あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

虚無と狂信者-15




レコンキスタ所有の戦艦の中。
火が、風が、氷が、刃が、彼に当たる。その度にそれに臆することなく進んでくる彼の為に、恐怖と恐慌が巻き起こる。
彼が一度その腕で薙ぎ払う度に、血の糸が生み出され、血風が舞い、死が起きて行く。
一方別の場所では両手から放たれる弾丸が人を粉砕し、息の根を着実に止めて行く。近接戦を挑んだものは
喉に食いつかれ、生きながらにしてその血を吸われていく。

「あーあ」
叫びと、狂乱と、死の言霊が空の風を突き破り、キュルケとルイズの元に届く。シエスタは口元を抑えて呟く。
「……エグイですね……。」
「「……言わないで。」」
少し落ち込む二人。ふと戦艦の辺りを舞う黒い蝙蝠達に気づいた。何やら戦艦と外を行ったり来たりしている。
蝙蝠達はそれぞれ石を持っていて、バケツリレーで運び、それらをポイポイと下海に落としていく。
*1
和む三人だが、それがもたらす効果はえげつない。
「うわぁーー!!風石がーーー!!」
「頼む!止めてくれ!落ちるーー!!」
戦艦は風石の力によって浮き、航行する。その風石が無くなると、当然浮力は不足し、墜落する。
だんだんと戦艦は高度を下げ、避難船の高さよりも下になった。そこでようやく彼らが帰って来る。
「お帰り、アンデルセン」「御苦労様、アーカード」
避難船の甲板に降り立つ、彼女らの使い魔達。その二人の姿を見て、キュルケとルイズの顔が強張る。
アーカードの首には銃剣。
アンデルセンの額には銃弾。
「「あんたらねー……。」」
「いやあいつら意外と手ごわい。」
「ああそうだな。」
「あんたら実は仲良いでしょう………。」



「あら?」
シエスタの声で一同はそちらを見やる。
高度が下がっていき操作不能となっている戦艦。その行先には、おそらく民間船らしい。
双方大騒ぎするも、抵抗はむなしかった。
クラッシュ
「うわーーー!!」
「誰か落ちたぞー!!」
シエスタは小刻みに震え始めた。ポカンとするキュルケにルイズ。静止するアーカードとアンデルセン。
暫くしてシエスタ除く四人は行動方針を一致させる。
「いやー災難ね?!」
「ええ、そうねヴァリエール。全く何でこんなことになったのかしら。」
「全く軍艦ともあろうものが、民間の船に激突するとは情けない。」
「それよりサイトの様子を見ましょうか。」
ぞろぞろと船室に入る四人。シエスタはぼんやりとそれを見送り呟いた。
「大人ってズルイわ………、もう。」
誰もいないところでおちゃらけた後、彼女もまた皆の後を追った。

サイトは船室で眠りこけていた。ピクりとも動かない。
「大丈夫かしら。」
港町にて眉間に一発の銃弾、内臓破裂二回。
間髪いれず、即死ものの雷撃二発、剣が胸をつらぬき、風による斬撃、裂傷、数知れず。
ついでに言えばアーカードとアンデルセンのまきぞえで眉間に一発、胸に銃剣二本。
相手で言えば、トライアングル一人、人狼一人、スクウェア一人、最強の吸血鬼一丁。
「再生者って便利なものね………。」
そのルイズの呟きにアンデルセンが首を振る。
「いえ………これだけダメージが嵩めば………。このまま目覚めないことも充分にありえました。」
一斉にアンデルセンに振り向く一同。そのまま彼は続ける。
「所詮人間ですからね。限界があります。」
彼とてアーカードとの戦いではギリギリまで追いつめられたのだ。再生能力とて限りがある。



「そ、そんな…………。」
「大体痛みはあるのだろう?ライトニングクラウドを喰らって気絶しないなんて大したものだ。」
そう、ベルナドットすら一撃で戦闘不能になったのだ。あの呪文がもたらす激痛は計り知れない。
魔法で治す場合でも本人の生命力を過ぎれば治癒が追い付かないことがある。
「まあこの分だとしばらくは眠ったままだろう。ゆっくり寝かしておいてやろう。」

