あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロのパラサイト-04



豪華な昼食を心行くまで堪能したルイズは、ワイングラスを揺らしながら満腹感に浸っていた。
今までのルイズからすれば異常すぎるほどの食欲に周囲は驚き、思い思いの嫌味を聞こえるように飛ばしたかが、ルイズの耳には雑音以下の物としてしか入らない。
テーブルクロスの中で触手を伸ばしていつでも下僕に変えてやれると思えば、負け犬の遠吠えもいいところ。その気になれば額が擦り切れるまで土下座させる事も容易い。
この後は地盤を固めるため、理解的であるコルベール辺りを捕まえて、自分の使い魔の能力を認めさせておくつもりだった。
主人と一体化して力を与える、とでも説明しておけばいいだろう。これ以上は手の内を明かすつもりは無い。
緊急時に隠されていた力を引き出せる、なんて物語では良くあることではないか。

「ケティ! これは誤解で!」

部屋に戻ろうとした時、食堂の片隅から聞こえてきた喧騒が耳に入った。周囲の人間も釣られて席を立つ。
暇つぶしにとルイズも覗きに行ったが、内容はかなり下らない物だった。それでも聞いてしまうのは野次馬根性のなせる業か。
ギーシュという男子生徒が二股をかけたところ、香水を落としたせいでその片方にばれたらしい。
周囲に向かって花は多くの者に愛でられてこそ、だなんて言い訳をしたために、もてない事で有名なかぜっぴきのマリコルヌが乱入。
大きくなった騒ぎを聞きつけたモンモランシーは怒りに震え、気づかぬままにとんでもない言い訳を展開するギーシュの脳天に、フルスイングでワインボトルを……。

「うわ……、これは死んだんじゃ……」
「君は良い友人だった。だが、君の女癖がいけないのだよ」
「さよならギーシュ……」

頑丈なはずのボトルは粉々になり、倒れ伏したギーシュの手足はピクピクと震えている。
頭から血を流しているギーシュの顔は完全にやばい方向に爆走中であり、どこからかメディーック! なんて声も聞こえ始めた。

「……バカだ」

ルイズはそう呟いて人ごみを抜けると、足早に食堂を後にした。
教師連中に止めなかった責任を押し付けられたり、話を聞かれて時間を無駄にされてはたまらない。
コルベールを探していると、廊下で顔を蒼くして走っていく何人かの教師とすれ違う。ギーシュが死んだのだろうか?
やはり寄生体は、今しばらく寝かせておいたほうがいいと結論付ける。人間が死に掛けるだけでこの騒ぎなのだから。
数が増えるほど命令を経由して伝達できるために距離は伸びるが、反面広範囲になるほど大雑把な命令しか送れなくなる。
その中の一人でもこういう事態に巻き込まれれば正体を現してしまう可能性が高く、特に街中で寄生体を撒き散らす様な事になれば、大パニックになってしまうだろう。
グールならまだしも新種の化け物の発生となれば吸血鬼以上の大騒ぎになり、スケープゴートが無ければ不味い事になる。


「あ……、ミスタ・コルベール。お話があるのですが……」

学校の外に出ようとしたところで、小屋から戻ってきたらしいコルベールに出会った。
周囲には人影も無く丁度良いので、真実と嘘を交えて使い魔の能力を説明しておく。向こうで読んだ事のある小説と混ぜてみたり。
別の世界から来た幻獣の一種で、ディテクトマジックが通じないのはこの世界の魔法とは違うからだとか。
主人の肉体能力を強化したり、その他にもまだ本の初歩でしかないが、このように杖を消したり出したり出来るとか。

「別の世界、ですか……」

最初はあまりに突飛な話に戸惑っていたようだが、今コルベールが作っている物は向こうではエンジンと呼ばれている、などと話すとすぐに乗ってきた。
幸いな事に向こうで乗っ取った少女が蒸気機関の構造を大まかに知っていたので、それを伝えるとコルベールはものすごく上機嫌になる。
呼吸を荒くし大変興味深いなどと言って眼を光らせ、確証は無いもののガンダールヴのルーンとほぼ一致するなどと漏らす有様だ。
そんな重要な事を生徒に喋ってしまっていいのだろうか。なんとも平和ボケしている。

