あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロの"憑"き魔 序 異世界邂逅 ~ Mage meets ghost.


 我々の住んでいる「世界」というものがある。
 しかし、それ以外にも、様々な「世界」がある。
 この物語は、我々の世界から遠く離れた、ある2つの世界を巡るものである――

 【ゼロの”憑”き魔/虚無の魔女と亡霊の姫】

 異世界、ハルケギニア。
 ハルケギニア大陸を中心とした、二つの月が存在するこの世界は、いわば魔法の世界である。魔法を使える者はメイジと呼ばれる貴族階級であり、使えない者は平民として彼らに従属している。
 その大陸の西側に存在する小国、トリステイン王国。
 その国にあるトリステイン魔法学院にて、使い魔召喚の儀式が執り行われていた。
 メイジの手足となる使い魔を召喚するこの儀式、学院に通う生徒達の進級試験も兼ねた、大変重要かつ神聖な儀式である。
 呼び出されるものはサラマンダーであったり、巨大なモグラであったり、また或いは竜の幼生だったりする。生徒は召喚した使い魔を互いに見せ合い、時に自慢する。
 この際に行う「サモン・サーヴァント」と呼ばれる魔法は、さほど複雑ではない初歩的なものであり、結果多くの生徒はこの魔法を容易く成功させている。
 …ある一人を除けば。
「またルイズが失敗したぞ」
「さすがは『ゼロ』のルイズだ。これで何回目だよ」
「全く。早くしないと次の授業始まるぞ」
 召喚魔法に失敗して、何度も爆発を繰り返している少女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールに野次が飛ぶ。
 先ほどから彼女は幾度となくサモン・サーヴァントを唱えては爆発を起こし、一人だけ召喚の儀式を成功することができないでいた。
 彼女は昔から魔法を成功させたことがない。どういう訳だか、彼女はどんなに簡単な魔法でも「爆発」という一つの現象だけを起こして失敗している。単刀直入に言うと才能がない。
 貴族の中でもとりわけ高貴なヴァリエール公爵家の子でありながら、メイジとしての資質を全く兼ね備えていない彼女は、いつしか「ゼロ」という不名誉な二つ名で呼ばれるようになり、周囲の人間に侮蔑され続けていた。
 その分座学に関しては学年トップなのであったがそれでは意味がない。どんな些細なものでもいいから魔法が使えるようになりたい。そんなルイズにとって、この儀式はゼロの汚名を晴らす絶好の機会なのである。
「まだよ・・・まだ14回目よ・・・」
 爆発ですでに衣服はボロボロだが、それでも彼女は尚やめようとしない。
 クラスメイトの冷ややかな視線にも屈せず、ルイズはまた杖を握りしめる。
 全ては、進級のため。
 儀式が成功しなければ当然落第である。ルイズにとって、それは家の名に賭けて何としてでも避けたいことだった。
 全ては、家のため。
 魔法を使えない自分のせいでヴァリエール家に泥がつくことは、ルイズにとって心が壊れそうなほど耐えがたいことであった。
 そしてなにより、己の名誉のため。
 これ以上「ゼロ」の名に甘んじ続けることなど、ルイズのプライドが断固として許さなかった。
(召喚を成功させ、「ゼロ」の壁を越えてみせる。そして自分を見下してきた全ての人に対して、私は無能ではないと証明してみせる――)

 自身の誇りに賭けて、ルイズは杖を振るう。
「宇宙の果てのどこかにいる私の僕よ! 神聖で美しく、そして強力な使い魔よ! 私は心より求め、訴えるわ! 我が導きに答えなさい!!」

 冗長で誇大なその詠唱は、彼女の切望がこの上なく投影されたものであっただろう。
並行世界間に時間軸が存在するなら、ルイズが15度目の詠唱をした同時間。
 ハルケギニアとは全く別の世界で、小さな異変が起こっていた。
「あらら? これは一体何のお知らせかしら?」
 冥界の亡霊、西行寺幽々子は、突如現れた光輝く珍妙な鏡に目を丸くしていた。