「なあ、デルフ」
「んだよ相棒」
デルフの声は暗い。まあ、扱いが悪かったし当然だろうが。
「あいつの回復法術の力は異常だ。どういうことだ?」
サイトの回復能力の高さは自分に匹敵する。
つい最近カトリックに改宗したばかりの聖職者でもない少年がである。異常という他無い。
「うーん、そうなのか……。やっぱりな。まあ簡単に言うとそりゃあ相棒の力だよ」
アンデルセンは顔を顰める。意味が分からない。
「そして最後にもう一人、記すことすらはばかれる……」
「何だそれは?」
「伝承さ、悪いが、それ以上のことは言えねえ」
「ふざけるな」
「ああ、そうかもな。相棒、俺はお前さんのこと好きだよ。とんでも無く強いし、
面白い敵と戦ってるし、何よりお前さんは面白い奴らを惹きつける。
こんなに退屈しなかったのは六千年生きてて久し振りだ。
だから、俺がやることは皆お前を思ってのことだ。
だから、俺が知らないといったら知らねえんだ」
それっきり黙りこくった剣を置き、アンデルセンはその場を立ち去る。
サイトのいる部屋に向かうためだ。
その彼を見送り、デルフは一人呟いた。
「やっぱり……相棒はあいつとは違うよ」



サイトの回りにはシエスタ、ルイズ、キュルケ、タバサ。皆が集まっている。
「こうして見るとまあ合格点くらいの顔はしてるわね。ウフフ」
「こら色ボケキュルケ!あんた平民にまで欲情するなんて貴族の風上にも置けないわね!」
「あーら、別に私が誰を好きになってもあなたには関係無いじゃない。」
「グ、それはそうだけど…………。そ、そうだ!あんたに迫られたらあんたの取り巻きに
襲われるでしょうコイツが!一応コイツは私の命の恩人なんだからね?!」
「そうだって何よ………。大体そんなこと言ったらあなたの家だって公爵家じゃない。マズイでしょ?」
ルイズはワルドに言われたことを思いだす。気持ちが少し沈んで行った。
落ち込み様は、その沈黙が少年への好意を示すことに気づかぬ程である。
ただ確かに彼女に取ってみれば、二度も自分の命を救った彼に恋に似た感情を持つのも無理からぬことであった。
「そうですよ、御二方。貴族と平民、身分違いの恋は、不幸の元ですわ。」
シエスタがにこりとこちらを向く。本来は名誉でも何でもないが、目が勝ち誇っている。
「そ、そうね!平民同士お似合いよね!」
「ええ、ありがとうございます。ミスヴァリエール。」
睨み合う二人、その二人の対立を煽るキュルケ。その隣のベッドでベルナドットが溜息をつく。
「一応こっちにも病人いるからよ、静かにしてくんねえかな。」
タバサはそんな彼にサイレントを掛けてやった。
「便利だな。アリガトヨ。タバサ嬢ちゃん」
すぐさま彼の感覚では静かになる船内。ベルナドットはごろりと横になる。
ふと思い出すのは、あの皇太子。
「………元気に死んでっかな………今頃よ。」



「お先に!」
「御然……らば。」
「逝きます!」
爆音が響き、人が弾けて行く
三百の兵は、一丸となって包囲網を突っ切って行く。
勝ち戦の兵は、その皆殺しの空間に恐れをなし、次々と自ら道を空けて行く。
先頭のウェールズは精神力が切れたにも関わらず、二本の銃剣で立ちふさがる兵達を速やかに切り裂く。
さらに戦闘不能となった兵は体に巻いた火薬により速やかに自爆して行く。
昨日、貨物船より奪った硫黄である。
誰も彼も、舌うち一つ、溜息一つ零さない。
起こっているのは「死」なのに、彼らを支配するのは「歓喜」。
誰も彼も笑っている。
遠くの敵と戦う為だけに、戦っている。
消えてしまえと、死んでしまえというように。

