あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロの署長

―ニューカッスル

アルビオン王国最後の兵達が、絶望の戦いに身を投じようというその日、
城内の礼拝堂では、異例の婚礼の儀が執り行われていた。

夫婦となるのは、トリステインの貴族
ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルドと、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。

参列者は、媒酌人となるプリンス・オブ・ウェールズただ一人。
武人として誇り高き最期を望むウェールズに心打たれたワルドが、是非に、と申し出た結婚式であった。

「・・・では 新婦 ラ・ヴァリエール公爵三女 
 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール
 汝は始祖ブリミルの名において この者を敬い 愛し そして夫とする事を誓いますか?」

室内に、ウェールズの澄み切った声が響く。
一方、当の新婦であるルイズは、どこか浮かない表情をしている。
突然とんとん拍子で進んでしまった結婚の話に、気持ちの整理がついていないのだ。

「さあ ルイズ」

「え? ええ・・・
 私 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは・・・」


「 待 て 待 て ま て ぇ ぇ ぇ い ッ ! ! 」


突如、室内に響き渡るダミ声に、居合わせた三人が思わず振り返る。
直後、入口の扉を勢い良くブチ破り、白黒のツートンカラーのモンスターマシンが突っ込んでくる。

「な!? コイツはッ!!」
「ガーゴイル!? まさかレコン・キスタかッ!?」
「いえ! 違うわッ! これは・・・!」

ルイズが記憶を巡らす。
赤色のランプを回転させ、けたたましいサイレンを響かせるそれは、
『彼』が住んでいた世界の治安を守っていたという、機械仕掛けの馬車・・・。

「まさか!? オオツカなの!」

「菊の花びらッ!!」

ルイズの問いかけにあわせ、鋼の機体が宙へと跳びあがる。
勢い良く回転する4本のホイールから、ちんまりとした手足が飛び出し、
ボゴンと開いたボンネットから、愛嬌のあるダンゴ鼻が顔を覗かせる。

車から太っちょのおっさんへと変身した乱入者は、空中でクルクルと回転しながら
ウェールズとワルドの間に華麗に着地した。

「オオツカ! どうやってここまで・・・」

突然現れた自分の使い魔に、ルイズは驚きを隠せない。
それもそのはず、彼は襲撃者から主を守るため、ラ=ロシェールの街に留まったハズである。

「フフン 国際警察連合を侮ってもらっては困るな ミス・ヴァリエール
 あの程度の敵にてこずるようでは、九大天王は名乗れんよ」

言いながら、大塚はルイズの肩を叩くと、そこに付けていた小型の発信機をヒョイとつまみあげた。

「い いつの間に・・・」

「それに ワシは嬢ちゃんの使い魔である前に 梁山泊の法の番人
 異世界の事とはいえ 巨大な犯罪の芽を見過ごすわけにはイカンからな」

「犯罪の芽・・・?」
大塚のいわくありげな言葉に、眼を丸くするルイズ。
一方のワルドは、歴戦の戦士らしい鋭い眼光へと戻っていた。

「トリステイン魔法衛士隊隊長 ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド!
 お前さんには 結婚詐欺の嫌疑がかかっておるぞ!!」

「・・・!」

2人が同時にワルドに視線を向ける。
当のワルドは、以外にも落ち着いた様子で、大塚を静かに睨んでいる。

「ワルド・・・あなた」
「濡れ衣だ!!」
ルイズの疑惑を一喝で封じると、ワルドは静かに、だが強い口調で話し出した。

「ミスタ・オオツカ いくらあなたが彼女の使い魔でも いい加減な情報で
 私のルイズへの愛を侮辱することは許しませんよ
 それ程の事をおっしゃるのなら 何か根拠があるのでしょうな?」

「・・・今 愛と言ったかね?
 その愛 君達の神 始祖ブリミルの前で誓えるかな?」

「勿論」

「ならばこうしよう ここから先はウェールズ殿下に代わり ワシが媒酌人を務める
 ワシの前で互いを伴侶とする旨 誓い合うことが出来たならば
 その時は無罪放免 ふたりが結ばれるのを止めはせんよ どうだ?」

