あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

蒼い使い魔-26


翌朝、ルイズは眼をこすりながらゆっくりと起床する、
ここ最近、バージルは朝、ルイズを目覚めさせる仕事すら放棄しているため
自分自身で目覚めなければならないのだった。
ルイズははっとしたように部屋の中を見渡す、そこにはバージルの姿は見えなかった
昨日のバージルの言葉が脳裏をよぎる、
―俺は魔界へ行く
脳内でその言葉が再生された瞬間ルイズは跳ねるように飛び起きた。
「どこっ!?バージル!どこに行っちゃったの!?」
ルイズはパニック状態になり部屋の中を引っかき回し己が使い魔の名を呼びながら探す、
眼に涙を溜めながらクローゼットの中からベッドの下まで覗き込む、
心臓が早鐘のように高鳴る、呼吸が荒くなるほど胸が苦しい、
「バージルッ…どこよ…どこにいっちゃったのよ…」
部屋の中を散乱させ、部屋の中で崩れ落ちるように座り込む、目から涙がこぼれおちた。
その時、部屋のドアが無遠慮にガチャと音を立てて開かれた、ルイズが驚きその方向をみると、
水桶をもったバージルが姿を現した。
バージルは散らかった部屋の中と半泣きのルイズを何も言わず一瞥し…、小さく溜息を吐くと洗面器へと向かった。
「バージル!!」
ルイズが声を上げバージルのところまで駆け寄り、背中にしがみつく。
「何だ鬱陶しい…」
「何だじゃないわよ!どこに行ってたのよ!心配させてっ!!」
「水を汲みに行っていただけだ。いつものことだろう」
淡々と返すバージルにルイズも冷静さを取り戻す。
水汲みはバージルが自ら行っている数少ない仕事だ、自身の顔を洗うためのついで、ということだが。
そこまで考えがいたった瞬間、ルイズの顔がボンッと音を立てるように真っ赤になり、
跳ねるようにバージルから離れた、
「なっなっなによ!別にあんたがいなくなったことを心配したんじゃないんだから!!」
「朝くらい静かにしろ」
湯気がでるんじゃないかというほど顔を真っ赤にし、喚き散らすルイズに取り合うこともせずさらりと受け流す。
顔を真っ赤にしながらも顔はバージルが戻ってきたという安心感で思わずにやけてしまう。
「…何をニヤけている…気色悪い」
半泣き状態でニヤけるルイズをみて辛辣な感想をバージルが呟く
「何よバカ!あんたのせいでしょ!罰として部屋の片づけをしなさい!いいわね!」
そう言いながら、急いで顔を洗う、冷たい水が涙を洗い流し、火照った顔を冷やす、だが顔は綻んだままだった。
朝、バージルの姿が見えなかっただけでこんなにも取り乱している自分がいる。
なんでこんなにも取り乱したんだろう、アイツとの関係は主人と使い魔…それだけなのに…。
使い魔だから?そうだ…きっとそう…、使い魔なんだから一緒にいてもらわないと困る、私だけの…

顔を拭き、そう思いながらベッドに戻りシーツのカーテンを引き着替えを始める、
着替え終わり、カーテンを開けバージルに話しかける。
「昨日言ってた魔界へ行くって話だけど…私、絶対認めないからね…」
「何故だ?俺が消えて困る奴など居まい、お前とは『一応』使い魔契約をしているが、
俺がこの世界から切り離されればそれも消える筈。お前は新しい使い魔を呼べばいい、それだけのことだろう」
その言葉にルイズの心がズキリと音を立てて痛み出した。
「俺とお前の関係などそんなものだ」
「違う!」
バージル本人の口から出た先ほど頭の中で思っていた主人と使い魔という関係を必死に否定する。
「違うなら、では…何だ?」
「それはっ…!!」
バージルが静かにルイズを見据える、
ルイズは言葉に詰まる、自分で主人と使い魔と思っておきながら
それをバージルに言われ必死に否定してしまった。
「とっ!とにかく認めないから!!絶対認めないから!!」
「まだ方法もかかる時間も、分からんというのに…」
再び顔を赤くし喚くルイズを見て、呆れたように小さく溜息を吐くと部屋から出て行ってしまった。
「あいつ…私のこと…そのくらいにしか見てくれてないんだ…」
ルイズは思わず自分の口から出た本心にブンブンと首を振り、バージルを追うように部屋を後にした。

