あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

虚無と狂信者-10




アンデルセン達が桟橋へと到着した。その大木にさすがのアンデルセンも驚いた。
そして階段を上り、踊り場にさしかかった時、後ろからそいつは現れた。
仮面をつけた男、男の発する気配から、そこそこはできる印象を受ける。
神父は、構えるルイズ達を制し、先に行くよう促した。その彼の前にギーシュが躍り出る。
「あはは、女王陛下の望みのため、このギーシュ・ド・グラモンが、グボア!」
仮面の唱えたエア・ハンマーにより、ギーシュは昏倒した。
その後、男にゴミを捨てるように、階段から落とされる。
アンデルセンは興味なさそうに一部始終を見ていた。
アンデルセンにとっては久し振りのまともな戦闘である。
ルイズも行ったようだし、心置き無く楽しめる。
「いい月だな」
アンデルセンはそう言うと、懐から大量の銃剣を取り出し、仮面に投げつけた。
仮面は風によってそれを防ぐ、その風をものともせず、アンデルセンは飛びついた。
しかし、男はフライで飛び交い、空中で静止する。そのまま仕掛けてこない。
(妙だな…、)
攻撃の意思が感じられない。このままではルイズ達はまんまと逃げ遂せるだろう。
(私の足止めだけが目的か)
おそらくあの傭兵たちも、魔弾も、
自分たちをルイズから引き離す為だけに用意されたのだろう。
乗ってやる必要は無いなと、アンデルセンは感じた。


アーカードはサイトの眉間に照準を合わせている。それに対し、サイトは真半身になった。
何も持たない左手を前方につきだし、ガード。
右手の銃剣は切っ先をアーカードに向けている。
腰は浅く落とされた。アーカードは感嘆する。
左手はこの場合、盾。
盾という名の左手を犠牲に、右手で刺す。
再生能力を持つこの少年にとって、この捨て身は最大級の攻撃力と必殺性を持つ。
良く練られた策だ。
しかし、アーカードをそれ以上に感激させたのはサイトの表情だった。

私への恐怖はある。
死への恐怖はある。
しかし、殺意がある。
私に対する敵意がある。
そしてなにより、諦めが無い。
ただの人間のくせに
ただの餓鬼のくせに
まるであの男たちのようだ
まるであの男のようだ
あのただの老人のような
こいつは人間だ
ヴァン・ヘルシングと同じ人間だ
アンデルセンと同じ人間だ

「素敵だ
やはり人間は素晴らしい」
アーカードのどこか羨ましそうな笑みとともに、トリガーが引かれようとしていた。
自分の心臓に銃剣を突き立ててくれるかもしれない少年に、アーカードは歓んだ。


喜ぶアーカードとは対照的にサイトの心の中は恐怖で満杯だった。
もしアーカードが今仕方考えていたことを知ったなら、勝手なことをいうなと怒っただろう。
一応あの女性は逃げたらしい。よってこれ以上続ける必要は無いのだが。
「退いてくれるわけ無いですよね。」
「ああ、無理だな。」
「ですよねー」
片腕を切り落としておいてごめんなさいで済むと思うほど彼は馬鹿では無い。
逃亡も確実に不可能。もはややるしかない。
拳銃、手榴弾、祝福儀礼済みの銃剣、そして再生能力。
しかし、それらの悉くが、この目の前の男には意味を為さない。
それほどまでにこの吸血鬼は違う。自分とも誰とも、アンデルセンですら違う。
ドラキュラ
しかし、逃げる気にはならなかった。
(見ろ!!)
恐怖を無理やりどこかに追いやり、全神経を一点に集中する。
引き金に当てられた、人さし指。それだけを見る。
鼓動は高く、呼吸は小さくなる。冷や汗が垂れた。
敵の指に力が込められる。体が反応した。
サイトは左に銃弾をかわす。右耳が吹き飛ぶ。
そしてアーカードの喉に銃剣が突き刺さる。
アーカードは倒れない。
銃口が再度自分に向けられる。
「そう甘くは無いか。」
解っていたさ、それ位。
サイトは来るべき銃撃に警戒態勢をとる。
その動きが止まる。
突然、アーカードの頭が何者かに吹き飛ばされた。
倒れるアーカード。
彼の後には一人の、長身にオーバーコートを着た男が立っていた。



