あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

Louise and Little Familiar’s Order-06



哀れなミセス・シュヴルースが医務室に運ばれた後、ルイズはミーと一緒に教室の後片付けを魔法抜きでさせられる事になった。
錬金の時に起きた爆発には彼女以外誰も関わっていないので当たり前と言えば当たり前である。
教室を出て行くクラスメイトから白眼視されながら掃除道具を押しつけられたルイズは何も言わずに掃除に取り掛かろうとした。
その時、閉まっていた教室のドアが開き後ろから声をかけられた。

「ちょっといいかしら、ルイズ。」

声の主は果たしてキュルケであった。
先程自身の使い魔のフレイムが暴れて自分でも御する事が出来なくなった時、咄嗟に助けてくれたのはミーだった。
その時は呆気にとられていたが一応お礼くらいはと思い、先ず主であるルイズに声をかけたのである。
しかし当のルイズとしては今キュルケとは勿論、誰とも話す気にはなれなかった。
隣で雑巾を持って突っ立っているミーに自らの境遇をいちいち愚痴ったところで何か気の利いた答えが返って来るわけでもなし。
自然と棘のある話し方になってしまう。

「何よ。悪いけど今はあんたとは勿論誰とも話したくないの。使い魔の小言なんてもっとダメ。
あと遅れるからさっさと次の授業に行った方が良いんじゃないの?」

鬱陶しげにキュルケをあしらうルイズ。
その態度を見たキュルケは喉の奥から出かかっていた言葉を引っ込める。

「そう。じゃあそうさせてもらうわ。せいぜいお昼には帰ってくることね。」

それから間もなく教室のドアが開き再び閉まった。
二人きりになった静かな教室でルイズの心にだんだん惨めな思いが起きてくる。
坐学の成績は申し分無いがメイジにとって肝心の魔法は使えず失敗ばかり。
同級生からは「ゼロ」のルイズと渾名され、挙げ句の果てにはボロボロになった教室で自分の非力な使い魔と共に後片付けだ。
軽く箒で床を掃く内に涙が出てくる。
教室は広い。外に運び出し運び入れる物も山とある。
まだまだ片付けは始まったばかりなのだ。

あちこちに吹っ飛んだ机と椅子を並べなおし、硝子の無い窓を取り外し、転がる細かな瓦礫を集め、小さな煤も残さず拭き取る。
一連の作業が終わる頃にはもう昼餐時を回っていた。
ミーはルイズに休む事無く動かされたのでくたくたに疲れきっていた。
授業前に鞭で打たれた事もルイズが後で一旦同級生の部屋に行き、ポーションを渡してくれなければ記憶の隅に追いやられそうだった。
だからその後厨房で食べた賄い食がどれだけ有り難かったかしれない。
出て来た物は昨日とあまり変わらなかったが、ミーにとっては質も量も十分過ぎる程だった。
がっつく様な食べぶりを丁度厨房に戻っていたシエスタが見ていた。

「あまり急いで食べちゃ駄目よ。あちこち汚れてるわ。」

言われてミーはハッとする。
手や口の周りはパンくずやシチューの汁だらけだった。
慌ててミーはシエスタからナプキンをもらって拭き始める。
その様子を見てシエスタの顔からふっと笑みが零れた。
故郷の村タルブにいる自分の兄弟達も今頃こんな調子なんだろうなと。
その時、奥で鍋の焦げをこそぎ落としていたマルトー親父から声がかかった。

「おーい、シエスタ。そろそろデザートを配る時間じゃないのか?遅れると厄介だろ?」
昼餐が終わって誰もが一息吐く時間帯。
生徒、こと貴族の者達が待ち望んでいるのはお茶とお菓子だ。
遅れれば何かと面倒な事になる。

「あっ、はーい。じゃあミーちゃん。お姉ちゃんはこれからちょっと仕事しに行ってくるからね。ミーちゃんはどうする?」
「ええと、ご主人様の所に行く。」
「なら、私と一緒に行かない?多分私の行く所にいると思うから。」
「うんっ!」

ミーはシエスタの提案に快くのる。
その場所で厄介な一悶着が起こるとは露知らずに。

Louise and Little Familiar's Order「How to evade a rubbish quibble」

校舎の外にあるカフェテラスには燦々と日が差しており、生徒と使い魔にとっては憩いの場として最高のものを演出していた。
そんな中ルイズは皆から離れた所にあるテーブルに一人突っ伏していた。
爆発で吹っ飛んだ教室を綺麗にして食堂に行ってみれば既に食事の時間は終わっており、メイド達がいそいそと食器類を片付けていた。
それなら厨房へ何か貰いに行く事も出来なくは無かったが、彼女の持つ貴族としての矜持がそんな物乞いの如き様の無い行動を許す筈もない。
結局お腹を空かしたまま今に至る訳である。
暫くはお茶を飲む事で空腹を誤魔化していたが、所詮は液体なので充足感がちっとも得られない。
今日何度目になるか分からない程の溜め息を吐いていると、校舎の中から銀のトレイを持ったメイドが一人出て来た。
ルイズにとっては有り難い事に、そのトレイの上には美味しそうなケーキが幾つか乗っていた。
しかしケーキより気を引いたのがその後ろをちょこちょことついてまわるある者の姿であった。

