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未来の大魔女候補2人-05a


あらすじ。

 「いいか我々は『ラピッドストリーム』言う陣形で戦う」

 「鳳天舞の陣は皇帝に防御ボーナスと御供に攻撃ボーナスがある分あつかいやすいし素人から玄人まで幅広く使われている帝国の基本陣形。
  対してラピッドストリームは見た目なんかはフリーファイトとほとんど変わらねぇが皇帝が少し前に出ることにより敵より早く行動できるが受動防御が全く発生しない分
  使いこなせねぇとインペリアルアローより使えないホーリーウォール以下だってのに何であの皇帝は?」


 ・
 ・
 ・


 「地獄爪殺法をやらせるな――――ッ!!」
 「いいや! 限界だ、するね!」


        【クイックタイム!!】


 「俺が時を止めた、行動順5の時点でな……」




未来の大魔女候補2人 ~Judy & Louise~

第5話前編『魔法少女と美人秘書』



 学院で一番空に近い場所、つまり学院長室。そこには、老人と中年男性が居た。
 老人は、顔の半分以上が真っ白な髪と髭によって隠されており、露出しているのは額から鼻までの範囲だ。そこから覗く眼には確かな知識の輝きが宿り、ただ無為に年を重ねたわけではない事を物語っている。
 老人とは対照的に中年男性は黒い髪の毛を持っているが、額から頭頂部までが禿げあがっている。そして、残っている黒髪にはツヤがなく白髪が覗いており、彼の気苦労が偲ばれる。
 2人は部屋の中で杖を振るっていた。その行為だけを見るならば、奇異な行為に見えるのだが、部屋の変化を感じ取ることが出来れば、その意味が分かるだろう。
 杖が振られる度に、煌めく粒子が杖の先から飛び出す。その煌めく粒子は、割れた壷や粉々に砕けた椅子に纏わり付き、光が消え去ると破損部分が修復されている。
 部屋の様子を観察すると、壁は何かが高速でぶつかったかの様に陥没しており、調度品もこれまた何かが高速でぶつかったかの様に粉々に砕けている。
 既に部屋の大半は修復されており、残すのはセコイア製の大机だけであった。しかしそれも、何度目かの修復の魔法が掛けられて、元の形を取り戻した。
 修復された物品を細密に観察すれば、破壊の痕跡である細かい傷跡が見て取れる。いかな修復の魔法といえども、傷も無く元通りの状態に修復するには、多大な精神力と豊富な経験が必要となるのだ。
 部屋がようやく一応の体裁を整えたことに老人は、曲がった腰を伸ばして安堵のため息をつく。 

「部屋の修復も漸く終わったのぅ。御苦労じゃったね、ミスタ・コルベール」
「ええ、お陰で朝食は食べそびれましたがね」

 コルベールに皮肉気に返されたオスマンは、そっぽを向いて話題を逸らす。

「それにしても、なんでミス・ロングビルは怒ったんじゃろうな? ワシは善意で制服を用意したというのに……」
「言い方に問題があったのでは?
 しかし何時、ジュディさんを生徒にするのが決まったのです?」
「なに言っとるんじゃ?
 君が昨日、ど~ぅしてもと言ったんじゃろうが」
「はぁ、そうでしたか? とんと覚えがありませぬ」
「まあ酔っ払っとったし、憶えていないのも無理はない。
 其れよりもじゃな……」

 オスマンはほくそ笑み、更なる話題の変更を試みる。
 元のモノよりかけ離れた話をすれば、思い出されることもないし、より重大な話を始めれば蒸し返されることはない。そういう魂胆なのだ。

「そんな事より重大な事があるじゃろう?」
「そういえば、朝から呼び出しを食らった理由を聞いておりませんでしたな」
「呼び出した理由は勿論、ジュディちゃんの件についてじゃ。
 君には、ジュディちゃんが何処から来たのかを調べてほしい。
 まず、帰還の手段を考えるにしても、何処から来たのか、ひいては、帰るべき方向はどちらなのか。これが分からねば始まらん。
 とりあえず、ジュディちゃんが家族の居場所を示す水晶を持っとったのが不幸中の幸いじゃったのう」
「そうですね。何とかあれを使える状態にすることが出来れば、大きな一歩になりますな」

