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白き使い魔への子守唄 第17話 覚醒

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城内に入ったハクオロのおかげか、王党派はタバサの援護を始めた。
魔法の攻撃が飛び、敵の竜を落とす。
それが合図となって、貴族派の侵攻が始まる。
元々夜明けに攻撃をしかけるつもりで、攻撃の時間まであとわずかだったのだ。
王党派はタバサを保護し、タバサはハクオロの居場所を問うた。
しかし、ハクオロの情報は王党派に伝わっていなかった。
ワルドの遍在は、ハクオロを取り調べ報告へ向かった騎士を始末してから、ハクオロの前に現れたのだ。
王党派がタバサを助けたのは、純粋に貴族派の敵だと判断されたおかげである。
「ではトリステインからの使者、ヴァリエールはどこに?」
ハクオロの居場所が分からないなら、ハクオロが向かう場所へ行けばいい。だが。
「君はトリステインの者か? 身分を証明するものは――」
轟音が響く。城門が破られ、貴族派の兵士が雪崩れ込んできたのだ。
「君はその竜に乗って逃げたまえ。ここはもう危険だ」
「待って、ヴァリエールはどこ」
「早く逃げるんだ! ミス・ヴァリエールは我々が命懸けで逃がす!」
戦闘に巻き込まれたタバサは、ハクオロの居場所を掴めないままでいた。
ハクオロは――。


   第17話 覚醒


「平民の剣士などに、この閃光のワルドが倒せるか?」
すでにウェールズは倒れ、戦力はハクオロとルイズのみ。
ハクオロが距離を詰めるより早く、ワルドはルイズへ迫った。
慌ててルイズはクスカミの指輪を向けたが、すでに桟橋で一度見た術、
ワルドの放った風がルイズを吹き飛ばし腕輪の狙いをそらした。
「ウェールズに告げ口をしたのは君だね、ルイズ。
 どうやって知ったかは解らないが、いけない子だ」
すぐ側まで迫っていたハクオロの剣を見もせずに避けて距離を取り、
ワルドは新たな詠唱を開始し、四人の遍在を作り出した。
そのうちの一人がルイズの元に行き、腕輪と手紙を奪う。
杖は、今は所詮ゼロだからと無視し、クスカミの腕輪を身につける。
「むっ……これはどう使うんだ?」
どうやらそれが本物のワルドらしかったが、四人の遍在に阻まれハクオロは防戦一方、近づけない。
ドットメイジ(ギーシュ)相手でさえ勝利は困難な道のりで、
遍在一人には騎士二名を犠牲にしてようやく勝てたハクオロだ。
ルイズが人質に取られ、クスカミの腕輪を奪われ、心強い仲間もいない。
せめてタバサがいてくれれば作戦の立てようもあったが、
一人ではどんな策を練ろうと遍在の数に押し潰されてしまう。
「デルフ、何とかならないか!?」
「無理だね。できるだけ持ちこたえて、タバサの嬢ちゃんが早く来てくれるのを祈るっきゃないね」

だがタバサは来なかった。来れなかった。
四方から来る風の魔法を一身に受けたハクオロは教会の壁に叩きつけられて倒れた。
「フッ……その程度か、拍子抜けだな」
勝利したワルドは、王党派の貴族がここに来る可能性を考慮して遍在を残したまま、
本体でハクオロに近づくと、エア・ニードルの魔法を唱えて杖の先端に風の渦を作る。
「次にルイズが呼び出す使い魔は、貴様のような無能ではない事を祈ろう」
杖は、うつ伏せに倒れたままのハクオロの背中に突き刺さった。丁度、心臓の位置に。
「相棒ぉ……なんてこった、もうおしまいだねこりゃ」
デルフリンガーの言葉を無視し、ワルドはハクオロの死体に背を向けて歩き出した。
「さて、ウェールズにトドメを刺し、ルイズを連れて行くとしよう」

その時。
ワルドの横を、黒い霧が通り抜けた。
「おでれーた……相棒、こりゃ、どうしちまったんだ?」
デルフリンガーの困惑の声に振り向いたワルドは、立ち上がったハクオロの身体を包む闇を目撃する。
「刺し貫いたはずだぞ……心臓を……!」
その証拠に、ハクオロの胸元に鮮血があった。傷口も見えた。
使い魔のルーンも見えたが、奇妙な事に闇に溶けるようにして薄らいでいる。
同時に鮮血も消え、傷口も痕跡を残さず消え去る。
仮面の下でハクオロの双眸が鋭さを増した。

