【第一話 少女らが交わした”誤”契約】
儀式の場にいた生徒――とりわけ男子生徒だが――は、ルイズの召喚した使い魔の姿に釘付けになっていた。
見慣れない水色の服装で、全身はフリルで飾られ、頭は何やら@マークのような模様が描かれたマークのついた帽子をかぶっていた。
マントを羽織っていないので貴族ではないと誰もが思ったが、誰もその事でこの使い魔を罵倒することができなかった。
雰囲気が違った。悠然とそこにいるだけで目を見張るほどの優雅さが彼女からあふれ出しているのだ。その辺の貴族など足元にも及ばない「高貴さ」というものが、彼女をまとっていた。故に平民だなんだで馬鹿にすることができなかったのである。
だが皆その美しさに気を取られるあまり、もっと重要なことに気がついていなかった。
「・・・この人浮いてる」
その事実を最初に指摘したのは小さな青髪の少女だった。
初めは慣用句的な意味だと皆が思った。だが、この使い魔の姿をよくよく観察してみると――
地面から少しだけ浮いていた。
そして呪文を唱えた様子も見当たらない。
「まさか、先住魔法!?」
この事実に一同は大混乱に陥った。「ゼロ」のルイズが人外じみたメイジを召喚し、その上先住魔法を扱う高位のメイジであった。前例のない使い魔の召喚である。そりゃビビっても仕方ない。
だが当の幽々子はというと。
「…それって新しい流行語か何かかしら?」
ルイズらの斜め上を行く発言を悪びれも無くやった。
「・・・え!? 貴女、先住魔法を知らないの?」
「全く。それどころかここがどこかすら分からないわ」
もはや斜め上を行きすぎて皆何も言えない状態になっていた。
ただルイズは何故か比較的冷静だった。ここがどこか分からないと言っている目の前の使い魔に対し、ここはトリステイン魔法学院であるということを説明する。
こう言えばある程度納得するだろう。何せトリステイン魔法学院を知らない者などこのハルケギニアには全くいないと言っていいほど、ここは有名な場所なのだ。
そう鷹をくくっていたルイズだったが、
「・・・魔法学院? 魔法使いか何かがいっぱいいるのかしら?」
幽々子の鮮やかなボケのミドルフックが、彼女の冷静さをノックアウトさせた。
「まぁ、それはさておき・・・」
幽々子は浮遊したままルイズに近づく。周りの生徒は思わず後ずさりする。
ルイズと目と鼻の先の所まで来た幽々子は、そのままルイズを観察し始める。
自分の常識をことごとく砕かれたことによる混乱と、目の前の使い魔の不気味さで彼女は足を一歩引いたまま動けないでいた。
そんなルイズをよそに幽々子は彼女の全体像を見まわす。
ピンク色のブロンドの髪に鳶色の瞳。体には起伏がなく、体のパーツの一つ一つが細くて白い。大きなマントで覆われたその体は、彼女には今にも壊れてしまいそうなほど脆いものに思えた。
そしてそのまま彼女と目を合わせる。ほとんど零距離の状態で見つめ合う二人。ルイズは緊張で思わず背を伸ばす。そんな姿を見て幽々子が笑う。
「やっぱりおチビちゃんだわ、あなた」
その瞬間、人々は世界が停まったかのように感じたらしい。
「な、な、何ですってええええええええ!!!!」
爆発した彼女は思わず拳をあげる。怒りに任せたルイズの鉄拳を、幽々子はさも愉快そうにひょいひょいと避けていた。
「…コホン。少しよろしいかなミス・ヴァリエール、ミス・・・サイギョウジユユコ」
「あら、私の姓は西行寺だけですわ」
それは失礼、とコルベールが返す。
「さて、ミス・ヴァリエール。君はミス・サイギョウジを召喚してしまったわけなのだが・・・使い魔の儀式がいかに神聖なものなのかは分かるね? 彼女のようなヒトを召喚するなんて前例にないのだが、それでも儀式は完遂させなくてはいけない。よって君は、ミス・サイギョウジと――」
「こ、コントラクト・サーヴァントを行うのですか!?」
その通り、とコルベールは頷く。
ルイズは忘れかけていたことを思い出し、改めて事態の重大性に気づき、気が動転してしまったようだ。
「ででででで、でも、この人すごいメイジみたいだし、そ、そそそ、それに、ここがどこだか分からないって、い、言っているから、たたたた、多分記憶喪失だから――」
「あら、誰が記憶喪失なのかしら?」
