あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ナイトメイジ-20


「どうしよう、じゃないわよどうしようじゃ。何とかしないと。ルイズは生きているんだし、それに力を失ったわけじゃないんだから全部ダメになったわけじゃないのよね。何とか巻き返さないと。えーとえーとえーと、まずは……。うん、そうしましょう」


遠くで戦いの音がする。
それが徐々に近づいてきていてもルイズは泣いていた。
悔しくて泣いていた。
つらくて泣いていた。
悲しくて泣いていた。
そして扉のきしむ音がした。
ルイズはワルドが戻ってきたのかもしれないという期待と恐れを混ぜたまなざしでそれを見たが、その先にいたのはベルだった。
「どうしたの?ルイズ」
ルイズの使い魔はこの礼拝堂に立ちこめる血のにおいなど気にならないのか奥に向かって歩き、ルイズのそばに来ると手を差し伸べた。
「ワルドが、ウェールズ王子が……姫様が……あ、ああああああぅ」
語ろうとしても言葉がうまく出ない。
思い出すたびに嗚咽が邪魔をする。
「そう」
それなのにベルはすべてがわかっているようにうなずいている。
「何でこんな事になったの?私が悪かったの?どこが間違ったの?」
あったのかもしれない。無かったのかもしれない。
だからそれは今すぐ答えられるものではない。
その答えられない問いかけにベルが答えた。
「あなたに力がなかったから」
「え……?」
「力がなかったからウェールズ王子は殺された。アンリエッタは浚われた。全部、あなたの無力が招いたこと」
「そう……なの?」
ベルは優しく、ひたすらに優しく答えた。
「ええ。あなたは無力よ」
ルイズの目からまた涙が落ちる。
叫び声のような嗚咽は止まらず礼拝堂を満たし、響いた。
「だから帰りましょう」
──そう、帰ってしまえばいい。帰ってしまえばきっと……
ルイズは学院に帰るために差し伸べられたベルの手に自分の手を伸ばす。
「フーケの時とは違うものね」
──フーケ?
手が止まる
ルイズはあのときの自分の言葉を思い出す。
──敵に後ろを見せないものを、貴族と呼ぶのよ
なら今、帰るのはどういう事か。
間違いなく敵に後ろを見せることだ。
それは貴族の行うべき行動ではない。
それに気づくとルイズの目から落ちる涙は無くなった。
「いいえ、帰らないわ」
ルイズはベルの手を握る。
帰るためではない。敵に後ろを見せないために。
「浚われた姫様を助け出す。帰るのはそれからよ」
「力もないのに?」
ルイズは立ち上がる。
その両目には迷いはなく、両足には力がある。
「力があるか無いか無いかなんて関係ないわ。無くても姫様を助けないといけないのよ。それが貴族としての、いいえちがうわ」
そう、ちがう。
それだけではない。
ルイズが貴族でなくともやらなければならないことだ。
「姫様の親友としての私の使命よ」
「そう、なら行きましょう」
「ちょっと待って」
ルイズは背後に横たわるウェールズ王子の死体のそばにしゃがみ込む。
血の海の中でも気にはならない。決心がルイズを支えていた。
ルイズが何か形見になるものはないかと赤く濡れている王子の死体を探っていると、彼の指先にルビーの指輪を見つけた。
「王子様、申し訳ありません。でも、姫様は必ず助け出してトリステインにお連れします」
ルイズは指輪を抜き取り強く握りしめる。
「これは形見にいただいていきます。その時には、これを姫様に……」
死体はなにも語ることはないし何もできない。
「もういい?」
「ええ、行きましょう」
ルイズはベルの後をかけだした。
礼拝堂にはもう言葉を話すものはなにない。
そこには静寂を作り出すもののみが残った。