 生来の真面目な性格が祟ったのか、あるいは如何でも良い事だったのか、コルベールは割合あっさりと話に乗ってくる。
 オスマンは髭を撫でつけてから満足気に頷き、話を続ける。

「そういう訳で、君には暫くの間、授業はお休みしてもらって、あの水晶の原理の解明に尽力してもらいたい。
 原理さえわかれば、より広範囲を探知できる装置を作れるやもしれん」
「承知いたしました。
 ところで、わたしの授業を引き継ぐのは誰でしょうか?」
「ミスタ・ラガンに頼んでおる」
「ナン君にですか…… 人格に問題がある気がしますが、文句は言いますまい。能力は一級ですからな」

 オスマンの人選にコルベールは眉を顰めるが、妥当な人選だと思い直したようだ。
 トリステイン魔法学園に在籍する教師は、優秀な者が多いのだが、変人奇人も多く、教師らしからぬ教師の方が圧倒的に多い。先ほど挙げられた者は、その中では比較的まともな部類に入る。
 多少腕の立つメイジが、自分の扱う系統が最強だと主張するのは珍しい事ではない。
 しかし、裏を返せば真の達人は、そんな狭い視野を持ってはいないのだ。その事実にオスマンは、学院の教師の質も下がったものだと頭を抱える。
 仮にも人に物を教える立場の人間ならば、偏った価値観や知識を持つものではない。持っていたとしても、それを表に出すべきではない。と、いうのがオスマンの見識だ。
 しかし、そんなことはおくびにも出さず、オスマンは話を元に戻す。

「そんな訳じゃから、暫くガラクタ弄りは中断して、その事に専念してくれい。
 そのための予算は出す。事は全力を持って当たってくれい」
「分かりました。しかしサンプルが1つしかないというのが……」

 コルベールが、ある懸念をオスマンに伝えようとした瞬間、部屋に小気味良い音が響いた。
 扉をノックする音だ。その乾いた硬質の音の後に、潤いを帯びた色気のある声が続く。

「オールド・オスマン、入っても宜しいでしょうか? 彼女を連れて参りました」
「おっ、おお…… 御苦労じゃったね、もう部屋の片づけは終わっておる。入って来なさい」
「失礼致します」
「しつれいします」

 蝶番を軋ませることなく、ドアノブを回す微かな音だけを響かせて、緑髪を後ろで纏めた美女が入室してくる。
 そしてその後に続いて、黒目がちなハシバミ色の瞳を持ち、金髪セミロングの女の子が入室してきた。
 オスマンは、その女の子の格好を見て嬉しそうに目を細める。

「ほぅ~ 早速、制服を着てくれたようじゃな。よく似合っておるよ、ジュディちゃん」
「えへへ、そうですか? アリガトウございます」

 ジュディは照れながらペコリとお辞儀をする。
 オスマンの言うとおり、ジュディの格好は、昨日のコンポーズボルドーの色合いの古風な魔道士の格好ではなく、トリステイン魔法学院におけるスタンダードな制服姿であった。
 校則で決められている女子の服装は、白のブラウスにグレーのスカート、そして学年毎に定められたマント及び校章でもある五芒星のタイ留めの着用である。
 その校則に則って、ジュディの格好は白のブラウスにグレーのプリーツスカート、その上から茶のマントを羽織り、襟元には黒のリボンタイを締め、そして、胸元にとんがり帽子を抱いている。

「うんうん。今すぐ校章をあげてもいい位に様になっとるよ。
 できればそこで、クルッと回って……」
「ンフンッ、ンフンッ! オールド・オスマン! ミス・ロングビルが……」
「…………」
「そ、それでは本題に入ろうかの」

 必死に咳払いをするコルベールのお陰で、オスマンは咄嗟に言葉を飲み込むことに成功した。見ればロングビルの柳眉はつりあがっている。
 今日のロングビルは非常に機嫌が悪いらしく、少しでも茶目っ気を出そうものなら、朝の焼き直しになるのは目に見えている。
 オスマンは、ロングビルの機嫌を損ねぬように、真面目な顔で話し始めた。

