あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロの工作員-01



フリーダは、2時間も待って、宙港の出国ゲートをようやく抜けた。
<<特定制御タップ>>で自走鞄を操作しながら回廊を歩く。

「もし、これからつらいことがあったら、私を恨みなさい。受けてあげるから」
 数週間前までは嫌悪の対象でしかなかった少女に語りかける。

「なんか恥ずかしいですけど、フリーダさんにあえてよかったです」
 だが、今はそうは思わない。むしろその笑顔を守ってあげたいとさえ考えていた。
 そして、自分の思いを形にしようと考えた末、フリーダに言えたのは結局、またしても冴えない一言だけだった

「………ありがとう。私もよ」
 太陽に愛された微笑を浮かべるアリスの10mほど後ろでビジネスマンの男が片手で銃を構えていたのが見えた。
 フリーダはアリスを抱き寄せた



 トリスティンの有名な魔法学校の校庭では、二年生に進級する際にある儀式が行なわれていた。
サモン・サーバントと呼ばれる使い魔を召還する儀式だ。
魔法により自分にあった使い魔を呼び寄せ一生のパートナーとする。
雲一つ無い絶好の召還日和、緑の芝生の上で担当の教師達も満足そうに生徒達を見ている。
広場には竜や、鼠、犬、サラマンダー、バグベアードなど様々な生き物を生徒達は呼び出し成功を互いに喜び合い和やかに談笑している。
彼等は自身の使い魔の自慢話に花を咲かせていた。

 そんななかで取り残された生徒が一人。ルイズである。
召還を始めたのが4時間前、他の生徒が次々と成功していく中、魔法を失敗し続けている。
失敗魔法の爆発で校庭は掘り返され穴だらけになりルイズは泥とほこりにまみれたみすぼらしい姿になっていた。

 「ルイズ!早くしろよ!」
30分前まではヤジが飛び交っていたのだが、嘲笑を通り越し周囲の視線は同情に変わってきている。
時折聞こえる声も投げやりだ。

 頭の涼しげな中年の男性教師が声を掛ける。
「ミス・ヴァリエール、今日は調子が悪かったのです。サモン・サーヴァントは明日やり直しましょう」

 「お願いします!最後ですから…あと一回だけ、どうか一回だけ!お願いします!」
 泥だらけの姿で眼に涙を溜めつつ必死にルイズはコルベールに願う。
何度失敗しても続ける姿に彼は同情した。

 「判りました。ミス・ヴァリエール、最後の一回です。落ち着いてやりなさい」
と言うと帰り支度を始めた。周囲の生徒も同調して校舎へ向かおうとしている。

 「宇宙の果てのどこかにいる私のしもべよ!強く、美しい私の使い魔よ!我が導きに答えなさい!」
 ルイズの高い声が校庭に響く。大きな爆音と主に土煙が舞い上がる。
ひときわ大きな爆発に注目が集まった。
爆発の向こうに見えるのは何かの影。


 「……え」
 爆破に誰か巻き込んでしまったのだろうか。
そこにいたのはルイズより少し年上の少女が血を流して蹲っていた。
血の気の引いた肌は真っ白で体から溢れた血が黒い池を広げている。
女生徒から悲鳴が上がり、男子生徒はうろたえる、教師達の何人かは他の教師達を呼びに走り残りの教師は呆然と立っていた。
ルイズの担任であるコルベールは直ぐさま駆け寄り倒れている少女を確認した。

 少女の胸と腹部、大腿部には穴が開いていてどれも命に関わる深刻なものだった。
制服は黒く染まり、目鼻が整った端正な顔は痛みで歪み、プラチナブロンドの髪が血で黒く固まっている。

 「速く他の先生方に連絡を。保健室に連絡を取って、治療の魔法が出来る生徒は集まってください」

 騒然となる校庭の中でまたしてもルイズは一人取り残された。



 目を覚ますと彼女は見知らぬ部屋に居た。

 フリーダが横たわっているベッドの隣にあるカーテンの隙間から光が差し込み部屋の中に光の帯が出来ている。
天井は木の板が張ってあり、蛍光灯や電灯の類がない。代わりに古風なランプが吊るしてあった。
消毒薬の独特な匂いがする。ベッドシーツもカーテンや枕も白だ。

 電灯がないほかに机や棚などの殆どが木製でプラスチックや金属製品が殆どないところから部屋の主がひどく懐古趣味であると判った。
薄く目を開けて首だけを動かして周囲を見ると、たくさんの薬らしき瓶や棚に入ったファイル、書類を書きかけたままで放り出してある机

椅子に掛けられたままの白衣が見えた。

 部屋には白衣を着た30代ほどの女医と、彼女が居るベッドへ近づいて来ているピンク色の長い髪をした中学生ほどの少女。
緑のネクタイと黄色いブレザーを着て室内なのにマントを羽織っていた。