「頃合カ……」

強く、重く、響く、禍々しい声。
畏怖の気持ちが湧き上がり、ワルドはその場に屈しそうになるのをこらえた。
「き、貴様……何者だ……これは何だ、この黒い霧は……!」
「ルイズ、目覚メヨ」
ハクオロが、呼びかけるように手をかざした。
ワルドがハッと振り向くと、ルイズはゆっくりとした仕草で立ち上がり、虚ろな瞳で杖を掲げた。
唇が動く。
歌うような詠唱が聞こえる。
「まさかこれは、ルイズ……」
「ディスペルマジック」
光が教会の中を照らし、ワルドの遍在四体がすべてかき消された。
「お、おお……虚無の力か」
「ああ、間違いねぇ……こいつぁ虚無だ」
デルフリンガーも驚嘆した調子で言う。
「って事は、相棒は虚無の使い魔……虚無の使い魔は、左手、右手、額……胸……。
 相棒は……胸にルーン……おでれーた! 相棒は、相棒の正体は!」
「黙レ」
黒い瘴気がデルフリンガーを包むと、絶叫が上がり、刀身がグズグズと崩れ出した。
「よ、四人目……は…………ぐげぇっ……」
刃の半分ほどを失ったデルフリンガーを捨てたハクオロは、さらに闇を拡大させていく。
「素晴らしい……これが虚無の力か! ルイズ! 君さえいれば、僕は世界を――」
「エクスプロージョン」
次なる虚無の詠唱が、ワルドの五体を引き裂いた。
声にならぬ声を上げ、全身を焦がしたワルドはその場に崩れ落ちる。

「ウオオオオオオオオオオオオオオオオン!!」
どんな幻獣よりも圧倒的威圧的な咆哮が天を裂く。
すでに貴族派の攻撃で燃えていたニューカッスル城を、さらに黒い霧が呑み込んだ。
恐慌状態に陥った貴族派の雑兵を蹴散らしていたタバサは、その霧を見て瞳をらんらんと輝かせた。
兵士達が逃げたためシルフィードが降りてきてタバサと合流する。
シルフィードは黒い霧に怯えたが、タバサはシルフィードに乗ると、杖で霧を指した。
「あそこへ」

暗黒の淵で彼は絶望していた。
貴族派と戦う事すら許されず、裏切り者に暗殺され、貴族の名誉も愛する女性も護れず、息絶えていく。
何と虚しい最期か。
せめて、せめて一太刀、せめて一矢、報いねば……!
忌まわしきレコン・キスタの敵を一人でも多く道連れにせねば……死んでも死に切れぬ!

「敵トノ戦イ。ソレガ汝ノ願イカ」
「敵ヲ倒ス。敵ヲ殺ス。名誉ヲ、愛スル者ヲ護ルタメ……戦イ続ケル」
「ソレガ汝ノ願イカ、小サキ者ヨ」

闇が問う。
声は人ならざる者、人の上位に存在する者だと感じさせる重圧的なものだった。
「まだ……死ねぬ。私は、戦わねば……名誉を……民を……アンリエッタを……護るために……」
「ソノ願イカナエヨウ」
「願い……を?」
「タダシ、我ニ汝ガスベテヲ捧ゲヨ。
 ソノ身体、ソノ命、ソノ杖ヲ。ソノ誇リ高キ高潔ナル精神。
 汝ノスベテヲ、我ニ差シ出セ」
「……私は……」
「コノママ、ココデ朽チ果テルカ。何モ護レズ、何モ成セズ、戦エズ」
「私は……」
「与エラレタ機ヲ無ニシ、朽チ果テルカ」
今わの際、ウェールズはか細い声を漏らした。
「……私に……機を」
本心の言葉だっただろうか。闇の甘言に惑わされたのだろうか。
闇がウェールズの中にそそぎ込まれる。

「今ココニ、契約ハ成立シタ」
「汝ガ願イ、カナエヨウ」
「ソシテ」
「戦乱ヲ戦乱ニヨッテ征シ、人タル者ニ進化ノ道ヲ歩マセヨ」
「戦乱ヲ戦乱ニヨッテ征シ、人タル者ニ進化ノ道ヲ歩マセヨ!」
「戦乱ヲ戦乱ニヨッテ征シ、人タル者ニ進化ノ道ヲ歩マセヨ!!」

