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血風党異聞 後編

暗闇の中、二つの影が樹上を飛び交う。

付き従う才人の息が大きく上がる。単純な個人技ならば、少なからぬ自信のあった彼だったが、
森林に入ってからの土鬼の動きの冴えは異常だった。

銀線を巡らし敵の動きを掴み、ムササビの如く枝を乗り換え、頭上より一団を襲う。
慌てふためく敵陣に、さらに十数名の後詰が突っ込み、散々に打ち払う。
時に火を放っては敵をいぶり出し、時には囮を使って同志討ちを狙う。
敵は、いかに士気が低いとは言え、それでも千以上の兵からなるレコン・キスタの追撃部隊である。
それが、わずか十人余りに過ぎない殿を相手に、完全に翻弄され尽くしていた。

七度目の追撃を打ち払い、ようやく才人にも納得できつつあった。
武術の師である土鬼の力を疑っていたわけではないが、
彼が、百倍以上の敵の包囲網を抜け、脱出を図るべき、と進言した時は
正直、タチの悪い冗談としか思えなかった。

尤も、それは才人が、裏武芸の本質を知らなかったためでもある。
土鬼の使う武術の母体は、徳川将軍家の暗部を担ってきた戦闘集団・血風党の技である。
彼ら血風党は、戦国の時勢には、敵将の暗殺、敵陣の撹乱といった工作任務を本分とした。
裏の武術の真髄を極めた土鬼にとって、底深い闇や生い茂る樹木は、己が力を存分に発揮するための舞台であった。


八度目の追撃を凌いだ時、それは起こった。


「追撃は不要! 逃げる相手は……」

遠目にちらりと見えた篝火に、土鬼の声が思わず止まる。
この場に留まることは危険だと、修羅の世界で培った第六感が警鐘を鳴らす。指示を出す暇もない。
本能の促すまま、横にいた才人を抱えると、真後ろへと飛び退る。

直後、轟音と共に火柱が大地を駆け抜け、逃げ惑う敵と追走する味方が、丸ごと焼き払われていく。
肉の焼ける匂い、オレンジに染まる世界、たちまち周囲が、阿鼻叫閑の地獄絵図と化す。

「土鬼さん! これは!?」

「――ほぅ、カンのいい獣もいたものだな!」

炎の中に人影が揺らめき、樹上の二人目掛けて火球が放たれる。
土鬼が驚愕する。対手の位置からでは、こちらの居場所は視認出来ないはずである。
にも拘らず、火球は大きく弧を描き、樹木の間をすり抜けてくる。

「退くぞ! 才人」

飛び退きながら火球をかわし、二人は一気に山道を駆け上がる。

「土鬼さん、あのままじゃみんなが……」
「あの有様では、どの道助からん! お前もそうなりたいか?」


山頂から、赤々と燃えあがる一帯が見える。
ほてった体が急速に冷え、流れる汗が冷たいものへと変わっていく。
仲間の断末魔が耳元で残響する。初めて味わう戦場の恐怖が、才人の体をぎりぎりと締め上げる。

「才人」
抑えの利いた声で、土鬼が切り出す。

「この場は俺が抑える。
 お前はこのまま山を下りて、ウェールズ殿下達と合流しろ」

「そんな! ムチャだ、土鬼さん!」

才人が叫ぶ。土鬼相手にこれ程まで激昂したのは、初めての事だった。

「今までぬるま湯みたいな生活をしてきた俺にだってハッキリ分るよ!
 アイツは…… アイツは普通じゃない!
 魔法を使えないアンタが、一人で立ち向うなんて危険すぎる!」

土鬼は才人の表情をまじまじと見つめていたが、やがて、静かに言った。

「才人、お前…… 人は斬れるか?」
「……!」

思わぬ問いかけに、どくん、と心音が高鳴る。

「お前の言うとおり、奴は普通の手合いではない。
 逃げ惑う味方を笑いながら焼き払える奴が、まともであるはずが無い。
 立ち合いの際、少しでも斬ることを躊躇えば、たちまち消し炭にされてしまうだろう」