その戦法は向かえ打つ敵にとっては最悪と言える。
ついに敵兵は潰走を始めた。
残る兵が数十となったころ、血で片目が塞がったウェールズの視界に一つの旗印が入る。
「クロムウェル………!」
ウェールズの顔が笑っている。
熱い呼気が、白い霧となって口から洩れた。
もはや失う領地もない。愛する人も置いて来た。
部下は自ら命を断ち。戦友はすぐ傍にいる。
(勝てる!)
この戦いの中、幾度も無く思ったこと。
仲間のメイジが火によってその道を開ける。
「さあ私はコールしたぞ!次は貴様だクロムウェル!覚悟を決めろ!
ハリー!!」



「閣下!お逃げください。」
クロムウェルは、ただの普通の男にしか見えぬ男は、のんびりと茶を啜っていた。
アルビオンで品種改良された茶葉だ。
「閣下!」
「そうさわぐな。なんのことはない。」
「何がです!王党派はすぐそこまで来ているのですぞ!?」
「うんそうだな。一杯どうだね?これはうまい!これを栽培してアルビオンの特産品としよう。」
「ですから………。」
「うんわかっている。」
クロムウェルは飄々と笑った。
「兵は宝、これ以上失う前に私みずから決着をつけ、勝利をより多くの士卒で味わおう。」
唖然とする部下を尻目に、ウェールズの怒号のする方へと向かう。
「いいだろう陛下。コールだ。」

天幕からあっさりと求めに応じて、クロムウェルが姿を露わした。
その姿はまさしくただの司教であり、ただの人間であり、それゆえに不気味だった。
体格などはウェールズとは比べ物にならず、あっさりと敗れそうである。
しかしウェールズは冷や汗をたらした。
(何故冷静でいられる?)
両者の距離およそ10メイル、間を防ぐ兵はいないにも関わらずである。
逡巡している間に兵が間に入る。すぐさま火炎がそれを覆った。
残ったひと欠片の魔力を行使し、死体の壁を飛び越える。
「オリヴァーーーーッッッ!!!クロムウェルッ!!!!」
ウェールズの特攻に彼は立ったままだった。そして手を少し差しのべてやる。
銃剣が突き立った、はずだった。



ウェールズの体を何かが貫く。緑色の何か。クロムウェルの体から生えるそれ。

それは、何本もであり、ウェールズの体が痙攣を始めていた。
もはや十数となった彼らは一斉に魔法を斉射する。
風が、氷の矢が、クロムウェルを貫いた、はずだった。
しかし、茨となったクロムウェルはそれを物ともせず、彼らを貫き、締め上げ、絶命させる。
最後に残った兵が叫ぶ。
「何なんだお前はー!?」
茨が、彼の周りをまるで御伽噺の城のように覆う。
その姿にレコンキスタは初めは戸惑いつつも、次第に大きな歓声を挙げる。
「神聖皇帝万歳!!」
「レコンキスタ万歳!!」
「『茨の冠』クロムウェル万歳!!」

かくしてニューカッスルの戦いは王党派の全滅と共に、貴族派三千の犠牲を生んだ。
王党派は全軍で敵に突撃し、クロムウェルの天幕に到達した。この戦いは伝説となる。
しかし、その戦いの後、レコンキスタはその志願者を大幅に増すことになる。
それは、クロムウェルの奇跡の力が初めて垣間見えた戦いだったからだ。



