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Mr.0の使い魔 第一話

 Mr.0の使い魔
  ―エピソード・オブ・ハルケギニア―

     第一話


 爆発の後に倒れていたのは、一人の男だった。
 オールバックに纏めた黒髪、真横に奔った顔の傷痕、左腕のかぎ爪。
 気を失っている男に当惑したルイズだったが、コルベールに促されて
契約の儀式を執り行う。ファーストキスの相手が誰ともわからない男だ
というのは抵抗があるが、仕方が無い。
 呪文を唱え、口づけを交わし――不意に口の中に、違和感が広がった。
例えるなら、幼い頃、土遊びをしていてうっかり土団子を口にした時の
ような。眉をしかめつつコルベールに終了を告げようとしたところで、
ルイズはついに耐え切れなくなった。

「ペッ、ペッ……何よこれ! 口の中がジャリジャリする~!!」

 涙目になって口中の異物を吐き出す。その間に、男の手の甲に使い魔
のルーンが浮かび上がった。コルベールが歩み寄り、契約の成功を確認
する。

「ふむ。珍しいルーンだが、きちんと契約できたようだね」
「う……」

 ルーンを刻む痛みによるものだろう、男が僅かにうめき声を上げた。
薄く開いた瞼、その奥に潜む鋭い眼光がコルベールを捉える。

「ッ!」
(この男……何という目をするのだ)

 コルベールは寒気を感じた。かつて実験部隊にいた頃、毎日のように
見て来た輝きだ。自分の目的を達成する為なら、他の何を犠牲にしても
痛痒を感じない者がする眼。

「ここは、どこだ?」

 体躯に似合う低い、ドスの効いた声で、男がコルベールに問いかける。
それに答えたのは、冷や汗をかく彼ではなく、背後から顔を出した少女
だった。

「トリステイン魔法学院よ。あんたは使い魔として、私に召喚されたの。
 私はルイズ。ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。
 あんたのご主人様になるんだから、挨拶ぐらいしなさいよね。あんた、名前は?」
(み、ミス・ヴァリエール……怖いもの知らずも程々にすべきですぞ!)

 内心で盛大に悪態をつくコルベールに気付く事無く、ルイズは露骨に
不機嫌な顔で男に尋ねた。竜は流石に無理としても、せめて鳥や猫、犬
といった(ごくごく一般的な)動物を想像していた彼女にしてみれば、
人間が現れるなど非常に不本意な結果なのだ。その心の勢いのせいで、
この得体の知れない男に尊大な態度で接する事ができるのである。
 ついでに言えば、辺りから浴びせられる笑いもルイズの機嫌を損ねる
のに一役買っていた。

「さすがはゼロのルイズ。使い魔に平民を喚び出すなんてな」
「いやいや、あの顔の傷痕を見ろ。どこかの傭兵かもしれんぞ」
「魔法の代わりに金で使い魔を雇うのか? そりゃいいや」


「名前ぐらいあるでしょ。教えなさいよ」

 嘲りの言葉を極力無視して、ルイズは再度問いかける。暫く怪訝な顔
をしていた男は、ややあっておもむろに口を開いた。

「おれは、クロコダイルだ。それとも、Mr.0の方が通りがいいか?」
「みすたー……ぜろ?」

 オウム返しに呟くルイズ。途端に、広場は爆笑の渦に包まれた。

「ゼロ、ゼロだって!」
「ゼロのルイズが、ゼロの平民を召喚した!」
「さすがゼロ、俺達にできない事をやってのける!」
「そこに痺れる憧れる~!」
「「「「なんてな、アハハハハハハハ!!!」」」」

 ルイズは顔を真っ赤にして必死に耐えるが、それで喧噪が治まる筈も
ない。むしろ本人が何も言わないのをいい事に、ますます笑いが大きく
なる。「さすがにこれ以上は」と考えたコルベールだったが、彼が皆を
諌める前にクロコダイルが呟いた。

「黙れ、ガキ共」


 その一声で、騒がしかった広場が水を打ったように静まり返った。誰
も文句を唱えられない、威圧感に溢れた声。一瞬で黙り込んだ生徒達を
一瞥すると、クロコダイルはゆっくりと立ち上がった。
 調子を確かめるようにゴキリと首を鳴らしたところで、ようやく事態
を飲み込んだ生徒達が罵声を飛ばす。とりわけ、男子達は噴火した火山
のようだ。女子もひそひそこそこそといった風ではあるが、不快感をそ
の視線で表している。


 ただ。
 渦中にあるルイズとコルベールはその様子に構う程の余裕は無かった。

「たかが平民が、貴族に向かってその物言いは何だ!」

 罵詈雑言が一言聞こえるたびに。

「いくらゼロだからって、許さんぞ!」

 すぐ傍らにいるクロコダイルが纏う。

「この場でしつけてやろうか!」

 肌を突き刺す程の殺気が、ぐんぐん強く鋭くなるのを感じるのだ。
 そして、ついに。


「まったく、学のない平民はこれだか「黙れと言っただろう、小僧!」

 何度目かの野次で、クロコダイルがキレた。
 丁度声を上げたのはギーシュだったが、彼に向かって右手を突き出す。
その手が一瞬霞んだかに見えた直後、掌から夥しい量の砂が溢れ出した。
蠢く砂の濁流は、意志を持つ巨大な蛇のようにギーシュへと襲いかかる。

「うわッ!?」

 自慢のゴーレムを披露する間もなく、ギーシュは砂に飲み込まれた。
そのまま押し流されて塔の壁に激突、目を回して気絶する。彼にとって
幸運だったのは、クロコダイルが力の具合を確かめる為に加減していた
事だ。もっとも、キレるタイミングで口を出したのが不幸であると言え
るかもしれないが。
 あまりの光景に場を再び沈黙が支配する中、クロコダイルは懐の葉巻
を取り出した。口にくわえて、共に出したライターで火をつける。軽く
息を吸い込むと、慣れ親しんだ味が口の中に染み渡った。

「さて、言いてぇ事は山ほどあるが……」

 紫煙を吐き出しながら、クロコダイルは辺りを見回す。一様に怯えた
少年少女を気遣う様子は微塵も無い。

「とりあえず静かにしろ。今度騒いだ奴は、殺すぞ」

 怒気を滲ませた彼の言葉に、一同は首を縦に振るしかできなかった。


   ...TO BE CONTINUED

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