「……」

「どうだ? 才人。
 奴を殺すのに、ひとかけらの迷いも持たないと言うのなら、共に連れて行ってやろう」

「土鬼さん…… オレ、俺、は……」

不意に土鬼が笑う。才人が今までに見たことのない、穏やかな笑顔だった。

「いいんだよ、殺せなくても……
 武の道を極めた果てにあるものが、俺や奴のような、
 血で血を洗う生き方のみだと言うなら、それは、あまりにも空しいと思うよ。
 才人、お前には、俺とは違う生き方を、その武で切り開いて貰いたいんだ」

「土鬼さん……」

「さあ行け! 生きて、その左手で主を守れ!」

――才人は、もはや行くしか無かった。今の彼には、土鬼の傍に立つ資格が無かった。

「分かったよ…… アンタも、あんなヤツに負けるなよ!」

そう言い残すと、才人は後ろを振り向く事なく、真っ直ぐに山道を駆け降りた。



「どうしたァ! ウェールズの飼い犬よッ! 逃げてばかりじゃあ話にもならんぞ!」

強敵の嘲笑がこだまし、闇の彼方から火球が迫る。
魔法のあまりの精度の高さに、土鬼が舌を巻く。

二度目の接触から既に五分。
敵は未だに姿を見せないばかりか、思わぬ死角から、正確無比に火球を放ってくる。
かつて、火炎を使う忍びと行動を共にした土鬼だったが、これ程までの技は見た事が無かった。
飛び交う炎を的に、何度か飛礫による反撃も試みたが、その度に樹木に阻まれてしまう。
闇の住人である土鬼にとって、暗闇は本来味方であったはずだが、対手の能力は、土鬼のそれを完全に凌駕していた。

このままでは埒が開かないと踏んだのか、敵が戦法を変える。
正確無比だった炎の軌道が変わり、周囲の木々に炸裂し出す。
この効果は絶大であった。
燃え盛る炎に、土鬼の動きは大きく制限され、
しかも、赤一色の世界がカモフラージュとなるため、火球の回避は極めて困難となった。

樹上に逃れることも出来ない。炎から逃れるべく上に跳んだとしても、煙に燻されて墜落するのがオチである。
もはや、土鬼には一切の余裕が無い。
炎を避けるスペースを求め、前方の闇の中へと跳んだ。

「うっ」
思わず呻き声が洩れる。ずぶりとした感触が両足を包んだ瞬間、土鬼は敵の仕組んだ罠を理解した。

「これは、底なし沼、か……」

土鬼の両足が、ゆっくりと泥の中へ沈み始める。
慌ててもがけば死期が早まる。といって、悠長なことをしていては、周囲を包む炎に焼き尽くされてしまうだろう。

「眼前にある沼すら分らぬか。ハッ! 目が見えるとは不自由な事だな」

ガサガサと藪をかき分けながら、『敵』が姿を見せる。土鬼が思わず息をのむ。

「成程。暗闇を苦にしないわけだ…… 初めから盲目の手合いだったとは」

「オレの名は『白炎』のメンヌヴィル。
 煙に巻かれて死ぬのは苦しかろう? せめてこの手で、ひと思いに焼き殺してやろう」

メンヌヴィルが詠唱を始める。既に腰まで泥中に嵌った土鬼には、避ける術がない。

「さあ! お前の焼ける匂いをかがせろォ!!」
「!」

土鬼が右手を引く。直後、振り下ろさんとした男の杖が、空中で弾力のある何かとぶつかり、大きく弾かれる。

「うおっ!」
メンヌヴィルには驚いている暇はなかった。張りつめた糸が足元を襲い、バランスを崩し強かに転倒する。

土鬼が懐から何かを放つ。銀色の糸が炎で煌めき、投網の如く広がって、対手の動きを絡め捕る。

「なんだッ! これは…… 糸!?」

「【銀線】に【銀網】さ。
 髪の毛のように細い鉄線、抜けるのは容易じゃないぞ。
 お前が俺を、ここに誘い出そうとしているのは明白だったからな。
 逃げ惑う振りをして、あらかじめ糸を張っておいたのさ」