アーカードはその目線をアルビオンに向けて、極めて静かに佇んでいた。そこにキュルケが近寄って来る。
「一体何を考えているの?」
 彼はその狂喜を何ら隠さずに言う。
「いや、何。つくづくこの世は馬鹿共が多い。とな」
馬鹿共が一体誰を指すのかは大体察した。一つはサイト、一つはウェールズ。
「何だって、必ず死ぬような戦いをするのかしらね」
キュルケから言わせて貰えば、勝機の見えぬ戦いを挑むことと、勇敢さとは違うものだ。
「いや何。勝機などというものは億に一つ、京に一つとして転がっているものだ。
であるならば、それを目指して戦いにいった彼らは充分に勇敢と言える」
 彼の鼻孔には確かに、彼の好きな匂いがとどいていた。
「それに、戦うことと死ぬこと以外の人間の営みなど、全てくだらないことだ。
逃げて、住むべき城も、治めるべき領地も、守るべき領民も失くして生きた所で、一体何になるのか」
 キュルケはその言葉が、他ならぬ彼自身に向けられぬことに薄々感づいていた。
 不死身の伯爵、最強の吸血鬼、化け物を狩る化け物。
 でもなぜ、この己の使い魔が、こんなにも弱弱しく見えるのだろう。
 ひどく哀れで、滑稽で、子どもっぽい。
「不思議ね……。今のあなた。あそこで寝てる男の子よりも……、全然弱い気がするわ」
 アーカードは天を仰ぐ。その顔に浮かぶのは今まで見たことも無いほど優しい微笑みだった。
 憐れな男、人間でいられなくなった、弱い化け物。
 彼が守るべきものも、愛する人も、彼を知る者もみな消えうせてしまった。
 キュルケは想像する。体は瑞々しいまま、永遠に生きること。
 それは確かに素晴らしいだろう。
 だが己の使い魔を見る限り、それを欲しいなどとは思えない。
 優しく撫で上げたその首筋は、ひどく冷たかった。



サイトの異変にアンデルセンが気付く。彼の眼に一筋溢れる、涙。
「悲しい夢でも、見たのでしょうか?」
シエスタはそれを指で拭い、手の上で愛おしく眺めた。

ルイズとアンデルセンは二人で甲板に立っていた。少女の目には涙が湛えられている。
「ねえ?何でサイトや………あなたは、戦うの?」
アンデルセンは空を見ながら言う。
「きっと私と彼は別物でしょう。」
そう、俺はただの銃剣でいい
神罰という名の銃剣でいい
俺は生まれながらに嵐なら良かった 脅威ならば良かった 一つの炸薬ならば良かった
心無く涙も無いただの恐ろしい暴風なら良かった
半世紀近くそうだった
ならば、彼はどうだろう。

港町で分かれたタバサとベルナドットはセラスを迎えに来た。セラスは泣きだしそうな顔で、
「うぇーん!お嬢様ぁぁああ!生きてたー!」
と叫んでタバサに抱きついた。
「あ、あいつが、ワルド様がタバサさんを吹き飛ばしたんですよね?!大丈夫でしたか!?」
「平気」
「あの、俺は?」
「サイトさんは!?倒れてましたけど!?」
「だから俺は?」
セラスはベルナドットに敬礼する。
「隊長!任務御苦労様です!」
ベルナドットは苦笑いを浮かべ敬礼しつつも、心中は複雑だった。
(信頼の証なんだろうけど、なんだかなー)



「ウェールズは逝ったか………。」
シュレティンガー准尉は頷く。
「あの王子サマもあと10年早く生まれていたらねー」
「戦争とは情報戦で始まり、終わっている。本番でよく頑張った方だろう。」
猫耳をピコピコさせ、准尉は答える。
「あ、そうそう。王サマお気に入りのあの子ね。ワルド倒しちゃったよ。
あのおじさん、スキルニルを二つもくれてやったのにサ。」
男は笑って言う。
「君達といい、彼等といい、この世界にやって来た向こう側の者達は相応の力やアイテムを持って来た。
ではなぜ?何も持たず、ただの少年である彼が来たか?興味はある。」
使い魔でもなく、武器も持たず、化け物でもなく、ただその身のまま彼は来た。
何のつもりで。
「ブリミルも酔狂なものだ………。あの少年も可哀そうにな………。」
もはや彼は来ざるをえない。成り行きとはいえ彼はコールした。
いや、誰も彼も身を委ねたのだ。
担い手も赤髪もシャルロットもそしてその使い魔達も。
「さあ皆で行こうではないか……。皆殺しの平野(キリングフィールド)へ。」








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