「・・・わかりました それで 私の嫌疑が晴れると言うなら」

ワルドが内心で胸を撫で下ろす。
長年アンリエッタの腹心を装い、トリステインの貴族達を欺き続けたワルドである。
いかに油断ならない人物とはいえ、面識の薄い大塚を騙し通す事など、容易いものと思われた。

話は決まったとばかりに、両手をわきわきと動かしながら、大塚が二人の前へ立つ。

「そういうワケです 殿下は少しばかり下がっていてくだされ」

「え ええ・・・ しかし」

「大丈夫! 時間ならたっぷりありますぞ
 取調べの邪魔が入ってこぬよう 城の周りは厳重に『封鎖』してきましたからな」

大塚の事も無げな発言に、3人が瞠目する。
城を囲むレコン・キスタの大軍を封じる術など、一朝一夕で施せるとは思わなかった。
3人の視線を気にも留めず、大塚が話を進める。

「それじゃあいくぞ! ご両人
 これが 新郎新婦に捧げる ワシからの『おもてなし』じゃあ~ッ!!」


     ― 大 塚 式 ・ ウ ソ 発 見 器 !!―


大塚の指先が振り下ろされた直後、瞬く間に周囲の景色が変貌を遂げる。
礼拝堂の壁が蜃気楼のように揺らいだか、と思った瞬間、パッとすべての背景が消えうせ・・・

気が付いた時、一行は巨大なドンブリの中にいた。

足元を覆いつくす黄金色の衣。
つま先から伝わってくる、重厚な豚肉の弾力。
肉の間からのぞく、拳大の米粒。
人間サイズの玉ねぎが放つ香ばしい匂い。

余りにも常軌を逸した超展開に、3人はたちまちパニックに陥る。

「な な な なんなの!? なんなのオオツカ!!」
「地面がッ! 地面が『 カ ツ 丼 』に!?」
「まさか 先住魔法!?」

一方の大塚と言えば、いつの間にか出現したデスクの前に座り、眩いライトを二人へと向ける。

「さ いいから ふたりともこちらへ座りなさい」

言われるがままに、キャスター付きの椅子へと腰をかける二人。

「さて ふたりとも ドンブリの外に浮かぶ巨大な手錠は見えるかね
 もし ワシの質問に対し 偽りが認められた場合 
 あの手錠が直ちに ウソつきの全身を絡め取って 八つ裂きにする手ハズとなっている」

「・・・!」

「いやいや そんなに怯える事はない
 先ずは ソレを食べ終えてからの話だからね」

そういうと、大塚はふたつのドンブリを両者の前へと差し出した。

「・・・なにこれ? オオツカ」
「カツ丼だよ ・・・さ 冷めない内に食べなさい」
「なッ! アンタ 私をバカに・・・」

言いかけて、ルイズははたと口を塞いだ。大塚の目は真剣そのものだった。

「分からないな ミスタ・オオツカ こんな事が何に・・・うおッ!」

不用意にフタを開けたワルドが、思わず驚きの声を漏らす。
ドンブリの中で、カツ丼が眩い光を放っていた。

「オ オオツカ これは・・・」
「さ どうぞ」
「・・・・・・」

ワルドがしばし思案する。これは既に大塚の術中なのか・・・?
あるいは、このカツ丼の中に何か薬を・・・

(いや)

頭の中に沸いた仮説を、ワルドが自身で打ち消す。
奇妙な話ではあるが、ワルドは敵である大塚の矜持を信頼していた。
大塚は、自分自身で『法の番人』を名乗った。
その法の番人たる彼が、幻術で証言を導いたり、食事に一服盛ったりといた
法を犯すやり方で自白を引き出そうとするハズは無かった。

「分かった まずはこれを食べればいいのだな!」

そう言うと、ワルドは割り箸を引き抜いて、眼前でパッキィ、と真っ二つに割った。
慌ててルイズもそれに習う。

「「いただきます!」」

食欲を誘う香りを放つ豚カツを一切れつまむと、おそるおそる口へと運ぶ二人。
―刹那、電撃が二人を襲う。

「!? ち 違う!
 学院でもフライや肉料理は度々出るけども これは そんなものとは比較にならない!
 こんなにタップリと汁が入っているのに 衣が口の中でサクサクと弾ける!?」

