「え!?」
「あのシエスタちゃんが!?」
「帰ってきた!?」
「あのシエスタちゃんが!?」
「帰ってきた!?」
そこまで言って彼らはふと気付いた。
「ところでシエスタちゃんって誰だっけ?」
「朝に会ったメイドのコスプレした娘だよ」
「そんなことどうでもいいからさっさと行こう」
「そだね」
「朝に会ったメイドのコスプレした娘だよ」
「そんなことどうでもいいからさっさと行こう」
「そだね」
シエスタの逆襲
「キュルケちゃんの豊満なー♪」
「バスト、ア~ンド♪」
「ヒップ♪」
「バスト♪」
「ア~ンド♪」
「ヒップ♪」
「バスト、ア~ンド♪」
「ヒップ♪」
「バスト♪」
「ア~ンド♪」
「ヒップ♪」
強敵ジェィムスンを見事打ち破ったタチコマたちは勝利の凱歌と共に学院の建物内を闊歩していた。それはもう何とも言えない歌と珍妙な踊りで調度品や壁を傷つけながらに。
だが幸いなことにすれ違う人はいない。しかし、歌が聞こえてはいないという訳ではないのだ。歌声はしっかりと誰かの耳に届いてる。望むと望まざるに関らずに。
ふと先頭を行く青いタチコマが歩みを止める。当然後ろを歩むタチコマは急には止まれず追突してしまう。
だが幸いなことにすれ違う人はいない。しかし、歌が聞こえてはいないという訳ではないのだ。歌声はしっかりと誰かの耳に届いてる。望むと望まざるに関らずに。
ふと先頭を行く青いタチコマが歩みを止める。当然後ろを歩むタチコマは急には止まれず追突してしまう。
「痛ッ。お前急に止まるなよ」
「そうだそうだ。タチコマは急には止まれないんだぞ」
「あ、ごめんね。それはそうと様子がおかしくない?」
「そうかなぁ……それより続き続き」
「そうだそうだ。タチコマは急には止まれないんだぞ」
「あ、ごめんね。それはそうと様子がおかしくない?」
「そうかなぁ……それより続き続き」
一旦は歌うのを止めたタチコマたちが高らかに歌い上げる。
「ルイズちゃんの貧相なー♪」
「バスト、ア~ンド♪」
「ヒップ……じゃなくて、周囲の空気が何か違わない?」
「何だよ。この歌6番まであるんだから最後まで歌わせろよ」
「バスト、ア~ンド♪」
「ヒップ……じゃなくて、周囲の空気が何か違わない?」
「何だよ。この歌6番まであるんだから最後まで歌わせろよ」
歌を止める青いタチコマに黄色いタチコマはプンスカ怒っている。一方の灰色のタチコマは冷静に質問をする。
「ねぇねぇ、空気が違うってどういうこと?」
「何というか……空気が冷たくなっているような…そんな感じかなぁ」
「うーん。僕のセンサーは特に以上はないけど」
「確かにセンサーに異常はないけど、ほら、あの変の感じがおかしくない?」
「も、も、もしかして……ご、ゴーストが囁くって奴?」
「そんな馬鹿な。僕たちにゴーストが……ハッ!?」
「何というか……空気が冷たくなっているような…そんな感じかなぁ」
「うーん。僕のセンサーは特に以上はないけど」
「確かにセンサーに異常はないけど、ほら、あの変の感じがおかしくない?」
「も、も、もしかして……ご、ゴーストが囁くって奴?」
「そんな馬鹿な。僕たちにゴーストが……ハッ!?」
青いタチコマが指差すのは食堂。そう、食堂といえばつい先ほどタチコマたちが滅茶苦茶にした所。
「そうか、わかったぞ!」
「つまりゴーストでなく、確定的な結論が今ある情報から導き出せる。つまり……なんだよ。せっかく説明しているのに後ろを指差して」
「つまりゴーストでなく、確定的な結論が今ある情報から導き出せる。つまり……なんだよ。せっかく説明しているのに後ろを指差して」