動揺しているルイズに幽々子が冷静にツッコミをいれる。
そのまま彼女の肩をぽんと叩く。
「それに私があなたの使い魔になることは、さっきお互いに承諾しているじゃない。私が一体どう見えたのかは知らないけど、別に遠慮する必要なんてないわよ」
そう言って励まされたルイズは、その優しさに少しだけ目頭が熱くなった。
「…本人が同意してくれているのだ。失敗を重ねてやっと成功した召喚、わざわざ断る必要なんてないのだよ。…さぁ、早く彼女とコントラクト・サーヴァントを」
「は、はい!」
ルイズは幽々子と改めて向き合う。緊張のためか、表情が少しだけ固い。
「そ、それじゃ、いくわよ・・・ちょ、ちょっとしゃがんでもらえる?」
「あんまり緊張しなくていいわ。私がフォローしてあげるから」
そう言って少し腰を落とす彼女にルイズは心の中で始祖ブリミルに感謝をした。あぁ、自分はとても優れたメイジ(と思われる人物)な上、こんなにも自分に優しくしてくれる人物を使い魔にできるなんて、私はなんてラッキーなのだろうと。
呼び出した使い魔に密かに自分の一つ上の姉の姿を重ね合わせているルイズであったが、その一方で傍にいたコルベールは幽々子の言葉に何か引っかかるものを感じた。
「私がフォローする」? 使い魔として召喚された彼女が、ルイズに一体何ができるというのだ?
そんな心配をよそに、
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン、この者に祝福を与え、我の使い魔と為せ」
二人は契約の接吻を交わした。
――その、瞬間。
(!?)
ルイズは自らに異変を感じ取った。
自分の中に自分じゃないモノが流れ込んでくる。
気持ち悪い。自分が自分じゃなくなっていくようだ。
(だけど我慢しないと・・・)
耐えかねて接吻をやめれば、その時点でコントラクト・サーヴァントは失敗に終わる。
契約が失敗すればルイズに後はない。よって彼女はその違和感に耐え続けた。
そして、ルイズにとって短くも長く感じられた契約が完了した。
お互いの唇を離すと、幽々子は自分の左手をじっと見つめ始めた。
おそらくは自分の手に刻まれた契約のルーンが気になるのであろう。
ならばコントラクト・サーヴァントは成功だ。そう思って安心したルイズは幽々子を気遣って近くによる――
「――っあああああああああ!!!!」
悲痛な叫び声をあげて突然地面にしゃがみ込む。
左手を抑え込み、何か苦痛にうなされている。
「ミス・ヴァリエール!!」 「ルイズ!!」
コルベールとその他一部の生徒がルイズに駆け寄る。
痛みでしゃがみ込んだルイズの周りにあっという間に人だかりが出来上がった。
「一体どうしたんだ! 突然左手を抑え――」
そう言って彼女の左手を見たコルベールの息が止まった。
目を見開き、時が止まったかのようにルイズの左手を凝視している。
「先生! 彼女は一体――」
近くに寄って来た赤髪の女生徒もまた、その動きを停止した。
そしてまた一人、ルイズの左手を見て動きが止まる、を繰り返す。
無理もなかった。
彼女の左手には、本来使い魔に刻まれるはずのルーンが在ったのだから。
「ふーん。これが契約の一部始終なのね」
苦しそうにしているルイズなど知らぬ顔で、そんなことを幽々子は呟く。
そんな彼女を見て、ルイズは目に涙を滲ませながら叫んだ。
「んなわけないわよ!! 使い魔のルーンは本来アンタにつくはずなのよ! それなのに、主人である私になんで・・・」
ルーンが刻まれた際の痛みと、刻まれたことに対するショックが応えたのか、既に半泣き状態である。普段の強気な彼女はそこにはなく、あるのは涙を流すしおらしい彼女の姿だけである。
だが、その発言に一番驚いたのは幽々子の方であった。
「なんでって・・・私があなたにツいたからでしょう?」
「・・・『ツいた』?」
「そうよ。私はあなたの使い魔なんだから、常にあなたに『ツいて』いないといけないでしょう? だから私もその通りにしてあなたに『ツいた』。だから、そのルーンっていうものが私に刻まれるものだったから、『ツいていた』あなたの体に代わりに刻まれただけでしょう、きっと」
その言葉を一字一句正確に理解できた人間が果たしていただろうか。