 幻想郷。異世界の一つである。
 他の異世界と違って特異なのは、我々の住む世界と地続きでつながっているという点である。しかし、幻想郷の外と内は結界で仕切られているため、結局我々の世界からは直接歩いて行けないのである。
 妖怪が住み着き、魔法も発達し、精神面での豊かさを求めた独特の世界が形成されていて、時折起こる異変を除けば平和そのものである。
 その一部である冥界。ここに白玉楼と呼ばれる屋敷がある。
 広大な屋敷には冥界の幽霊管理人である亡霊、西行寺幽々子と、彼女付きの所謂ボディーガード兼庭師の半霊、魂魄妖夢が住んでいる。
 話を冒頭に戻すと、幽々子が自室で何をするでもなく桜を眺めながらゆっくりとくつろいでいると、彼女の目の前に光る鏡――これがルイズの召喚魔法である――が突然現れたという訳である。
「みょん!? 幽々子様、それ一体何ですか?」
「分かんなーい。突然目の前に出てきたわ」
 妖夢はともかく、幻想郷に住み着いて千年近く経っている幽々子ですらこの鏡の正体は判然としなかった。
「何だかよく分からないけど、何だか面白そうでもあるわよね。ちょっと――」
「幽々子様、触らない方がいいですよ」
 主が言うより先に妖夢が制止する。自分の発言を先に潰された幽々子は不貞腐れたように口をとんがらせる。
「まだ何も言ってないでしょう? それに触るぐらいなら平気よ。強いて怪しい所があるとしても、ただ光っているだけでしょう?」
「それが一番怪しいじゃないですか! いくら冥界とはいえ、前触れも無しにこんな光輝く鏡なんて現れません!」
「そうそう。この世界で突然現れるモノなんて私以外そんないないわよ」
 彼女らの背後から二人とは別の声が聞こえる。振り返ってみれば、突如現れた空間の裂け目から一人の女性がひょっこりと出てきた。
 八雲紫という名をしたこの妖怪は、幽々子との旧くからの知人である。二人が出会った経緯はよく分かっていないが、幽々子が生きていた頃から紫は知っていたらしいから、相当長い付き合いなのだろう。
その言葉に妖夢は胸をなでおろしたが、幽々子はかえって期待を膨らませたようである。
「それで? 一体どこに繋がっているのかしら?」
「さぁ、そこまでは分からな――おや、何か聞こえてくるわ」
 それを聞くや否や、幽々子は紫の近くに慌ただしく走り寄ってきた。もっとも、床から浮いたまま移動したので足音は全く立たなかったのだが。
 何が聞こえるのかと急かすが、当の聞こえている本人はニヤニヤしながら耳を傾けているだけだった。
 業を煮やした幽々子は紫をド突いた。鏡に気を取られていた紫は体のバランスを崩し、あわやそれにぶつかりそうになったが、すんでの所でスキマを呼び出し、そこに入り込むことで難を逃れた。
 別の場所から再び出てきた彼女は、目の前で騒いでいるお嬢様を恨めしそうに睨んだ後、ため息交じりにこう言った。
「そんなに急がなくたってこれは無くなりなどしないのに。少し待っていて。今聞こえるようにするから――」
 右手を鏡の方に突き出すと、それから数秒たって音が聞こえ始めた。比較的静かな屋敷の中に、人の雑踏の中にいるような騒がしさが溢れ出す。
「すごい・・・紫さん一体何をしたんですか!?」
「かろうじて読み取れた部分にあった『こちらの音』と『あちらの音』の境界を弄っただけよ。これでむこうの音がここでも聞こえるようになったし、逆にこっちの音もむこうに駄々漏れという状態になったわ」
 まさに「境界の妖怪」の成せる技である。
 感心する妖夢をよそに、幽々子はある疑問を呟いた。
「――ひょっとして向こう側に対して話しかけられたりする?」
 その疑問に紫はもちろんと答える。それを聞いた幽々子は鏡の前にするすると移動した。
 何をする気?と問う紫に対して、亡霊姫は微笑みながら返す。

「決まっているでしょう? 『私を呼んでいる』輩に挨拶をするのよ」

 一体どこから彼女を呼んでいるのだという考えが思いつくのか、と疑問に思う二人に気にも留めず、幽々子は鏡との対話を始めた。
 ルイズの15度目のサモン・サーヴァントが唱え終わる。
 それと同時に、先ほどよりも一際大きな爆発が彼女の目の前で起こる。
 これまでにない大きな爆風にルイズの華奢な体は数メイル飛ばされた。幸い彼女は軽い尻もちをついただけで済んだが。
 爆発によって周囲は多量の煙に包まれ、その場にいた何人かはせき込んだ。煙は想像以上に濃く、すぐ目の前すらよく見えない。
 一部始終を見届けた生徒達は心の中で異口同音に呟く。
(やっぱり失敗か) (やっぱり「ゼロ」は「ゼロ」だな) (ルイズもこれで終わりね)
 そう思うと、彼らはフライやレピテーションを唱えてその場を立ち去ろうとする。ルイズの失敗による延長のせいで次の授業が間近に迫っていたためである。
 そんな冷やかな彼らとは裏腹に、ルイズの顔には笑みがあった。
 手ごたえを感じた。小動物だろうが何だろうが、何か召喚できた可能性が高い。そう思っただけで、まだぬか喜びであるとは知りつつも喜びを隠せないでいた。