あまりの展開にサイトも、タバサもシルフィードもついていけない。
その長身の男は、彼らを一顧だにせず、アーカードに攻撃を加える。
踏みつけ、蹴りつけ、アーカードの体が原型を留めなくなったところで
ナイフを取り出し、それを振り、アーカードを燃やしつくし、つぎに氷を張った。
サイトはそれを見ながら、考えを巡らせる。
何者だ?
魔法を使ったならメイジ?
でも明らかに人間のパワーじゃなくね?
味方?
あれ?でもアーカードさんは一応今味方だから
そこまで考えたところで男はサイトに銃を突き付ける。
「あ、やっぱり敵ですよね?」
銃弾を喰らいサイトは派手に吹っ飛んだ。

大尉は次に銃口をタバサ達に向ける。風の障壁を張り、何とか銃弾を逸らす。
男はずんずんと近づいてくる。
実戦慣れしたタバサの振る舞いが彼の闘争本能を震わせてしまった
ふと彼女の視界にもう一人現れた。眉間から煙を出しているサイトだ。
(女の子には優しくしろってパパとママに習わなかったのか?……どいつもこいつも!)
能天気なことを考えながら、サイトは気取られぬように銃剣を構える。
そして後ろから銃剣を突き刺そうとした。
だが男は既に察していたのかサイトに後ろ蹴りを叩きこむ。
嫌な音と共にサイトは壁に叩きつけられ、呻きとともに血溜まりを形成する。
内臓が何個か破裂したらしい。
タバサはウィンディ・アイシクルを唱えるも目の前で全て男の手によって砕かれる。
彼女の眼に、冷たい目で自分を見下ろす怪物が映った。



男のこめかみに何かが辺り、吹き飛んだ。
タバサとサイトは男が飛んだ反対側を見る。
「人の女に」
ベルナドットが歩きながら銃弾を撃ち込む。大尉はよろめきながら後退さる。
「手を出すなって」
全弾撃った後、ワルサーからマシンガンに持ちかえ、銃弾の嵐を撃ち込む。
「言ってんだろうが!!」
大尉は派手に吹き飛ぶ。しかし、ベルナドットは口惜しげに叫んだ。
「化け物め!」
大尉は何事もないように立ち上がり首をならした。
見ると男の体に傷は全くと言って良いほどついてない。全てナイフによっていなされていた。
こめかみから垂れた血がおそらく唯一のダメージだろう。
「イッテー!!!!」
何かが叫んだ。タバサはその正体に気づく。
「インテリジェンスナイフ?」
「お前らものを大切に大事に扱え!!大体!こんな所で油売ってる場合か?」
ナイフは男に言いつけている。男は無表情のまま、敵を見据える。
そして屋根へと信じられない跳躍で飛び移り、どこかへ向かった。

「タバサ嬢ちゃん!大丈夫か?」
「私は大丈夫。それより彼」
「生きてるか?!」
ベルナドットはサイトに肩を貸す。
「ええ、まあ…」
サイトは自分の体に意識を巡らせる。いくら生物工学と回復法術による再生能力でも限界はある。
二度の内臓破裂と、右耳と眉間への銃弾は彼を死のギリギリまで追いやった。
タバサは残った魔力でヒーリングをかけてやる。
サイトはシルフィードに上空を旋回し待機するよう命じた。あとから追って来る仲間を運ばせる為だ。
三人はよろよろとルイズ達の後を追った。



「お前なんで旦那に刃向かった!?勝てるわけねえだろ!」
ベルナドットはサイトに肩を貸しながら怒鳴った。サイトは呆けた。
「……もしかして……怒ってます?」
「たりめーだ!!」
ベルナドットが声のトーンを増す。サイトは少し黙った後、口を開いた。
「…泣いてたから」
「…………はぁ?」
「なんか人の名前を……言ってて………この人にも大切な人が…居るって思うと…助けなきゃって……」
「………」
「俺も……家族……離れ離れになっちゃったけど………いるから…親近感が…」
ベルナドットは黙って聞いている。サイトは口調を明るくして続ける。
「まあ、でも……よく分かんないです。ホラ、助けちゃうでしょ…目の前で困ってる人がいたら。」
今までしんみり聞いていたベルナドットがずっこけた。
「お、おま、限度があるだろ!限度が!」
「いや、まあでもあの人逃げたみたいだし、良かったじゃないですか」
サイトはベルナドットの肩から離れる。話しているうちに回復したらしい。
「もう大丈夫です。神父たちを追いかけましょう」
そう言って駆けだした。
走りながら、ベルナドットに訊ねる。
「置いてきたけど…アーカードさん大丈夫ですかね?」
「死にゃしねえよ。旦那を殺すには数万回殺さなきゃなんねえんだ。
ほっときゃその内追いかけてくる。」
その言葉にサイトは改めて実感する。自分は何て化け物と闘おうとしたのだ。
だが、それ以上にサイトの頭を占めたのは、自分のせいでアーカードがあの男に後れを取った事実だった。
自分の我儘で皆に迷惑をかけ、挙句の果てにタバサまで巻き込んだ。
この少女が自分の為に死ぬ所だった。そう思い至り唇を噛んだ。
「何がチームワークだよ…馬鹿野郎」
そう自分に向けて毒ついた。