なれない箸を懸命に口元へと運びながら、ルイズが叫ぶ。

「そ それに・・・この卵とじがまた絶妙!
 割り下を薄味に仕立てる事によって 素材の持つ旨味を存分に引き出している!
 玉ねぎの爽やかな甘みが豚肉のくどさを抑え 濃厚な卵が全体をまろやかに仕上げている
 なんという味のハーモニー! これが ロバ・アル・カリイエ伝統の職人芸なの!?」

「それだけじゃないぞルイズ! ポイントは米だ!!
 東方特有の甘みを閉じ込めたような ふっくらした米に 肉汁の旨味を凝縮した出汁が絡み合う
 正に奇跡のコラボレーション! 主菜である米の上におかずを乗せる等・・・と
 所詮庶民の料理とタカをくくっていたが これは・・・!」

震える指先を抑えながら、素材のひとつひとつを吟味するワルド。
ゴクリ、とウェールズが生唾を飲み込む。

「フフ 旨いのも当然
 大塚家秘伝のレシピに加え トリステイン人の舌に合うようにと
 マルトー氏の元で修行をし 研鑽に研鑽を重ねた至高の一品だからな
 だが! 旨いのは 単に技術や素材の問題だけではないぞ!」

「あ ああ・・・!」

全身を駆け巡る旨味が、ルイズの思考を遠い日へと飛ばす。
眼前に映るのは、懐かしいヴァリエール邸。
目線の高さに違和感があるのは、幼き日の思い出ゆえか。

(なんだろう・・・? とてもいいニオイ)

心躍るままに、少女が邸内を駆ける。
やがて辿りついたのは年季の入った厨房。
そっと室内を覗き込む。そこに居たのはルイズの大好きな姉、そして・・・

「お母様!」

信じられないとばかりに、ルイズが驚きの声を上げる。
幼い頃から、教育に厳しい母であった。
平民には平民の仕事があり、彼らの生活を守る事こそ、貴族の成すべき務め、と教えてくれた母だった。
その母が、平民の領分である厨房に通い、たどたどしい手つきで使用人の真似事をするなど、考えられなかった。

「随分と不器用な親御さんじゃあないか
 愛情の篭った手料理を 愛娘に振る舞いたいのに 
 貴族の見本を示すべく その事を口に出せなかったなんて」

全てを見透かした瞳で大塚が言う。
ああ、そうか、とルイズは全てを理解した。
このカツ丼の隠し味は、おいしい物を食べて貰いたいという、作り手の真心なのだ。
だからこそ、ルイズは自身でも覚えていなかった、母の手料理を食べたあの日の事を思い出したのだ。

「うっ うう・・・」

真横から聞こえてきた呻き声に、ルイズの思考が現実へと引き戻される。
横を向いた瞬間、ルイズは驚愕した。

ワルドが、あのワルドが泣いている。

瞳から大粒の涙を溢れさせ、大の男にあるまじき醜態を晒している。

「くっ こんな・・・
 まやかしだ・・・ だのに・・・ それなのに・・・」

どこかを痛めたかのような悲痛な表情で、言葉にならない言葉をもらしながら、
一心不乱にカツ丼をかき込むワルド。
カッカッカッというテンポの良い箸の音のみが周囲に響く。

ポリ、
ルイズが付け合せのお新香をかじる。
涙の味がした。


湯のみ茶碗を手に取り、ようやくふたりは一息ついた。
素朴なほうじ茶の暖かさが、心の平穏を回復させる。
ルイズはやがて、静かに考え出した。

(ワルドは私に 何度も愛していると囁いてくれた
 けれど その中に あの母の手料理ほどに 暖かさを感じた言葉があっただろうか?
 私はただ 言葉に酔い 舞い上がっていただけでは無かっただろうか・・・?)

