あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

未来の大魔女候補2人-05b



未来の大魔女候補2人 ~Judy & Louise~

第5話 後編『落ちこぼれメイジと香水少女』



 学院の本塔を囲む5つの塔の内の1つ、土の塔。その中にある講義室の一つで授業が執り行われていた。
 講義室は前に行くほど下がっていく構造をしており、長テーブルと長椅子が階段状に配置され、部屋の中央と両端には通路が通っている。
 教室の前方に在る教壇では、紫のローブを着て帽子を被ったふくよかな中年女性が教鞭を執り、それを生徒達が思い思いの場所に座って講義を受けている。
 その中には生徒以外の存在も居た。それは、使い魔である。生徒達は、先日召喚した使い魔を連れているのであった。
 ある者は、肩に双頭の鳥をとまらせ、またある者は、前足がなく後ろ足が発達した毛むくじゃらの大型鼠のような獣を連れている。
 机の下を覗くとヘビやトカゲ、犬猫が寝そべっており、窓の外では、講義室に入れない大型の使い魔が大人しく主を待っている。
 様々な動物が溢れる教室の後方、後ろから2番目の窓際の席にピンクい少女がいた。その隣には、見事にとぐろを巻いた金髪を持つ少女が座っている。
 2人の少女の傍らには、オレンジの3つ目と、小さな皮膜の翼を持つ巨大なカエルが鎮座し、それの頭には、通常サイズの黄と黒の斑模様のカエルが乗っかっている。

「ねえ、モンモランシー。何でアンタが隣に居るの?」

 貧相な体つきのピンク髪の少女は、不機嫌なのを隠しもせずに、何かと話しかけてくる髪が螺旋を描く少女にぞんざいな物言いをする。
 しかし、モンモランシーは意に介した様子もなく、カエルの方を見ながら返事をする。

「別にいいじゃない? ロビンがポセイドンと仲良くしたいって言うんだから」
「だからってアンタと私が仲良くする必要はないでしょ!」
「わたしだって仲良くしているつもりはないわよ」

 モンモランシーはルイズの方は見ずに、ポセイドンに視線を注いでいる。

「じゃあなんで笑顔なのよ!? しかもすっきり爽やか!」

 ルイズの言うとおり、モンモランシーの顔には笑顔が浮かんでいた。それを誤魔化すように彼女は顔の前で手を振り、ルイズに向き直る。

「そんな事無いわよ。でも、立派なカエルねぇ、こんなの見たことないわ。
 新種の幻獣かしら? ねえルイズ、あの子から何か聞いて無いの?」

 やはりカエルから目を離さずに、モンモランシーはルイズの肩を揺さぶる。

「はぁ…… ジュディは東方から来たんだって。だからそのカエルは東方の生き物」

 ルイズは投げやりに答える。
 それはオスマンから用意された言い訳だった。無用な詮索を避けるために、虚実入り混ぜて周りには説明するようにと、今朝ジュディを迎えに来たロングビル経由でルイズに伝えられたのである。
 東方と聞いて、モンモランシーは目を輝かせる。 

「東方!? へぇ~、そうなんだ。東方から来た人なんて初めて見たわ。一体どんな所なのかしら?」
「あの子、森の奥の町に住んでいて、其処から出たことがないって言ってたから聞くだけ無駄よ」
「それは残念ね、森の奥じゃ田舎も田舎よね」
「そうそう、こっちとあまり変わんないって」

 当たり障りのない適当な言い訳を聞いて、モンモランシーは興味を失ったようだが、舌の根の乾かぬ内に新しい話題に飛ぶ。

「うーん、面白くないわね。でもでも、ポセイドンは素敵よね。流石、東方のカエルは違うわよねぇ」
「……自分の使い魔はいいの?」
「それはそれ、これはこれよ。どちらも素敵で甲乙なんてつけられないわ」

 ルイズはモンモランシーの瞳の中に、煌めく流れ星が見えた気がした。
 モンモランシーと仲が良いわけではないが、1年間同じ教室で授業を受けていれば大体の人となりは知っている。
 だが、こんなに妙なモンモランシーをルイズは見たことがなかったし、見るとも思わなかった。
 しかしそれも、今までの言動から推察すれば、自ずとその原因は見えてくる。

『今朝は私のことを変だのなんだの言ってたけど、自分の方がよっぽど変じゃない。この、カエルフェチめ!』

 心の中でルイズは毒づく。その視線にも気が付かずにモンモランシーは、2匹のカエルを眺めて悶えている。
 それは、おおよそルイズには理解しがたい性癖であり、絶対に相成れないと確信するのであった。

