あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

蒼い使い魔-19


「ようやく来たか、使い魔君」
十分後バージルが指定された旧練兵場に着くと、既にワルドが待っていた。
錬兵場と言っても今は『女神の杯亭』の物置き場としか使われておらず、そこかしこに樽や木箱が積み上げられている広場で、
二人は二十歩ほど離れて向き合う。
「昔……、といってもきみにはわからんだろうが、かのフィリップ三世の治下には、ここでは貴族がよく決闘をしたものさ…
古きよき時代、王がまだ力を持ち、貴族たちがそれに従った時代……
貴族が貴族らしかった時代……、名誉と、誇りをかけて僕たち貴族は魔法を唱えあった。
でも、実際はくだらないことで杖を抜きあったものさ。そう、例えば女を取り合ったりね」
「………」
腕を組んだまま無言でバージルはワルドを睨みつける
「そして立ち合いには、それなりの作法というものがある。介添え人がいなくてはね」
「…?」
「安心したまえ。もう、呼んである」
ワルドがそう言うと、物陰からルイズが現れた。ルイズは二人を見ると、はっとした顔になった。
「ワルド、来いって言うから、来てみれば、何をする気なの?」
「彼の実力を、ちょっと試したくなってね」
「誰かと思えば…、どうやら本気で小娘の気を引きたいらしいな、さっきも言ったがもっとマシな趣味を持つことを勧めるな…」
バージルはルイズを一瞥すると、心底呆れた表情をしてワルドを見つめる
「ワルド!お願いだからそんなバカなことやめて。今は、そんなことしているときじゃないでしょ?」
ルイズは慌ててワルドを止める、バージルの強さは人間の範疇を超えている。
実力を試そうなんてとんでもない。
「そうだね。でも、貴族というヤツはやっかいでね、強いか弱いか、それが気になるともう、どうにもならなくなるのさ」
だがルイズの心配をよそにワルドは聞く耳持たない。
「バージル、やめなさい。これは命令よ?」
「奴はどうしても俺を倒して、お前の気を引きたいらしいが」
今度はバージルを止めようとする、だがワルドよりも説得が困難な相手が首を縦に振る筈もなく…
憮然とした表情でワルドを睨みつけている。
「なんなのよ! もう!」
そういったところで、広間に他に三人の人間が現れた。キュルケ、タバサ、ギーシュである。
「ダーリン、ギーシュから聞いたわよ、立ち合いをするんですって?」
「チッ…」
舌打ちするバージルにキュルケが興味津々といった顔で話しかける。
「へー…面白いじゃない、いいわ、応援してあげる」
そういうとタバサやギーシュとともに適当な木箱に腰をかける。
「ちょっとキュルケ!こんな立ち合い無意味よ!あんたたちも止めて!」
「大丈夫だよ、ちょっとした腕試しさ」
叫ぶルイズをワルドが優しくたしなめる。
「もう!本当バカなんだから!どうなっても知らないからね!」
どうあっても止められないと知るとルイズも仕方無く見ることにする。
「では、介添え人も来たことだし、これ以上の見物人が増える前に、始めよう」
ワルドは腰から杖を引き抜き、フェンシングの構えのようにそれを前方に突き出す。
バージルも沈黙したまま閻魔刀に右手をかける。
「さあ!全力で来い!」
最初に仕掛けたのはワルドだった、素早く距離を詰め、自身の二つ名『閃光』に名に恥じない動きでバージル目掛け突きを放つ
が、すでにそこにはバージルの姿はなかった。
「っ!?どこだ!?」
ワルドが慌てて後ろを振り向く、そこにはバージルが閻魔刀を抜き放ちワルドに背を向けて立っていた。
「Too late(―遅すぎる…)」
そう言いながら閻魔刀をゆっくりと納刀する
「なっ!いつの間にっ…!」
その動作が何を意味するのか、予想できないことはない。
キンッ!という音が広場に響く。
その瞬間ワルドが被っていた羽根帽子が四分割されぽとりと地に落ちた。
バージルにその気があれば四分割されていたのはワルドの頭だったのだろう。
「Where's your motivation?(―やる気があるのか?) 」
振り返り、バージルは悠然と閻魔刀を構える。
「なっ…舐めるなぁッ!!!!」
バージルの挑発にワルドが吠え再び突きを放たんと距離を詰める。
バージルに対し閃光の様な突きを放つワルド――
だがバージルはそのワルドの攻撃全てを体を僅かにそらす程度で全て回避してしまう。
と、ワルドの杖がバージルの頬を掠め赤い線を作る。
それを指でなぞりながらニヤリと笑いワルドを見る。
「それだけやってこの程度か?もっと本気で来い…小娘の気を引けんぞ…?」
嫌味な笑みを浮かべながらバージルはワルドに話しかける。
「黙れッ!!只の突きだと思わないことだ!」
そう吠えるとワルドは呪文を唱える。
「ウィンドブ―「つまらん」」
―ドゴッ!!
ワルドが呪文を唱え切るよりも早く、バージルの拳が鳩尾に叩きこまれる
「ぐぁっ…!」
ベオウルフ無しとはいえ、あまりの衝撃にワルドは反吐を吐く寸前になり、くの字になりながら悶絶する、
それに追い打ちをかけるようにバージルの旋風脚がワルドに襲い掛かった。
そのまま蹴り飛ばされたワルドは広場の一角にあった高く積み上げられた木箱に突っ込み
その衝撃で崩れ落ちて来た木箱の下敷きになってしまった。
「や、やりすぎよバカーーーーー!!!」
ルイズやギーシュ、キュルケが大急ぎで木箱の下敷きになったワルドを救出している。
「………あーあ、ありゃ死んだな…娘っ子…ご愁傷さん…」
その様子をみたデルフが呟く、
「相棒、ありゃさすがにやりすぎじゃねぇか?」
「全力で来いと抜かしながら、全力を出さないとはな。だからそれ相応の力で相手してやったまでだ」
「ちょ…ちょっと!ワルド!大丈夫!?」
「あっ…あぁ…だ、大丈夫だよ、愛するルイズの前でこんな失態を見せるとはね……」
崩れ落ちた木箱の山から救出され辛うじて生きていたワルドは苦しそうにうめく。
「よかった、無事だったのね…。 ……バージル!!二度とこんな事したら許さないから!」
安堵したルイズは、勝手に二人が決闘をした怒りの矛先をバージルへ向ける。
「何故俺が許しを請う?そいつが仕掛けて来たから軽くあしらってやっただけだ」
悪びれる様子もなく呆れたように二人を見るバージル。
「ワルドを侮辱しないで!決闘を受けたあんたにも責任はあるんだから!」
「くだらん…」
それだけ言い残すとバージルは宿の中へと消えていった。
ギーシュ達も居づらくなったのか中へと入って行く。