「ガンダールヴ、というと……伝説の?」

「そう、その通りです! ……しかし、今のところ私の推測でしかありません。
あくまで、参考にしておく程度にしておいてください。私は引き続き資料を探して見ますので」

これはかなりの朗報だった。伝説となればまともな資料などあるはずも無く、かなりの無理が利くという事だ。
そこで、この使い魔と向き合ってみたい、と理由をつけて2,3日授業を休む許可を申請してみる。
最初は難しい顔をされたが、蒸気機関の他にも思い出すかも……と呟くと一発だった。
これでツェルプストーが部屋に入り込んできても、教師を通じて黙らせられるし、ついでに自由も手に入れた。
今日はオセルの曜日だから虚無の曜日が混じってしまうが、この調子なら小出しにして休みをぶん取るのも難しくないはず。
とりあえずの目標を"翼を作って空を飛ぶ事"に絞る。寄生させるのは部屋に呼んだメイド程度で良いだろう。

「何か足りない気がする……」

だが、何か足りないという焦燥感というか不安感のようなものがルイズの中に芽生えていた。
翼を作り出す事は可能だと思うが、今のままでは駄目な気がする。そもそもルイズは翼の詳しい構造などを知らなかった。
設計図……そんな単語が頭に浮かぶ。森にでも行って適当な鳥を捕まえ、バラバラにして内部を調べればいいのだろうか。

「ん……?」

空を見上げていたルイズの視界に、丁度お目当てのものが映った。おそらく伝書用の白フクロウだ。
ルイズの視力は人間よりかなり上方修正されており、その足にくくりつけられた手紙の筒まで見る事が出来る。
手紙を受け取ったのは蒼い髪の少女だった。たしか人形のように感情が無い生徒で、彼女は風竜を召還していたはず。
ルイズの立っている場所から女子寮の窓までは、直線距離で40メイル以上も離れていたが、少女の顔に浮かんだ苦々しい表情まで見て取れた。
あのフクロウは単なる伝書用と考えられたが、誰かの使い魔である可能性も考えると、捕獲はやめたほうがよさそうだ。


「だめかあ、せっかく見つけたのにな……」

それでも未練たらしくフクロウを眺めていると、少しだけ祈りが通じたのか、一部だけだが手に入った。
具体的に言うと羽が一本落下し、5メイルほど離れた地面に落ちたのだ。本体は飛び去っていってしまったが。

「これじゃあねえ……」

極めて軽いそれを手に取り、指でくるくると回してもてあそぶ。長さは15サントほどだろう。
羽の手触りは素晴らしいものがあったが、流石にこれだけでは設計図も作れまい。
しかしなぜか捨てる気になれず、ルイズはそれを自室まで大切に持ち帰っていた。

「設計図……DNA……?」

よく分からないが、これが求めていた物なのだろうか。本能に近い部分がそう訴えている。
部屋のロックを確認すると、ルイズは声のままに羽を口に入れた。喉越しは最悪に近かったけれど。

「……! が、ガアアアァッァ!」

その瞬間、ルイズの頭の中に途方も無い量の情報が流れ込んできた。
餌となる生物、子育ての方法、天敵、肉体の作り……。
頭の中で何かが連続して爆発している。強制的に流し込まれる情報量が多すぎる!
全身を掻き毟りたい衝動を必死で押さえ込もうとするが、四肢がランダムに元の姿にもどってのた打ち回った。
触手は体に巻きつけて防いだが、このままではいずれ部屋中を引き裂いてしまうだろう。
荒れ狂う濁流の中に翼の情報を見つけると、それだけを抽出して、以外の全てを頭からたたき出す。

「……死ぬかと思ったわ」

床の上に転がりながら肩で呼吸を繰り返した。頭の中を焼けた鉄の棒でぐちゃぐちゃに引っ掻き回されたような気分だ。
しばらく目を閉じて呼吸にだけ専念しているとどうにか落ち着けたが、未だに目の前には星が踊っており二度とやりたくない。
骨が溶けた様に力が入らず、空を飛ぶどころか体を起こす事すら無理そうだった。もうしばらく床の上で我慢する。
再び頭の中に声が聞こえて、最初に寄生した物と別種の動物のDNAを取り込むのは危険が伴うと教えてきた。
人間のように高度な知能を持つ生物に変わっていなかったら、処理能力不足で鳥と混ざった肉の塊になっていた可能性まであったらしい。

