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虚無と狂信者-11




巨大な狼がアンデルセンに勢いよく噛みつき、壁に叩きつける。
アンデルセンの左腕はメキメキと音を立てた。
血の塊を吐いた神父は空いた右腕で銃剣を突き立てようとするも、素早く離脱される。
サイトは今にも千切れそうな彼の左腕に口を押さえる。
だが、アンデルセンのとった行動はさらに恐るべき行動だった。
彼は己の左腕の袖に噛みつき、無理矢理引っ張り上げた。
そして、あろうことか、大尉に向かって行った。
「神父!!」
サイトが不安げに声をかける。しかし、アンデルセンはサイトの方を一顧だにしない。
ただ真っ直ぐに狼へと立ち向かう。眼には未だに闘志と殺意が湛えられている。
突き進もうとした彼は、不意に思いだしたようにポツリと、おそらくはサイトに向けて呟いた。
「そうあれかしと叫んで斬れば、世界はするりと片付き申す」
その言葉の意味が分からず呆然とするサイトを置いてアンデルセンは突進する。
人の姿に戻った大尉は彼にハイキックを叩きこむ。
だがアンデルセン神父の突撃は、蹴りの根元でそれを受け、衝撃を殺した。
「シイイィイィィィィィィ!」
気勢を上げ、アンデルセンのタックルが大尉を階段から突き落とし、諸共階下へと落下した。
「AMEN!!」
彼の叫びが木霊する。
サイトは手摺りによって下を見る。
落下しながらもアンデルセンが銃剣を大尉に突き刺した。
そのまま暗がりに消えた彼らを見送り、立ちすくんだサイトの肩をタバサが叩く。
「行こう」
その言葉に気を戻し、階段を駆け上る。
少年は一瞬心配したが、まあ大丈夫だろうと思い直した。



ギーシュは、一階のロビーで目を覚ました。
どうやらあのまま転げ落ちたらしい。上空を見ると、
自分が落ちたところは高くて見えない。
「よく生きてたな。」
首を抑えて立ち上がる。体に異常は無い。
「何だかんだいっても体が資本だな。軍人は!」
彼の家系は軍人故に、実際の戦闘というものを想定して、体を鍛えられていた。
それが彼の身を救ったと言える。
「さて戻るか」
そう言い階段を上ろうとしたギーシュの後に大きな音が響く。
見ると、男が二人立っている。
一人はアンデルセン、左腕が凄まじい怪我をしている。
そして銃剣が脇腹に突き刺さった男、その男の体が変化し始めた。
たちまち男の体が巨大な狼となりアンデルセンを突き飛ばす。
だがアンデルセンは狼の鼻先を剣で切りつけ、余勢で治った左腕で喉笛を貫こうとした。
しかし狼の体は白いもやとなって掻き消え、アンデルセンの5メートル先に降り立つ。
そのまま二人は対峙した。
ギーシュは余りの光景に意識を飛ばした。

ルイズ達を乗せた船が出港しようとしていた。
ルイズはワルドに頼んだ!
「待って!アンデルセンが!サイト達が!」
「いや、あの追手達がまた襲ってくるとも限らん、早く出港する。」
「でも………」
そう言い、桟橋を見ると、三人の人影が向かって来ていた。
黒髪の少年と青髪の少女が真っ先に飛び乗り、一瞬の躊躇のあと眼帯の男が飛び乗った。
彼らは甲板を転げる。そして丁度船が桟橋を離れた。



銃剣が大尉の体を貫けば拳が神父のどこかをへし折った。
互いの再生能力も限界に近づく。
大尉がふと空を見上げた、人狼の脅威的な聴覚は出航する船の音を捉えた。
それは即ち己の任務の終了を意味する。
だが、みすみす獲物を逃がすほど大尉は人間が出来ていなかった。
なおも続けようとファイティングポーズをとる。
はたからみればそれはただの無表情だったろう。
だが少佐などからみればこの無表情にとてつもない歓喜を見たはずだ。
アンデルセンもまた嬉しそうに笑った。
二本の銃剣を十字に構える。
しかし、次の瞬間二人は弾かれたように、ある方向に首を向けた。
その先にあるのは夥しい数の蝙蝠の群れ。
それらは一か所に集まり人の形を形成する。
そしてそいつが現れた。
アーカード
三人の獣は一斉に距離を詰める。そして、アンデルセンは首筋に銃剣を、
アーカードと大尉は銃を自分以外の二名に突きつけ、危険な三角を形成する。
しばしの静寂
ふいにアーカードが笑いながら、アンデルセンが溜息をつきながら、
互いに突きつけた獲物を相手に向ける。
銃弾を眉間に二発、銃剣を腹に二本、吹き飛ぶ大尉。
しかし、大尉の姿は霧となって掻き消え、かわりに或る物が現れる。
手榴弾
それを見てアンデルセンはギーシュを抱え、銃剣でくり抜き、壁を突き破る。
アーカードは笑顔で、狼の姿となり逃走する大尉を見送った。