「力があるか無いかなんて関係ない……か。でもルイズは分かっているのかしら。その言葉の裏側には力を渇望する強くて貪欲な意志が横たわっているのにね」


ゴーレムが城門を破る音がしたのはつい先ほどのことだ。
戦いの場は既に城内に移り、剣劇の音が聞こえる。
パリーの居るホールにもレコン・キスタ兵が大挙して押し寄せてきた。
皆目を血走らせ、中にはこれからの略奪で何を奪うか物色している気の早い輩まで居る。
ウェールズの戦装束を着込んだパリーは老いた声を魔法で高くして叫んだ。
「我が名はウェールズ・テューダー」
その名乗りにレコン・キスタの兵達は色めき立つ。
ウェールズを倒したとなれば大手柄だ。
報酬が数倍にふくれあがることは間違いない。
兵達はホールのそこかしこに置かれた樽を乗り越え、よけながらパリーに殺到する。
「レコン・キスタの方々、よくぞここまで参られた。あいにく何もない城ではあるが火薬だけはこれこのとおり、山のようにある」
またもレコン・キスタの兵達は色めき立つ。
その言葉で彼らはこのホールに置かれた大量の樽のに何がつまっているかが分かったのだ。
そして何のために置かれているのかも理解した。
「たらふく食らわれよ」
今度は逆に兵達はホールの出口に殺到するが狭い扉に殺到しては出られるものも出られない。
パリーが発火の呪文を唱えると、杖の先に火が灯った。
「王子、どうかご無事で」
杖を押しつけられた樽は瞬時に火に包まれ、燃え上がる。
数を数える暇もなく樽の中の火薬はパリーを巻き込んで爆発を起こした。
それにつられ、ホールの中の樽もすぐさま爆発を起こす。
火竜の吐息すらも凌ぐような炎がレコン・キスタ兵を飲み込んだ。


「滑稽ね。ウェールズはもう死んでいるのにあそこで戦っている何人かは彼のために戦っているなんて」


「ベル、何か言った?」
「なんにも」
パリーの遺志は既に果たされることはないが、彼の行動はルイズに幸運をもたらした。
立ち上る火炎と城を揺るがす爆音が人の注目を引かぬはずはない。
二人の少女はそれに紛れて城を離れ、そして戦場から離れた。


三百。
これがこの戦におけるアルビオン王国軍の損害である。
これはすなわち全滅を意味する。
軍事用語での全滅ではない。一兵卒残らず死亡という意味での全滅だ。
一方、レコンキスタの損害は二千。
王国軍は彼らが望んだように望むだけの戦果を存分に上げたのである。


戦が終わった次の日。
ワルドはニューカッスルの戦場跡を検分していた。
あたりでは兵士達が城に残された財宝を漁っていたが彼はそんなものには興味がなかった。
人を待っていたのだ。
戦いが終わってすぐ、速度に優れた風竜に乗った騎士にしたためた手紙を渡した。
手紙を受け取った人物はよほど急いでいたのだろう。
返事は口答できた。
「すぐに行く」
内容はそれだけだった。
手紙を出した相手は陣の後方にいる。
来るのはもう少しかかるだろう、と足下の小石を蹴り飛ばしたワルドに声がかけられた。
「子爵!ワルドくん!知らせを聞いて飛んできたよ。遅れてすまなかった。いやはや、立場というものは時に不便なものだ。大急ぎで駆けつけたかったが護衛だ何だといろいろあってね。今までかかってしまった」
この三十代半ばの聖職者のような格好をした男こそレコン・キスタ総司令、オリヴァー・クロムウェルである。
事実彼は元は一塊の司教であり、共和制を標榜する貴族議会の投票により総司令に任じられてからそれほど日数はたっていない。
「いえ、出迎に遅れ謝罪せねばならないのは私の方です。お許しください」
膝をつき、頭を垂れるワルドの肩にクロムウェルは手を置き、人なつこそうな魅力的ともいえる笑みを浮かべた。
「それくらいがなんだ。子爵。君は目覚ましいと言う言葉も陳腐に聞こえるような働きをしたのだ。もっと誇りたまえ。それでだな、子爵……」
クロムウェルは待ちきれないというようにいささか早口で言葉を続けた。
「本当に、捕まえたのだろうね?」
「はい。間違いありません。しかし閣下」
ワルドの面を上げ、視線をクロムウェルの後ろに立つ眼鏡をかけた女性に向けた。
「彼女は何者なのです?よろしいのですか、この話を聞かせて。まだ誰にでも聞かせて良いようなものではないと思うのですが」
「おお、そうだな。では、紹介しよう」
クロムウェルは片手でその女性に前に出るように促し、そのすぐそばに立つ。
「といっても余も今日、出会ったばかりなのだがね。彼女の名はマチルダ・オブ・サウスゴータ。かつて王家に不当にも取りつぶされたサウスゴータ太守の娘だよ。昨日もゴーレムを使い我が軍の勝利に貢献してくれたのだよ」
マチルダと紹介されたその女性は品の良さそうな顔をワルドに向け、わずかに頭を下げた。