「ミー……?」

それは自分の使い魔であった。
ただカフェテラス自体が広いせいか当の主様を見つけるのは困っている様である。

「ちょっと。そこのメイド。」
「はい!只今参ります!」

メイドことシエスタがルイズの元へ馳せ参じ、失礼の無いよう深々とお辞儀をしてから訊ねる。

「私めに何か御用でしょうか?」
「いいこと?あんたの後ろにいた私の使い魔を今すぐにここに来させなさい。分かったわね?」

使い魔と聞いてシエスタははっとした。
目の前にいる人物こそがミーの主人、ルイズ・ド・ラ・ヴァリエール嬢なのである。
今までは「ゼロのルイズ」として学生内だけで有名だったが、
平民のミーを召喚した事でその名は学院で働く同じ平民階層の者達にも知れるところとなっていた。
シエスタは、畏まりましたと短く答えてミーをルイズの所に連れて行こうと元の場所に戻る。
しかしそこにミーの姿は無かった。
その代わりに少し離れたテーブルでは二人の少女が一人の少年に詰めよっていた。

それは飽くまでミーの親切心から起きた出来事だった。
たまたまご主人様のいるテーブルは何処にあるのかと見回している最中の事。
すぐ目の前にいるギーシュが懐から何かを落としたのである。
見ると紫色の液体が入っている小さな硝子の小瓶だった。
何人かの男子生徒に本命の恋人についてあれこれと詮索されていたギーシュにミーは近づき、
優しくお兄ちゃん、落としたよと告げて小瓶を渡そうとした。
しかし当のギーシュは顔に冷や汗を浮かべて知らぬ存ぜぬの一点張りを通した。
そんな時にモンモランシーと一年生のケティが互いに凄まじい形相をしてやって来たのである。
ギーシュは必死になって二人に弁解するが、その歯の浮く様な言葉には説得力の欠片も無く既に後の祭りであった。
「最低!」と、ものの見事にハモったその声の直後、ギーシュはケティに両頬を思い切りひっ叩かれた。
それだけならまだマシだった。
モンモランシーからはワインのシャワーとワイン瓶による一撃を頭に喰らった。
真っ赤な手形が残った頬を擦りながらギーシュはチラチラと傍らでオロオロしているミーを見やる。
この気が利かない子供をどうしてくれようかと考えを巡らせる。
しかしその時、相手が平民の子供という事、そして先の授業中自身が言ったように小さいながらも淑女である事がふとギーシュの頭をもたげた。
平民と言えども、たかが子供相手に本気になっては貴族の名折れであるし第一大人気ない事この上無い。
それより何より淑女に手を上げるなぞ男の名が廃るというものだ。
してみると……この小さな淑女は色んな女性に愛を振り撒いている自分を戒める為に先程の様な行動に及んだのだろう。
そう考えたギーシュはまだ吼え続けているモンモランシーとケティを無視し、
未だにどう動いていいか分からずにオロオロし続けているミーに目線を合わせて話しかけた。

「君、安心したまえ。僕は君の様な小さな美しいレディが粗相をしたからといって手を上げる程野蛮じゃあないさ。
さっきの事は僕の名に免じて許してあげよう。さ、ご主人様の元に行くがいいよ。」

どうやら自分が怒られる事は無いらしい。
訳も分からずミーは頷き、ご主人様を探しに戻る。
その年と身分に合わない馬鹿丁寧な応対にケティとモンモランシーはドン引きし、
取り敢えず問答無用でギーシュに更なるビンタをお互い一発ずつかます。
そして「変態!」と再び見事にハモらせた声を残しその場を後にした。
ギーシュは男子生徒の嘲笑と女子生徒の冷ややかな視線を浴びていたが、
それでも満足そうに微笑みながら身なりを整える為寮塔に戻って行った。
ルイズはこの厄介な騒動の一部始終を遠目に見ていたが、ミーに何事も無かったので一応安心した。
ギーシュとて年端も行かぬ女の子に手を上げるなぞ本意ではないだろうし。
やがてミーがとてとてとルイズの元にやって来た。
しかし、騒動の顛末を知っているとはいえ感情を素直に出し難いルイズは、ついついぶっきらぼうな物言いをしてしまう。