「ミス・サイギョウジ。その・・・『ツいた』とはどういうことなのでしょうか? それに先程貴女が言っていた『フォロー』するというのも・・・」
恐る恐るコルベールが尋ねる。自分の教え子にこの人物が一体何をしたのか。彼はそれに怒りを通り越して畏怖と興味を抱いていた。
「あなたたち、幽霊ってこの世界にいるのかしら?」
コルベールではなく周りの生徒達に幽々子は質問した。
幽霊、という単語を聞いて一同はどよめいたが、その中の赤髪の少女は、
「いるかどうかは分からないけど、信じられていることもあるわ」
怖々ながらも気丈に返答した。
「そう。なら話は早いわ。あなたたち、幽霊はよく人や物に乗り移って悪さをするものだって教えられていない?」
妙な質問だが、生徒達は概ね頷いた。
「そうでしょう。ならもう分かるはずよ。そうやって幽霊が乗り移るようなことを、一体なんて呼ぶのかしら?」
ハッと、生徒達は息を呑む。
分かってしまった。彼女の言葉の意味がようやく理解できてしまった。
だが認められない。認めるのが怖い。
生徒達の顔は驚愕と恐怖と困惑の入り混じった複雑極まりない表情を浮かべた。
しばらく沈黙が流れる。
そして、この空気を読んだのか読まなかったのか、
「・・・貴女のおっしゃった『ツいた』とは―――」
見慣れない水色の服装で、全身はフリルで飾られ、頭は何やら@マークのような模様が描かれたマークのついた帽子をかぶっていた。
マントを羽織っていないので貴族ではないと誰もが思ったが、誰もその事でこの使い魔を罵倒することができなかった。
雰囲気が違った。悠然とそこにいるだけで目を見張るほどの優雅さが彼女からあふれ出しているのだ。その辺の貴族など足元にも及ばない「高貴さ」というものが、彼女をまとっていた。故に平民だなんだで馬鹿にすることができなかったのである。
だが皆その美しさに気を取られるあまり、もっと重要なことに気がついていなかった。
「・・・この人浮いてる」
その事実を最初に指摘したのは小さな青髪の少女だった。
初めは慣用句的な意味だと皆が思った。だが、この使い魔の姿をよくよく観察してみると――
地面から少しだけ浮いていた。
そして呪文を唱えた様子も見当たらない。
「まさか、先住魔法!?」
この事実に一同は大混乱に陥った。「ゼロ」のルイズが人外じみたメイジを召喚し、その上先住魔法を扱う高位のメイジであった。前例のない使い魔の召喚である。そりゃビビっても仕方ない。
だが当の幽々子はというと。
「…それって新しい流行語か何かかしら?」
ルイズらの斜め上を行く発言を悪びれも無くやった。
「・・・え!? 貴女、先住魔法を知らないの?」
「全く。それどころかここがどこかすら分からないわ」
もはや斜め上を行きすぎて皆何も言えない状態になっていた。
ただルイズは何故か比較的冷静だった。ここがどこか分からないと言っている目の前の使い魔に対し、ここはトリステイン魔法学院であるということを説明する。
こう言えばある程度納得するだろう。何せトリステイン魔法学院を知らない者などこのハルケギニアには全くいないと言っていいほど、ここは有名な場所なのだ。
そう鷹をくくっていたルイズだったが、
「・・・魔法学院? 魔法使いか何かがいっぱいいるのかしら?」
幽々子の鮮やかなボケのミドルフックが、彼女の冷静さをノックアウトさせた。
「まぁ、それはさておき・・・」
幽々子は浮遊したままルイズに近づく。周りの生徒は思わず後ずさりする。
ルイズと目と鼻の先の所まで来た幽々子は、そのままルイズを観察し始める。
自分の常識をことごとく砕かれたことによる混乱と、目の前の使い魔の不気味さで彼女は足を一歩引いたまま動けないでいた。
そんなルイズをよそに幽々子は彼女の全体像を見まわす。
ピンク色のブロンドの髪に鳶色の瞳。体には起伏がなく、体のパーツの一つ一つが細くて白い。大きなマントで覆われたその体は、彼女には今にも壊れてしまいそうなほど脆いものに思えた。
そしてそのまま彼女と目を合わせる。ほとんど零距離の状態で見つめ合う二人。ルイズは緊張で思わず背を伸ばす。そんな姿を見て幽々子が笑う。
「やっぱりおチビちゃんだわ、あなた」
その瞬間、人々は世界が停まったかのように感じたらしい。
