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割れぬなら……-19



「君が賈言羽か」

「はっ」

銃士隊隊長、曹操孟徳。
おそらく、世界に2人しかいない漢人の1人。
賈言羽が彼の顔を見るのは、降臨祭での上申以来であり、
顔を合わせるのは今日が初めてである。

「高祖・劉邦を補佐した張良・陳平のごとき奇才、
 そして魔法の使えない身でありながら、あらゆるマジックアイテムを使いこなすと聞いている」

「嘘聞でございまする。
 私めに左様な才覚はございませぬ」

曹操は見下ろすように賈言羽の顔を覗くと、ニヤリと口角を上げた。

「野球だったな?」

「はい、トリステインとガリアの友好と交流を深めるため、ガリア王はトリステイン銃士隊との野球による試合を望んでおられます」

「受けよう」

拍子抜けするほど簡単に、曹操は試合の申し出を受諾した。

「来月最初の虚無の日で構わんな」

来月最初の虚無の日……試合まで今日を入れて14日目という計算になる。
それだけあれば、メンバー集めも(付け焼刃に過ぎないだろうが)野球の練習もなんとかなるだろう。

「承知いたしました」

「試合当日を楽しみにしている」


最もやっかいな部分は通過した。
後はメンバーを集めて試合を終えれば罰ゲームは完了する。

発案者は、タバサを巻き込めとは言ったが、試合に勝てとは言っていない。
つまりタバサ、シルフィードを除いた残り7人は近所の暇な人でも良い。
そう考えてみると、いっその事明日にでも試合ができるのではとさえ思えてしまう。

「ダメなの、ヤキュウは腕の一本や二本を犠牲にしてでも勝つべきなのね!」

そんな話をしてみると、賈言羽はシルフィード(人間ver)から物凄い迫力で睨まれた。


「その通りだとも!」

どこからともなく、謎の男の声があたりに響いた。

「青春と妥協は相容れぬ物、両立のできぬ物、いわば水と油の関係よ!」

……はい?
振り向けば、近くにある大樹の頂点に男は居た。
覆面に黒マント……覆面と言っても、巨大な野球のボールをそのまま覆面として使っているかのような、そんなアホらしい恰好をした男が。

「俺の名はMask・The・Baseballだ!!」

直訳すると、野球仮面。
昔、イーグル機関所属の5色の戦士達と死闘を繰り広げた男の名前のような気がしないでもない事もない。

「きゅい! 誰なのね!? カッコイイのね!」

「Mask・The・Baseballの正体は誰にもわからない。
 何故なら、謎の男だからだ!!」

樹から飛び降りて漢らしいポージングを決める野球仮面。
シルフィードは感動の余りサインを求めるが、キザったらしくポージングを決めながらやんわりと断った。
そんな頭の痛くなる光景をできるだけ視界に入れないようにしながら、賈言羽は野球仮面に歩み寄る。

「何をやっておるのですか? 殿」

一応、シルフィードに聞こえないように質問してみた。
シルフィードは気づいていないだろうが、野球仮面の声は限りなくガリア王ジョゼフ1世の声に似ていたのだ。

「気が変わった、俺も参加するぞ」

賈言羽は頭が痛くなった。

「では、その変な恰好な何ですか?」

「ガリア王ジョゼフ1世はシャルロットから恨まれているだろう。
 そんな男が仲良く青春を謳歌するわけにはいくまい。
 いくらギャグパートと言ってもな……」

青春って歳か貴様は……と、賈言羽は言いたくなったが、ギリギリでこらえた。

「アーーーハッハッハッハッハッ!
 そんなヘタレた投球じゃあ、タブチでもランニングホームランができるじゃないか。
 特別にこのMask・The・Baseball・2ndがアンタにコーチングしてやるよ。ありがたく思うんだねっ!!」

直訳すると、野球仮面2号。
……聞き覚えのある声で、とてつもなく頭の痛くなる啖呵が賈言羽の耳に届いた。
どうか聞き間違いでありますようにと始祖に祈りながら振り向くと、投球練習をしているタバサと、とてつもなく妙な恰好をした少女が居た。
ツカツカとその野球仮面2号に歩み寄る。

