あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ZERO A EVIL-12


シエスタは暗闇の中をさまよっていた。辺りを見回してみても、真暗な闇以外は何も見えない。
自分はなぜこんな所にいるのだろうと考えた時、ワルドの魔法をその身に受けたことを思い出した。
あの魔法で自分は死んでしまったのかもしれない。死後の世界だと考えれば、辺りがすべて真暗なのも頷ける。

その時、シエスタの耳に誰かが泣いているような声が聞こえてきた。よく耳を澄ましてみると、ルイズの泣き声だというのがわかる。
そのことに気付いた瞬間、シエスタは声のする方に走りだしていた。ルイズが泣いているのだから、こんな所でのんびりしてはいられない。
しばらく声のする方向に走り続けていると、前方が薄っすらと明るくなっているのがわかる。そのまま走り続け辺りが全て明るくなった時、シエスタは目を覚ました。

「メイドの娘っ子が気が付いたぞ!」
「本当かい!」

シエスタの側に誰かが近づいてくる。顔を見るとシエスタも知っている人物であった。

「ミス・ロングビル?」
「そうだよ。まったく、心配かけさせるんじゃないよ」

ロングビルは『女神の杵』で傭兵達を追い払った後、ルイズ達の跡を追ってアルビオンに来ていた。
そして、ニューカッスル城が貴族派の総攻撃を受けているという話を耳にし、ルイズ達が心配になってここまでやってきたのだ。

「でも、よくここまで辿り着けたな。外は貴族派の兵隊でいっぱいだったんだろ?」
「カエルの化け物が出たって、外では大騒ぎだよ。そのおかげでここまでこれたんだけどね……」
「カエルの化け物?」
「俺が話す。いいか娘っ子、落ち着いてよく聞けよ」

デルフリンガーはシエスタが気絶した後に起こったことを話し始めた。すでにデルフリンガーから話を聞いていたロングビルは、真剣な顔でシエスタを見ている。
話を聞いているシエスタの表情がどんどん青ざめていく。それもそのはずだ、ロングビルが話していたカエルの化け物の正体がルイズだったのだから。

デルフリンガーの話では、ルイズがワルドを殺した後に貴族派の総攻撃が始まり、この礼拝堂にも貴族派の傭兵がやってきたらしい。
そして、中に入ってきた傭兵達を一人残らず殺したルイズは、礼拝堂の外に出て行ってしまったというのだ。
確かに、礼拝堂にはワルド以外の死体も転がっている。あまりの惨たらしさに吐き気を催しそうになるのをシエスタは必死に耐えていた。

「これからどうする気だい?」
「ルイズ様を探します。早く見つけないと……」
「そう言うと思ったよ。ここまで着たんだ、私も最後まで付き合うよ」
「今度は俺を置いていくなよ」
「ミス・ロングビル、デルフさん……ありがとうございます」

シエスタは、ルイズに会ってどうするかなどの具体的なことはまったく考えていなかった。
ただ、今は一刻も早くルイズに会わなければならない。急がなければもっと悲惨なことが起こりそうな気がした。

出発の前に、シエスタはワルドの魔法で受けた傷を確認してみた。これから戦場に行くのだから、怪我の具合を把握しておかなければ命取りになりかねない。
ところが、怪我を負ったであろう腕の部分にはすでに包帯が巻かれていた。この状況でシエスタを治療してくれる人間は一人しかいない。
ロングビルに感謝の気持ちを伝えようとしたシエスタが振り向くと、ロングビルはある一点の方向を見つめて佇んでいた。
その視線の先にあるのはウェールズの亡骸だ。ロングビルはなんとも言えない複雑な表情でそれを見つめていた。

「あの、ミス・ロングビル?」
「ん? ああ、もう出発するのかい。それじゃ、行くとするかね」

そう言って、ロングビルは何事もなかったかのように礼拝堂の入口に向かっていく。
先程の意味ありげな表情は気になるが、今は余計な詮索をする時ではない。そう考えたシエスタは、何も言わずにロングビルの後を追っていくのだった。