ルイズは朝食を取った後、授業へと出席する、バージルは図書館へ行き、今日も教室にはいない。
そしていつもどおり授業を受けていると、オールド・オスマンからの呼び出しを受けた、
なにか問題でもあったのだろうか?そうハラハラしつつ学院長室の前まで来ていた。
「失礼します」
ルイズは意を決し学園長室の扉をこんこんと叩いた。
「鍵はかかっておらぬ。入ってきなさい」
その言葉とともに、軽く深呼吸しドアをあける、
「私をお呼びとお聞きしました」
そんなルイズに緊張を見てとったのかオスマン氏は両手を広げて、立ち上がる。
歓迎の意を体全体を使って表したのだ。
「おお、ミス・ヴァリエール。旅の疲れはいやせたかな?思い返すだけでつらかろう。
だが、おぬしたちの活躍で同盟が無事締結され、トリステインの危機は去ったのだ」
優しい声でいわれて、ルイズの気持ちは幾分か落ち着いた。
「来月にはゲルマニアで無事王女と、ゲルマニア皇帝との結婚式が執り行われることが決定した。きみたちのおかげじゃ。胸を張りなさい」
しかし、その言葉に対しては、あまり胸を張れなかった。
アンリエッタとウェールズが愛し合っていたのだと知っている今、姫の望まぬ結婚は素直に喜べない。
「そしてその件なんじゃがの」
オスマンはそう言いながら、一冊の本を手渡す、
「これは……?」
「始祖の祈祷書じゃ」
「始祖の祈祷書?これが……ですか?」
名前ならルイズも聞いた事がある。王室に伝わる伝説の書物である。
といっても、この手の伝説の品によくあるように偽者もいっぱいある。
そして偽者を持つ貴族やら司祭やら王室関係者は誰もが「私の物こそ本物だ!」と主張している。
そんなこんなでトリステイン王国に伝わる始祖の祈祷書も本物かどうか怪しいものだ。
が、それでも国宝である事に代わりはなく、とても大切な物である。
何故そんなものをルイズに渡すのか。オスマンは説明を始めた。
「トリステイン王室の伝統での、王族の結婚式の際には貴族より選ばれし巫女を用意せねばらなんのじゃ。
選ばれた巫女は、この『始祖の祈祷書』を手に、式の詔を詠みあげる習わしになっておる」
「は、はぁ(そうなんだ…)」
「そして姫は、その巫女にミス・ヴァリエール、そなたを指名したのじゃ」
「姫さまが私に?」
オスマン氏が頷く。
「その通りじゃ。巫女は式の前より、この『始祖の祈祷書』を肌身離さず持ち歩き、詠みあげる詔を考えねばならぬ」
「えっ!?それじゃ、その…わ、わたしが詔を考えるのですか?」
「そうじゃ。もちろん、ある程度の草案は宮中の連中が推敲するから安心しなさい。
伝統はちとめんどくさいもんじゃな。だがな、姫はミス・ヴァリエール、そなたを指名したのじゃ。
これは大変に名誉なことじゃぞ。王族の式に立ち会い、詔を詠みあげるなど、一生に一度あるかないかじゃからな」
姫様の頼みを断るなんて絶対無理!ということでルイズは観念するように頷く、
「わかりました。謹んで拝命いたします」
ルイズは、オスマン氏の手から『始祖の祈祷書』を受け取った。オスマン氏は笑みを浮かべて、ルイズを見つめた。
「引き受けてくれるか。よかったよかった。姫も喜ぶじゃろうて」

