あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

毒の爪の使い魔-04


ルイズがジャンガの手を借りて、自分の失敗魔法による大爆発で破壊された教室の片付けが終わったのは、
昼休みも目前と迫った時刻だった。
ジャンガは最初『めんどくさい』と手伝いを怠けるつもりでいたのだが、
『手伝いをしなければ飯を抜きにする』と言う、ルイズの言葉に渋々片付けを手伝ったのだった。
ともあれ、色々と手間取りながらも、なんとか片付けを終えた二人は昼食を取るため食堂へと向かった。

「ったく…後始末の手伝いさせられたのに、この量だ?…ざけんなよ」
ジャンガは皿からルイズに目を向け、小さな声でぶつぶつと呟く。先程の片付けの事を根に持っているのだ。
自分は別に何の非も無いのに本当ならば彼女だけでやるはずだった片付けを、
飯をダシに無理やり手伝わされたのだ。それなのに感謝の一言も無く、昼食の量も朝食と変わらず。
別に感謝される事事態に興味は無いが、これだけ何もないと流石に我慢がいかない。
「チッ、まぁいい。ガキの…それも”無能”のやることに一々イライラしてても仕方ねぇか…」
ジャンガはそう自分自身に言い聞かせると、昼食へと向き直った。
両手の爪を指のように使い、更に盛られたスープとパンを平らげていく。
瞬く間に空になった皿を床に置くとジャンガはルイズを見る。
まだ食事は終わっていない。量が違いすぎるのだから当然だが。
仕方なく、ジャンガは床に座り込んだまま時間が過ぎるのを待った。
――そんな時だった……食堂全体に怒鳴り声が響き渡ったのは…

「どうしてくれるんだ!?」
「あん?ったく…今度は何だ?」
唐突に聞こえてきた怒鳴り声にジャンガは苛立ちながら首を伸ばす。
辺りを見回すとテーブルの一角に人だかりが出来ていた。
人だかりの中心に二人、一人はシエスタ、もう一人はキザっぽい見た目の金髪のメイジ(確かギーシュと言ったか?)だ。
「も、申し訳ありません!」
「フンッ、そうやって謝ったところで許されると思っているのか?」
「ほ、本当に申し訳ありません…ど、どうかお許しを…」
正に怒り心頭と言った感じのギーシュの怒声にシエスタは恐怖に怯えた表情でただ只管に頭を下げる。
どうも何かやらかした所為であのメイジの怒りを買ったようだが…。
「チッ、うるせぇな…」
本来ならば無視を決めるところだが、怒鳴られているのがシエスタでは、それはちょいと不味い。
ジャンガは深いため息を吐き、腰を上げる。
「めんどくせぇ…」
そう呟くと人だかりの方へと足を向けた。

「オイ、うるせぇぞ?」
そのジャンガの声にシエスタとギーシュが顔を向ける。
「ジャ、ジャンガさん…?」
涙で濡れた瞳を見開きジャンガを見つめるシエスタ。
彼女にしてみれば地獄に仏のような物だろう。
対してギーシュは不機嫌さを隠そうともしない表情で睨んでいる。
「何だね、君は?ああ…確かゼロのルイズが召喚した亜人か」
ギーシュは彼が何者かを理解すると直ぐに見下すような目で見据える。
尤もジャンガは身長が2メイル近くある長身なので、どうしても見上げる形になってしまうのだが…。
そんなギーシュの事はとりあえず置いとく事にし、ジャンガはシエスタに一体どうしたのかを聞いた。