「何だと! 貴様ッ、沼があるのを承知の上で飛び込んだというのか?」

「ああ。その甲斐あって、お前さんの素顔を拝むことが出来たしな」

メンヌヴィルが歯噛みする。
光の届かぬ世界で彼が自在に動けるのは、周囲の物体の発する熱量を、正確に把握できる能力によるものだった。
もし、辺りが通常の状態であれば、張り巡らされた糸の存在も、鋭敏に感知する事が出来たであろう。
なまじ周囲を高熱の炎で包んでしまった事で、皮肉にも彼の中のセンサーが鈍り、足元を掬われる結果となったのだ。

土鬼が左手を弾く。霞石が高速で飛びだし、尚も反撃しようとするメンヌヴィルの眉間に、深々とめり込んだ。

「フ、 ブハハッ! ご、ゴ、 ごのうえバ、ギサマも……」
「……ッ!」

血泡を吹き出しながら、痙攣する手で杖を突きだす。
メンヌヴィルの異様な動きを察知し、頭上の木立目掛け、土鬼が七節棍を伸ばす。

直後、閃光と爆音が周囲を包み、天を焦がさんばかりの火柱が、勢いよく燃えあがった……。


「姫殿下……?」

トリステイン王宮、王女アンリッタの自室に、女官の不審げな声が響く。
当の主は、どこかぼんやりとした様子で、部屋の中空を見上げていた。

「どうかなされましたか?」

「いえ…… 今日はもう休みます。 お前ももう下がりなさい」

「はい、……あまり、お気を詰められませぬように」

心ここにあらずといった風の王女を気遣いながら、侍女が部屋を後にする。
レコン・キスタ指導者、オリヴァー・クロムウェル横死の報から一日、
アルビオン皇太子、プリンス・オブ・ウェールズの安否に関する情報は、未だ届いていなかった。

扉が閉まる音を確認すると、アンリエッタはゆっくりと立ち上がり、窓際へと進んだ。

「まさか……」

木戸を開け放つ。と、バサリという羽音がして、一匹の鷹が舞い降りてきた。

「ああ、やはり稲妻!」

アンリエッタが歓喜の声を洩らす。
眼前で悠然と羽を休めているのは、間違いなく土鬼の愛鷹、稲妻。
先ほどの彼女の不審な態度は、窓の外に、鷹の嘶きを聴いた気がしたためであった。

「稲妻、土鬼殿は、あなたの主は無事なの?」

稲妻が首を動かす。見ると、左足に細く折った手紙が結わえてある。
アンリエッタが手紙を紐解く。紙面には、いかにも習い始めたばかりと言った風の、不器用な文字が躍っている。
紛れもない土鬼本人からの手紙であった。

書面には、現実主義者の彼らしい簡潔な文章で、事の仔細が記されていた。

魔法衛士隊隊長、ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルドの裏切りとその顛末。
オリヴァー・クロムウェル横死の真相。
ウェールズ皇太子の無事と、これから行う、ニューカッスル脱出の手筈。

アンリエッタが深いため息を漏らす。
手紙の末尾には、それまで同様の簡潔さで、使い魔からの決別の言葉が記されていた。



一年前、王宮の中庭に於いて、アンリエッタはサモン・サーヴァントの儀式に臨んでいた。

当時、彼女は孤独で、無力であった。
隣国アルビオンでは、レコン・キスタが勢力を拡大し、アルビオン王家の滅亡は、時間の問題と囁かれていた。
革命主義者の脅威に対抗するため、ゲルマニアとの間に軍事同盟を締結する事が、トリステイン王国の当面の課題であった。
王家の正当な後継者であるアンリエッタに求められたのは、指導者としての英邁さではない。
政略結婚の道具たるに相応しい器量であり、健やかなる後継者を授かれる母体であった。

