず、魔法技術にばかり人材が集中する。
経済の二極化が起こり、歪な文化の発展が起こる。
その結果が貴族向けの小物の発達である。

17世紀に19世紀のオーバーテクがあるのではない。
19世紀に17世紀の技術しかないのだ。

ルイズにメイジが容易に精製可能な金属としている、青銅や銅などの製鉄所があるかと聞くと。
「あるわけないじゃない。平民はどうしてでかくて効率が悪いものを造りたがるの?」
と逆に聞かれ。
「硫黄や秘薬の材料を集めさせる方がよっぽど役に立つわよ」
と言われた。

人口比で見ると圧倒的少数のメイジ達による少量多品種生産が広がり、
社会のシステムとして機能しているのは根深い問題である。
たとえばメイジの生産力が一人で10、平民の生産力が1として考え。
彼等全体に100の予算を与えると一人頭の生産力が1割増えると考えるとする。
単純に生産力を比べるとメイジ11、平民1.1であるが、もし平民がメイジの100倍200倍居たらどうなるだろうと考えた。


ヴァリエールが使い魔とこそこそ話している。私の授業で余所見をするとはいい度胸だ。
先ほどはヴァリエールの使い魔の小娘に出鼻を挫かれたが
今度こそ教師を舐めた態度を矯正してやらなければなるまい。
「では実際にやってもらいましょう。筆記の成績がトップのミス・ヴァリエールなら私の授業を聞かなくても簡単ですよね」
「<<錬金>>における初歩、小石を金属片に変えてください」

小石を金属片に変えるのは小学生のメイジでもできる。
でも彼女は必ず失敗する。学校始まって以来一度も成功した事がない問題児だから。
私は失敗した姿を見てこう言うのだ「やっぱり私の授業が必要でしたね」と。

「ミセス・シェヴルーズ!」
「やめてください! 危険です!」
「先生はルイズを知らないんです!」
「うわーだめだー」

辺りから非難と悲鳴とあきらめが上がる。
引けなくなったルイズは勢いよく立ち上がり、杖を掲げる。
「やります!」
教壇へ足を踏み鳴らしながら進める。
その様子に上の段にいたキュルケがフリーダに声を掛けてきた。
彼女の隣の眼鏡を掛けた青い髪の小さな少女も上下に首を振っている。
「フリーダさん。危ないから隠れてたほうがいいわ」
彼女は声を掛けると下に潜り込んだ。
周囲を見ると罵声は止み、教室は静かになっている。
フリーダの隣の生徒もルイズの方向に背を向けしゃがみ、背中を丸め両耳を押さえてテーブルの下に隠れている。
嫌な予感がして彼女も背中を丸め他の生徒達と同じ姿勢を取る。
「…爆弾。………まさかね」

カッ!

視界が真っ白になる。半秒ほどの停滞の後、腹の底に響く爆音。
舞い散るプリント、ぶちまけられる黒インク、乱れ飛ぶ教科書。
窓ガラスが割れ、外に飛んでゆく。
「派手ね」

爆発が収まった後も、使い魔は驚いて暴走。犬猫の群れは爆走。
鳥達は逃走。トカゲ達は闘争。阿鼻叫喚の地獄絵図。

フリーダが壇を駆け下りると埃にまみれたルイズと、黒板に叩き付けられぐったりとしたシェヴルーズが倒れていた。
「大丈夫?」
「ちょっと失敗したわね」

ルイズに生徒達から総ツッコミが入る。
「お茶目ってレベルじゃねぇぞ!」
「シェヴルーズよおお死んでしまうとはなさけない」
「片付けがんばれよ。俺たちには関係ないけどな!」
「ざまあみやがれ!」
「イヤッハー!」

爆発を聞きつけた教員がやってきてルイズに魔法なしでの教室の後片付けを命じる。
当然授業は中止だ。
「…馬鹿ね、あなた」
フリーダは呆れた顔で片づけを手伝うのであった。




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