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Persona 0-13



 ペルソナ0 第十三話


「くそっ、なんだってあたしが!」
 トリステイン魔法学院の廊下でやつあたりに壁を蹴り飛ばしながら、蒼い髪の王女は悪態をついた。
 その側に控えるのは同じく蒼い髪をショートカットにした無表情な少女、ただの護衛だと分かっていてもその眼を見ていると何故かイライラが湧きあがり余計にイザベラは荒れ狂う。
「こんな辺鄙な魔法学院に留学しなきゃいけないんだい!?」
「命令」
 淡々と告げられた言葉にイザベラは声を荒げる。
「五月蠅いね、そんなことはわかってるんだよこのガーゴイル!」
 イザベラはタバサにずいと指を突きつけた。
「肝心なのはお父様が何を考えてあたしをわざわざ糞忌々しいあんたと同じところに留学させようと考えたかってことさ」
 胸を張ってイザベラは告げる。
「ガリアの魔法力は世界一ィィィィ、わざわざトリステインに留学なんてしなくても魔法を学ぶんならガリアの魔法学院で十分だって言うのにさ」
 ため息をついてからイザベラは頭を横に振った。

 トントン

「って、こんなこと馬鹿なお前に言ってもしょうがないね。命令されたことを忠実にこなすことしか出来ないガーゴイルなんだから」

 トントン

「あー、もう。トリステインの馬鹿貴族どもってのはなんでこんなに鬱陶しいのかねぇ、いくらこのあたしの美貌がこの世のものではないくらいに美しいからって」

 トントントン

「って、さっきから誰だい!? 王女様の体を気安く叩きやがる不敬者は!」
 背中を叩く何者かに向かって振り返るとそこには奇妙な物体がいた。
「やっほー、クマです。そこの可愛いお嬢さんはひょっとしてタバサさんのお知り合いですかー?」
 ――なにこいつ?



 それがイザベラの偽らざる感想だった。
 ボタンのようなものが付いている赤い体と、ふさふさの青い毛並み、子供が絵に描いたような顔。
 その眼と鼻と口がせわしなく形を変えるところからすればただの人形と言う訳でもないだろうが、しかしこんな感情表現豊かなガーゴイルなどイザベラですら見たことがない。
 ゴーレムでないことは言わずもがなだ。
 ならばなんだと言われるとさしもイザベラも回答に困る、だが目の前のナニカはイザベラのことなど知ったことではないと言うように気さくに話しかけてきた。
「お嬢さん、よければクマとお茶しなーい?」
「な、なんだいあんた……?」 
「クマはね、クマだクヴォア!?」
 笑いながら手を振る謎のナマモノ、もといクマの頭にでっかい杖がめり込んだ。
「新種のガーゴイル、モチーフはクマ」
「ガーゴイル? こんなのは聞いたことがないよ?」
「新しい魔法技術を開発してるのはガリアだけじゃない」
 そう言うとタバサは目を回したクマをレビテーションで浮かせると、すたすたと歩き出した。
「お、おい何処行くんだい?」
「持ち主に返す」
 その背中を見つめながらイザベラはぼつりと呟いた。
「なんだってんだい、全く」
 そして不意に今まで感じていた違和感の正体に気づく。
「そんな顔も出来るんじゃないか……」
 いつもただ人形のような無表情を刻みながら去っていく従妹の顔に、僅かな微笑みがあったからだ。
「ああ、もうくそ忌々しい」
 その事に気づいた自分までにやにやと笑みを浮かべているのか分からず、イザベラは地団駄を踏む。
 げしげしと備品であるアルヴィー人形にケリを入れ、ようやくイザベラは息を吐いた。
「これはそう――霧よ、この鬱陶しい霧のせい、それと喜ばせてからたたき落とす方がより絶望が増えるからに違いないわ、うん、そうね、そうに違いない!」
 イザベラは空を見上げ溜息一つ、腰に手を当て、まるでその向こう側にいる相手に告げるように。
「早く晴れないと承知しないよ!」
 我こそが王者とばかりに高々と。
 ただ高々と。
 蒼いドレスを翻し高貴な二つの胸を張る。