国民を安んじる事こそ王家の人間の務め、と、己の運命に関しては、既に諦めの付いていた彼女であったが、
敬愛するウェールズ皇太子を見殺しにする事だけは、どうしても納得することが出来ずにいた。

力が欲しい。国家にではなく、自分に忠誠を捧げ、
滅びの運命を負ったウェールズの支えになれるだけの使い魔が欲しい。
常ならぬ覚悟と気迫を宿して、彼女が召喚の儀式に臨んだのは当然の次第であった。

少女の願いは、その半ばまでが叶えられた。

召喚に応じたのは、巨大な翼を持った竜でも、特異な能力を秘めた幻獣でもなく。
武芸者と思しき体躯を備えた、見慣れぬ異装の若者であった。

――半ばまで、と、いうのは、男が使うに値しない無能者だったからではない。
彼が、使い魔の契約を拒み、拘束しようとした衛兵三人を、手にした棍で瞬く間に打ち倒して見せたからである。

昏倒した三名は、いずれも腕に覚えのある実力者ばかりであった。
異例続きの儀式に、周囲はたちまち騒然となったが、彼女自身はこの一件で、すっかりその使い魔に惚れ込んでしまった。

彼女に必要なのは、忠実さが取り得の護衛ではない。身一つで困難な任務をこなせる猛者である。
その男……土鬼が契約を拒んだのは、武人としての誇りの高さ故であり、彼はその矜持を、己が実力で証明して見せたのだ。

アンリエッタは土鬼を使い魔にする事を諦め、武芸指南役として城中に留まるよう依頼したが、それもやんわりと拒否された。
土鬼は、隠者のような存在なのだ、とアンリエッタは理解した。
長いハルケギニアの歴史の中には、メイジとしての優れた資質を持ちながら、貴族の生活を疎んじ、山野にこもる変わり者が、少なからず存在した。
彼らにとって魔法の研鑽とは、名声や栄達の手段ではない。研鑽のための研鑽を積むことこそが、彼らにとっての生きがいであり喜びなのだ。

アンリエッタの推測が正しかったかどうかは定かではないが、ともかく彼女は、土鬼を城中に留めおく理由を失ってしまった。
彼女は一計を案じ、トリステイン魔法学院の巡行に同行するよう、土鬼に強く懇願した。
そしてその地で、旧友、ルイズ・フランソワーズの使い魔、平賀才人と引き合わせたのだ。
土鬼と同じ境遇に立たされた少年なら、あるいは、彼をトリステインに繋ぎ止めるための、
鎖となってくれるかも知れないと考えたのだ。
アンリエッタは、親友の身辺を警護するため、才人に護身術を指南して欲しい、と、土鬼に依頼した。

この提案は、想像以上にうまくいった。
最初はしぶしぶながら稽古を付けていた土鬼だったが、日々めきめきと上達していく才人の技を、
まるで自分の事のように喜ぶようになった。
それが、遠く異国の地で絶えると思われた、裏武芸の真髄を継げるだけの麒麟児を得た武人の本懐故とは、
ついにアンリエッタには分からなかったが……。

かくして、トリステイン魔法学院で、異例となる王女の使い魔の生活が始まった。
日中は他の生徒たちと机を並べ、魔法に関する授業を受ける。
もちろん自分が使うためではない、様々なメイジの戦術に対抗する術を模索するためである。
メイジと殺し合いになる機会など、そうそうあろうはずも無いのだが、そこは、生粋の武芸者である土鬼の本能であった。

そして、夜を待って、才人に稽古をつける。
わざわざ闇夜の中で立ち会うのは、あらゆる状況で闘える術を身に付けさせるためであり、第三者に手の内を晒さない為でもあった。

また、月に一度は王宮に赴いて、市井の様子や、とりとめの無い噂話などを、アンリエッタの前で語って見せた。
勿論、使い魔の契約は果たさぬままだったし、土鬼の方も、必要以上に王女に接近しようとはしなかった。
アンリエッタもそれを是とした。いずれ、機が熟すまでは、土鬼の協力を仰ぐべきではない、と考えていた……。