一方バージルは学院の庭の隅のベンチで、これもまた図書館から拝借してきた本を読んでいた。
禁書エリアにまで堂々と入り込み、ブリミルの目指した聖地の奥の地獄門についての文献を漁り片っ端から読んでいるのだ。
「地獄門についてはどれも記されていない…
手掛かりがあるとするならば聖地の遥か東、ロバ・アル・カリイエという名称だけ…か」
バージルが本を読みながらつまらなそうに呟く。
「禁書といってもそんなもんさ、ブリミルは聖地から東のことについてはあまり触れなかったらしいからな」
ベンチに立てかけてあるデルフが声をかける。
「お前が覚えてればすべて解決なんだがな…」
「ハハハ、わりぃ、こればっかりはどうやっても思い出せねーんだ、あんま興味なかったんでな」
ジト目で睨むバージルにカチカチとデルフが音をたてて笑った。
チッっと軽く舌打ちをし、次のページをめくろうとした時に不意に声がかけられた、
「あの、バージルさん」
その声の主は学院のメイド、シエスタであった、手にはトレーを持っている。
「……」
シエスタに視線を向けることなく本を読み続ける、
「えと、何をお読みになってるんですか?」
そういいながら本の中身を覗き込む、その内容をみたシエスタが思い出したように話を切り出した、
「聖地の本ですか、そういえば東方のロバ・アル・カリイエから運ばれたって言われる『お茶』っていう飲み物が届いたんですよ!
今日はそれを御馳走しようと思って持ってきたんです!」
モット伯邸の悪魔達から自分を助け出してくれたバージルに対し、恩義以上のものを感じているシエスタは
これがチャンスといわんばかりに、バージルに声をかけてきたのだった。
何しろ、これから声をかけようとしていた矢先にルイズやキュルケ、タバサ達と共にどこかへ外出してしまっていたのだ、
ここで巻き返すためにバージルが一人になる瞬間を狙っていたのかもしれない。
ロバ・アル・カリイエ、その言葉を聞いたバージルが反応し、シエスタの持ってきたトレーに目をやる、
「その…よかったら……飲んでくれますか?」
シエスタはトレーをベンチに置いて、手をもじもじしている。
「頂いておく」
特に気にするでもなく、返事をする。
すると、シエスタの顔がパーッと明るくなる。カップにお茶を入れてバージルに手渡す。
カップの中を見るとそれは深い緑色をしていた。
元は彼の世界にある日本茶である。バージルはそれを口にしてみる…
変わった香りだが悪くない、素朴だが味わい深い渋み、バージルはいたくこの『お茶』を気に入ったようだった。
「どうですか?おいしいですか?」
シエスタがおずおずと聞いてくる、
「悪くない」
そう言いながらカップを差し出す、二杯目が注がれ、またそれを口にする。
「そのロバ・アル・カリイエについて」
バージルが口を開く、
「何か知っていることはあるか?」
「ロバ・アル・カリイエですか?うーん…そうですねぇ…」
シエスタが手を顎にあてて考えるような仕草をとる。
「ブリミル様が最終的に目指したと言われる場所ですよね、
変わったものがたくさんあるって話ですよ、中には異世界につながっているなんて噂も…
エルフたちとの行商が細々と行われている…くらいしか…」
「そうか…(やはり、手がかりがあるとすればそこか…)」
そう言いながらバージルは本をパタンと閉じ、空になったカップをシエスタに渡し、立ち上がる。
「また頼む」
「はいっ!」
シエスタの顔が輝く、お茶がバージルのお気に召したようで安心したようだ。
そうにこやかに返事をし、立ち去るバージルを見送った。