「オホンッ。
 ジュディちゃん、君を此処に呼んだのには2つの理由がある。
 まず一つ目じゃが、この学院の生徒になってみないかね?」
「生徒に……ですか?」
「そうじゃ。ジュディちゃんに学ぶ意志さえあるならば、こちらは大歓迎じゃ。どうかね?」

 オスマンのにこやかな問いかけに、ジュディは少しの間考え込むが、直ぐに顔をあげて笑顔で応える。

「それじゃあ、お世話になりたいと思います」
「そうかそうか、生徒になってくれるか。嬉しいのう。
 それならば、先ずは此方の読み書きをミス・ロングビルから習ってくれい。それが出来たなら、この学院の校章を授与しよう」
「はーい、分かりました。がんばります。
 ロングビル先生、ご指導のほどヨロシクお願いします」

 ジュディはロングビルに向き直り、ペコリと頭を下げる。

「ええ、厳しくいきますが頑張って下さいね。
 あと、オールド・オスマン。私がジュディちゃんに読み書きを教えている間、あまり羽目を外し過ぎないようにお願いします」

 ロングビルはジュディには優しく答えるが、オスマンに釘を刺しておくことは忘れない。

「あ、ああ。わかっとるよ……
 で、ロングビルに言付けしておいたのじゃが、あの水晶とそれに類する道具を持って来てくれたかね?」
「はい、持ってきています。水光晶輪と術具のことですね?」
「おお、やはり持っておったか。では早速見せてほしい」

 その頼みに応えて、ジュディは肩から掛けたバッグの中から水光晶輪と5つの術具を取り出し、机の上に丁寧な手つきで並べていく。
 オスマンは、目の前に置かれた水光晶輪を手に取り、目を細めて観察してからジュディを見据えて頷いた。

「うむ、確かに。
 ジュディちゃんや、折り入ってお願いがある。いいかね?」
「なんですか?」
「今日呼んだのは他でもない、この水晶を研究することの許可をくれないかね?
 これの原理を解明することが、ジュディちゃんを元の場所に戻すことに繋がるとワシは確信しておる。
 その水晶が、君と家族を結ぶ唯一の物だという事は分かっておる。しかし、この通りじゃ! 頼む! ワシらに預けてくれぬか?」

 そう言ってからオスマンはスッと立ち上がり、ジュディに頭を下げた。
 その行為を見て、コルベールが焦った声を上げる。

「オ、オールド・オスマン!? 何もそこまで……」
「ミスタ・コルベール、礼を尽くすのに大人子供は関係がない。これは此方が尽くすべき礼なのじゃよ」
「そうですか…… 確かに、そうですね。
 ジュディさん、わたしからも頼みます。その水晶とこれらの道具をわたし達に預けてほしい。
 必ずそれの原理を解明して、帰還の手掛かりを掴むことを約束します」
「えっ、えっ? えっとぉ……」

 大の大人2人に揃って頭を下げられて、ジュディは困惑している。
 だがオスマンは、戸惑うジュディに真摯な瞳を投げかける。その瞳に宿るのは混じりっ気なしの誠実さだ。
 ジュディは何度も深呼吸をして気持ちを落ちつけている。そうやって暫しの間を置いて、ジュディは口を開いた。

「えっと、わたしには、あまり良く分からないけど、水光晶輪と術具をオスマンさんに預けた方が良いっていう事は分かります。
 ですから、この水光晶輪と術具をお預けします」
「ありがとう、ジュディちゃん。大切に扱うと約束するから、安心してほしい」

 研究する許可を得たオスマンは、ジュディに優しく声を掛けてから、水光晶輪をコルベールに手渡す。
 水光晶輪を手渡されたコルベールは、それを柔らかい布に包んでから、懐に大事に仕舞う。
 ロングビルはジュディの傍らに立ち、眼鏡の奥から一連の遣り取りを冷静な瞳で見つめていた。そして、小さく手をあげてオスマンに質問をする。