「何をしておられるのかな? イザベラ殿」

一応、タバサに聞こえないように質問してみた。

「しょうがないだろ! 私だってたまには遊びたいんだよ、色々なしがらみとか全部忘れてさぁっ!」

アンタは1年中遊んでるようなものだろうが……と、賈言羽は叫びそうになったが、ギリギりでこらえた。

「まあそういう訳だ。2号と共に試合に参加させてもらうぞ」

「もう勝手にしてください……」

賈言羽は心の中で、ありったけの呪詛の言葉を主君に向けた。




……試合当日。

チームガリアの精鋭達が、送迎の風竜の背から降り立った。

「ついにこの時が来たな、カクよ」

「ついにこの時が来てしまいましたな、殿」

野球仮面1号と賈言羽が、全く正反対の意思を疎通していた。

「天気も良いし、我々の体制も万全。
 これはもう勝ったも同然だな、カクよ」

「期日直前までメンバー集めが難航し、練習はほとんどできず、
 さらに前日になってカステルモール殿が負傷して療養中の状態を万全と評するならば、そうなのでしょうな、殿」

「しかし昨日の練習は爽快だったなあ。
 群がる男達をちぎっては投げちぎっては投げ……おかげで昨日から俺の2つ名は『柔道王』だ。
 どうだ羨ましいだろう、カクよ」

「実に羨ましいですな、殿。
 前日だと言うのに国王としての職務はおろか、野球の練習まで放っておいて、
 その上貴重な戦力だったカステルモール殿を投げ飛ばして負傷させて、
 それでいて少しも悪びれる様子が無い殿の神経が」

「ところで、俺達は野球をしに来たのだと思っていたが、違ったか? カクよ」

「ええ、私もそう思っておりましたよ、殿」

小高い丘を越えて視界が広がると、万を超す軍勢が、そこには居た。
万を超す軍勢が、武器を携え、甲冑を纏い、威風堂々と直立姿勢を保っていた。

「あいつら、野球にかこつけて俺の首でも奪るつもりか?」

「いえ、曹操がそのような真似をするとは思えませぬ。
 おそらく、殿かこの私……あるいはその両方を推し量ろうとでもしておるのでしょう」

「無粋な奴らだな。青春の匂いに戦場の匂いを混ぜおって……
 まあ良い、こちらは野球を楽しみに来たのだ。それ以外の思惑を持ち込むつもりは無い」

「はっ!」

曲がりなりにも殺すか殺されるかの世界を渡り歩く2人の男は、堂々と軍勢の先頭に立つ曹操に向かって足を進めた。
しかし、イザベラ……もとい、野球仮面2号は、曹操軍が持つ威風に中てられてしまっていた。

「案ずるな2号よ。奴らは手出しをしてこない。
 カクを信じろ。カクを信じられないならば、カクを信じた俺を信じろ」

「父上……」

「わっ、馬鹿! 俺の事は1号と呼べ、シャルロットに正体がバレたらどうする」

とうの昔に露見しているだろうな……と、賈言羽は思った。
当のタバサは本を読みながら歩いていた。

「わかったよ、1号!」

2号はしっかりとした足取りで、前を行く2人の後を追った。


相対した2つのチームはまず、メンバー表の交換を行った。



1・ワルド(遊)
2・コルベール(二)
3・レイナール(捕)
4・曹操(三)
5・アニエス(中)
6・キュルケ(一)
7・ギーシュ(投)
8・マルコリヌ(左)
9・アンリエッタ(右)

1・タバサ(投)
2・イルルクゥ(中)
3・野球仮面2号(二)
4・野球仮面1号(遊)
5・賈言羽(捕)
6・近所の暇な人A(一)
7・近所の暇な人B(三)
8・近所の暇な人C(右)
9・近所の暇な人D(左)




「……って、これのどこが精鋭かっ!?」

「おお、ようやくツッコんだか。
 こっちはいつになったらツッコミが来るのかとドキドキしていたのだぞ」

……果たして、賈言羽は無事に勝利を収める事ができるのであろうか?
さりげなく混ざっているトリステインの女王に、ツッコむ事はできるのであろうか?

次回・試合開始!!



「このトリステイン銃士隊対……近所の暇な人。
 このトリステイン銃士隊対……近所の暇な人……か……ふふふ」

賈言羽はそっと人の居ない場所へ歩き、泣いた。
その近所の暇な人達は、万を超す軍勢を見て、怯えに怯えていた……




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