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ゼロのしもべ第2部-13



 まだ日の昇らぬうちにアルビオン王党派の諸氏は散って行った。
 全員が孔明の指示に従ってのことである。彼らのなすべきことは3つ。
 1つ。アルビオンに、情報収集を主目的とした工作機関を作り上げること。
 1つ。各国の王族や貴族に支援を働きかけること。
 1つ。レコン・キスタの分断工作。
 新政権となったレコン・キスタは歴史の例に倣い、粛清により多くの血が流れるだろう、というのが孔明の見方であった。いや、すで
に血は流されている可能性がある。その血をより多く流させる必要が、敗者であるアルビオン王家にはあった。
「いくら必要とはいえ、忠臣の血が流れるのを見るのは忍びない。」
 と、国王は嘆いたが、ことここに至ってはもはや他に方法もない。
 第1のグループはさっそくラ・ロシェールに出発した。目的はすでに述べたようにスパイ機関である。
 コンピューターである孔明にとって、情報は非常に重要なファクターを占める。得た情報を分析することによって、バビル2世に的確な
アドバイスを送ることができるのだ。ゆえに、これは事実上アルビオンの命運を握るグループと言ってよい。
 第2のグループはゲルマニア、ガリア、そして当然トリステインに行き、政治工作を行うことである。仮にも王政を敷く国である以上、
反王制を唄う連中は、裏ではどうかともかく、敵である。反レコン・キスタを主張する人間がやって来たのを粗末に扱うことなど表立って
はできるはずもない。表立って圧力をかけられないのだから、裏からかけるしかない。その前に、かつての人脈を駆使して政治活動を
行い、支援を取り付け、世論を誘導するという役割がある。このグループは王の側近、大臣などが当たることになった。
 第3のグループは、手紙である。つまりレコン・キスタを混乱させるための偽書(偽手紙)作戦である。いかにも内通しているような
手紙を、発見されやすいように送る。あるいはそういった手紙を屋敷に忍び込み、隠し、その上で「あそこの屋敷の誰某様は王党派で
今でもこっそり連絡をとっている」などと密告する。ターゲットは純粋にレコン・キスタを支援している貴族、実力者、優秀な人材である。
知らせを受けて駆けつけたレコン・キスタの巡邏により捕らえられたターゲットは、実際にやっていないのに自白を強制され、その挙句
処刑される憂き目となった。

 魔法を使えば真偽はすぐにわかるのではないか、と思うかもしれない。しかし、これから出世する可能性の高い人間を妬む連中も
多く、無理矢理に処刑してしまう例も少なくなかった。疑いが晴れ拘束を解かれても、レコン・キスタに不信感を抱くようになった者も
増えていき、この作戦で徐々にレコン・キスタは力を失っていくこととなる。だがそれは後の話である。今はまだそのことを予知している
ものは孔明以外にいない。
 国王はトリステインの首都、トリスタニアに移ることになった。正確にはトリステインに縁戚のある貴族の親戚の持つ、トリスタニア
郊外の屋敷に移ることになった。ここで療養をしながら、裏からアルビオン王国解放組織を指示するのである。もっとも、実際の指揮は
側近の大臣と、息子であるウェールズ、今は白昼の残月がとることになるであろう。
 が、その残月は、国王と別れタルブの村に残ることとなった。
「裏方として働く私ですが、今は国王以下アルビオンの民を助けてくださったショウタロウ老人に、ぜひお礼をしたいのです。」
 と、農作業を手伝いつつ組織を裏から指示することになった。まあ、それは表向きの理由なのは言うまでもない。。
 もっとも残月の意中の相手は、
「妙なファッションセンス……。それに、もうじきお休みも終わるし学院に帰らないと。」
 と、アウトオブ眼中であった。
 さて、残月が率いるアルビオン解放組織の裏の部隊であるが、
「ぜひ、ビッグ・ファイア団と名づけさせてもらいたい!」
「却下だ。」
 なぜかバビル2世の偽名をつけたがる残月と、嫌がるバビル2世というわけのわからぬ争いの原因になっていた。
「でしたら、しばらくの間、仮の名として「BF団」と名づけてはいかがかな?」
 そう提案したのは策士・孔明。バビル2世は渋々許可をしたが、はしばみ草を薦められる承太郎みたいな顔になっていた。