エア・カッターによって生まれた無数の傷口が消え去り、ウェールズの心身に生命が息吹いた。
その様をすべて見ていたワルドは、虚無の魔法で焼けただれた身を必死に起こし、
暗闇に手を向けくぐもった声で懇願する。
「た、助けて……くれ……。私は、私はまだ……死ねぬ……生きねばならんのだ……」
すると闇は振り返り、鋭利な牙を見せて笑う。
「生キタイ、死ニタクナイ、ソレガ汝ガ願イカ」
「か、かなえてくれるのか……頼む、私はまだ、まだ……!」
「フフフ……フハハハハ!」
哄笑の後、闇は喜びに満ちた声で答えた。
「ヨカロウ。永久ニ死ナヌ、不死ノ肉体ヲ与エヨウ!!」
ワルドの視界が赤く染まった。

ルイズが目を覚ますと、目の前でウェールズが微笑んでいた。
教会は燃えて、黒い煙が立ち込めている。熱気が意識を覚醒させていく。
「よかった。さあ、行こう」
「ウェールズ殿下……? ご無事だったのですね」
「ああ。さあ、これは君の腕輪だろう。手紙もここにある。これを持ってトリステインへ行こう」
「トリステインへ……? 殿下、では」
「アンリエッタの願い通り、トリステインへ亡命し、レコン・キスタとの戦いを続けよう。
 さあ、彼を連れてここから脱出しなければ」
言われて、ルイズはハクオロが倒れている事に気づいた。まさかワルドにやられたのでは。
「ハクオロ……!」
ウェールズに肩を借りながら近寄ると、ハクオロは低くうめいた。
「殿下、私はもう大丈夫です。ハクオロを」
「ああ。さあ、掴まってください。立ち上がって」
自分一人では立てぬ様子のハクオロ。
以前受けたライトニングクラウドと、火事のせいの新しい火傷が痛々しかった。
服も焦げていたが、幸い胸元にある使い魔のルーンまでは焼けていない。
「うっ……ルイズ、無事だったのか。それからあなたは皇太子殿下か?」
「ええ。ハクオロも無事で……ねえ、ワルドは?」
「解らん……私はワルドに殺されそうになって、そこから記憶が……デルフ、何があった」
相棒に問いかけるが、返事がない。不審に思いハクオロは足元に目をやり、驚愕に震える。
「デルフ……!?」
ルイズもそれに気づき、咄嗟に口元を押さえた。
半ばほどで折れた刀身は真っ黒に錆びつき、柄も触れれば崩れ落ちてしまいそうだ。
「デルフ……! 待ってろ、すぐトリステインに戻り鍛冶師に修理して――」
「……て……け……」
「デルフ?」
「置いて、いけ……」
「馬鹿を言うな! お前は私の相棒だろう!」
この時、ハクオロもルイズも、デルフリンガーは自分を置いて行けと言っているのだと思った。
しかし。

「そいつは、相棒は…………れる、もの……」
「何だ? 何と言った、デルフ」
「そいつを……置いて行け……炎の中に、置いて……け……」
言い終えると、デルフリンガーは真っ黒な灰となって崩れ去った。
最後に残した言葉は、ハクオロを炎の中に残し見殺しにしろと、そういう意味だったのか。
「デルフ、なぜだ……」
「……急ぎましょう、ここはいつ崩れてもおかしくない」
肩を貸しているウェールズが歩き出したので、ハクオロもよろよろと足を動かした。
ルイズは、灰となったデルフリンガーをしばし見つめ、目まいを起こす。
なぜだろうか、大切な何かを忘れている気がする。
デルフリンガーはいったい何を見たのか。
しかしそれをここで考えている余裕はなかった。
ウェールズのあとに続いてルイズも教会の外へ逃げ出すと、
そこにはタバサとシルフィードが待っていた。
「乗って」
炎上するニューカッスル城から、浮遊大陸アルビオンから、
一匹の風竜が四人の人間を乗せ脱出した。
様々な疑念と災いの種を乗せて。

――後日、ニューカッスル城焼け跡から一匹の赤いスライムが発見される。
腐臭を発し、人肉を食らうスライムは、武器や魔法の攻撃は通用したが、
どれほどの攻撃を浴びせても決して死ななかったため、仕方なく捕獲され隔離された。
研究材料としてこれから未来永劫閉じ込められ生きていくのだ。



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