控え目なノックの音にルイズは扉を振りかえった。
 空いていると告げ鍵を開くと、扉からクマが放り込まれてきた。
「へぶっ、ひどいクマよ。タバサちゃん」
 痛そうに頭を擦るクマの姿にルイズは薄い笑顔を浮かべ、やってきた二人を歓迎する。
「おかえりなさい」
「ただいま」
「ただいまクマよ、マルトーのおっちゃんにご飯食べさせてもらって元気百倍クマ!」
 すぐに立ち直るクマ、そんな姿に二人して笑う。
 だが続くタバサの言葉が部屋の雰囲気を一気に沈ませた。
「まだ眼を覚まさない?」
 頷くルイズ。
 普通ならけして平民が眠ることなど出来ない筈のベットには、今一人の少年が浅い寝息を立てていた。
 傷だらけの痩せた身体と豆だらけの手、そしてあれほど沈鬱な表情を刻んでいたとは思えないあどけない寝顔。
「ええ、もう一週間……」
 昏々とサイトは眠り続けている。
 目を覚ます気配さえなく日に日に痩せ衰えていく体が酷く痛ましい。
「水の秘薬でなんとか保たせてはいるけれど、このままじゃ……」
 ルイズは俯き親指を咬んだ、まだ何も分かっていない。
 知らないはずの記憶の意味も、サイトが一体何を目的にこんな傷だらけになって戦っているのかも、この胸の掻き毟られるような感情の正体も。
 何も分からない。
 その事がまるで大切なものを奪われたのに何を奪われたのか分からないみたいで、ちくちくと心を攻め立てる。 
「やっぱりシャドウをおとなしくさせないまま出てきちゃったのが悪かったクマか?」
「わたしのせい……」
 ルイズがサイトを連れて仲間たちのもとへ戻った時、そこにはもう一人のサイトが変貌したと思しき巨大なシャドウがいた。
 ふらふらのタバサを必死で庇いながら、キュルケとギーシュが傷だらけになりながら戦っていた。
「仕方がないわ、あの状況じゃ」
 なんとか敵の攻撃を掻い潜りテレビの外に脱出することができただけでも素晴らしい幸運だった。
 ギーシュの機転とクマの捨て身の一撃がなければ起こらなかった、奇跡と言い換えてもいい。
 その状態で「IF」を語ることは、二人の努力と献身に対する最悪の侮辱だろう。



「ルイズちゃん……」
「まだ機会はある」
 そう言うとタバサはあ可能性を口にした。
「マヨナカテレビ、クマの鼻でも見つけられないならその可能性に掛けるしかない」
「ごめん、ごめんクマ、ルイズちゃん。役に立たない、駄目なクマで」
 しょんぼりと俯いたクマの頭をルイズの手が優しく撫でる。
「そんなことない、だってクマが助けてくれなかったら私は今此処にいないもの」
「ルイズちゃん」
ほろりとクマの頬を一筋の涙がこぼれ落ちた。
「ありがとうルイズちゃん、あのルイズちゃんがこんなやさしい言葉をかけてくれるなんてクマは本当に幸せものクマ」
クマの言葉にルイズの額に青あざが浮くがクマは全く気付いた様子はない。
そのままクマはルイズの胸に顔を埋めると滝のように涙を流し始める、しとどに濡れて透ける服。
さらにもう一つルイズの顔に青あざが浮く
「今は、今はただルイズちゃんの胸で泣かせてほしいクマ、装甲板のようなその胸で!」
「黙りなさいこの馬鹿クマ!」
 ルイズは杖を振りあげるとシークタイムゼロセコンドで振り下ろした。
 部屋の中が盛大に爆発し、いろいろなものがあたりに散らかる。
 だが自分も被爆し、なおかついろいろときわどいことになっていながら、タバサの表情は明るい。
 先ほどまで部屋の中を覆っていた暗い雰囲気は爆発でどこかへ飛んで行ったから。
 久しぶりにルイズがルイズらしい顔をしているから。
 まだ友達付き合いは短いが、タバサにとってそれは嬉しいことだから。
 未だにクマと騒いでいるルイズを横眼にタバサは窓の外を見る。
 窓の外には霧。
 深い深い靄のような霧は夜半には霧雨に変わり、やがて大粒の天の涙となった。
 雨の夜の午前零時、それを待つために一人、また一人とルイズの部屋に仲間が集う。
 もっとも今日は招かれざる客が一人。