「はぁ……」

 1つ溜息をついてから顔を前に向けて、授業に耳を傾ける。講義室の半分以上の幅を持つ黒板には、系統魔法の相関図と土系統の詳しい説明が書かれている。
 そして、その手前の教壇では『赤土』のシュヴルーズが教鞭を執っていた。内容は、土系統の初歩『錬金』の魔法についてである。
 『先ずは実演してみせる』そう言ってからシュヴルーズが杖を振ると、実用第一の大型机の上に転がっていた石ころが、光沢を持った黄色の金属へと変化する。
 すると、ざわ…ざわ…と教室中に軽くざわめきが走り、キュルケなどは身を乗り出して「ゴールドですか!?」などとのたまっている。

「いいえ、これは真鍮です。色はよく似ていますが、銅と亜鉛から成る合金で金管楽器に多用されていますね。
 さて、ゴールドの錬金についてですが、それを出来るのは『スクウェア』クラス、それも『土』の4乗のメイジだけです。
 私は所詮……」

 そこで言葉を切り、勿体ぶりながら続ける。

「『トライアングル』ですから……」

 そう言ってから生徒全体を見渡す。
 スクウェア、トライアングルというのはメイジの格をあらわすものであり、それは同時に扱える系統の数が1つ増えるごとにドット、ライン、トライアングル、スクウェアと呼び表わされる。
 扱うのは異なる系統同士である必要はなく、同じ系統を足しても構わない。例えば、『火』と『火』を足せばより強力な炎を扱えるようになるし、シュヴルーズのように『土』『土』『火』であれば、2つの金属を混ぜ合わせて合金を作ることも出来る、という具合だ。

「では、誰かに実践してもらいましょうか。
 そうですね…… ミスタ・グラモン」
「それでは、この『青銅』が……」

 指名を受けて、壁側の席に居る少年が立ち上がった。何を勘違いしているのか、口には薔薇を咥えている。

「と、見せかけてミス・ヴァリエール、貴女に決めました!」
「うぇっ?」

 シュヴルーズは大きく体を捻って、少年とは部屋の反対側に居るルイズを杖で指し示した。
 そのフェイントに、ルイズは頓狂な声をあげ、それに数瞬遅れてクラスメイト達がどよめき始める。

「いけません! それは絶対に駄目です!」
「危険ですから止して下さい」

 クラスメイト達は口々にシュヴルーズに指名し直してくれと懇願する。
 ルイズは、そのリアクションに思う所もあるが、失敗の2文字が頭にちらつき、立ち上がることが出来ない。
 騒然となる室内を見渡して、シュヴルーズは不思議がる。

「何故ですか? 彼女は大変な努力家だと聞いています。
 さあ、ミス・ヴァリエール! 失敗を恐れずにやってご覧なさい。失敗しても、それはきっと今後の糧となるでしょう。
 さあ前へ! ミス・ヴァリエール!」

 まるでオペラ歌手のように大仰に両手を広げ、シュヴルーズはメゾソプラノの声を張り上げる。
 ルイズはそれに背中を押され、少し前向きな気持ちになるが、脳裏に映る何時もの光景が二の足を踏ませる。

「そう かんけいないね」
「やめてくれ たのむ!!」
「ころしてでもやめさせる」

 ルイズが逡巡していると、次々とクラスメイトの声が聞こえてくる。そのどれもが、否定的で失敗すると確信しているものばかりだ。
 その事実がルイズの癇に障る。

『なによ、100%失敗すると思ってるの?
 昨日は、サモン・サーヴァントとコントラクト・サーヴァントを成功させたじゃない。しかも2連続で成功したのに、そのことは考慮しないわけ!?』

 歯に衣を着せぬクラスメイト達の物言いにルイズの思考は加熱され、沸騰寸前となる。

「ねえ、ルイズ。まさか挑戦しないわよね? 無謀な真似は止して頂戴」

 隣からの猫なで声に、ルイズの怒りのメーターは振り切れた。固定されている椅子を、蹴倒さんばかりの勢いで立ち上がり、怒りに任せて叫ぶ。

「な なにをいうだぁー きさまらー!」

 シーンと教室に静寂が訪れる。ルイズは鋭く周りを見回してから、シュヴルーズに向き直る。

「やります、やらせて下さいミセス・シュヴルーズ」
「そう言うと信じていましたよ、ミス・ヴァリエール」
「や、やめてルイズ…… お願い」

 弱々しいモンモランシーの懇願に、ルイズは振り向きもせずツカツカと教壇に向って歩いて行く。
 それを見て、呆気にとられていたクラスメイト達は、弾かれたかのように行動を始める。

