あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

毒の爪の使い魔-03


暖かな陽光が照らす朝。
朝食をとる為に食堂へと向かい、朝日が差し込む廊下を歩く影が二つ。ルイズとその使い魔=ジャンガだ。
「はぁ…」
「…何度目だよ、そのため息は?」
ルイズのため息にジャンガは顔をしかめる。
「仕方ないでしょ……他の皆は使い魔とのコミュニケーションもとっくに終えて、共に過ごしているっていうのに、
私は召喚から”4日”も経った今日、初めてアンタを連れているのよ?」
”4日”の部分を強調し、ルイズは振り返らずに答える。彼女が憂鬱なのもまぁ無理も無い事ではある。
ジャンガは召喚から三日三晩経った昨日の時点で目が覚めてはいた。
だが怪我はまだ完治しておらず、念の為にともう一日休息を入れたのである。
その為、召喚から計4日と言う開きが出てしまったのだ。
ただでさえ皆に馬鹿にされている彼女にしてみれば、これは非常に致命的な弱みでもあった。
このまま食堂に行けばどうなるか…考えただけでも更に気持ちが沈む。
「はぁ…」
更に鬱な気分になり、彼女の口から再びため息が漏れた。

学生達が食事をする『アルヴィーズの食堂』は既に大勢の生徒で賑わっていた。
三つ並んだ、やたらと長いテーブルにはロウソクやら花が飾られ、所狭しと豪華な料理が並んでいる。
ちょっと油断をすれば直ぐに腹の虫が鳴き出す香ばしい匂いの中、ルイズはジャンガを引きつれ足を進める。
案の定、周りからは嘲笑が聞こえてきたが、彼女は全力でそれらを無視。
ジャンガに席を引かせると着席する。
「で?」
「”で”……って?」
「俺は何処に座ればいいんだ?」
ルイズの左右の席には既に着席している生徒が居る。
自分の席は何処かと辺りを見回す。ルイズはそんな彼のコートの裾を引く。
振り向いた彼にルイズは床を指差した。
ジャンガが視線を向けると、そこには罅の入った皿が一つあり、豪華な料理とは比べる事などできないほど、
粗末なスープと如何にも硬そうなパンが乗っていた。
「おい…何だこいつは?」
「この席に座っていいのは貴族だけなの。使い魔は本来なら外で待っているのよ?
あんたは私が特別に計らってあげたから床。感謝しなさいよ?」
「……」

無言のままジャンガは床に座った。――額にハッキリと青筋を浮かべながら…。

朝食が終わり、午前の授業が始まった。
食堂でもそうだったが教室に入った途端、ルイズは生徒達に嘲笑や罵声を浴びせられた。
それにも彼女はやはり無視を決め込んだ。
そんな彼女と生徒達の様子を見つつ、ジャンガは他の使い魔達と共に教室の後ろの方で壁に凭れ掛かっていた。
暇潰し程度に授業の内容を聞きながら、ただ呆然と時間が過ぎるのを待った。
やがて暇を潰すのにも飽き、船を漕ぎ出した時、生徒達が急に騒ぎ始めた。
「んだぁ…?」
騒がしい声にジャンガは顔を上げる。
見ればルイズが席を離れ、先生(ミセス・シュヴルーズとか言ったか?)の方へと歩いていく。
そんなルイズに周囲の生徒達は一様に鬼気迫る表情を浮かべ、「やめて、ルイズ」などの言葉を投げかける。
食堂や教室に入って来た時などの嘲笑とはまた違うその雰囲気にジャンガは不可解な物を感じた。
「なんだってんだ…一体?」
そうこうしているうちにルイズは教卓の前に立った。
「では、ミス・ヴァリエール。錬金したい金属を強く思い浮かべるのです」
優しく促す教師=ヴァリエールの言葉にルイズは緊張の面持ちで教卓の上の石ころを見つめる。
その様子を静かに見ていたジャンガだが、ふと一人の生徒が扉を開けて出て行くのに気付いた。