「まったく、あのガーゴイルは何やってるんだか」
 イザベラはごろんと部屋のベットの上で転がった。
 制服が皺になるが気にしないのはさすが傍若無人な御姫様と言ったところだろうか。
 勉強などかったるくてやるはずがなく、普段ならちょっかいをかける侍女や騎士たちもなく、友達なぞいようはずもなく。
 要するにイザベラは暇を持て余していた。
「ええい、うっとうしい」
 頭に浮かんだ想像を振り払う、こんな時に何故かあの無表情な人形娘の顔が浮かぶのか?
「人の頭の中にまで出てくるとはいい度胸だねぇ」
 本人が此処にいないのに酷い言いようだがイザベラは普段からこんなものだ。
 しかもその思考が呼び水になったのか次々といろいろな記憶が浮かんでくる。
 子供のころ家庭教師を落とし穴に嵌めて二人でラクドリアン湖に探検に行ったこと。
 ついてくるなと言ってもシャルロットはおとなしそうな見た目からは想像もつかないほど意地っ張りで、絶対ついて行くと言ってきかなかったっけ。
 そして結局最後には歩けなくなって、探しにきたシャルルの叔父様におぶられて帰り道を歩くことになった。
「シャルルの叔父様か」
 思い出そうとしてみたがほとんど何も思い出すことは出来なかった。
 思い出すことは出来たのはぼやけた顔に浮かべた穏やかな笑顔。
 それに違和感を感じてイザベラはもう一度よく思い出そうとしてみた。
「なんだ、これはシャルルの叔父様じゃなくて」
 最近見たシャルロットの笑顔じゃないか。
 そのことに気づいてイザベラは自嘲した、親子は似ると言うが印象は細かいところまでそっくりだ。
 ――私とお父様は全然似ていないのに。
 似ているところと言えば魔法の才能がからっきしと言うことだけ。
「だー! 何考えてるんだあたしは!ええいやめやめ、こう言うときはガーゴイルをいびってストレス解消に限るわ」
 思考が変な方向へ行きそうになったので無理やりに考えを中断させる。
「確か、このへんに……」
 そのままもそもそと部屋の片隅に移動、山と積んであるマジックアイテムを物色する。
 なぜか知らないが父上から馬車一台分届いた、「こんなこともあろうかと用意しておいた」ってどんなことよ? と思ったが片付けることすら面倒だったので部屋の片隅に放置しておいたのだ。
「これじゃないわね」
 イザベラはプレートに“アンドヴァリの指輪”と書かれた白い箱を放り投げた、箱は壁に当たり中身の紫の宝石がついた指輪を吐き出す。
「これでもないわ」
 次に手に取ったのは古びた小汚いオルゴール、イザベラにはゴミとしか思えずこんなもの送ってくる父親に少しだけ殺意が湧いた。
「これでもない、これでもない、あーもーどこにあるのよ!」
 そう言いながらイザベラはマジックアイテムの山を引っかき回す、マジックアイテムと言えどもほとんど実用性のない訳の分からない品物ばかりで、例えば今イザベラが投げ捨てたのは特に使い道の分からない水晶で出来た髑髏で、
 足蹴にしているのは板状のなんなのかすら分からない鉄くずだ、他にも板と線で繋がった蒼い耳あてや血らしきもので汚れた穴の空いた紙袋などなど。
 本当に魔法に関係があるのかすら疑わしい代物ばかりで、イザベラは頭痛すら覚えた。
「あった、これだこれだ!」
 暫しの時間が過ぎ、イザベラがガラクタの山から引っ張り出したのは白い陶磁の本体に緑の宝玉が嵌め込まれた一つのマジックアイテム。
 対となるアイテムの場所を指し示す能力があり、手に入って以降自分の配下の者たちの動きを監視するのに使っている。
「さてと、なんだ以外と近くにいるんじゃないか」
 主を放っておくなど騎士にあるまじきこと。
 だからせいぜい罰を与えてやろうとイザベラはほくそ笑むと、役に立ちそうなマジックアイテムを適当にポケットに詰めて部屋から駈け出した。
 勢いよく締めすぎた扉がバダンと激しい音を立てて、通りがかった使い魔たちが驚いて逃げて行く。
 そのままイザベラは我が物顔で廊下を突き進み、ひとつの部屋の前に辿り着いた。
「ここは確か……ヴァリエールの、部屋だったかい?」
 いくら傍若無人と言えども腐っても一国の御姫様。
 最低限の教養として他国の大貴族の名前程度は覚えている。