「いかん、総員退避ー!」
「間に合わないわ! クリーム、机の下へ」
「対閃光、対衝撃用意。身を低くして遮蔽物に隠れ、両手を耳に当てて、目を閉じて口を半開きにするんだ!」
「今日こそ爆発を見切る」

 クラスメイト達の反応は、ドタバタと蜘蛛の子を散らしたかのように教室から逃げ出す者、もしくは急いで机の下に使い魔と共に隠れる者の2種類だ。
 そして、ルイズとシュヴルーズはその分類には含まれない。

「さあ、この石ころを貴女の望む金属へと変えるのです。
 心に強くその金属を思い描き、杖に魔力を集中させるのです。ルーンは覚えていますか?」
「大丈夫です、ミセス・シュヴルーズ。見ていて下さい」

 教壇に上がったルイズにシュヴルーズは熱心に指導をする。そして、熱心に指導をするあまり、周りの状況に気が付いていない。
 ルイズは目を閉じ、魔力が螺旋状に体を巡るのを意識して深呼吸をする。それによって心と呼吸を落ち着かせ、イメージングを助けるのだ。
 やがてイメージが定まり、杖を振り上げる。思い描くのは鉄、鈍色に輝く金属。

「アンサス カー イーサ エワーズ……」
「ブリリアント! 発音は完璧です!」

 慎重な詠唱をシュヴルーズが大袈裟に褒めるが、深く集中するルイズの耳には届かない。

「ベルカナー ベオーク ジエーラ!」

 詠唱の終わりと同時に目を見開いて、杖を石ころ目掛けて振り下ろす。
 その瞬間、音は消え去り光が満ちた。



 ◆◇◆



 学院本塔には図書館がある。いや、それは適切な表現ではないかも知れない。図書館は巨大な円筒形の空間で形作られ、壁の本棚には本が隙間なく整然と並べられている。
 天井は30メイルの高さにあり、本塔の大部分が図書館で出来ていることがわかる。つまり、本塔の中に図書館があるのではなく図書館塔が本塔の役割を果たしているとも言える。
 今の時間、図書館を利用する者は少なく、静寂が満ち満ちている。此処の蔵書量はトリステインでも指折りで、種類も豊富だ。魔法の指南書をはじめ、文化、歴史、教育、娯楽、雑学、はては閲覧制限をされている禁書の類まである。
 そして、蔵書の閲覧用に長テーブルが幾つも並べられているが、それとは別に個室も存在している。
 幾つかある個室の1つ、学院長専用の個室で授業が行われていた。
 授業とは言っても、生徒は1人しか居ない。

「アー、べー、セー……」
 「アー、べー、セー……」

 一語一語区切って発音される女性の声の後に続いて、女の子の復唱する声が聞こえる。女性というのはロングビルであり、女の子というのは当然ジュディである。
 ロングビルの瞳には、一生懸命に後に続いて発音をするジュディが映っている。2人は1つの机に向かい合って座り、机には幾つかの教科書や辞書、そして書き取りをするための小さな黒板が置かれている。
 ジュディに読み書きを教えることは、ロングビルにとって有意義な時間であると言えた。
 それは、ジュディから学ぼうという一生懸命な気持ちが伝わってくるのからである。
 セクハラ常習犯のオスマンや、変人揃いの教員、我儘で小生意気な生徒にいつも囲まれているロングビルには、その素直さや無邪気さが好ましく映るのだ。
 ジュディに、アルファベットの書き取り練習をするように言いつけて物思いにふける。
 曇りのないジュディの瞳を見ていると、残してきた妹分のことが思い浮かぶ。多くの孤児と共に住んでいる妹分も、このような人を疑う事を知らない瞳を持っている。
 けれど、ジュディと妹分のソレとを比べると、決定的に違う部分がある。ジュディが溌溂と照らす太陽だとするならば、妹分は物悲しく輝く月だ。

『もうあれから4年が経った……』

 頭を振って、沈んでいく気持ちを切り替える。

『今度の仕事は成功するかどうか分からないし、あまりにも分が悪いなら、とっとと見切りをつけてお暇しようかねぇ?
 テファに最後に会ったのは3ヶ月前位か。何時もより少し早いけれど、あの家に帰ろう。
 読み書きなんて、私が教えなくても教師は腐るほどいるし途中で投げ出しても……』