ゆっくりと扉を閉め、タバサは教室を後にする。
ルイズが魔法を使おうとすればどうなるかは誰もが承知の事実。
故に誰もが必死にルイズを止めようとしたのだ。
あの教師は少し気の毒だが、今年就任したばかりで彼女の事を知らないのだから致し方ない。
それにタバサにしてみれば気に留める必要もない。…何せいつもの事なのだから。
教室を離れた後は読書をしつつ、次の授業の事を考えればいい。
タバサは本に目を落としながら、静かに読書できる場所へと歩みを進める。
「授業中に抜け出すたぁ、良くねぇな~?」
唐突に聞こえてきた聞きなれない声にタバサは顔を上げた。
見れば壁に凭れ掛かりながら、こちらに顔を向けている長身の男が立っていた。
左右で色と見開き方の違う月目が自分を見つめている。
「…ジャンガ?」
「キキキ、嬉しいねぇ…俺の名前を知っているたぁな?」
何時の間に先回りしたのだろう?多少気になったが、タバサの興味をさらうほどではない。
タバサは本へと目を戻し、ジャンガの前を通り過ぎようとする。
「おいおい、無愛想だな…?」
「……」
タバサは最早顔も上げず、読書を続けながら歩みを進める。
そんな様子に舌打するジャンガ。
「まだ授業は終わっちゃいねぇぞ…?不味いんじゃないのか?」
「…いいの」
「おいおい…」
「多分…授業続けられない」
「そりゃ、どうい――」

――その時、ジャンガの声を遮り、学院内を揺るがす爆発音が響き渡った。

「な、なんだぁ?」
突然の事にジャンガは両目を見開き、爆発音の聞こえてきた方向=教室の方を振り返った。
タバサは全く動じずにその場を立ち去ろうとする。その背にジャンガは声を投げかけた。
「お、おいっ!?今の何だ?」
「…彼女の魔法…」
タバサは振り向かずに一言。
「はっ?」
「…行ってみれば分かる…」
そう言い残すと彼女は今度こそ、その場を後にした。
ジャンガはその背を暫く見送っていたが、やがて教室へとその足を向けた。

「……」
教室へと舞い戻ったジャンガは言葉を失った。
あの爆発音からある程度予想はしていたが、目の前の状況は多少それを上回っていた。
教室内は爆発の名残であろう煙が充満し、壁や天井には罅が無数に入り、窓ガラスは残らず割れていた。
床や机には砕けた壁や天井の欠片が散らばっている。
ふと、目を向けた先の床ではシュヴルーズが倒れている。
時折痙攣しているところから目を回しているだけのようだ。
爆発の状況などから考えて、おそらくは爆心地に近い所に居たのだろう。
不幸と言えば不幸だが、これだけの大爆発の爆心地にいて目回している程度で済んでいるのは幸運と言える。
と、シュヴルーズの近くの煙の中から人影が立ち上がった。…ルイズだ。
顔は煤だらけ、服やスカートはボロボロ、路地裏で生活している奴と比べても大差無い…いや寧ろ酷い。
ルイズはこんな状況下でありながら、全く動じる気配を見せず、取り出したハンカチで顔の煤を拭き取る。
「慣れてるな…」
ある意味、感心したジャンガは思わず声を漏らした。
「だから言ったのよ!」
突然、響き渡った声にジャンガは目を向ける。キュルケが怒鳴り散らしているのが見えた。
しかし、やはりルイズは動じる気配を見せずにハンカチを動かす手を止めない。
「ちょっと失敗したみたい」
そんなルイズに生徒が一斉に騒ぎ出す。
「どこがちょっとだよ!」
「今まで成功の確立ゼロじゃないか!?」
「ゼロのルイズ!!」

『成功の確立ゼロ』……その言葉にジャンガは彼女が何故『ゼロのルイズ』と呼ばれるのかを知った。
(なるほどねぇ…)
ジャンガは小馬鹿にするような笑みを浮かべ、ルイズを見た。

(ゼロ……つまり”無能”って事か…。キキキ…ピッタリじゃねぇか)


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