アンリエッタが今回の策を思い立ったのは、ワルド子爵に不穏の動きあり、という、土鬼の報告を聞いたときである。
一国の存亡を揺るがす手紙の存在をダシに、彼女はルイズを動かし、その護衛として、ワルドをアルビオンに差し向けた。
ワルドの動きを、別働隊の土鬼に監視させた上で、だ。
ワルドが無事に任務を果たすようならそれで良し、
万一、彼が裏切るようなら、土鬼にワルドを排除させ、任務を続行させる――。

それはアンリエッタにとって、危険な賭けを通り越して、ある種の暴挙でさえあった。
最悪の場合、ウェールズはワルドの手にかかり、手紙はレコン・キスタへと渡る。
ゲルマニアとの連携は不可能になるし、愛娘を失ったヴァリエール一門は、王家に対し反旗を翻すかもしれない。
トリステインは、一気に存亡の危機へと晒される事となるだろう。

それでもアンリエッタは、その博打を打たざるを得なかった。
このまま手をこまねいていれば、遅かれ早かれウェールズは死ぬ。
彼の窮地を救える者があるとすれば、裏の武芸の真髄を極めた土鬼だけであろう。
だが、彼は富や名誉のために動く男ではない。
土鬼をアルビオンに赴かせる手段はただ一つ、
彼の弟子であり、数少ない友人である才人に危険な任務を与え、死地へと送り込むことだけであった……。

勿論、土鬼に対し「敵将クロムウェルを暗殺し、ウェールズの窮地を救え」などという指令を下したわけではない。

だが、誇り高い武人である土鬼には、窮地のウェールズを見殺しには出来ないだろう、という計算があったし、
ニューカッスル脱出のため、土鬼が非常な手段を打つことは、十分に考えられる事態だった。

それに……、クロムウェルが死んだ事に対し、心の底で安堵する自分がいた事は、
アンリエッタにとって、動かしがたい事実であった。

既に、事は成った。

卑劣な謀略の全容を知るのは、アンリエッタと土鬼の二人だけであり、
誇り高き彼女の使い魔は、二度と主人の下へは帰って来ないだろう。

アンリエッタには、懺悔をする事すら許されない。
真実を口にすれば、命がけで任務を成し遂げた親友の、その忠誠を貶めることになる。
愛する者の命と引き換えに、アンリエッタは生涯消えぬ十字架を負ったのだ。

「それでも…… ウェールズ様が生きていて下さるなら…… 私 は……」

読み終えた手紙を暖炉にくべると、アンリエッタは左手の指輪を外し、稲妻の足へ括りつけた。

「稲妻、あなたの主人が生きているなら、それを届けて
 それが、今の私にできる精一杯……」

稲妻は一声鳴くと、再び闇の中へと舞い上がった。

「ウェールズ殿下の事、よろしくお願いします」

彼方の闇に向かい、アンリエッタが呟いた。


――その後、

かろうじて城外へと落ち延びたウェールズは、転々と拠点を変えながら、
足並みの揃わぬレコン・キスタ相手に、反抗戦を開始した。

圧倒的な兵力差を前に、幾度と無く苦戦を強いられた彼であったが、
その度に不屈の闘志で立ち上がり、各地で敵の悪行を糾弾し、諸勢力を味方へと取り込み、
遂にはアルビオンを奪還する事に成功した。

戦乱の中、ウェールズの影となって策動する戦闘集団の噂が幾度と無く流布し、
その存在が、まことしやかに囁かれたが、それらの噂は
乱世の集結と共に、風のように消え去った。

後年、流浪の王子ウェールズの戦いは、詩人達が好んで取り上げる題材となり、
彼らの口伝によって、王子に付き従った名も無き戦士たちにも、複数の人格が付与された。

それらの伝承は、何人かの戯曲家の手によって集約され、
【英雄ウェールズと血風党の伝説】として、広く世間に知られる事となるのだった。




――土鬼の行方は、誰も知らない。



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