黄と灰色のタチコマが二体並び、その後ろを青いタチコマが震える指で差していた。
「後ろ?」
「どうしたんだよ。まるで廃棄処分の命令を下す少佐でも見つけたようなタチコマになって……」
「どうしたんだよ。まるで廃棄処分の命令を下す少佐でも見つけたようなタチコマになって……」
ゆっくりと二体のタチコマが振り返るとそこにはシエスタがいた。その表情は笑顔。とても綺麗な笑顔だった。目は笑っていないけど。
「こんにちは、タチコマさんたち」
「コンニチハ、サッキブリデスネ」
「君、声が!? えーと、朝ぶりだねシエスタちゃん。今お仕事?」
「コンニチハ、サッキブリデスネ」
「君、声が!? えーと、朝ぶりだねシエスタちゃん。今お仕事?」
タチコマも事態の異常性を認識したのか、AIの癖に動揺していた。
「そうですよ。いつもの仕事に加えて誰かさんたちのおかげで食堂の片づけまでしなくちゃいけないんです」
「ソレハタイヘンデスネ」
「ええ、それは大変です。それにどなたかの脳天気な歌声まで聞こえてとても腹立たしい気持ちです」
「そ、そうなんだ。邪魔しては悪いので僕たちはこの辺で……」
「ソレハタイヘンデスネ」
「ええ、それは大変です。それにどなたかの脳天気な歌声まで聞こえてとても腹立たしい気持ちです」
「そ、そうなんだ。邪魔しては悪いので僕たちはこの辺で……」
そそくさとその場を後にしようとするタチコマをシエスタは鷲掴みにする。
「し、シエスタさん?」
「うふふ。散らかしたらちゃんとお片づけしないといけませんよね?」
「えーと……」
「い・け・ま・せ・ん・よ・ね?」
「うふふ。散らかしたらちゃんとお片づけしないといけませんよね?」
「えーと……」
「い・け・ま・せ・ん・よ・ね?」
朝会った時とは雰囲気が違うシエスタに二体のタチコマは為す術もなかった。彼らにできたのは青いタチコマに助けを……。
「に、逃げたー!」
「僕たちを身代わりに!」
「僕たちを身代わりに!」
しかし、いつの間にやら青いタチコマは忽然と姿を消していた。
「うるさいですよ? それに朝はよくも好き勝手に……。別にそれに恨みがあるからこんなことしているんじゃないんですからね?」
「ハイ、ワカッテイマス」
「こ、この細腕にどれだけの力が……きっと少佐がゴーストハックしているに違いない!」
「誰がメスゴリラですか!」
「いってない!いってないよ!」
「バトーサンタスケテー!」
「ハイ、ワカッテイマス」
「こ、この細腕にどれだけの力が……きっと少佐がゴーストハックしているに違いない!」
「誰がメスゴリラですか!」
「いってない!いってないよ!」
「バトーサンタスケテー!」
二体のタチコマはドナドナを口ずさみながらシエスタに引き摺られ食堂に連れて行かれた。無論、彼らがあまり役に立たなかったことは言うまでもない。
一方の青いタチコマはその様子を遠くからうかがい、シエスタが立ち去ると汗を拭い去る動作をした。
一方の青いタチコマはその様子を遠くからうかがい、シエスタが立ち去ると汗を拭い去る動作をした。
「ふう。君たちは良いタチコマだったが君の父上がいけないのだよ」
そう言葉を残すと青いタチコマは一体で学院内を徘徊し始めたのだ。
「あの台詞一度でいいから使ってみたかったんだよね」
うろつくタチコマのセンサーに一人の少女の姿が映し出された。
「あ、ルイズちゃんだ。ねぇねぇ~聞いて聞いて~」
ルイズの姿を見とめるとタチコマは急いで駆け寄る。その姿はまるでご主人様を見つけ、走って近づく子犬のようであった。