 バビル2世たちは一足先にトリスタニアの王宮へと、事の次第をアンリエッタに報告に向かった。
 乗っているのはタバサの使い魔だ。ロプロスで行くという提案もあったが、
「どこに着陸させるのか?」
という話になり、シルフィードで行くことに決定した。おそらくアルビオンが落ちたことはすでにトリスタニアの王宮に伝わっているはずで
ある。王宮は戒厳体制を敷いているだろう。そんな場所にロプロスで行けば、パニックでどうなるかわかったものではない。
 事実、風竜でしかないシルフィードさえ、到着後に警備兵にあっという間に包囲された。
 一騒動ありそうなところ、現れたアンリエッタ王女に、ことの仔細を報告する。
「わたくしがウェールズさまのお命を奪ったようなものだわ。裏切り者を、使者に選ぶなんて、わたくしはなんということを……」
 ルイズとバビル2世だけを私室に通し、話を聞いたアンリエッタは取り乱した。涙ぐんで「姫様、しっかりしてください。」と介抱する
ルイズ。ルイズたちにはウェールズが生きていることを教えていない。なんというか、二重の意味でいたたまれず、見ていられない。

「ハクション!」
「お、兄ちゃん、地上に来て風邪でも引いたか?」
 ショウタロウ老人の手伝いをしている三男が、くしゃみをした残月へ振り向く。
「そうかもしれません。やはり上とは風が違いますね。そういえば、シエスタさんは?」
「ん?いまごろ荷造りでもしてるんじゃねえか?明日で休みは終わりのはずだからな。」
「な、なんだってー!?」
 驚愕する残月。三男に猛烈な勢いで攫みかかった。
「ど、どこです!?どこのお店に勤めてるんですか!?」
「み、店!?ち、ちがう!その、苦しい…。いや、店じゃなくて……学校の食堂に勤めてるんだよ。兄ちゃんと一緒に降りてきた貴族の
お嬢さんたちがいたろ?あれが通ってる学校だとよ。」
「なんですと!?ふむ。ですが、これは好都合というもの。一度で二つの目的が達成できるとは!して、学校はどこに??」

「ええ、死んで欲しくなかったんだもの。愛していたのよ、わたくし。」
 ……辛い。
 見ていてこれほど辛いことがあるだろうか。死んだ(と思っている)ウェールズへの変わらぬ愛を主張するアンリエッタ。だが、ウェー
ルズは変な仮面をかぶって、新たな恋に生きようとしている。見ていて、辛い。
 こう、いっきにばらしてやりたい気がするね。原先輩のように後ろから刺しそうだね、アンリエッタ。
「おやおや。一国の王女ともあろうかたが大人気ない。これでは士気にかかわりますぞ。」
 いつの間に部屋に侵入していたのか、孔明が口元に涼しげな笑みを浮かべて立っていた。
「ど、どちら様でしょうか……?」
 あまりの胡散臭さに思わず警備兵を呼ぶことも忘れてしまうアンリエッタ。
「策士・孔明と申し上げます。国王の下、アルビオンの総指揮権を任されていたものです。ウェールズ皇太子に王女の補佐をして欲し
いと頼まれ、この者たちとともに参上いたしました。」
「ウェールズ様が……」
 ウェールズに頼まれた、という言葉を聞いておもわず身を乗り出す。
「はい。ぜひきみの力を愛する従姉妹に貸してほしい、と請われましたゆえ。死に行くものの頼みを断れず……」
「そうですか……ウェールズさまが……」
 王女のまぶたの裏に、愛するウェールズ王子の姿が浮かび上がる。しかし、すぐにあることに気づき、意識を取り戻す。
「しょ、証拠は。証拠はあるのですか??」
 あやうく素直に信じてしまいそうだったことを恥じつつ、疑問を口に出す。そうだ、ウェールズさまがこの者を推挙したなどという証拠
などない。どこかでウェールズさまの死を聞きつけた不埒者が、自分を騙そうとしているのか。
「証拠ですか。この孔明、その点抜かりはございませぬぞ。」
 孔明は何かを投げるような動作をし、
「風吹く夜に」
 と呟いて、ウッフフと嗤った。その言葉を聞いた途端、アンリエッタの目に涙が滲み、あふれ出す。わななき崩れ、顔を手で覆って
「ウェールズさま。」
 と何度も叫ぶ。
「これでもはや何も問うことはありますまい。」
「ええ。その言葉を伝えたということは、あなたはよほどウェールズさまに信頼をされていた方なのでしょう。ウェールズさまが信じた
お方なら、わたしも信じることができます。」