バージルが部屋に戻ると、ルイズがベッドの上で寝息を立てていた。
最初は気がつかなかったが、何やら古そうな本を抱えているのが見える、
眠っているルイズの腕から引きはがしそれを手に取り開く、
「………」
部屋の中にページをめくる乾いた音が響く、
「うぅーん…ふぁぁ…あれ?もどってきてたんだ…?」
ルイズが目をこすりながら起きる、
「ふぁ~あ、あ…あれ?始祖の祈祷書は!?」
持っていたはずの本がなくなりルイズは慌てる、国宝の本だ、無くしたらとんでもないことになる。
探しものはバージルが持っていた、静かにページをめくっている、よかった、と安心したその時
バージルが無言で読んでいた本を投げ捨てた、後ろ手で放り投げたにもかかわらず
きれいな放物線を描き、ゴミ箱へ吸い込まれていった。
「ばっバカーーーー!!!なにやってんのよー!!!」
「終におかしくなったか?白紙の本に価値はない」
「だからって国宝をゴミ箱に叩き込む奴がいるかーーーーっ!!」
ルイズが絶叫し急ぎゴミ箱から始祖の祈祷書を回収する、よかった、どこも破れてはいない。
「白紙の本が国宝か。作った奴もだが、それを国宝と認定する連中もどうかしているな」
「仕方ないじゃない!これを肌身離さずにっていわれたんだもん!」
そういいながら結婚式の巫女に選ばれ始祖の祈祷書を持ち詔を考えてる事をバージルに説明した。
「でも…あんたの言う通り、国宝としては最悪ね、白紙だなんて…、偽物も多いけど胡散臭さはその中でもダントツよ、きっと」
ルイズが呆れたように言いながらバージルに視線を向ける、バージルは窓の外の二つの月を眺めていた。
「あんたってホント…月を眺めるのが好きね、なにが面白いんだか…」
そう言いながらバージルの横に立ち、月を見上げる、蒼い月と赤い月、二つの月が静かに光を放っていた。
「ねぇ、あの月…」
「………」
「まるであんたとダンテみたいね」
ルイズのその一言にバージルが少し驚いたような表情でルイズを見る。
「…そうだな…」
この世界の二つの月にどこか惹かれていたのは…考えながら二つの月に視線を戻す。
同じだが違う、違うが同じ、時に交錯し時に離れる、二つの月をどこか自分たちに重ねていたのかもしれない。
「こうして月を眺めるのも結構いいかもね…二つの月がどんな闇も祓ってくれる感じがするわ」
ルイズが静かに言う、バージルがフッと静かに笑った。
「お前にしては、気の利いたセリフだな」
「何よ、馬鹿にして…別にいいじゃない」
そう言いながらルイズが頬を膨らませる。
「でも…今日は特別に許してあげるわ」
そう呟きながらルイズはベッドに戻ってゆく、バージルは静かに月を眺め続けていた。


その日、ルイズは夢を見た、
バージルとダンテが共に力を合わせ、醜悪な姿をした悪魔と戦う夢だ。
その悪魔は強大な力を抑えきれず暴走し、二人に襲い掛かる。
ルイズはそれを見ても不思議と怖いとは感じなかった、力を合わせた二人の前に敵などいない、そう思えてしまう。
二人が息を合わせて戦う姿に思わず笑みがこぼれる。
悪魔の体に閻魔刀とリベリオンを打ち込み体内で交錯させ、貫通させる、
バージルがリベリオンを、ダンテが閻魔刀を振い悪魔を斬りつける。
ついに限界が訪れたのか、悪魔が苦しみ出した、

ダンテとバージルが銃を構え、悪魔に狙いをつけた。
「今回だけお前に付き合ってやる」
「"決めゼリフ"を覚えてるか?」
二人がニヤリと笑う
「「JACK POT!」」
二人の魔力が込められた弾丸が放たれ――悪魔を貫く――
――悪魔は断末魔の悲鳴を残し、消えて――

そこでルイズの夢がさめる。
「なんだ…やっぱり仲良かったんじゃない…。」
少し笑いながらそう呟き、椅子に座り目をつむるバージルを見つめた。


昼休み、ルイズが広場のベンチに腰かけ始祖の祈祷書を開き、詔を考えていたが一向にまとまらず頭を抱えていた。
そこにキュルケが通りかかりルイズに話しかける、
「ハァイ、ルイズ、何やってるの?白紙の本なんか広げちゃって…」
「姫様の結婚式の詔を考えてるのよ、全然考えがまとまらなくって困ってるの」
「へぇ…よくわからないけど、大変そうなのはわかるわ、まぁ、それはそれでおいといて、面白いものを持ってきたわよ」
「面白いもの?」
怪訝な顔をするルイズの前に数枚の地図を広げるキュルケ
「なに?この地図、この本より胡散臭いわよ」
「ずいぶんな言いようねぇ、お宝の地図って話よ、ギーシュが持ってきたの」
「宝の地図?さらに胡散臭くなったわ…」
「まぁまぁ、そんなつれないこと言わないの、面白そうじゃない、ね、探しに行かない?」
「でも詔を…」
「いーのいーの!頭をかかえてたっていい文章は思い浮かばないわよ!気分転換にちょうどいいわ、きっと」
「そうね、じゃあ、ちょっと探してみましょうか」
キュルケの言う通りかもしれない、ここ最近はこれのことで悩みっぱなしだ、きっといいリフレッシュになるだろう。
「決まりね、とタバサも連れて行きましょう、あの子の風竜なら移動も楽だと思うわ、
後、役に立つか分からないけどギーシュも、これ持ってきてくれたのアイツだしね」
「そうね、じゃ、探しに行きましょ、多分図書館かしらね?」
そう言いながら立ち上がり二人は本塔へと向かった。

