あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロのアトリエ-14


早めの出席を旨とする生徒達がようやく集まり始めた、朝の教室。
とある四人が、彼女達にしかわからない会話を続けていた。
「ガラス玉?そんなもの作ってどうするの?」
キュルケが問う。たしかにガラスは高価だが、手に入らないほど高いというほどでもない。
「ガラス玉は基本だよ?宝石の代わりにもなるし、メリクリウスの瞳とガラス器具はいつか必要になるし…」
「それに、これを錬金術で作る事に意味があるんだから。」
ヴィオラートが、ガラス玉製造の必要性を強調する。
「ガラス玉でも、宝石の持つ魔力を代用できるの?」
ルイズが質問する。魔法の授業とは違い、そこに理不尽なハンデは存在しない。
「うん、一応効果は発動するし、品質そのものはいいものが…」
授業前の、四人が揃う最初の時間は、放課後の錬金術教室の企画立案の場となっていた。


ゼロのアトリエ ~ハルケギニアの錬金術師14~

教室の扉がガラッと開き、ミスタ・ギトーが現れる。
長い黒髪に黒いマントを纏ったその姿は不気味であり、
その不気味さと冷たい雰囲気からか、生徒達には全く人気がない。
「では授業を始める。知っての通り私の通り名は『疾風』。疾風のギトーだ。」
教室中が静寂に包まれ、ギトーは満足げに頷いて授業を続ける。
「最強の系統は知っているかね?ミス・ツェルプストー。」
「『虚無』じゃないんですか?」
「伝説の話をしているわけではない。現実的な答えを聞いてるんだ。」
何かを期待するようにキュルケを見るギトー。
キュルケはその裏に気付いたが、気付かないフリをしてギトーの求める言葉を吐いてあげた。
「…『火』に決まってますわ。ミスタ・ギトー。」
キュルケはうんざりしながら、ギトーの幼稚な証明につきあうことにする。
「ほほう。どうしてそう思うね。」
「全てを燃やしつくせるのは炎と情熱。そうじゃありませんこと?」
「残念ながらそうではない。」
ギトーは腰の杖を引き抜いて、言い放つ。
「試しに、この私に君の得意な火の魔法をぶつけてみたまえ。」
「火傷じゃ済みませんわよ?」
キュルケは、目を細めて言った。
「かまわん、本気で来たまえ。その有名なツェルプストーの赤毛が飾りでないのならね」
キュルケは杖を振り、小さな火の玉を生み出す。
その玉を一メイルほどに成長させると、適当にギトーへ向けて押し出した。
ギトーはその火の玉を避ける動作もせずに、杖を横薙ぎになぎ払う。
烈風が巻き起こり、火の玉をかき消し、その向こうにいたキュルケを吹っ飛ばした。
悠然として、ギトーは言い放った。


「諸君。風が最強たる所以を教えよう。風は全てをなぎ払う。」
キュルケが気だるげに起き上がり、両手を広げた。気にすることもなく、ギトーは続ける。
「不可視の風は、諸君らを守る盾となり、敵を吹き飛ばす矛となるだろう。」
「そしてもう一つ、風が最強たる所以…」
ギトーは杖を立てた。
「ユビキタス・デル・ウィンデ…」
低く、呪文を詠唱する。
しかしその時、教室の扉がガラッと開き、緊張した顔のコルベールが現れた。
「ミスタ?」
ギトーは眉をひそめた。
コルベールは妙にめかしこんでいたのだ。
頭に金髪ロールのカツラをのせ、ローブの胸にはレースの飾り。
ご丁寧に靴まで趣味の悪い金箔で飾り立てていらっしゃるようで。
「あやや、ミスタ・ギトー!失礼しますぞ!」
「授業中です」
「おっほん!今日の授業は全て中止であります!」
コルベールは重々しい調子で告げた。教室から上がる歓声に、コルベールが手を振って答えたまさにその時。
金髪のカツラが「しゅるっ」という軽妙な音を立てて滑り落ちた。
教室中の生徒が、コルベールから目をそらして必死に笑いをこらえる。


一番前に座ったタバサが、コルベールの禿頭を指差してぽつりと呟いた。
「滑落注意」
教室が爆笑に包まれた。

コルベールは顔を真っ赤にして怒鳴った。
「黙りなさい!ええい、黙りなさいこわっぱどもが!」
とりあえずその剣幕に、教室中がおとなしくなった。
「えーおほん、本日は恐れ多くもアンリエッタ姫殿下が、この魔法学院にご行幸なされます」
教室がざわめきに包まれる。
「そのために本日の授業は中止。正装し、門に整列する事。」
生徒達は、緊張した面持ちで一斉に頷く。
コルベールはたっぷりと生徒達を見渡してからようやく満足し、重々しげに首を縦に振った。

整列した生徒達は杖を掲げ、しゃん!と小気味良い音を響かせる。
魔法学院の正門をくぐって、王女様ご一行が姿をあらわした。
馬車が止まり、玄関と馬車の間に非毛氈のじゅうたんの道が作られる。
「トリステイン王国王女、アンリエッタ姫殿下のおなーーりーー!」
そのように告げられたのだが、しかし、最初に姿を現したのは四十過ぎの痩せこけた男であった。
がっかりである。
生徒達の落胆を見て取った男は、意に介した風も無く馬車の横に立ち、続いて降りてくる王女の手を取る。
生徒達の間に歓声が沸き起こった。

「あれがトリステインの王女?ふん、あたし達とそう変わらないんじゃない?」
キュルケがつまらなそうに呟く。
「そ、そうかな?綺麗な人だと思うけど…」
問われたヴィオラートはそう答え、何気なくルイズに視線を送るが…
ルイズは顔を赤らめ、惚けたように何かを見つめている。
その視線の先には、羽帽子を被り鷲の頭と獅子の胴を持つ幻獣に跨った、りりしい貴族の姿があった。
脇を見ると、キュルケもいつの間にか赤い顔で羽帽子の貴族を見つめている。

そんなにいいのかなあ、と思いつつ、ヴィオラートはその貴族をじっくりと観察してみる。

ヴィオラートはその貴族に違和感を感じた。何かと似ているのに違う、本物とそれを装っているものの違い。
何が本物でなにが装っている…偽者なのか。具体的な言葉が、なかなか思い浮かばない。

その貴族が通り過ぎ、従者の列も通り過ぎ、生徒達も散会し始めた後になってようやっと思い至る。
(どこがというわけじゃなくて、全体的に…ロードフリードさんと雰囲気が似てるんだ。)
礼儀正しい振る舞い、隙のない動作、そしていつも浮かべる微笑。
(似ているけど違う。それも何か、致命的な違い…)
ヴィオラートは、穴の開くほど観察したその微笑を何回も思い出して、手がかりをつかもうと考えた。
ルイズを見たときの微笑、アンリエッタを見たときの微笑、学院に向けた微笑…
そして、ルイズがわずかにその貴族から視線を外し、アンリエッタを見た瞬間の彼の表情にたどりつく。
特別に、違和感を持って観察して見なければわからないような刹那。ルイズに向けられた酷薄な眼差し。

彼は何かを装っている。もしかしたら、全てを。
ヴィオラートは一抹の不安を抱えながら、人気の消えた玄関先をあとにした。


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