 そこまで考えてハタと気が付く。この学院には碌な教師が居ないのだ、いま少女に歪みでも生じて、将来捻くれた大人にでもなったとしたら、流石に寝覚めが悪い。
 結局、自分が教えるしかないという結論に辿り着き、頭を抱える。きっとオスマンも、それを見越して自分に依頼したのだろう。全く嫌になる老人だ。考えが筒抜けになっているかのようだ。
 ジュディがハルケギニアではない場所から来たという事に、少なからずの興味もあるが、態々首を突っ込む必要もないし、自分に出来る事もない。
 願う事は唯一つ、早く読み書きを覚えてくれる事だけだ。そうしない事には行動が制限されてしまう。

「……ロングビル先生?」
「な、何ですか? もう終わりましたか?」

 ジュディから呼びかけられ、ロングビルは現実に呼び戻される。
 対面に座るジュディに目を覗きこまれると、何を考えているのかを読み取られているようで、居心地を悪く感じてしまう。
 無垢な瞳には、取り乱した自分が映っている。それはまるで、感情をはね返す鏡のようだ。

「今、揺れませんでしたか?」

 しかし、それは取り越し苦労であった。ジュディには不審がる素振りはない。

「いえ、少し考え事をしていたので気が付きませんでした。ジュディちゃんは感じたのですか?」
「う~ん…… よく分からなかったけど、ほんの少し揺れたような気がしたの。気のせいだったかな?」

 部屋の中を見回しても、そのような痕跡は見つけられない。揺れていても分からないほどに、小規模な揺れだったのだろう。
 ジュディにもよく分かっていないらしく、ひとしきり首を傾げてから白墨を手に取り、再びアルファベットの書き取りを始めた。
 ロングビルは、気が付かれないように小さくため息を吐いてからジュディに話しかける。

「書き取り練習は、もうその位でいいでしょう。
 次は単語です。ここからは、少し難しくなりますよ? しっかりとついて来て下さいね」

 そう言ってから、教科書を広げる。

「ダイジョウブ、まっかせて!」
「元気が良いですね。では、テキストの12ページを開いて……」

 威勢の良い返事に、思わず微笑みがこぼれる。
 このペースなら、午前中には簡単な単語なら幾つか覚えてくれるだろう。そう考えながら授業を進める。
 この2人きりの授業は、昼を告げる鐘が鳴るまで続くのであった。



 ◆◇◆



 アルヴィーズの食堂。
 それは、トリステイン魔法学院の本塔1階にある大食堂の名前である。
 アルヴィーズとは『賢い小人』の意であり、その小人の名前が付けられた食堂の壁際には、その由来となった小人の精巧な彫像が幾つも並んでいる。
 この大食堂で学院全ての生徒と教師が、全ての食事を取るのだ。
 食堂には、100人は優に座れる長いテーブルが3つ置かれており、教師用に設えられているロフトには、数人掛けの丸いテーブルが幾つも並べられていた。
 それらのテーブルは、一様に純白のテーブルクロスで覆われ、各所に蝋燭と花が添えられている。テーブルの上には、贅を尽くされた料理が並べられ、様々な果物が盛られた籠が置かれている。
 食堂の構造は、ゆったりとした間取りになっていて、全ての生徒と教員が入っても窮屈に感じることはない。
 時刻は昼。午前の授業が終わり、多くの者が昼食を取るために、この食堂に集まってきている。
 その人波の中に、ロングビルとジュディが居た。ジュディはキョロキョロと食堂の中を見回している。

「ルイズさん、居ないね」
「そうですね、如何します? 待ちますか?」

 ジュディの視線は、中央のテーブルの昨夜と今朝に座った席に注がれており、そこには誰も座ってはいない。
 3つある長テーブルは、座っている者達のマントの色で分けられている。ジュディが居るのは入り口付近であり、そこから茶、黒、紫の順で並んでいた。
 マントの色は学年を表している。ジュディが纏っているマントは、1年生用の茶色のマントであり、2年生であるルイズが纏っていたのは、黒のマントであった。
 必然的に紫のマントの者が、3年生と言う事になる。なるほど、他の者達よりも落ち着いた雰囲気がジュディにも感じられる。
 改めて食堂を見回すと、昼食にはまだ時間があるらしく、給仕達は料理の載った皿や食器を並べており、生徒達はペチャクチャと雑談に興じている。