 ――数秒後にこの場にいる一同は「どういうことなの・・・?」と思う。

*1 )) ・・・ハッ!(;゚д゚)
 その疑問は無理もないだろう。
 ルイズの前にあったのは幻獣でもなく、小動物でもなく、ましてや人間でもなく。
 ――光に包まれた巨大な鏡だったからだ。

「な、何よこれ・・・」
 想定外の中でも想定外。予想だにしなかった展開にルイズはただ困惑するしかなかった。
 目の前に現れた鏡は少しだけ宙に浮き、常にまばゆい光を纏っていた。
 その荘厳たる様子に、周りの生徒も「ルイズが鏡を召喚した」と馬鹿にすることができなかった。
 鏡にルイズが近付く。そしてその目の前に立った瞬間、

【――汝、我を欲する者か。】

 鏡が喋った。いや、正確には「鏡から声がした」なのだが。
 一同は混乱に包まれた。
――ルイズがとんでもないモノ召喚しやがった!
――ありえない!一体始祖ブリミルは何をしたんだ!
――あの「ゼロ」が!魔法を成功させるなんて!
 生徒達は喚き騒ぎ、その場にいた教師コルベールも驚嘆の色が隠せなかった。
 だがルイズは騒がなかった。むしろ冷静に「声」に対して返答した。
「そうよ。私が貴方を呼んだヴァリエール公爵家の三女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールよ!」
 恐れも無しに堂々と正体不明の何かと対峙している彼女の口元は、笑みで激しく歪んでいた。
彼女は喜びを通り越して狂喜していたのだ。幻獣どころか、下手すると神様に近いものでも召喚してしまった自分は、ひょっとしたら「ゼロ」のルイズではなく「天才」のルイズではないかという錯覚に陥ってしまった。つまりは俺TUEEEEEE状態であり、そこに降りかかるクラスメイト達の驚きの声など、全部彼女を褒め称える言葉にしか聞こえなかった。
一人妄想するルイズに、鏡からさらに問いかける。

【――汝、何故に我を欲するか。】

 無駄なエコーがかかっているせいで聞き取りにくいが、声は女性のものであった。落ち着き払った大人の女性を連想させる、綺麗な声であった。
 その問いに彼女はまた返答する。
「私はヴァリエール公爵家に生まれた由緒正しい稀大のメイジよ! そんな私には普通の使い魔なんて似合わない。だからこのような素晴らしい貴方を呼んだのよ!」
 暴走を始めたルイズだが、その他の人間たちは目の前で繰り広げられる超展開についていけず、結果彼女へのツッコミすらままならなかった。
「だ・か・ら! とっとと私の使い魔になりなさい!」
 我を忘れて走る彼女だったが、この言葉だけは彼女の全くの本心であり理性であった。
 その懇願の後、しばらくの間沈黙が流れる。

【・・・ぷぷっ】

 鏡から聞こえてきたのは半濁音二つと促音だけだった。
 「ヘッ?」とルイズは思わず拍子抜けしてしまった。
 さらに沈黙が流れる。そして、
【ぷ・・・ぶっははははははははははは!】

 鏡から聞こえてきたのは笑い声だった。
 それも一人ではない。3人くらいの笑い声が合わさって聞こえる。
 しかも大爆笑だ。その勢いたるや、とどまることを知らない。
 もはや何が何だか。生徒達とコルベールはただ目を丸くする他なかった。
 ルイズも最初はそうだった。しかし、時間が経つにつれて思考が再開する。そして、比較的稚拙な脳がルイズに下した命令は、
「うっるさああああああああああああいいいいいいいい!!!!!!!!!」
 鼓膜が割れんばかりのシャウトだった。
 この娘は一度癇癪を起こすとしばらく収まることを知らない。すさまじく喚いて血管の一つや二つがプッツンするのでは心配するほどだが、彼女はその理由で病院にかかったことがないので安心しよう。
「さっきから笑ってばかりいいいい!何がおかしいのよおおおおお!!!」
 目は血走り、歯がギリギリと軋むその形相といったら! それだけで「新種の妖怪です」と言って通用するレベルである。
 しかし相手もさることながら、その笑い声はやはりとどまることを知らない。この状況下においてそれを続行できることに、ルイズの人となりを知っている全ての人々は震撼した。
 だがしばらくすると、先ほどの声の主が笑いながらこう言った。