爆音が聞こえた気がして俺は港町を見下ろす。
しかし既に町は遠く離れていた。
そして一連の、この三十分に満たない戦闘を総括する。
俺はアーカードさんに立ち向かった。
そうしないとあの女の人が死にそうだったから。
けれども、それによって呼び出された結果はどうだろう。
あの人狼によってアーカードさんは離脱。
俺は愚かタバサまで殺されかけた。
いや相手が見逃がしてくれただけで本当は全滅だった。
そしてあろうことかアンデルセン神父も人狼を引きつける為に残った。
もし俺が余計なことをしなければ、少なくともアンデルセン神父はこの場にいた。
サイトは横で憔悴しきったタバサを見やる。
「………ごめんな」
タバサはしばらく考えていたが、静かに口を開く。
「あの女の人は生きている。それだけじゃ駄目?」
そう、あの女の人は生きてる。そうだとしても。
俺は弱くて、おまけに我侭だ。
「性質が悪いな……」
あの女の人は言った、俺は化け物だと。
違う、弱っちいただのガキだ俺は。
色々な感情を渦巻かせながら俺は星を見据えた。
星が滲んで見えたのは意識が朦朧としていただけでは無かった。



不意にガツンと頭を殴られ俺は頭を抱える。タバサも頭を抱えていた。
見ると、ベルナドットさんが肩を震わせて拳を握っている。
「この馬鹿共!!あっさり飛び移りやがって!落ちたらどうするんだ!」
俺達は呆然とベルナドットさんを見る。タバサが口を開く。
「心配?」
「たりめーだ!!」
俺とタバサは目を見合わせる。ふと誰かの声が聞こえる。
「痛―よぉ、痛-よぉ」
背中ではデルフリンガーが泣いていた。神父から受け取った剣だ。
「相棒ひでえよぉ!投げつけるし、殴りつけるし」
どうやらこの剣も色々苦労したらしい。けど鬱陶しいから鞘にしまった。
「ひでぇなお前」
「薄情」
二人に言われた俺は何故かおかしくて大笑いした。ふと心が軽くなった気がした。
「ちょっと、あんた達大丈夫?」
ルイズが心配そうに近寄って来た。
「あれ?アンデルセンは?」
その言葉に俺は俯いた。しかし、思い直す。俺が今やるべきことは悩むことじゃない。
「敵が来て、そいつを食い止めた。そんで残った。」
そう、そして俺を行かせた(成り行きだが)。ならその信頼に応えよう。
「かわりに俺が守るよ。神父のかわりに。」
ルイズがそっぽを向いて言った。こころなしか歯切れが悪い。
「な…何よ。あんたみたいな弱っちい平民が、私の使い魔のアンデルセンの代わりになるわけないじゃない。」
そう、まだ自分は神父の代わりにはなれそうもない。
だが、どのみち化け物みたいにならなきゃ化け物になんて勝てるわけないじゃないか。
なら、なってやろう。化け物みたいに強く。