そのころ、城門前の広場では激戦が繰り広げられていた。
貴族派と戦っているのは王党派のメイジではなく、突如現れた一匹の巨大なカエルの化け物だ。その化け物に貴族派は苦戦を強いられていた。
手に持ったヘビを鞭のように振り回し、辺りには毒を撒き散らす。ヘビに咬ままれれば血を吸い取られ、攻撃をしようものなら不快な鳴き声で気分を悪くさせられる。
辛うじて攻撃が当たっても、一人が血を吸われれば意味はなくなってしまう。化け物は血を吸うことで自らの体力を回復していたのだ。
そんな化け物を簡単に倒せる訳もなく、撒き散らされた毒のせいで足場は悪くなるばかり。すでに逃げ出す者も出始めている中、これ以上ここで戦いを続けるのは得策ではなかった。
そう考えた貴族派は徐々に後退していく。幸い化け物はそれほど早く動くことができないので、逃げ切ることは容易である。
しばらくして、全ての貴族派が撤退し、ニューカッスル城は先程の喧騒が嘘のように静まり返った。

(どこに逃げたって無駄よ。ここであなた達を皆殺しにしてあげる)

憎しみに囚われているルイズは貴族派を全滅させることしか考えていなかった。ワルドを殺した時とは違い、人を殺しても何の感傷もない。
もはや今のルイズは、全てに裏切られ魔王と化したオルステッドと同じだった。

「ルイズ様!!」
「ゲコォ!?」

貴族派を追いかけるためにルイズが歩き始めたちょうどその時、背後から自分の名を呼ぶ声が聞こえてきた。
その声には聞き覚えがある。恐る恐る振り返ると、そこにはルイズが思ったとおりの人物が立っていた。

「やっと、追い着きました」

シエスタだ。死んだと思っていたシエスタが生きていた。ルイズにとってこれほど嬉しいことはないはずなのに、すぐにシエスタの側に駆け寄ることはできなかった。
今の自分は醜いカエルの姿をしている。それに、ワルドを始め多くの貴族派の人間を殺害してきた。
こんな自分をシエスタが慕ってくれるわけがない。もし、シエスタに嫌われるようなことになれば立ち直ることはできないだろう。
シエスタに嫌われることを恐れたルイズは、一歩二歩と後ずさりする。そして、自分が作った毒の床までやってきた。
この毒の上ならばシエスタも近づいてこない。そう思ったルイズだったが、その予想は簡単に覆された。
シエスタは、毒など気にしないかのようにルイズの側まで一気に駆け寄ると、その大きな体に抱きついたのだ。

「くうっ、だ、大丈夫ですよ。私は信じてますから」
「ゲロオッ!!」

慌てたルイズは、シエスタの体を両手で支えると毒の床から移動する。人間にとって猛毒であるこの床の上に長くいたらシエスタの命が危ない。
すぐに移動したおかげで死に至ることはないが、それでも傷を負っているシエスタには苦痛のはずだ。

「ゲロォォ……」
「そんな心配そうな顔をしなくても大丈夫ですよ、私は生きてますから。それにルイズ様を嫌いになることもありませんよ」

その言葉を聞いた瞬間、ルイズは大きな目に涙を浮かべ大声で泣き始めた。
シエスタはそんなルイズの大きな背中を小さな子を落ち着かせるかのように軽く叩く。
二人のその姿は、ルイズがギーシュと決闘した後に逃げ出したあの時とまったく同じだった。

その時、突然ルイズの姿が光に包まれる。光が収まった後、そこにいたのは元の姿に戻ったルイズだった。
元に戻ったルイズをシエスタは優しく抱きしめる。そして、ルイズもシエスタの温かさを確かめるように抱きつき、再び大声で泣き始める。
そんな二人の姿をデルフリンガーを手に持ったロングビルは静かに見守っていた。

しばらくして、涙も止まり落ち着いてきたルイズは、自分のあられもない姿に気付き慌ててマントで体を隠す。
カエルになっていた時は全然気にならなかったが、今の自分はぼろぼろのブラウスにマントを着けているだけの格好だ。シエスタは同姓だが恥ずかしくないわけがない。
するとその時、慌てるルイズの目の前に黒いローブが差し出された。これなら体もすっぽり隠せるし、いざとなれば顔も隠すことができる。

「私の商売道具だけど、あんたにあげるよ。その格好じゃ、人前には出られないだろうしね」
「ありがとう。無事だったのね」
「あの程度の連中に遅れはとらないよ」
「シエスタを手当てしてくれたのもあなたなんでしょ?」
「まあね。けど、私は水のメイジじゃないから、薬を塗って包帯を巻いただけの簡単な処置しかしてないよ」