「わたくしは、現在そこのラ・ヴァリエール嬢の客分となっております。さ、ルイズ様。」
 ルイズはあまりの急展開に呆けたようになっていたが、その一言でようやく我にかえった。孔明が指から何かを引き抜くような仕草
を見せる。
「姫さま、これ、返します。」
 ルイズがポケットからアンリエッタから貰った水のルビーを取り出した。
「それはあなたが持っていなさいな。せめてものお礼です。」首を振るアンリエッタ。
「ですが、こんな高価なものを……」
「忠誠には報いるところがなければなりません。いいから、とっておきなさいな。」
 バビル2世が風のルビーを胸ポケットから取り出し、渡す。
「姫様、これはウェールズ皇太子から預かったものです。」
 アンリエッタはその指輪を受け取ると、目を見開いた。
「これは、風のルビーではございませんか。これもウェールズ皇太子から預かって来たのですか?」
 バビル2世は頷いた。本当は出掛けに「ウェールズは死んだ」と言って押し付けられたのだが、言えるわけもない。
「ありがとうございます、優しい使い魔さん。あの人は、勇敢に死んで言ったと、そう言われましたね。」
 死んでないけどな。おまけにすでに浮気している。
「ならば、わたくしは…………勇敢に生きてみようと思います。」

「やはり死体らしきものは見つかりません……」
 報告の兵が入れ替わり立ち代りやってくるが、どれも報告は判で押したように同じだった。
 無理もない。かつては名城と呼ばれたニューカッスルの城は、火薬でふっとんで跡形もない。かろうじて残る土台と瓦礫が、ここに
少し前まで城が残っていたことを告げている。それ以外は、人間のモノとおぼしき黒焦げのなにかだけが転がっている。
「仕方あるまい。このぶんでは、死体は火薬で吹っ飛んだのだろう。」
 車椅子姿ではあるが、ワルドが答える。車椅子を押しているのはフーケだ。
「閣下、やはり死体は見つからぬようです。」
 恭しく頭を下げた先には、僧形の軍人、クロムウェルがいる。
「よいよい。別に死体はなくともよいのだ。ウェールズの思い出の品や、愛着あるものでも良いのだ。」
 そこへ、兵隊が1人駆け込んでくる。そしてワルドに抱えていたものを渡し、頭を下げて立ち去った。

「これではどうでしょう?いま、兵士が見つけた……ウェールズが空賊に化けていたときに使っていた変装道具のようですな。
何の因果か、これだけ燃え残ったようです。」
 縮れ毛のカツラや、付け髭、いかにもな服を手渡すワルド。
「いやいや、これでよい。これで充分だ。我思うこれ満るなり我が望み、叶えば叫喚するも仕方なし。」
「は、はあ?」
「おっほん。では、お見せしよう。アルビオンの神聖皇帝となった、このオリヴァー・クロムウェルの力、虚無の魔法を!」
 懐からベルを取り出し、詠唱しながら杖と共にリズミカルにそれを振るクロムウェル。聞いた事もない呪文だ。
 すると、見よ!カツラは淡い光に包まれて浮き、くるくると回転し始めたではないか。
 そして目もくらむまばゆい光に包まれた。
 光が消え、目が慣れると……そこにはたしかにウェールズ王子以外の何者でもない男がいるではない。
「ワルドくん。ウェールズ皇太子を、余の友人に加えることにした。異存はあるかね?」
 後ろのフーケを気にしながら、ワルドは、
「閣下の決定に異論が挟めようはずもございません。」
そう答えるしかなかった。答えながら、心を落ち着けるように胸のペンダントをぎゅっと握り締めていた。

 神聖アルビオン帝国が樹立し、トリステインとゲルマニアの軍事同盟締結と、皇帝と王女の婚姻が発表された。アルビオンは政府
樹立後すぐに特使を送り、不可侵条約の締結を打診。トリステインはこれを受け入れ、表面上は平和が戻った。
 もっとも平和なのは国民だけで、政治家たちにとっては夜も眠れぬ日々は続いていた。が、まあ一般的には平和が続いていた。
 そしてそれはトリステインの魔法学院でも例外ではなかった。
「むさい……むさいわ……」