「おかしいわね、図書館にいると思ったのに、あの子ったらどこにいったのかしら?」
本塔から出てきた二人は首をかしげながら歩いていた、どうやら探し人はいなかったようだ、
さてどこにいるのだろう、と考えながらあたりを見渡す、すると視界に見知った姿が入り込んだ
二人の探し人、タバサだった。
「あ、こんなところにいたのねタバッ…!?」
声を掛けようとするルイズをキュルケが物陰に引っ張り込む
「ちょっと!何するのよ!」
「いいから静かに!ほら!タバサが他の誰かと一緒にいるのよ!こんなの珍しすぎるわ!」
キュルケがいつになく興奮した様子で小声でまくしたてる。
テーブルを挟むようにタバサともう一人が椅子に座り何やら本を読んでいる。
「確かに…タバサがあんた意外と二人きりなんて見たことないわ…」
そう言いながら二人は物陰からそっとその場を覗き込む、
そして思わず言葉を失った。
タバサと仲良く(?)本を読んでいたのはルイズの使い魔のバージルだった。
「ああああああああの馬鹿犬ぅぅぅぅ!!!私をほったらかしてなんでタバサなんかとぉぉぉぉ!!!」
「ちょっと落ち付きなさい!たまたま一緒にいるだけって可能性もあるでしょ!?
特に会話もしてないみたいだし!」
怒りの形相で飛び出さんとするルイズを必死にキュルケが抑え込む、
その言葉に少しだけ冷静さを取り戻したのか荒い息を押さえこむ。
「そ、そうよね…偶然かもしれないわ…」
そう言いながら再び見つからないように二人の様子を覗き込み耳を澄ます。
すると二人の会話が聞こえてきた。

「タバサ」
バージルがタバサに声をかける、
「何?」
タバサが本から目線をバージルに合わせる。
「聖地について何か知っていることはあるか?」
「…ごめんなさい、多分あなたの知っていること以上のことは知らない」
「そうか…ならいい」
「そう…」
はたから見れば何のこともない普段の会話、だがバージルがどういう人物かよく分かっているルイズにとって、
そしてタバサがどんな人物なのかよく知っているキュルケにとって、驚愕するに値する会話であった。
「(なんで名前で呼んでるの!?私なんてまだ一度しかバージルに名前呼んでもらったことないのに!!!)」
「(あの子が読書中に答えた!?普段ならあまり答えないのに!答えたとしても本から目を離さないわよ!?)」
二人が唖然とその様子を眺めていると、別な声が聞こえてくる。
「バージルさん!」
二人がその方向へ視線をやると、一人のメイド、シエスタが近づいてきていた。
どうやら先日バージルが気に入ったというお茶を持ってきたらしい。
「………お前か」「(やっぱり名前で呼んでない!!)」
「お茶がはいりましたよ」
「そこに置いておけ」
シエスタが二人分のお茶を入れバージルとタバサに差し出す。
それを手に取るとバージルが一口飲む、
「おいしいですか?」
その様子を横に立ち笑顔でシエスタが尋ねる
「あぁ…」
「そうですか、よかった」
そう言いながらシエスタは立ち去る気配を見せない
妙に険悪な雰囲気が場を支配する。
「(邪魔)」
「(はい、邪魔をさせていただきます、ミス・タバサだけズルいです)」
タバサとシエスタから妙なオーラが立ち上る。
悪魔すら裸足で逃げ出しかねない状況に遠目で眺めていたキュルケが思わず後ずさりする。
隣を見ればそれ以上のドス黒いオーラがルイズから立ち上っていた。
当のバージルはそんな雰囲気などどこ吹く風とお茶をすすりながら本を読んでいる。