ライトニング・クラウドが、雷撃が放たれようとしたとき、
アンデルセンはデルフリンガーを抜いた。そして凄まじい速度で投げつける。
「ちょっと待ってくれ相棒ぉぉぉぉぉお」
悲鳴を挙げ、仮面へと向かう大剣。剣が雷撃とぶつかる。すると雷撃が吸収され、仮面の男がたじろいだ。
「なるほど、そんな特性があったか。」
「へへへ、そうそう…うん?」
アンデルセンは既に敵との距離を超人的な瞬発力で詰めていた。
そして、魔法との衝撃で一瞬静止した剣の柄に拳を叩きこむ。
デルフリンガーは真っ直ぐに仮面の男へ向かう。激痛に叫び声をあげながら。
「いってええええええぇええぇえ」
あまりの行為とその飛んでくるスピードによって、一瞬止まった仮面の男に大剣が突き刺さる。
アンデルセンが至福のもとに張付けられた仮面の男の首を刎ねんとした時、異変が起こった。
死体が、消え去った。
目の前の現象に唖然とするアンデルセン。その彼にデルフが冷静に解説する。
「ああ、こりゃ風の偏在だな。自分の分身を作りだす風のスクウェアスペルだ。」
「スクウェア…成程。」
スクウェアメイジともなると、ここまでのこともできるのかと素直に感心した。
しかしここで一つ疑問が湧く。
「なあ、確かワルドは…。」
「神父!」
下の階段から、サイト達がやって来た。
「ルイズ達は?ギーシュは来る途中伸びてたんでほっときましたが。」
起こそうとしたが、タバサに「邪魔」と止められた。
「ええ、先に行きました。今から向かいましょう」
そう言って上を向いた時、階段を降りてくる男に視線が集まる。
三人にとっては今しがた見た敵
一人にとってはとても懐かしい敵
長身に、熱帯用オーバーコート、ドイツ軍の規格帽
「大尉……!」



彼が所属していた組織の階級名。それだけで彼を表す。
あの狂った指揮官、少佐の切り札
最後の大隊の最高戦力
そして………
「早く行け!こいつは俺が引き受ける!」
そう叫び、デルフリンガーをサイトに投げて寄こした。
とは言っても彼が立ちはだかっているのではどうにもならない。
アンデルセンは大量の銃剣を投げつける。
そのマシンガンのような銃剣の群れが、大尉の拳によって全て粉々になった。
だが神父は距離を詰め、二本の銃剣を突き立てる。
鈍い音が響く、突き刺さったかに見えた。
だがそれは大尉の手によって刃を握られ、刀身が耐えられず、砕けた。
それに構わずにアンデルセンは顔を思いっきり殴りつけ、吹き飛んだ大尉に銃剣を突き刺す。
「殺った!」
「いや、殺ってねえ」
喜ぶサイトにベルナドットは冷静に答える。大尉の体が文字通り霧散した。
銃剣が刺さった大尉の体は霧となり、アンデルセンと距離を取った所に現れる。
呆気にとられるサイトとタバサ、苦々しげに睨むベルナドット。
そして次の大尉の変貌にさらに驚愕した。
大尉の顔が、牙を剥き、獰猛な獣のものとなる。
そして全身が巨大な、白銀の犬となる。
それはまさに、狼、大きい神。
その雄大な、残忍な、気高い獣にサイトが口を開く。
「狼男…。」
ベルナドットは溜息をつく。
「俺達の国ではこう呼ぶ。」

それは吸血鬼をも屠り去る化け物。
「人狼(ヴェアヴォルフ)」








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