ワルドは立ち去るバージルを見ながら考え込む、
あの男、危険すぎる、
例え『ガンダールヴ』であろうとも、所詮は平民。
魔法を持ってすれば容易く組み伏せられると思っていた。
だが実際に戦い、理解した。強さの次元が違う、とくにあの神速の剣術、まるで見えなかった。
最初の一撃もそうだ、もしこれが実戦だったら何が起こったかもわからず一瞬で命を落としていた、
こちらも全力を出していないとは言え手も足も出ない程一方的な戦い。
それに見るからに向こうも本気ではなく、これから戦うという闘気を纏ってすらいなかった
故に、相手の実力を見抜けなかった原因でもあるのだが…
――興味がない、自分などいつでも殺せる、そういうことか
間違い無く自分の、いや、自分が属す組織の最大最悪の障害となる。
その障害を取り除くにはどうすればいい?
簡単だ、ルイズをこちらに引きこめばいい、そうすれば使い魔である奴も幾らかは抑える事ができる筈だ。
そう考えワルドはルイズを見つめた。
「(そのためにも必ずルイズを手に入れる…)」
そう決意を固めたワルドはまだ痛む腹部を抑え、ルイズ支えられながら広場を後にした。

妙にギスギスした空気の中、朝食をとり
部屋でタバサに文字を教えてもらいながら夜まで時間を潰したバージルは
下のバーで酒盛りをしているギーシュ達と合流するわけでもなく、
部屋のベランダで『スヴェル』により一つに重なった月を見ていた。
双月が重なり、一つの月へと姿変える夜。
それはバージルが最後にテメンニグルの頂上でみた月を思い出させる。
バージルはアミュレットを取り出しそれを見つめる、父と母、そしてダンテの事を思い出す。
母を、そして弟を守れなかった、その己が無力を嘆き、力を求めた、
父の様な純粋な力を!全てを守る力を!総てを打ち倒す力を!
「I need more Power...(もっと…力を…)」
そう呟くと不意にドアがノックされ、現実へと引き戻される。
「誰だ…」
「私よ…」
その声とともにルイズが入ってくる、だがバージルは振り向かない。
「何の用だ…」
「その…何してるのかな…って思って…月を見ていたの…?」
「貴様には関係ない」
―呼び方が、戻った
悲しさに涙があふれる、せっかく開きかけたバージルの心が再び閉ざされてしまった。
しかも封印結界付きだ。
「その…朝のことだけど…ごめんなさい…」
流れる涙を悟られぬようにルイズは話しかける
「…………用は済んだか?失せろ…」
バージルから放たれる氷の様な言葉。
普段ならここで癇癪を起こす所だが、どうにもバージルの様子がおかしい。
あの夢で見た、バージルに戻っている。
そんな感じすらする。
「まだ…その…相談したい事があって来たの…」
「…………」
「ねえ、バージル……。私、ワルドから結婚を申し込まれてるの。
この任務が終わったら結婚しよう……って。
でも彼は急がないとも言っていたわ。私の心の整理ができるのを待つって。
……だから……あの……。えっと、バージル……どうしたらいいと思う?」
「…俺には関係がない」
予想通りの答えだ、予想通りだが、バージルのその返答には、突き放されるような恐怖を感じた。
―関係がない、道端の石よりもどうでもいい、そう言っている。
「な、悩んでるから相談してるんじゃないッ!少しは優しくしてよっ!!」
そう言いながらバージルに近づく、
だが、バージルまであと数歩というところまで近づいた瞬間。
―シャンッ…!
閻魔刀が鞘から放たれルイズの鼻先1サント先で止まる。
「ひっ…」
「くだらん事に時間をとらせるな…失せろ、三度は言わん」
バージルの眼は恐ろしく冷たい。まるで全てを拒むかのような。
バージルに見放された、そんな悲しさ、寂しさ、悔しさがごちゃまぜになりルイズにのしかかる、
その重圧に耐えかねルイズは勢いで言う。
「なっ!なんなのよ!わかったわ!もう決めた!私ワルドと結婚する!
もう知らないんだから!あんたなんかどっかいっちゃえ!」
そう言うとルイズは振り返りドアから走り去ってしまった。