近づくタチコマにルイズは気付いた。彼女は口を開くこともなく黙って杖を掲げた。
近づくタチコマにルイズは気付いた。彼女は口を開くこともなく黙って杖を掲げた。
「あらん? どうして杖を掲げているのかしらん?」
「心当たりはないの、バカタチコマ」
「心当たりはないの、バカタチコマ」
ルイズの言葉にしばし考え込むタチコマ。すると急に手をポンと叩いた。
「もしかして、ルイズちゃんの貧相なバストアンドヒップ♪って歌ったこと?」
タチコマの返答にルイズは顔を俯かしてワナワナと震える。そして掲げていた杖を黙って振り下ろした。
タチコマ目掛けて飛んでくるルイズの失敗魔法。タチコマはそれを驚異的な反射能力で避ける。そう跳躍で。
何とか爆発を避けたタチコマであったが、場所は屋内。天井に頭をぶつけて悶えてしまったのだ。
タチコマ目掛けて飛んでくるルイズの失敗魔法。タチコマはそれを驚異的な反射能力で避ける。そう跳躍で。
何とか爆発を避けたタチコマであったが、場所は屋内。天井に頭をぶつけて悶えてしまったのだ。
「あの歌はあんただったのね。バカタチコマ、いいえあんたなんかバカコマで十分よ。あんたが来ないせいで一人で教室を片付けなきゃいけなかったじゃない」
「それって逆恨みじゃ…」
「うるさいうるさいうるさい!」
「それって逆恨みじゃ…」
「うるさいうるさいうるさい!」
癇癪を起こし杖を振うルイズ。対するタチコマは……。
「た、タチコマには負けるとわかっても退けない時がある。でも今はその時じゃないので逃げる!」
「待ちなさーい!」
「待ちなさーい!」
三十六計逃げるに如かずと逃走を始めたタチコマ。追いかけるルイズ。
タチコマの逃げた先に立っていたマリコルヌ。気付いたときには遅すぎた。轢かれたマリコルヌ。追い討ちにルイズの失敗魔法の爆発に吹き飛ばされる。
倒れ伏したマリコルヌを介抱する人間など一人も……いや一人いた。
そうたまたま近くを通りかかったギーシュ、その人だった。
タチコマの逃げた先に立っていたマリコルヌ。気付いたときには遅すぎた。轢かれたマリコルヌ。追い討ちにルイズの失敗魔法の爆発に吹き飛ばされる。
倒れ伏したマリコルヌを介抱する人間など一人も……いや一人いた。
そうたまたま近くを通りかかったギーシュ、その人だった。
「ああ、マリコルヌ」
「ぎ、ギーシュ、君だけだ。他の奴らは何と冷たいんだ」
「ぎ、ギーシュ、君だけだ。他の奴らは何と冷たいんだ」
倒れたマリコルヌに肩を貸し起き上がらせるギーシュ。その前に一人の少女が鼻血を垂らしながら立ちふさがった。
「ギーシュ……」
「も、モンモランシー?」
「も、モンモランシー?」
ギーシュは理解できないでいた。何故モンモランシーはどこにも鼻をぶつけていないのに鼻血を出しているのだろうか。
彼は理解できない。モンモランシーが何故頬を少し赤らめ、息を荒くして興奮しているのだろうか。
彼は理解できない。モンモランシーが何故頬を少し赤らめ、息を荒くして興奮しているのだろうか。
「ギーシュ。あなたにそういう趣味があったなんて知らなかったわ。しかもマルコメと薔薇展開というのはどうかしら?」
ギーシュはマルコメじゃないマリコルヌだと言おうとしたが止めた。だってモンモランシーの目が血走って怖いんだもの。
「攻めはギーシュ? やっぱり受けかしら?」
モンモランシーの妄想は止まらない。
結局、このルイズとタチコマの追いかけっこは周囲に甚大な被害をもたらし、シエスタに二人(正確には一人と一体)が怒られるまで続いたという。
「廊下を走り回らないでください!」