 起きる前に寝返りを打つ振りをして体が動くか確認すると共に盗られているものがないか確認した。
幸い、5mほど先の籠の中に彼女のホルスターごと偽装した拳銃があった。


 フリーダの意識が途切れる直前の記憶は組織の追っ手からアリス・マクブライドを守るために撃たれるまでのものであった。
肺、脇腹、右大腿部をやられ、出血多量で意識が朦朧とし、アリスを無事に逃がした後、安心して意識を失ったのだろう。

 体が無事なのを見ると宙港係員に助けられたと考え否定する。
撃たれたのは宇宙港のロビー、助けたのは港の係員かもしくは組織の関係者か。
アリスを本気で暗殺するつもりなら失敗したときを考え二重三重に予防線を張っているはずだ。
しかもセキュリティの厚い宙港ロビーである。
それだけの用意ができるなら医療スタッフや係員が入れ替わっていたとしても不思議でない。

 あの状況でフリーダを助けたのは組織の関係者の可能性がある。
アリスは宇宙一の資産家、ルサージュ家の正式な最後の遺産後見人だ。
自身が殺されていないとすると暗殺は失敗したらしい。
彼等には私を生かしておく理由はない。居ても邪魔なだけだ。
それが生きているとなるとアリスを逃がし、私を通じてアリスを懐柔させようとしていると考えられた。

 彼等はアリスを殺すか利用するために繋がりの深い関係者である彼女を利用するはずだ。
私を懐柔か洗脳するかして利用するためと考えるのが自然である。

首の差込口に記憶媒体を挿入し、偽人格を記憶領域に追記しすることで簡単に洗脳ができる。
機械の力を借りて偽の記憶を上書きし全くの別人にしてしまう。
現在の潜入操作の基本であり彼女自身も何度もやってきたことだった。


 病室を見ると明らかに宙港の医務室とは違うと判った。
部屋には全く医療機械がなく、木や石を使ったアンティークな調度品から見ても別の部屋だと判る。
撃たれて直ぐに医務室に運びこまれたと考えると不自然だ。
意識を失っている間に運び込まれたのだろう。

 血で汚れた服は着替えさせられ、パジャマを着ている。
敵に捕らわれ何処かも判らず絶望的な状況ではあるが撃たれた傷は完治しているようだ。
手足は痛みも少なく違和感無く動かせ、義体に変わってもいなかった。

 軟弾頭が直撃し、内臓と神経をズタズタに引き裂き、汚染物質を体内にばら撒いたはずだが体は健康そのもの。
手術による貧血や薬物の副作用などもない。強いていうなら長い間寝ていたせいで体の動きが多少鈍いぐらい。

 これは異常だ。手や足が生身、普通の体のままだ。
多少の傷なら再生できるが彼女が受けたような酷い傷となると別だ。
生身のまま治療するのは膨大な時間と金が掛かる。

 そもそも生身のまま体を再生する意味がない。
酷い傷があるならその部分を義体化すればいい、義体技術が発達した現代では、生身より遙かに高い性能で安価に手に入れることができる。
義体に体を変えるのは一般的なことであり民間でも広く行なわれていて抵抗感は薄い。
金をかけて生身を維持して治療するのは彼女のかつての同居人のようなよほどの物好きか金持ちぐらいだろう。


 薄目を開けると態度の大きいピンク髪の少女がフリーダが居るベッドの横で女医と会話していた。
彼女が起きていたら少女の尋問でも始まっていたのだろうか。

 意識が戻っていない振りを続けるため、眼を閉じ医者と少女の会話に集中する。
使い魔、進級、貴族、家名といった単語が聞こえてきた。
内容によると少女の親はこの国ではかなりの地位についていて彼女を使い魔として使役、つまり洗脳する必要がある。
それができないと家名に泥を塗るらしい。
使い魔を使役できないと進級できない。進級とは組織内のランクだろうか?
私を洗脳することで手柄を上げ組織内での評価を高め家名を守りたいようだ。

 腰には指揮棒をぶら下げ、武器らしきものは二人とも持っていなかった。

 此処はそれなりに地位が高そうで非武装な少女を人質に取り、情報を聞き出し逃げ出すのが良さそうであった。
都合よく少女が近づいてきたのでベッドに引き倒し背後から首を絞め、女医に見せ付けるつつフリーダの盾にする。
二人は驚いた表情のまま凍りついていた。

 「動くな。喋るな。私が聞いたことだけ答えなさい」

 女医が金魚のように口をぱくぱくさせていると新たに男性二人が医務室へ入って来た。
ローブを着た長いひげと白髪の眼鏡をかけた70代の男性と頭が寂しい眼鏡の真面目そうな30代男性である。
二人ともピンク髪の少女を人質に取っているのを見て面食らった様子であったが直ぐに禿げの男性は持ち直し指揮棒を構えた。

 フリーダの意識は闇へと堕ちていった。




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