「そういえば、バージルさん、先日"二人きり"で話した聖地のことですけど、思い出したことがあるんです」
妙に"二人きり"という言葉を強調するシエスタ、タバサがピクと反応しバージルを見る、
ルイズに至っては既に真魔人になりかけているらしい。
「…何だ?」
「私のひいおじいちゃんが遥か東から、空を飛んできたらしいんです、『竜の羽衣』って呼ばれてます」
その言葉にバージルが反応した。
「何だと?その『竜の羽衣』とやらについて詳しく聞かせろ」
「はい、私の村…タルブっていうんですけど、そこに『竜の羽衣』が残ってますよ、と言ってももう飛べないらしいですけどね」
「………」
バージルが腕を組み目をつむる、東から?空を飛んできた?そう考えているとシエスタがポンと手をたたいた。
「そうだ!今度私の村に来てみませんか!?他にもおいしい郷土料理があります!歓迎しますよ!」
空を飛び、東から『竜の羽衣』に乗りやってきたというシエスタの曽祖父、もしかしたら東へ行くための手がかりになる…
そう考え、バージルは頷く。
「そうだな、では案内してもらおう」
その言葉を聞いたシエスタの顔が輝いた、すると横で本を読んでいたタバサが声をかける。
「タルブは遠い」
「うっ…」
シエスタが言葉に詰まる、結構痛いところを突かれた、タバサがさらに追い打ちをかける。
「シルフィードならすぐ」
「そうか、タバサ、頼めるか?」
「いい」
「礼を言う」
深く考えずバージルがさらりとタバサも同行させることを決定した、シエスタが膝を抱え
「(二人で遠乗りの予定が…)」
とぶつぶつ呟いていたが、突如聞こえてきた叫び声によってかき消されることとなる
「こぉぉぉぉぉぉぉぉの馬鹿犬ぅぅぅぅぅぅ!!!!!」
そう叫びながら凄まじい速度でルイズが走ってくる。
ルイズはそのままの勢いを利用しバージル目掛けレインボウを放つ。
全体重を乗せた見事なとび蹴りがバージルの顔面にヒット…するはずもなく、右手で足を取られ
空中高く放り投げられる。ルイズはそのまま地面に墜落、すると思われたが
どこにそんな運動神経があるのかと問いただしたくなるほどの動きで空中で体勢を立て直し、
きれいに地面に着地する。
「この馬鹿ぁぁぁぁぁ!!!なにタバサに尻尾振ってるのよぉぉぉぉぉ!!!」
そう言いながら拳を振りまわしバージルを殴ろうとするが、片手で頭を押えられ近づけなくされていた。
そんなルイズを後ろからキュルケが必死に抑える
「お、落ち着いてルイズ!お願いだから!」
「離しなさいよ!キュルケッ!こいつに今日こそ自分の立場ってものを叩きこんでやるんだからぁ!!」
「と、とにかく落ち着きなさいってば!」
無表情だが妙に勝ち誇った表情を浮かべるタバサにさらに怒りのボルテージを上昇させる。
なぜルイズが怒り狂っているのか理解できていないバージルは呆れたような眼でルイズを見て尋ねる。
「何の用だ?」
「この期に及んで何の用だじゃないでしょあんたはぁぁぁぁぁーーーー!」
「あ、あのね、ギーシュが宝の地図をもってきたから私たちで宝探しをしようっていう話になったのよ
それでタバサを探しに来たの」
怒り狂い話をすることが出来ないルイズに変わりキュルケが説明する
「そんなことやってる場合じゃないわよ!あんた達タルブへ行くんでしょ!?
私も行くわ!使い魔が行くんだもん!当然よ!特にそこのメイド!勝手に人の使い魔に手を出さないで!
あんたもよバージル!!ってアイツは!?」
喚き散らしていたルイズはいつの間にかバージルの姿が見えないことに気がついた
「帰った、付き合いきれんって」
タバサが本を読みながらさらりと言う
「あんの馬鹿ぁぁぁぁぁ!!!!!」
ルイズの悪魔の咆哮はいつまでも学院に響き渡っていた。
一方のシエスタは
「うぅ…なんでこんな…ひどいです…」
と膝を抱え地面にのの字を書いていじけてしまっていた。
かくしてルイズ達はシエスタの故郷、タルブへと向かうことになったのであった。


新着情報

取得中です。