「な、な、何ですってええええええええ!!!!」
爆発した彼女は思わず拳をあげる。怒りに任せたルイズの鉄拳を、幽々子はさも愉快そうにひょいひょいと避けていた。
「…コホン。少しよろしいかなミス・ヴァリエール、ミス・・・サイギョウジユユコ」
「あら、私の姓は西行寺だけですわ」
それは失礼、とコルベールが返す。
「さて、ミス・ヴァリエール。君はミス・サイギョウジを召喚してしまったわけなのだが・・・使い魔の儀式がいかに神聖なものなのかは分かるね? 彼女のようなヒトを召喚するなんて前例にないのだが、それでも儀式は完遂させなくてはいけない。よって君は、ミス・サイギョウジと――」
「こ、コントラクト・サーヴァントを行うのですか!?」
その通り、とコルベールは頷く。
ルイズは忘れかけていたことを思い出し、改めて事態の重大性に気づき、気が動転してしまったようだ。
「ででででで、でも、この人すごいメイジみたいだし、そ、そそそ、それに、ここがどこだか分からないって、い、言っているから、たたたた、多分記憶喪失だから――」
「あら、誰が記憶喪失なのかしら?」
動揺しているルイズに幽々子が冷静にツッコミをいれる。
そのまま彼女の肩をぽんと叩く。
「それに私があなたの使い魔になることは、さっきお互いに承諾しているじゃない。私が一体どう見えたのかは知らないけど、別に遠慮する必要なんてないわよ」
そう言って励まされたルイズは、その優しさに少しだけ目頭が熱くなった。
「…本人が同意してくれているのだ。失敗を重ねてやっと成功した召喚、わざわざ断る必要なんてないのだよ。…さぁ、早く彼女とコントラクト・サーヴァントを」
「は、はい!」
ルイズは幽々子と改めて向き合う。緊張のためか、表情が少しだけ固い。
「そ、それじゃ、いくわよ・・・ちょ、ちょっとしゃがんでもらえる?」
「あんまり緊張しなくていいわ。私がフォローしてあげるから」
そう言って少し腰を落とす彼女にルイズは心の中で始祖ブリミルに感謝をした。あぁ、自分はとても優れたメイジ(と思われる人物)な上、こんなにも自分に優しくしてくれる人物を使い魔にできるなんて、私はなんてラッキーなのだろうと。
呼び出した使い魔に密かに自分の一つ上の姉の姿を重ね合わせているルイズであったが、その一方で傍にいたコルベールは幽々子の言葉に何か引っかかるものを感じた。
「私がフォローする」? 使い魔として召喚された彼女が、ルイズに一体何ができるというのだ?
そんな心配をよそに、
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン、この者に祝福を与え、我の使い魔と為せ」
二人は契約の接吻を交わした。
――その、瞬間。
(!?)
ルイズは自らに異変を感じ取った。
自分の中に自分じゃないモノが流れ込んでくる。
気持ち悪い。自分が自分じゃなくなっていくようだ。
(だけど我慢しないと・・・)
耐えかねて接吻をやめれば、その時点でコントラクト・サーヴァントは失敗に終わる。
契約が失敗すればルイズに後はない。よって彼女はその違和感に耐え続けた。
そして、ルイズにとって短くも長く感じられた契約が完了した。
お互いの唇を離すと、幽々子は自分の左手をじっと見つめ始めた。
おそらくは自分の手に刻まれた契約のルーンが気になるのであろう。
ならばコントラクト・サーヴァントは成功だ。そう思って安心したルイズは幽々子を気遣って近くによる――
「――っあああああああああ!!!!」
悲痛な叫び声をあげて突然地面にしゃがみ込む。
左手を抑え込み、何か苦痛にうなされている。
「ミス・ヴァリエール!!」 「ルイズ!!」
コルベールとその他一部の生徒がルイズに駆け寄る。
痛みでしゃがみ込んだルイズの周りにあっという間に人だかりが出来上がった。
「一体どうしたんだ! 突然左手を抑え――」
そう言って彼女の左手を見たコルベールの息が止まった。
目を見開き、時が止まったかのようにルイズの左手を凝視している。
「先生! 彼女は一体――」
近くに寄って来た赤髪の女生徒もまた、その動きを停止した。
そしてまた一人、ルイズの左手を見て動きが止まる、を繰り返す。
無理もなかった。
彼女の左手には、本来使い魔に刻まれるはずのルーンが在ったのだから。