「いや素晴らしいな彼らは。」
王宮の玉座に座り、青い髪の偉丈夫が目の前の箱を見ている。
「そ、あれがアンデルセン、そしてアーカードさ」
目の前の箱には蝙蝠の群れへと姿を変える最強の吸血鬼。
大量の銃剣を無限に取り出す退くことを知らぬ不死身の神父。
狼へと姿を変える、ありえない身体能力を誇る大尉。
左腕を変化させ、強力な重火器を事も無げに使う女吸血鬼。と映し出される。
だが、男が注目したのはそれらよりも一つの映像。
赤ずくめの吸血鬼に銃剣を向ける少年。
「ん、そいつも?」
男の傍らにいるのは異国の軍服を着た少年。
その頭には猫のものであるはずの耳。
「准尉。ポーカーはジョーカーだけではゲームにならん。」
偉丈夫は笑みを湛えて答える。
「アーカードは鬼札、アンデルセンも、大尉も。
ならば鬼札の主人達は?あの赤い女は?あの担い手は?
ではシャルロットは?このメイドは?風韻竜は?
ドラキュリーナはどうだろう?あの傭兵隊長はどうだろう?
そしてこの少年は……?」
彼は立ち上がり、狂ったように叫ぶ。
「楽しい、ああ楽しいなあ、楽しすぎる。」
猫耳の少年はニコリと言った。
「嬉しそうだね、狂った王様」


「ていうかベルナドットさん!アーカードさんと俺の諍い見てたならもっと早く来て下さいよ!」
「馬鹿野郎!!そんなことしたらオレが死ぬオレが死ぬオレやだオレがやだ!!!!」
「チキン」
「は?ちょっとアーカードってどういうことよ?!何があったのよ?!」
言い争いを始める彼らを、ワルドは黙って見ていた。



「いやあ、やられたな宿敵」
ギーシュを抱えるアンデルセンに、アーカードが話しかける。
もはや彼らに遠く彼方に飛び立った船に追い付く術は無い。
アンデルセンは何事か考えている仕草をする。
吸血鬼、貴族派、そして最後の大隊。
これら三つの勢力が密接に関わっているのはもはや疑いは無い。
それがこの世界にどういう影響を与えるのかも。
「……ジロジロ見ている奴らもいるしな……」
気配は掴めても居場所まではわからない。しかし何者かが監視している。
まるで見せ者のように
「気に食わねえな」
これが以前の世界なら、異教徒がどれだけ死のうが知ったことではない。
しかし、ここは異世界。彼らはカトリックに改宗する機会の無かった者達。
ならば自分はやらねばならない。
辺獄に向かう者達を神の国へと導かねばならない。

アーカードは溜息をつきながら、己の掌を見る。
ベルナドットは数万回殺しても死なないと言ったが、それは事実では無い。
今の彼は、アンデルセンと戦った後の、全ての命を燃やされた状態。
これまでの戦いで、命のストックは回復したが、以前ほどの化け物では無い。
もはやクロムウェル零号開放は使えまい。
けれどもアーカードは呑気な物だった。
アンデルセン、若きメイジ達、そしてあの少年。
己を撃ち滅ぼしうる敵達。
それだけで彼には十分だった。



「タバサお嬢様が……離れて行っちゃう」
再起不能かと落ち込むセラス。大尉の攻撃により遥か彼方に吹き飛ばされ、
よろよろと戻っていくと空船が出港していくのが見えた。
溜息をつきながら自分を顧みる。まあ地力では大尉には間違い無く劣っている訳だから
敗れるのはいいとしても、無様すぎる。
「まあ、ベルナドットさんがそばにいるならまあいいですけど」
しかし出血が酷過ぎる。いかな吸血鬼とはいえ回復には時間を要する。
というか自分は今のところ流れる水を渡れないのだから、棺桶に入らなくてはならない。
「なんか私……いいトコ無いなあ、なんでかなあ」

私はサイトを見ながら考える。
吸血鬼並みの生命力、そして優しさ。
まるで物語の勇者のような、勇気と雄々しさ。
その彼に淡い憧れを持つと同時に、ある考えが出てくる。
彼は私の目的を達成する力になるだろうか。
いや……。
己の内に湧き上がる黒々とした計画。
吸血鬼という存在を知った時に頭に浮かんだ計画。
アンデルセンに頼んだものとは異なるもう一つの目的。
疑いようも無く彼はそれの障害となるだろう存在。
ならば……。

桃髪の少女に眠たげに応対する少年を見ながらも、タバサの瞳に冷たさが宿る。
それはさっきまでの、楽しいやり取りとは明らかに違う炎。
ベルナドットはそんな彼女を無表情で見ていた。

少年の決意と、少女の思惑を乗せ、船はアルビオンへと向かう。








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