「あんたねぇ、何処で油売ってたか知らないけど勝手な事はしないで!
それと頼まれてもいないのに関わらなくてもいい面倒なんて持って来るんじゃないの!分かった?!」

その剣幕にミーはびくっとしてから俯く。
それからルイズは周りが自分達に注目するのにも気付かない程延々とミーを怒鳴り付け、
締めに自分が話した話の内容を復唱させてからお茶のおかわりとケーキを持って来なさいと命令した。
ミーはカップを持ってすごすごとシエスタの元へ向かう。
その姿を横目で見ながらルイズは片手で頬杖をつき、もう片方の手の人差し指でテーブルをトントンと軽く叩きだした。
だが直ぐに横から声がかかった。

「ルイズ。彼女にあんな態度をとるのは感心しないな。」

見ると身なりをさっぱり綺麗にしたギーシュがキザったらしくルイズの側に立っていた。
こいつまであの子供の肩を持つというのだろうか?
ルイズは呆れた調子でギーシュに言う。

「別にどう接しようが私の勝手でしょ。それよりもあんた二股してたのがバレてたようだけど、あの後二人にちゃんと謝ったの?」
「それはこれからさ!勿論平身低頭して誠心誠意にね。君の使い魔のあの行動が僕をそこまでさせたのさ。
いやはや全く、君の使い魔は素晴らしいね!」

いくら誉められてもちっとも嬉しくない。
どうせ誉めるのなら自分の使い魔を誉めなさいよ、とルイズは内心で思った。
やがてミーがお茶のおかわりとケーキを二つ持って来る。
ギーシュはミーの頭を偉いね~と言いながら撫でた。
撫でられているミーも満更ではない顔をしているので余計ルイズは苛々する。
ギーシュは尚も歯の浮く様な言葉をすらすらと続ける。

「なあルイズ。悪い事は言わないからもっと彼女に優しくしてあげたらどうだい?
僕なら、そうだな……そうだ!食事の席で隣に座らせよう。服も何式か揃えはするし、眠る時だって……」

ガチャン!
とうとうルイズは我慢出来なくなったのか、椅子から立ち上がって熱いお茶をギーシュの顔面に真正面からぶちまけた。

「あちちちちっっ!いっ、いきなり何をするんだね君は?!」

ギーシュの目と怒鳴り声に負けず劣らず、ルイズは彼を吊り上がった目で鋭く睨み付け、震えた甲高い声で捲し立てた。

「そんなにこの子が良いのならこの子の騎士にでもなりなさいよ!この子の靴でも舐めてなさいよ!
さっきから聞いてりゃ、あんた結局は年端も行かないこの子に鞍替えしただけじゃない!何が食事の席で隣に座らせようよ!
モンモランシーが言う通り見下げ果てた変態だわ!何よ、ドットで頭が足りなくて女っ誑しの癖に。
そんなあんたにこの使い魔を誉めてもらったってね、こっちはお腹がムカつく位気色悪いのよ!
分かった?!分かったなら何も言わずにそのまま回れ右して寮塔へ戻りなさいよ!」

あまりのルイズの勢いに近くの学院本塔から何事かと覗く者もいた。
暫し茫然としていたギーシュはこめかみをひくつかせながら漸く口を動かしだした。

「ルイズ……よくも言ってくれたな?」
「何よ。本当の事じゃないの。」

あくまでもルイズは涼しい顔をしている。
どれ程の事を言ったのかピンとも来てないようだった。

「ルイズ!君は僕をとんでもなく侮辱してくれた!礼儀のれの字も無い程にだ!そこで……君に決闘を申し込む!」

その一言で外野は一気にざわめくが、ルイズは哀れな生き物を見るような視線をギーシュに向けつつ、彼の横を素通りしていった。
予想外の反応にギーシュはルイズに向かって吼えた。

「逃げるのかい?臆病風に吹かれたのか?」
「逃げるですって?あんた馬鹿ァ?貴族同士の決闘は国法で禁止されてる筈よ。そんな事も忘れたの?」

ギーシュの挑発をルイズは軽くあしらった。
そうなのである。ここトリステインでは貴族の命は始祖から授かった物なので無下にしてはいけない、
故に決闘はしてはいけないというのが法で定められていた。
唸るギーシュを他所目にルイズは続ける。

「それに、もしあんたが私を無理矢理決闘の場に出させて、嫌がる私に酷い怪我でもさせたら私の両親が黙ってないでしょうね。
あんたがそこまで責任取れるなら応じないでもないけど?どうする?」

ギーシュは小刻みに震えていたが、いくら何でもルイズの実家であるラ・ヴァリエール公爵家を敵に回したくない。
領地経営に疎い自分の実家なぞひとたまりもないだろう。
悔しさはあったが為す術無くそのままルイズを見送る事にした。
その後をミーが急いで追っていき、それと殆んど同時に鐘が鳴った。
斯くして各人に波乱を巻き起こした午後の休みは終わったのである。



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