「ふーん。これが契約の一部始終なのね」
苦しそうにしているルイズなど知らぬ顔で、そんなことを幽々子は呟く。
そんな彼女を見て、ルイズは目に涙を滲ませながら叫んだ。
「んなわけないわよ!! 使い魔のルーンは本来アンタにつくはずなのよ! それなのに、主人である私になんで・・・」
ルーンが刻まれた際の痛みと、刻まれたことに対するショックが応えたのか、既に半泣き状態である。普段の強気な彼女はそこにはなく、あるのは涙を流すしおらしい彼女の姿だけである。
だが、その発言に一番驚いたのは幽々子の方であった。
「なんでって・・・私があなたにツいたからでしょう?」
「・・・『ツいた』?」
「そうよ。私はあなたの使い魔なんだから、常にあなたに『ツいて』いないといけないでしょう? だから私もその通りにしてあなたに『ツいた』。だから、そのルーンっていうものが私に刻まれるものだったから、『ツいていた』あなたの体に代わりに刻まれただけでしょう、きっと」
その言葉を一字一句正確に理解できた人間が果たしていただろうか。
「ミス・サイギョウジ。その・・・『ツいた』とはどういうことなのでしょうか? それに先程貴女が言っていた『フォロー』するというのも・・・」
恐る恐るコルベールが尋ねる。自分の教え子にこの人物が一体何をしたのか。彼はそれに怒りを通り越して畏怖と興味を抱いていた。
「あなたたち、幽霊ってこの世界にいるのかしら?」
コルベールではなく周りの生徒達に幽々子は質問した。
幽霊、という単語を聞いて一同はどよめいたが、その中の赤髪の少女は、
「いるかどうかは分からないけど、信じられていることもあるわ」
怖々ながらも気丈に返答した。
「そう。なら話は早いわ。あなたたち、幽霊はよく人や物に乗り移って悪さをするものだって教えられていない?」
妙な質問だが、生徒達は概ね頷いた。
「そうでしょう。ならもう分かるはずよ。そうやって幽霊が乗り移るようなことを、一体なんて呼ぶのかしら?」
ハッと、生徒達は息を呑む。
分かってしまった。彼女の言葉の意味がようやく理解できてしまった。
だが認められない。認めるのが怖い。
生徒達の顔は驚愕と恐怖と困惑の入り混じった複雑極まりない表情を浮かべた。
しばらく沈黙が流れる。
そして、この空気を読んだのか読まなかったのか、
「・・・貴女のおっしゃった『ツいた』とは―――」
――「憑いた」のことですか?
恐る恐る尋ねるコルベール。
そして彼の問いに対して幽々子の首は、
そして彼の問いに対して幽々子の首は、
――前に一回だけ倒れ、元の位置に戻った。
生徒達は蜘蛛の子を散らすように逃走を始めた。おびただしい悲鳴を上げながら。
「ど、どどどどどど、どういうことよ!!!」
大混乱の中でルイズは幽々子に向けて叫ぶ。
「あ、あ、あ、ああ、アンタ、メイジじゃなかったの!?」
「あら、そんなこと一言も言ってないわよ。それにね、私メイジなんて言葉知らないわ」
ルイズの常識を打ち崩す最後のボディーブローが一撃。
もう開いた口が塞がらず、目はドットという感じであった。
「じ、じゃあ、アンタは一体――」
「そういえば言ってなかったっけ。私は人間でも吸血鬼でもましてやメイジなんて訳の分からないものじゃない――亡霊よ」
亡霊にただもクソもないだろうと彼女は思ったが、それよりも彼女は
「使い魔が私を崇り殺す気なのかああああああ!!!」
自分にふりかかったその理不尽さに、吠えた。
「ど、どどどどどど、どういうことよ!!!」
大混乱の中でルイズは幽々子に向けて叫ぶ。
「あ、あ、あ、ああ、アンタ、メイジじゃなかったの!?」
「あら、そんなこと一言も言ってないわよ。それにね、私メイジなんて言葉知らないわ」
ルイズの常識を打ち崩す最後のボディーブローが一撃。
もう開いた口が塞がらず、目はドットという感じであった。
「じ、じゃあ、アンタは一体――」
「そういえば言ってなかったっけ。私は人間でも吸血鬼でもましてやメイジなんて訳の分からないものじゃない――亡霊よ」
亡霊にただもクソもないだろうと彼女は思ったが、それよりも彼女は
「使い魔が私を崇り殺す気なのかああああああ!!!」
自分にふりかかったその理不尽さに、吠えた。