曰く、彼女は給仕の最中にギーシュが落とした香水の瓶を拾い、それを彼に返そうとしたとの事。

曰く、その所為で彼の二股がバレてしまい、その相手の二人から怒りを買ってしまったとの事。

曰く、その所為で更に彼女がギーシュの怒りを買ってしまい、今現在の状況に至るとの事。

「くだらねェ…」
ごく自然にそんな言葉がジャンガの口から漏れた。
その言葉にギーシュは苛立ちを含んだ声を彼に叩きつける。
「くだらないだと!?君に何が解る?純粋な彼女達の心に傷を付け、泣かした…その罪深き行為を!?」
「テメェのな…」
「違うな、それは違う!彼女が拾った香水を僕の物かと尋ねた時、僕は知らないフリをしたんだ。
だとすれば少しは話を合わせようとしてもいいではないか?故にそれをしなかった彼女に全責任がある」
ここまで話を聞いてジャンガは心底呆れ果てていたと同時に懐かしさも感じた。
世の中には下らない奴がごまんと居る事は知っているが、これほどのアホはそうそう居ない。
まさかこんな異世界に来てまでお目にかかれるとは思わなかったが…。
「何処の世界にもアホは居るんだな?正直驚いたぜ…。まァ、ガキだから仕方ねェがな…」
「…聞き捨てならないな、その言葉?」
ギーシュは目付きを鋭くし、ジャンガを一層強く睨みつけた。
そんな彼の視線も何処吹く風……ジャンガは涼しげな表情で流している。
「ほぉ?聞き捨てならねェなら…どうするんだ?キキキ…」
そのジャンガの言葉を待っていたのか…、ギーシュは手にした造花のバラを突き付ける。
「決闘だ!」
「あんッ?決闘だ…?」
「そう…決闘だ。貴族への礼を知らないようだからな…、君に礼儀を教えてやろう」
ジャンガは自然と笑みを浮かべた。
「キキキ…、そいつはありがてェな。…で、此処でこのままやりあうか?」
ギーシュは身を翻すと食堂から出て行こうとする。
その彼の行動にジャンガは眉を顰めた。
「オイッ、何処へ行くんだ?今更ビビッたのか?」
「馬鹿を言え!下賎な亜人の血で貴族の食卓を汚したくないだけだ」
「ああ…、なるほどねェ…同感だ。まぁ、どっちの血で汚れるかってのは分からねェがな?」
「ふんっ、精々ほざいていればいい…。ヴェストリの広場で待っている!」
そう言い捨てるとギーシュは友人達と共に食堂を出て行った。
ジャンガはその後姿を見送るとシエスタに向き直る。
「よう、聞きたいんだがよ」
「ジャ、ジャンガさん……なんて事に…」
「あんッ?」
「あ、貴方…殺されちゃう……、貴族を本気で怒らせたら……」
シエスタは震えていた。先程までのそれよりも、一目で恐怖に駆られているのが解る。
何に怯えているんだ?ジャンガにはその理由が直ぐには理解できなかった。
考えてみれば、あの貴族の何がそんなに恐ろしいのだろう?
と、後ろから別の声が聞こえてきた。
「ちょっと、ジャンガ!?アンタ、何勝手なことしてるのよ!?」
振り向いたジャンガは顔を顰めた。…予想通り、そこに立っていたのはルイズだった。
と、ルイズはいきなり彼の腕を掴むと、そのまま強引に引っ張って行く。
「オ、オイッ!?何処へ引っ張って行く気だ!?」
「ギーシュの所よ」
「あんッ?アイツの所だったら、テメェに連れてかれなくても自分で行くぜ」
「バカ!謝りにいくのよ…、今ならまだ許してくれるかもしれない」
ルイズは立ち止まらずに背中越しに彼に声をかける。
ジャンガは彼女の言葉に再び顔を顰める。

謝る?
誰が?
俺が?
あのガキに?

ジャンガは強引にルイズの手を振り解いた。
「なにするのよ?」
「謝るだぁ?ごめんだな、あんなガキに頭下げるなんてな」
ジャンガの言葉にルイズはイライラした。こいつはメイジの恐ろしさを何も解っていない…。
「いい…メイジと戦ったら無事じゃ済まないのよ?それこそ怪我で済めば幸運と言える位なんだから」
「…チッ」
最初っから自分が負けると言う事意外、目の前の小娘は考えていないようだ。
ジャンガは侮辱されているにも等しいその事実に正直憤っていた。
だが、ここで癇癪を起こすのも面倒だ。ジャンガは精一杯の忍耐を発揮し、怒りを腹の奥底へと押し込んだ。
大きく深呼吸をして気を落ち着かせ、周りに居る生徒に声をかけた。
「オイッ?ヴェストリの広場とか言うのは何処だ、知ってる奴はいるか?」
すると、一人の生徒が彼を案内するかのように顎をしゃくった。
「こっちだ、亜人」
「ありがてェ…キキ」
生徒に連れられて出て行くジャンガ、次いで野次馬根性を発揮して出て行く生徒達の後姿をルイズは呆れ果てた表情で見つめる。
「まったく…なんて自分勝手な使い魔なの?」
「あ、あの…ミス・ヴァリエール?」
声を掛けられ振り向くと、申し訳なさそうな表情のシエスタが立っていた。
「私の所為で、ジャンガさんが…ジャンガさんが…」
後悔の念に駆られるシエスタの目からまた涙が溢れそうになる。
ルイズはそんな彼女を励ますように両肩に手を乗せた。
「大丈夫よ、決闘なんて直ぐにやめさせるわ。あのバカにも怪我なんかさせないから」
「本当に…大丈夫でしょうか…?」
「勿論よ!」
ルイズはそうシエスタに言うと、ジャンガの後を追って食堂を後にしようとする。
「あ…ミス・ヴァリエール、私も一緒に行きます」
「え、いいわよ…貴方はここで待っていて」
ルイズはシエスタを留めようと同行を断ったが、彼女は首を振って否定する。
「いえ…このような事になったのには、私にも責任があります…。ですから…お願いです」
まだ身体は少し震えてはいるが、その瞳は力強い光を放っている。
ルイズは逡巡し、大きく頷いた。
「分かったわ、一緒に行きましょう」
「はい」
そして二人はヴェストリの広場へと向かい、今度こそ食堂を後にするのだった。


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