「どんな奴だっけ?」
 だがいくらイザベラ様と言えどもほとんど会ったことない相手の顔まではよく覚えていなかった。
 何度か思い出そうとしてみると、食堂で平民と話し込んでいた奇矯なピンクの少女が頭に浮かんだ。
「ああ、あの人形娘と五十歩百歩の奴か」
 にししと嗜虐的な笑みをイザベラは浮かべた、おそらく今頃は己に足りないものについてワインでも浴びながら語りあかしているのでだろう。
 そこへ颯爽と現れて嘲笑ってやろう。
 そう思いイザベラはポケットからマジックアイテムを一つ取り出した。
 一見して手鏡にしか見えないそれは“魔透鏡”と壁越しに向こう側の景色を見るマジックアイテムだ。
 しかもディテクトマジックに反応せず向こう側からはこちら側は見えないと言う極めて便利な。
「さて見せて貰おうか!」
 イザベラは扉に鏡を押し付けると、鏡は淡く光を放ちゆっくりとその下の木目ごと透き通っていく。
 出来た穴をイザベラは覗きこんだ。
「おっぱい!?」
 穴の向こうにはおっぱい、褐色の肉の塊が圧倒的な威圧感と共に聳えていた。
 思わぬ不意打ちにイザベラは慌てて鏡を外した、危うく精神に再起不能の傷を負うところだった。
 人形娘たちを笑うはずが飛んだ罠が仕掛けられていたものだ。
「くそっ、しゃらくさい。あたしはあんたなんかには負けないよ!」
 鏡を設置する場所を変えて再トライ、今度は成功。
 小さな穴の向こうには何か黒い箱を凝視するシャルロットと桃色の髪の娘が見える。ついでに昼間のナマモノも。
「よしよし、ガーゴイルの分際であたしに隠れて何かやろうなんて生意気許せる筈がないのよね」
 途中から目的が変わっているがイザベラはピーピングを続行。
「――何してんのさ? こいつら」
 部屋の中に居る者たちは先ほどから押し黙り、まるで祈るように黒い画面を見つめている。
「なんかの宗教かい?」
 どっ引きのいざべらがどうしようかと頭を悩ませ始めた頃、それは起こった。
「何!?」
 黒い画面が白と黒の波に乱れ、ぼんやりと何かが映し出される。
 赤い、赤い大地だ。
 草一本、虫一匹存在しない荒涼とした土地、あらゆる生命が死に絶えたその場所のなかでただ一人蒼い少年が立ち尽くしている。
 蒼い服を着ているだけではなく少年の顔は死人のように真っ青だった。
『誰か、誰か俺の懺悔を聞いてくれ……』
 そう語る少年の胸には奇形なルーンが鈍い光を放っている。
『一人はもう嫌だ、思い出してくれみんな――みんな、そして俺を罰して!』
 懸命に訴えかける少年の顔には笑みがあった。
 にやにやとした厭らしい笑い、それがあまりにも語る内容とのギャップを感じさせ見る者を気持ち悪い気分にさせる。
『罰して、そして楽にさせてくれよ』
 そう言うと同時に少年の図上に血文字で書かれたようなテロップが映し出された。
 日本語で書かれたそのテロップは誰も読むことが出来なかったが、しかしそれは幸いだったろう。
 もし内容を理解してしまえばサイトの抱える闇の深さと、そして彼が犯したと言う“罪”とは何かについて考えざるを得なかっただろうから。

 そこにはこう書かれていた。
 ――断罪! 隣の使い魔! シュバリエ・ド・ヒラガ、断頭台に消ゆ! 

『あはは、はは、あはははは』

 最後に虚ろな笑い声だけを残してテレビは沈黙した。
 意味は理解できずともその異様な雰囲気だけは誰もが感じ取ったのか、一人として何か言うこともできず呆けたように真っ黒になったテレビの画面を見つめ続けることしかできなかった。
 イザベラままた同様だ。
 ただ一つの違うのは彼女の背後からひたひたと足音を消して忍び寄る人影があったと言うことだろう。
「なんだい、これは……」
 そう呟いて後ずさるイザベラに向かって人影はゆっくりと手を伸ばした。
 その細く白い首筋に向かって、背後から左手を伸ばしたのだ。




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