フーケはすまなそうに言うが、シエスタを手当てしてくれたことにルイズは心から感謝していた。
なぜフーケがここまでしてくれるのかはわからないが、もう彼女を警戒する必要はなさそうだ。

「あとこれ、忘れ物だよ」
「よ、相棒。元の姿に戻れてよかったな、やっぱカエルより今の姿の方が相棒には似合ってるぜ」
「デルフ……ありがとう」

ルイズがデルフリンガーを受け取ろうとしたちょうどその時、ニューカッスル城に轟音が鳴り響いた。
ルイズ達が音のした方向に目を向けると、ニューカッスル城の一部が粉々に吹き飛んでいる。
何事かと思う暇もなく、次の轟音が鳴り響く。上空を見ると、大砲の弾が次々ニューカッスル城に放たれているのが目に映った。


貴族派はカエルの化け物を城ごと葬るために、上空に待機させていたすべての戦艦からニューカッスル城に向けて砲撃を開始した。
いかにカエルの化け物が手強くても、上空からの砲撃には手も足も出せないだろう。城を潰してしまうのは惜しいが、これ以上被害を出すわけにもいかない。
それに、あのカエルの化け物の強さを考えればここで始末しておくべきだ。生かしておけば、再び自分達の前に現れる可能性がある。
そう考えた貴族派の上層部の命令により、ニューカッスル城は爆音と共に炎に飲み込まれていく。

「早く逃げないとやばいぜ!」
「逃げるといっても、外は貴族派の兵隊でいっぱいだよ。今から出て行ったら捕まりにいくようなもんさ」
「じゃあどうする?」
「それを今考えてるんだよ!」

炎は自分達のいる広場まで迫ってきているし、砲弾はいつここに飛んでくるかわからない。
この状況では、さすがのフーケも冷静を保ってはいられないようだ。顔には焦りの表情が浮かんでいる。
シエスタは取り乱したりせず冷静に見えるが、その体は恐怖のせいで小刻みに震えており、無意識にルイズの着ているローブを手で掴んでいた。

(私のせいだ。私が暴れたりしなければ、こんなことにはならなかった)

もし自分が暴れなければ、脱出することも不可能ではなかっただろう。
王党派と貴族派の戦いは終わりかけていたし、財宝探しで傭兵達が浮き足立っていたあの時なら、逃げる機会はいくらでもあった。
だが、安易に力を使ってしまった自分がその機会を潰してしまったのだ。そのことはいくら後悔してもし足りない。
しかし、ルイズにはまだやるべきことが残っている。後悔の念に押し潰されるわけにはいかなかった。

(お願い、もう一度私に力を貸して!! 私のせいで二人を死なせるわけにはいかないの!!)

その時、ルイズの左手のルーンが再び光を放つ。それと同時に、ルイズは自分の体に力がみなぎってくるのを感じていた。
これなら、魔王となったオルステッドが使っていたあの力が使えるかもしれない。そう考えたルイズは目を閉じ、力を集中させる。

(来て、お願い!!)

ルイズの祈りに答えるかのように、それまで何もなかった場所に突然石像が現れる。
それは、ルイズの使い魔として召喚された騎士の石像だった。シエスタとフーケはいきなり石像が現れたことに驚いているようだ。

魔王となったオルステッドは異世界から英雄達を召喚していた。ならば自分にもここにないものを呼び出すことができるのではないか。
そう思いやってみたのだが、どうやらうまくいったようだ。ルイズは使い魔の石像に近寄ると、足元にある隠し扉を開け放った。

「二人ともここに隠れてて。後は私がなんとかするから」
「ルイズ様、私も残ります!」

もし、ルイズを一人にしてしまえば今度こそ戻ってこないのではないか。そう思ったシエスタはこの場に残ろうとする。
そんなシエスタを安心させるようにルイズは優しく抱きしめた。

「大丈夫よ、私を信じて」
「ルイズ様……わかりました、必ず戻ってきてくださいね」

シエスタは最後にルイズの姿をしっかりと見据えてから石像の中に入っていった。
そして、その場にはルイズとフーケの二人が残される。

「あなたにはお願いがあるんだけどいいかしら?」
「言ってみな。私にできることだったら聞いてあげるよ」
「魔法学院の宝物庫を襲った巨大なゴーレムをここに作ってほしいの」
「それぐらいならお安い御用だよ。ちょっと待ってな」

フーケはルイズに言われた通りにゴーレムを作り始める。そして、ルイズは再び力を集中させ始めた。
次に呼び出そうとしているものは異世界に存在するものだ、この世界にある使い魔の石像のようにうまくいくかどうかはわからない。
だが、失敗するわけにはいかないのだ。

(お願い、あなた達の力をもう一回私に貸して!!)