「相棒…お前…ルーン切れてんのか…?」
尋常じゃない様子のバージルにデルフが恐る恐る話しかける、
「だといいんだがな、まだ左手にある…」
そう言うと忌々しそうに左手を睨みつける。
「しかし、あれでいいのかい?嬢ちゃん泣いてたぜ?」
「あれでいい、名目上使い魔契約が切れればいい、そうすればルーンの有無などもう関係が無くなる。
それに、それが奴のためにもなるだろう…」
「かと言って、ありゃ言いすぎだぜ…乙女心ってもん知らないのかよ…全く…」
不意に、月明かりで照らされていたベランダに影がさす、
巨大な岩のゴーレムが宿に取りついている。その肩には見覚えのある女と仮面の男が立っていた。
「フン…また貴様か…」
「久しぶりね、覚えてくれて感激だわ!」
「脱獄…か、賞金が来ないわけだ…」
バージルが睨みつける先には投獄されているはずの土くれのフーケがいた。
バージルに毟り取られてなくなった髪の毛が痛々しい。
「親切な人がいてね。私みたいな美人はもっと世の中のために役立たないといけないと、
出してくれたのよ……それがこの彼。」
フーケが指差すと、ゴーレムの反対側の肩に黒いマントのメイジが立っていた。
バージルが来る途中斬り殺した遍在だ。
「それで?なんの用だ?」
「素敵なバカンスをありがとうって、あなた達にお礼を言いに来たのよ!」
フーケの眼が鋭く光り、瞳が殺意の色に塗り変わる。
ニィッと不気味に唇の端を釣り上げると、巨大ゴーレムの剛腕が窓を狙った。
その一撃はベランダを粉々に破壊する。
「ついでに髪の毛の礼だっ!この!この!」
そう叫びながら何度も何度もベランダを殴りつける、
「あまりやりすぎるな、お前に与えられた任務は陽動だ、戦力を二分できればいい」
「ハァッハァッ!そうは言うけどね!一人位殺したってバチあたんないだろ?」
荒い息でフーケは男に返す、もはやベランダは原形をとどめておらず土煙りで見えなくなっていた
「俺は女を追う、お前はここで―」
そこで男の言葉は途切れる、同時に首が落ち体が四分割され血を流すことなく崩れ落ち消え去った。
「ヒッ―」
「やはり遍在…か…」
「あぁ…あんた…い…いつの間に…」
フーケはそこにいる男を目の前にし言葉を失う、
たしかにベランダにいた、それがなぜ一瞬でここに!?
妖しく光を放つ閻魔刀を持ち、氷よりも冷たい目でフーケを見下ろす悪魔。
バージルがそこにいた。
「たっ…助けっ…」
「これは釣りだ、取っておけ」
―ドッ!
フーケが言い切る間もなく、デルフがフーケの腹を貫く。
「ガハッ…!」
大量の血を吐き、バージルのコートにかかる、
それを不愉快そうな眼で見ながらそのままデルフの刀身をさらに深く差し込む。
「あぐっ…!」
「Scum...(クズが…)」
慈悲も何もない、無機質な声で死刑宣告を下す。
―ぐりっ…!
デルフを抉り引き抜くと同時に閻魔刀を一閃させる、
フーケの首が飛び、落下していくのと、ゴーレムが崩れ崩壊していくのは、ほぼ同時だった…。


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