「オールド・オスマン、その水晶を研究するのは分かりますが、術具を預かるのは何故でしょうか?」
「ん? おお、そうじゃな。それを説明せねばな。
 水晶を研究する理由については先程の通りじゃ。しかし、この水晶は貴重なサンプルじゃし、ワシらにとっては未知の魔法の産物じゃ。
 よって、サンプルは多い方が良い。
 じゃから、このマジックアイテム、術具というのか? を、調べることによってより多角的な理解を深め、水晶の原理を解き明かす手段とするのじゃ」
「なるほどそう言う事ですか」

 ロングビルは深く頷き、後ろへ一歩下がる。もう質問はないらしく、相変わらずの涼しい瞳で成り行きを見守る姿勢のようだ。
 オスマンは、机に並んだ杖、短剣、腕輪に視線を落とす。杖と腕輪は2つずつあり、それぞれ、紅と黄土色の杖、蒼の短剣、黒と白の腕輪である。
 そして、どれもが石製だということが表面の質感で判断できる。
 その内の1つ、黒の腕輪を取り上げて尋ねる。

「ではジュディちゃん、この術具というものはどういう物なのかね?
 少し説明してくれぬか?」
「はい。術具って言うのは、五行の力が宿った杖とか腕輪に、魔法の術式が組み込まれた道具です。
 これを使えば誰でも簡単に、基本的な術なら使う事が出来るんです。その腕輪には『ピュリファイ』っていう傷を癒す術が込められてます」

 説明に耳を傾けていたオスマンは、手に取った腕輪をしげしげと眺める。

「ほう、なるほど。これを使えば誰でも術を使えるのか」
「はい。でも、あまり多くは使えません」
「使用回数が決まっておるのか、少し不便じゃのう。
 ……もしかして、この水晶にも使用回数はあるんじゃろうか?」

 嫌な憶測に思い当たり恐る恐る質問をするが、ジュディは左右に首を振る。

「水光晶輪は何度使ってもダイジョウブです」
「そうか、それを聞いて安心した。ふぅ~ 嫌な汗かいたわい」

 額に浮かんだ汗をローブの袖で拭って、安堵のため息をつく。
 傍らに居るコルベールも冷や汗をかいていたようで、同じようにホッとしている。
 それも束の間、ジュディが大きな瞳で微笑み、話し掛けてきた。

「あのね、オスマンさん。術の事をよく知りたいなら良いのがあるよ?」
「ほう~ それは何かね?」

 ジュディは、再び肩から掛けたバッグに手を突っ込み、その中から石板を引っ張り出してオスマンに手渡す。
 石板はだいぶ古ぼけており、オスマンの見知らぬ文字が彫り込んである。その文字は、昨日見た地図に書かれた物とも違うようだった。

「これは……!?」
「それは魔道板です」
「魔道板?」

 オウム返しに返すオスマンに、ジュディは得意気な顔をして説明を始める。

「魔道板というのは、術を習得するための教科書です。
 これには五行の理が記されています。
 それを五行法則に照らし合わせて読み解いて、五行法則への理解が深まることによって、術を覚える事ができるんです」
「……これは魔道板と言うのか。
 読み解くという事は、暗号か何かで記されているのかね?」
「そうです、魔道文字というもので書かれています。高度な魔道板になればなるほど、読み解いていくのは難しいんです」
「なるほどのう。じゃが、五行とやらの概念が分からんと読み解ける物ではなさそうじゃのう。
 それはまだ必要ないじゃろう。まだジュディちゃんが持っておきなさい。
 ところで話は変わるが、ミス・ヴァリエールとは仲良くやっておるかね?」

 魔道板をジュディに返し、柔和な笑みを見せてルイズとの仲を聞く。

「はい、ルイズさんには色々親切にしてもらってます」
「そうか、それは良かったのう。これからも仲良くするんじゃよ」
「はい!」

 元気よく答えるジュディにオスマンは、目尻に皺を幾重にも重ねて微笑みかける。そして、杖を2本ともジュディの前に押しやる。

「あとジュディちゃん、杖は持っておいた方が良い」
「どうしてですか?」
「杖、マント、使い魔はメイジの証明となるモノじゃ。君がメイジだという証明のために、持っておきなさい」
「わかりました。じゃあ、これを持っておきます」