フーケがゴーレムを作り終えるのとそれが現れたのはほぼ同時だった。
突然、巨大ゴーレムが液体のようなものに覆われたかと思うと、徐々に形が変わり始めたのだ。
フーケは唖然と自分のゴーレムを見つめている。ルイズが何か考えがあって自分にゴーレムを作らせたのはわかっていたが、この事態は予想すらできなかった。
やがて、液体のようなものはゴーレムに染み込むように消え、奇妙な姿のゴーレムが完成する。

鳥の頭と手足を持ち、背中には六枚の羽と金色に輝く羽模様の飾りがついている。そして、体に纏った法衣と首にかけた数珠。
フーケのゴーレムはルイズが夢で見た隠呼大仏と同じ姿になっていた。

「来てくれてありがとう。それと、ごめんなさい」

ルイズは目の前に立っているに隠呼大仏に頭を下げる。液体人間達の憎しみの力を再び戦いに使おうとしていることに罪悪感を感じていた。
そんなルイズの目の前に隠呼大仏の手がゆっくり下ろされる。ルイズは胸の中で再び感謝すると、隠呼大仏の手の上に飛び乗った。

「あなたには本当に感謝してるわ。後は私に任せてあなたも隠れてて」
「気をつけなよ。いくらあんたが強くても敵の数は多いんだからね」
「わかってるわ。シエスタのことお願いね」

ルイズのその言葉が合図であるかのように隠呼大仏が動き始める。手の上のルイズを肩に乗せると、貴族派がいる方に向かって歩き始めた。
それを見たフーケは石像の中に入り、扉を閉める。石像の中ではシエスタがルイズの無事を祈るように手を合わせていた。


貴族派の兵隊は、突然現れた奇妙なゴーレムに最初は驚いていたが、すぐに迎撃態勢を取り始める。
敵を見た目で判断すると痛い目を見るのは、先のカエルの化け物との戦いで嫌というほど思い知った。
今度のゴーレムもどんな力を隠し持っているかわからない。それに肩の上にはゴーレムを操っているであろうメイジの姿も見える。
これだけ巨大なゴーレムを作れるのだ、魔法の腕もかなりのものだろう。おそらくカエルの化け物もあのメイジの仕業だ。

“この戦いに勝利するには、あのメイジを倒さなければならない”

貴族派の誰もがそう考え、ゴーレムとメイジを倒すために動き始めた。


ニューカッスル城の城門を飛び越えた隠呼大仏の前には、大勢の兵隊と多くの戦艦が集結している。
その数の多さにルイズは一瞬怯んだが、すぐに気を取り直すと大声を張り上げる。

「敵の数は多いけど、前に戦ったロボットに比べたらたいしたことないわ! みんな、行くわよ!!」
「気合入ってるじゃねえか、相棒! 俺もこんなしょぼくれた格好してる場合じゃねえや!」

ルイズの手に握られていたデルフリンガーが急に光を放つ。
光が収まった時、デルフリンガーは錆びたボロ剣から刀身が輝くように光る美しい剣に変わっていた。

「ちゃちな魔法は全部この俺が吸い込んでやるぜ! さあ、行こうぜ相棒!」
「頼りにしてるわよ、デルフ!」

ルイズはデルフリンガーを力強く握り締める。左手のルーンは眩しいぐらいに光り輝いていた。
前方に見える巨大な戦艦の砲門は全てこちらに向けられている。だが、まったく恐怖は感じない。
自分にはこんなに頼れる仲間達がいるのだから……

その時、ルイズ達に向けて一斉に砲撃が開始される。
ニューカッスル城を舞台にした最後の戦いの幕が上がった。


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