【だ、だって、フヒヒ、あ、あ、あなたみたいな、ヒ―、フヒヒヒ、お、おチビが、お、お、ぎゃはははははははは!!!!】

 何だか訳が分からないので、要約すると、

【だって、あなたみたいなおチビがさも偉そうに自慢するのだもの】

 ――人間というものは不思議なもので、こんな作業を机の上でやらずとも瞬時に意味を解釈することができたりする。果たしてこれは人間にとって幸なのか不幸なのか。

 ただ、ルイズの表情を見る限り、
 彼女がプッツンしているということは、確定的に明らかだった。
 白玉楼は3人の少女達の爆笑に包まれていた。
「あーひゃひゃひゃひゃひゃ! もうらめぇ、腹筋が壊れて死んじゃうwww」
「うひゃひゃひゃひゃ! 馬鹿ねぇ、貴女とっくの昔に死んでるでしょうにwww」
 そのジョークが起爆剤となり、笑いは大きくなる一方だった。
 妖夢は少し収まってきたようだが、幽々子と紫は未だに腹を抱えて笑い転げている。
 暴走気味だったとはいえ、使い魔の召喚を切に望むルイズは真剣そのものだったのだが、千年近く生きているこの二人にとって、せいぜい十数年しか生きていないルイズの真摯な態度などただの滑稽にしか映らなかったのである。
 長く生きた妖怪故の大爆笑だったが、彼女らの腹筋をさらに鍛えようとした要因はもう一つあった。
「それにしても聞いた? なんで幽々子を呼び出したかと思えば、魔法使いの使い魔の召喚の儀式だったなんてねぇ。予想外だわ、ほんと」
「こんな展開になるなんて考えもつきませんでしたよ。使い魔として召喚されるなんて幽々子様、昔どんな悪いことをしたんですか?」
「やぁねぇ、昔のことなんて覚えてないわよ。一体どれだけ亡霊やっていると思っているのよ。自分でもよく覚えてないほどよ」
 それじゃ仕方ないと、一同は力なく笑う。
 そんなこんなで悠々と雑談をしていた三人であったが、後ろからは呼び出した張本人と思われる少女の怒声が響いてくる。誰がおチビだの、何が自慢だの、というか早くこっち来てツラ貸せやなど、いくら待ってもぽんぽんと飛んでくる罵言はやかましくて仕様がない。
「それで・・・一体どうするのかしら?」
笑いをなんとか抑えて、紫が話を切り出す。
「どうするも何も、これが消えてくれるのを待つしかないと思いますが」
「貴女達がこの騒音に耐えられるならね。それに、これがいつまでも駐屯したとしたらどうするのかしら? 来客が来て、万が一これに触れるなんてことも考えられないことはないでしょう?」
 ここにやって来る来客など、騒霊合奏団か、神社の巫女か、白黒の魔法使いぐらいしかいないのだが、それでも確かに危険である。この事実に初めて気がついた妖夢は頭を抱えた。
 なら結界を張って寄せ付けないようにするか。いや、それは魔力コスト的にきついし、そもそも自分や主人が結界を張るのが得意とは思えなかった。ならば別の場所に持っていくか。触れもしないのにどうやって。魔力等で触れずに移動させるか。対象が強力な魔力を持っているから極めて難しいか――
「いっそのこと、召喚されてみるか」
一人悶々と熟考している妖夢を見てか見ないでか、突然幽々子が口を開いた。
 紫は思わず苦笑し、妖夢は思わず叫んでしまった。
「駄目ですよ! 白玉楼の主でもあり、冥界の幽霊の管理人でもある幽々子様がいなくなったら、冥界は一体どうなると思ってるんですか!」
「うーん。なるようになるんじゃない?」
「ならないでしょ! というか閻魔様に何て言われるか分かりませんよ!?」
「それは妖夢がなんとかしてよ。真面目な子同士、仲良く話し合えばいいじゃない」
 妖夢はのらりくらりと返す主に思わずヒステリックになってしまい、見かねた紫はそこに割って入る。
「別に行ってもいいけど、その辺は自己責任よ。私ですらその世界のことはよく分からないし」
「大丈夫よ。分からないなら分かろうとすればいいのよ。私は実際にいって調べてみるから、あなたはこちら側から頑張ってね」
 要は自分がいなくなっている間に、その異世界について調べておいてねと紫にh頼んでおいたのである。つまり保険をかけたわけだ。
「でも大丈夫? 今行ったらブッ殺されるかもしれないわよ?」
「うふふ・・・百年も生きてない小娘に何ができるのやら」
 そう言うと、幽々子は手を伸ばし、鏡に触れようとする。
 行くなと喚いている妖夢を横目に、しばらく会えなくなるだろう友人に境界の妖怪は問いかける。
「そこまで行こうとする理由はあったりする?」
 根本的な問題を問うてきた彼女に対して、亡霊の姫は微笑む。
「強いて言えば『暇だから』ね。庭を見て過ごすのもそろそろ飽きてきたころだし」
 暇を持て余した者というものは、新しい刺激を求める。彼女もその例に漏れていなかった。
「それと妖夢。あなたの主として一つだけ命令します」
 予期せぬ自分への命令に思わず背が正される。しかし、
「私が戻ってくるまでに、この白玉楼の庭を一新させること。いいわね?」