土くれのフーケがアルビオンに到着したのはつい二日前のことである。
ルイズの乗るマリー・ガラント号にベール・ゼファーの指示により密航したフーケはニューカッスルに到着するとすぐさま船を下り、城から抜け出した。
その後フーケは思案することになった。
もともとレコン・キスタに潜り込むつもりでアルビオンに来たのだが、それをどうやって果たそうかと言うわけだ。
幸いにもそれはすぐに解決した。
レコン・キスタには以前彼女の父親が懇意にしていたとある貴族が参加していたのだ。
首尾良くその貴族と接触したフーケはマチルダ・オブ・サウスゴータという本名を明らかにし、こう言ったのだ。
「父の無念を晴らすために、どうかレコン・キスタに参加させてください」
かくしてレコン・キスタの一員となったフーケことマチルダは攻城戦においてゴーレムの一撃で城門を破壊し、さらにはその功績によって司令官であるオリバー・クロムウェルに紹介されることとなったのである。


「君の二つの働きを是非彼女にも見せたいと思い連れてきたのだよ」
「分かりました。では、こちらへ」
立ち上がったワルドは二人を案内し、歩き出そうとしたところで呼び止められた。
今度はまじめそうな少年の兵士だった。
これが初陣なのだろうか、彼は少しおどおどしながらワルドに報告を始めた。
「あ……の。子爵の妻と名乗る女性が来られております。どうしましょう」
「なに?妻?」
ワルドは少し考える。
──自分の妻?
ワルドには心当たりがあった。
それはルイズのことだろう。
「ほう、子爵は結婚をしていたのかね。それは初耳だ」
「ええ、つい先日のことですが。彼女は待たせておきます。まずは閣下に……」
「いやいや」
クロムウェルは笑みをさらに大きくする。
「君の妻にも見せてあげようじゃないか。いや、しかし今日はすばらしい日だ。4つもの出会いに巡り会えるのだからね。ブリミルがお引き会わせとしか思えないではないか」
聖印を切り、神に祈るクロムウェルはまさにブリミルの忠実な使途であった。


レコン・キスタの陣のすぐ側でベール・ゼファーは3度ほどうなずいた。
「向こうはこれでいいわね。さて、私もやることをしないと」
周囲を見渡し、あれはダメだ、これもダメだ、と言っていると彼女のすぐ横でばさばさという音が聞こえてきた。
風竜が下りてきたのである。
その背に乗るのはまだ年若い竜騎士だ。
慣れぬ戦場で竜の操作を誤ってしまったのだろうか。普通ならばこんなところに下りるはずはない。
「ちょうどいいわ。あれにしましょう」
ベルは全くそれが当然というように少年騎士の前に立ち、そして命じた。
「私の言うことを聞きなさい。いいわね、あなたはこれから……」
少年は突然現れた少女をきょとんと見下ろしていた


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