 その説明に得心がいったようで、ジュディは赤い杖を手に取り、腰に下げる。
 オスマンは満足気に頷いてから、ロングビルに視線を移す。

「さて、長話もここまでにしよう。
 ミス・ロングビル、早速ジュディちゃんに読み書きを教えてやってくれ。場所は図書館の個室を使えばよいじゃろう」
「承知いたしました、その様に致しましょう。
 ではジュディちゃん、行きましょうか」
「あいや、暫し待たれい!」

 ロングビルは、ジュディの手を引いて退室しようとするが、唐突に呼び止める声がかかる。

「なんじゃね、ミスタ・コルベール?」

 間の悪いコルベールにオスマンは、胡乱な視線を投げかけて非難する。ロングビルも怪訝な目をしている。
 しかしコルベールは、そんな事は意にも介さずジュディに話しかける。

「ジュディさん、時間の空いた時で宜しいので、わたしの研究室に足を運んでくれませんか?
 実際に術具を使って見せてほしいのです」
「いいですよ。でも、今じゃなくて良いんですか?」

 小首を傾げて尋ねるジュディにコルベールは、気さくに額を照からせて朗らかに言う。

「いいえ、あとが良いのです。先ずは独力で調べてみたいのです。出来れば今日1日は」

 コルベールは、新しいおもちゃを見つけた子供のような無邪気な笑顔を浮かべる。
 それを見てオスマンは、やれやれと言った顔をしてジュディに弁明する。

「済まんのう、ジュディちゃん。これは、彼の病気みたいなものじゃ。やり過ぎて壊さないようにワシから言っておくから、安心してほしい」
「はい分かりました。明日お伺いします」

 ジュディが素直に頭を下げるのを見計らい、ロングビルが切り出す。

「それでは、今度こそ失礼致します。それでは行きましょう」
「しつれいします」

 2人は軽く会釈をして扉に向き直る。そして、ジュディはロングビルに手を引かれて学院長室から退出していった。
 再び2人きりになった室内に、ほぼ同時にため息が洩れる。

「何としてもこの水晶の原理を解き明かさなくてはの。
 ミスタ・コルベール、君の尽力に期待しておるよ」
「お任せ下さい、オールド・オスマン。このコルベール、一研究者として約束いたしましょう」
「うむ、君が研究者として優秀なのはワシが一番分かっておる。じゃが、知識欲に負けて暴走せぬようにな。それだけが気がかりじゃ」

 オスマンの厚い信頼を匂わせる期待に、コルベールは意外だという顔を見せて驚く。

「そこまで買ってもらっているとは初耳ですな。今まで放っておかれたものと思っておりましたが?」
「普段の君は、教育者としては並みじゃ。しかし、研究者としては一流だとワシは思っておる。
 それにしても、ミス・ヴァリエールとは仲良くやっておるようでひと安心じゃな。別段気に揉むこともなかったの」
「ええ、彼女は気性が激しいので上手く接する事が出来るか心配でしたが、これでひと安心です。
 言い方は悪いかもしれませんが、怪我の功名という所でしょうか?」
「さあのう?」

 気のない返事をしてオスマンは、椅子ごと体を横に向ける。そうすると、背後にあった窓が横手に見える。
 窓から空を見上げると、降雨の心配など無い青空が広がり、鳥達が楽しそうに戯れている。

「平和なものじゃのう。これ以上何も起こらねば良いが……」

 オスマンはひとりごちて椅子の背凭れに体を預けた。
 すると、修復の魔法の精度が甘かったのか、体重を掛けられた椅子の足が絶望的な悲鳴を上げ、次の瞬間、へし折れた。
 バランスが崩れた椅子は、オスマンをきりもみ回転させて空中に放り出た後、バラバラに砕け散り木材と布材の集合体へと変じる。
 放り出されたオスマンは、絨毯が敷かれた床に顔面から着陸し、床の味を存分に味わう事になった。
 こんな突発的な事態には、魔法も無力である事を噛み締めながら、もうセクハラはやめよう、と心に誓うオスマンであった。


 -後半へ続く-




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