庭師としての突然の大仕事を与えられたことにきょとんとした妖夢の姿を見届けると、幽々子は鏡の放つ光の中に消えていった。



 * * *
『ウフフ・・・お待たせ』
 ルイズの前にそびえる鏡から再び声がする。先ほどから聞こえていた女性の声と同じである。ただし、さっきよりクリアに聞こえる。
 当のルイズは凄まじい怒鳴り声を乱発したせいで息が上がり、汗でビッショリとなっている。それでも覇気だけはまだ残っているようだが。
「アンタねぇ・・・今更どのツラさげて戻ってき――」
『私の言ったこと聞いてなかった? 『お待たせ』って』
 その言葉にルイズは我に返る。
「お待たせ」? ・・・ということは――
『えぇ。私はあなたの求めに応じて、そこに召喚されてあげるわ』
 先ほどの下品な爆笑っぷりは一体どこへやら。一転して召喚されることをこの「鏡の何か」は承諾した。周囲からオオッという驚きの声が上がる。
「本当に? だったら――」
『その前に、今一度あなたに問うわ――汝、我を欲する者か』
 再び聞こえる問いかけの声。
 一変してしまった空気にたじろぎつつも、ルイズは確かな声で返答する。
「――ええ。私、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは、五つの力を司るペンタゴンの元において、貴方を我が使い魔として召喚し、そして永遠に共に在り続けることを、ここに切に望むわ!」
 彼女なりの敬意と期待をもって答えたルイズに、未だに見えないその声の主は少し微笑んだかのように思えた。
『ウフフ・・・その言葉が嘘でないことを願うわ』
 その言葉が、召喚の合図だった。

 鏡が一層輝き始め、一面は眩い光だけとなった。
 その眩しさに誰もが思わず目を覆う。
 何も見えない。いや、光しか見えない。
 そんな状態が数秒間続き――

 ルイズは目を開く。
 自分の目の前にあった巨大な鏡は、細かな光子となって消えようとしていた。
 そしてその前で、別の光が輝きを放つ。
 炎のような形をした、淡い紫の閃光。
 やがてその中に影のようなものが見え始め――
やがてそれは現れた。
ルイズの前に悠然と浮いている。
彼女は驚愕した。
目の前に現れたそれは幻獣でもなく、小動物でもなく――人間。
…いや、人間と呼んでいいのかというぐらいに、何か超常的なものを感じさせる。
人間というよりは、「ヒトのようなモノ」という方が適切か。
そしてどちらにしろ、彼女はやはりとんでもないモノを召喚してしまったのだ、という錯覚を抱いた。
この場においてそれは錯覚ではなく、紛れもない真実であったのだが。

「ハイ、召喚されましたよっと」
 ヒトの形をしたそれはルイズに笑いかける。
 常識を逸脱したその表情は恐怖を通り越して既に――美しかった。
 書き手個人の意見だけではあるまい。この場にいた野郎全てがそう感じただろう。そうだまちがいない。
 「アンタ・・・誰・・・?」
 同じくその美しさに見とれたルイズは自然と問いかける。
 返答するその表情は、やはり微笑を浮かべていた。

「あなたが召喚した使い魔、西行寺幽々子よ」

 ――これが、後に「虚無の魔女」と「亡霊姫の憑き魔」と呼ばれる二人の、ファーストコンタクトであった。

  序 異世界邂逅 ~ Mage meets ghost. 了


新着情報

取得中です。