「まだ時間がありそうだし、待ちます」
「そうですか。なら、上で待ちませんか?
 上からなら見渡しやすいですから、着たら直ぐに分かりますよ」
「そうですね。じゃあ、上で待ちます。

 あっ……!」

 ジュディはロフトへと上がる階段に進もうとして、足を止めた。それは、人波を潜って、黒のマントを纏った赤毛の少女が此方に近付いて来るのが見えたからである。
 赤毛の少女は、褐色の肌とルビーの如き瞳を持っている。背はロングビルよりも少しだけ高く、長い脚が短いスカートからスラリ伸び、シャツの胸元を大きくはだけさせ周りに色香を放っている。
 少女は目の前まで来ると、色よい唇でニッコリと微笑む。

「ジュディ、ミス・ロングビル、ごきげんよう」
「こんにちは、キュルケさん。
 ルイズさんが何処に居るか知ってる?」
「あら、ルイズを探してるの? そう言えばジュディは、一緒にいなかったから知らないわよね」

 含みを持ったキュルケの声に、ジュディは小首を傾げる。

「何かあったんですか?」
「ルイズが魔法を爆発させて、教室を滅茶苦茶にしたのよ。だからその片付けをしてるわ。
 あれはお昼までには終わらないわね」
「ええっ、爆発!? ルイズさん、怪我とかしなかったの!?」

 物騒な単語に反応してジュディは酷く驚くのだが、キュルケは苦笑いを浮かべる。

「大丈夫よ。爆発の至近距離に居たのにピンピンしてるわ。ミセス・シュヴルーズは気絶したのに、ルイズは服がボロボロになっただけよ」
「そっかぁ、良かった。怪我はしてないんだね」

 怪我をしていないと聞いて、ホッと胸を撫で下ろす。

「で、制服を着てるけど、ジュディは何をやってたの?」

 キュルケは好奇心に瞳を光らせながら聞いてくる。

「オスマンさんに呼ばれて学院長室に行って、そのあと図書館で、ロングビル先生に読み書きを教えてもらってたの。覚えが良いって褒められちゃった」
「ふーん、読み書きね。詳しい話は向こうでしましょ。もう直ぐお祈りも始まるしね」
「えっと……」

 ジュディは、迷いながらロングビルを見上げる。

「私に構わなくて結構ですよ。昼休みはお友達と過ごした方がいいでしょう?
 では、午後も図書館で……」

 そう言ってロングビルは、踵を返す。
 しかし、一歩を踏み出したところで、走ってきた生徒にぶつかりよろめく。ぶつかった女生徒は、その後も何人かの生徒にぶつかって食堂から走り去って行ってしまった。
 食堂の入口に目をやりながら、キュルケがポツリと呟く。

「さっきのは、モンモランシーよね? あんなに慌てて如何したのかしら?」

 キュルケの言うとおり、走り去って行ったのはモンモランシーであった。あの特徴的な髪形は、そうそう間違えはしない。

「何があったのかは知りませんが、泣いていたように思います」

 ぶつかられたロングビルは気を害した様子もなく、むしろ気掛かりだと言う様に話す。

「本当ですか!?」
「向こうから走ってきたんだよね? 何があったんだろ?」

 ジュディはモンモランシーとは朝に少し話しただけだが、何があったのか心配になる。
 モンモランシーが走ってきた方向に目を向けると、2年生のテーブルの周りに人だかりが出来ていた。

「行ってみましょ」

 キュルケの提案に、3人は目配せをしあって頷く。
 人垣を縫って近づいていくと、人だかりの中心には金髪の少年と黒髪の給仕が居て、何か給仕に文句を言っているようだった。
 少年は、その金髪から赤紫の液体を滴らせ、着ているフリフリのシャツは赤紫色に染まっている。そして足元には、赤紫の水溜りが出来ている。
 耳を傾けて成り行きを見守る。

「どうしてくれるのかね?
 君が軽率に香水の壜を拾い上げたおかげで、2人のレディの名誉が傷ついてしまったではないか。
 機転を働かせるという頭はないのかい?」

 金髪の少年は足を組み変えながら、黒髪の給仕を小馬鹿にした風に厭味ったらしく文句を言っている。
 ジュディには、事の状況が余りよく飲み込めてはいないが、1つだけ分かったことがあった。この少年は、女の敵だ。その事を、幼いながらも女の直感でもってジュディは理解した。



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今回の成長。
 ルイズは、おしゃれL2を破棄して肉の鎧L2のスキルパネルを手に入れました。
 ジュディは、聞き耳L2のスキルパネルを手に入れました。



 第5話 -了-




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