「さて どうやらすっかり食べ終わったようだね」
「・・・」

「それではお二方に改めて問おう
 汝らは 始祖ブリミルの名に於いて 互いを愛し 敬い 残りの人生を共に歩むことを誓いますか?」

「私・・・ わたし は ・・・」

「・・・誓えません」

「ワルド殿!?」

ワルドの変節に、ウェールズが驚きの声を上げる。

「ミスタ・オオツカ あなたは酷い人だ・・・」

ワルドが苦笑する。嵐が去った後の湖畔のような、穏やかな笑顔だった。

「身を焦がす野望のためなら 全幅の信頼をよせる主も 自分を慕う許婚者も 
 自分自身の心をも裏切れるつもりの俺だったが ・・・母の笑顔だけは とうとう裏切れなかった
 結局 俺は本物の悪党にはなれなかった・・・」

「ワルド・・・」

「・・・話してもらえるかね」

「あなたの推測する通りですよ 俺は レコン・キスタ側のスパイだ」

「!!」

ワルドの告白に、ルイズとウェールズは思わず息を呑む。
ワルドは淡々と話をつなぐ。

「このアルビオン行での 俺の目的はみっつあった
 ひとつはアルビオン軍の指導者 ウェールズの首
 ふたつめはトリステイン、ゲルマニアの同盟に亀裂をもたらすであろう アンリエッタ王女の手紙
 そしてみっつめは 伝説の虚無の才能を秘めた少女 ルイズ・フランソワーズ・・・」

「そんな! どうしてなの!? ワル・・・」

尚も問い詰めようとするルイズを、大塚が手で制する。

「ともかく 詳しい動機は署に戻ってから聞こう
 ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド 詐欺未遂及び殺人未遂の容疑で逮捕する!」

元の姿を取り戻した礼拝堂に、ガシャリ、と手錠の乾いた音が響く。
ルイズは傍らに落ちていた羽帽子を拾い上げると、ゆっくりとワルドへ被せた。


ニューカッスルの城内に、大塚のサイレンが悲しげに響く。

ワルドとルイズは、寄り添うように後部座席へと乗り込んだ。
そのまま発進するのかとウェールズは思ったが、意外にも、ボンネットがバカンと開いて大塚の丸顔が再び飛び出してきた。

「何をしておられる? 殿下 早く助手席に乗って下され」
「・・・え?」

予想外の問いかけに、一瞬、ウェールズが言葉に詰まる。

「いや・・・ お気持ちは有難いが 私には王家の人間として 果たさねばならない義務があります」

「いやいや その 王家の義務を果たすためにも あなたにはぜひ同行してもらいたいのです」

「ハァ・・・?」

「つまりですな・・・ あなた方と敵対しているレコン・キスタの指導者 オリヴァー・クロムウェルには
 とある指輪の窃盗容疑がかかっていましてな
 どうやら 大捕り物になりそうなので 殿下にも一仕事して貰いたいのですよ」

「!!」

ウェールズは括目する。
目の前の男は城を囲む大軍を単機で突破するだけではなく
直接敵の本陣に乗り込んで、総大将をしょっぴいて行こうと言うのだ。
あまりの無茶苦茶さに、ウェールズの口元にも笑みがこぼれる。

「それに・・・ 言いにくいことだが 殿下にも窃盗の容疑がかかっていましてな
 できれば署の方で じっくり話を聞かせて貰いたいのですわ」

「? そんな・・・!
 私は何も盗んでなどいませんよ!」

「い~や! 貴方は大変なものを盗んでいったハズだ」

「・・・?」

「アンリエッタ姫殿下の心です」

「・・・・・・・」

「プッ」
大塚の道化じみた演技に、ワルドが思わず吹き出す。

「それはいけませんわね 殿下
 取調室で たっぷりとカツ丼をご馳走になるとよろしいですわ!」

「さ! ネタは上がってるんだ! 神妙にお縄を頂戴しろ プリンス・オブ・ウェールズ!」

「・・・ハイ!」

大塚の芝居がかった台詞に頬を高潮させながら、ウェールズが助手席へと乗り込んだ。

三人を乗せたパトカーは、モーレツな勢いで城壁をブチ破り、荒野へと消えていった・・・。


来るべき近未来ッ!!  ハルケギニアは未曾有の動乱の時代を迎えつつあった!!



各国がそれぞれの思惑で策動する中 いかなる勢力にも属さず 法と人情によってこの世の秩序を守ろうとする異邦人の姿があった





その名は――

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