 どよんと沈んだような表情で呟くルイズ。その背後には、
「バビル2世様。どうやら重要人物がアルビオンに入国したらしいとの情報が。」
「ふむ。気になるな。嫌な予感がする」
「どうやら大豆が手に入る算段がついたとのことで。翁は最近上機嫌で醤油づくりをはじめられています。」
「それはよかった。そのうち顔を出すとしよう。」
「その筋で有名な傭兵が3人、アルビオンに雇われたという情報もあります。」
「ところでシエスタ嬢は?」
「おでれーた/なんだこの人口密度は!/」
「グルルルル…」
「きゅるきゅる?」
「モグモグモグ」
「あんたたち!」
 ルイズがガバッと立ち上がり、背後をむいて仁王立ちした。
「なんで全員で私の部屋に入ってくるのよ!」
 そう。そこには本来の使い魔、バビル2世。その忠実なるしもべのひとつ、黒豹ロデム。バビルの塔の端末、策士・孔明。ウェールズ
皇太子こと変態仮面、白昼の残月。しゃべる剣、デルフリンガー。サラマンダーのフレイム。モグラのヴェルダンデがいた。広い部屋と
はいえ、かなりいっぱいいっぱいだ。
「その質問には私がお答えしましょう。」
 すっと孔明が立ち上がった。あの日以来、バビル2世やロデムと一緒に部屋に住み着いてしまった。ときおり町まで出かけて、
なにやら悪さをしているらしい。何を調べているのか…。
「やかましい!」
 なにも答えないうちに孔明にドロップキックを放つルイズ。しゃべらせると、舌先三寸で丸め込まれるとすっかり学習してしまったの
だ。何かしゃべる前に先制攻撃。これが学習の結果だ。
「ああ、コウメイ様!」
 あわてて駆け寄る残月に、踵落しが炸裂した。
「あんたも3日も空けずに来るんじゃないわよ!」
 お前も胸か!胸がいいのか!と憎しみをこめて放つ。あの日から身体能力が異常に上がったため、走って30分ほどで学院まで
来るようになってしまった。そして毎日のようにバビル2世を尋ねてきて、シエスタを「家族の人に頼まれた」と言って訪問する。
 この平民め!平民はみんな胸か!胸なのか!とルイズは残月の中身を知らずに蹴りまくる。いや、そいつはメイジで王子だ。
「しかし、みんないく場所がないんだろう。すこしはやさしくしてやってもいいんじゃないかな?」

 バビル2世がそういうと、しぶしぶながらルイズは矛をさめた。最近は、毎日こんな感じだ。
「いやはや、バビル2世様、助かりました。」
「左様。ダメージ自体はさほどありませんが……怖いですな。」
「2人も少しは自重すべきだと思うんだが。」
 呆れるバビル2世。しかし、孔明は真顔で、続ける。
「いえいえ、続けるわけにはいかないのです。なぜなら、そろそろ戦争が始まるのですから。」
「なに?」
「コウメイ様!?それは、本当ですか!?」
「間違いありません。最近、食料品や、武具、金属の値上がりが激しい。これは買占めの起こっている証拠に他なりませぬ。しかも、
値上がり具合から見て、トリスタニア一国だけのものではございません。間違いなく、アルビオンが国家的に行っている兵糧や戦争
必需品の影響でしょう。極秘にやっているようですが、影響が出てしまっているようですな。」
 うふふ、と嗤う孔明。
「この孔明、わざわざ毎日市場で遊んでいるわけではありませぬ。残月ともども、日夜アルビオンと戦っているのですぞ。」
「左様。我々二人を信じていただきたい。」
 だが、そう堂々と言う二人の外見は、どう考えても信用できるものではなかった。
「……不吉な予感がするな。」
 バビル2世は、思わず呟いた。


 孔明の予想は的中していた。
 アルビオンは不可侵条約などはじめから守る気はなく、つぎつぎとトリスタニア攻略用の兵器の生産を行い、軍船の改装、兵力の
増加に余念がなかった。傭兵も各国から選りすぐりという腕利きを、極秘裏に高額でスカウトし、ニュー・カッスルの戦いで失った
兵力は充分補充済み、むしろ以前より強力になっていた。
 アルビオンの兵力増強は諸国でも問題となっていたが、不可侵条約を結んだ上、平和外交をおこなっている国に下手に口出しすれ
ば内政干渉と怒りを誘発し、かえって国際問題になりかねない。みな、だんまりを決め込んでいた。
 そして今日もまた、傭兵たちを乗せた船が、アルビオンの港へ向かっていた。
 その中に、異形の2人組みがいた。
 老人と、中年の男である。見たこともないような服に身を包み、ひとりは妙なものを使い常に煙をふかしている。煙をふかす男は、
ハートマークのような髪形をしていて、モノクルをつけている。老人はひげを生やし、すこしメタボぎみだ。
 名無し、の名で知られる、名高い傭兵コンビであった。
 名無し、の2人は船室でつまらなそうに外の景色を眺めている。
「アルビオンか……。この世界でも、人類は戦争しかないようじゃな。」老人が言う。
「この世界もいずれほろぶことになる。好戦的で、残虐な生命体を放っておくわけにはいかぬからな。」中年が応える。
「じゃが、皮肉なものじゃな。どこかがおかしくなってしまったあやつのおかげで、我々はこの世界に飛ばされ、そこでも同じように
好戦的な生き物を発見してしまったのじゃから。そしてその中に混ざって傭兵をするしかないとはな。」
「仕方があるまい。」
 中年が、煙の出るなにかを、壁にこすり付けた。火が消えて、煙が止む。
「アメリカ大陸を1人で破壊できるだけの力を持つ我々にとっては、この力を使うことが唯一の生き残る道だ。生き残り、なんとしてでも
元の世界へ戻って、地球を破壊せねばならぬのだからな。」



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