「そういう事は、早く教えなさいよっ!」

自分に自分で文句を言うというのもおかしな話だが、今はそれぐらいしかやれる事が無い。
たっぷり時間をかけて何とか立ち上がると、ベッドの上に体を投げ出した。もう少し休憩が必要だ。
仕方が無いので目を閉じてイメージトレーニングに励む事にする、白く美しい翼がはっきりと脳裏に浮かんできた。
今のルイズなら、背中といわず腕でもどこでも羽を生やす事が出来るだろう。そう思えば危険を冒した価値はある。


「そろそろ、いいか……」

身を起こすと上に着ていた物を脱ぎ捨て、空気に触れた背中からゆっくりと翼を顕現させていった。
まずは基礎となる部分を作り、そこに何百という羽を伸ばしていく。棒の出来損ないのようだったものが、あっという間に翼へと変わった。
ためしに触ってみると極めて柔らかく、手触りも実に申し分ない。鏡で見た限り可愛いいし、見た目も問題ないだろう。
存在する唯一にして絶対的な問題は、それが本来のフクロウと同じサイズだった事だ。

「……これ、飛べないわよね」

片方50サントほどまで育った翼をパタパタと動かしてみるが、年齢と比べて小柄だとはいえ、ルイズだって人間の少女である。
当然体重もフクロウとは比べ物にならず、飾り物のようなサイズのそれでは浮き上がる事すら不可能なのは目に見えていた。
やけになって翼が目視不可能になるほどのスピードで羽ばたかせてみたが、足でジャンプしても滞空時間すらほとんど変わっていない。

「もしかして、無駄だった……?」

がっくりと膝を着いて頭を抱えた。あんな目にあった結果がこれでは流石に酷すぎる。
神々しさの欠片も無いし、ツェルプストー辺りが見たら鼻で笑われる事は間違いないだろう。玩具を背中にくっつけて遊んでいる、と思われるかもしれない。
頭を振って気を取り直すと、翼のサイズを拡大する事を試した。目を閉じて意識を集中する。
風船を膨らませるようにして、左右のバランスに気を配りながら、どんどんと巨大化させていく。

「こんな感じかしら」

この試みは上手く行ったようで、あっという間にサントの単位からメイルにまで上昇した。
先ほどまでとは比べ物にならないほどの存在感を発揮しており、片方だけでルイズの身長よりも大きい。
軽く動かしてみると、スカートが捲くれあがるほどの風を作り出す事が出来た。いかにも飛べそうな感じである。
これを支えるために、背中の骨や筋肉もかなり大幅に作り直す事になったが、普段から出しておく必要は無いので問題は無い。
早速飛行訓練を……と思い、広いとはいえ室内でこれを振り回す気にはなれなかった。下手すると家具を叩き壊すかもしれない。


「せめて夜にならないとね……」

窓の外はまだ明るく、夕方にすらなっていないのは明白だ。最低でもディナーの後、学校を抜け出してからが良いだろう。
まだ翼のサイズがはっきりと決まらないが、出し入れの練習を重ねておくのは悪くない。何より室内でも出来るし。
今の状態を頭に刻み込んだ後で翼を引っ込め、一呼吸置いてから再び作り出す。
生まれてから16年間、どんなに魔法を練習しても上手くなるという実感がまったく得られなかったルイズにとって、反復練習は別に苦にならなかった。
からっきしだった魔法とは違い、やり直せばやり直すほど上達しているのが自分でも分かるのだ。こんなに嬉しい事は無い。
やがて水差しを持ってきたメイドによって部屋のドアがノックされる頃には、正に飛び出すとしか表現できないほどのスピードにまで上昇していた。

「これで3人目か」

崩れ落ちた金髪のメイドと彼女の持っていたトレイを右腕だけで支え、ついでに水差しも掴んでコップに水を注ぐ。
触手の腕にもかなり慣れてきたため、以前は両手が必要だった作業も軽くこなせるようになった。

「どうしたの? ぼーっとして」

「へ……? あ、す、すみませんっ!」

「いいわよ。お水、ありがとうね」

慌てて部屋を出て行くメイドを尻目に、触手を伸ばして再び施錠する。
なんとなく棚を見つめて、そういえば上の方に編み物の道具が入っていた事を思い出した。
趣味ではあったが下手の横好きで、数少ない完成品もあちこちから糸が飛び出した不細工な物になってばかりだが、今ならどうだろう。

「久しぶりにやってみようかしら」

腕が2本に指が10本だった時はダメだったが、今なら何倍もあるし、手先を動かすいい練習にもなる。
さっそく毛玉と棒針を取り出し、ルイズは膝の上で数十本の触手をリズミカルに動かし始めた。



新着情報

取得中です。