あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

S-O2 星の使い魔-21


 「あの馬鹿、何やってんのよ……!」
 はてさて、今日も今日とて不機嫌そうに吐き捨てるルイズ。

 既に夜は更けて双月も高く昇っているというのに、使い魔は一向に帰ってくる気配が無い。
 暇を持て余しすぎて、幾度となく鳴らし続けてきた関節は既にどの角度に捻っても何の音も出てこず、
 奥歯を噛み締めすぎたせいか、こめかみはキリキリと痛む。
 まったく、一体どこで油を売っているのだ、あの阿呆は。
 よもや女生徒やメイドにお手付きしているのではあるまいな。
 とりあえずキュルケやタバサ、モンモランシーらの所には居なかったようだが。

 待たされれば待たされるほどに、思考があーんなことやこーんなこと、危険な領域へとシフトしていく。
 ここでクロードを弁護しておくとするなら、彼にはこと女性関係においてギーシュのような甲斐性は無い。
 せいぜい市井の人々の懐からちょいと心付けを拝借したり、
 どこぞの某公国よろしく各国貨幣、あるいは国家機密レベルの書類その他を偽造する程度である。
 ……それはそれで大問題ではあるが。

 とは言え、そんなクロードの気質をルイズが知るわけもなく、懇切丁寧に解説してくれる人が居るわけもなく。
 脳内劇場でちょいとばかり斜め上に脚色された使い魔に対し、沸々と殺気を漲らせるルイズであった。

「覚えてなさいよ……って、え?」
 と、戸棚の中からお仕置き用の鞭を物色していたところを、ノックの音に思わず振り返る。

 始めに長く二回。続けて三回。

 ルイズの目がハッと見開かれる。
 それは彼女の記憶の海の底、深い深い闇の中に残された大切な想い出。
 恩知らずな使い魔のことなど既に意識に無い。
 慌てて戸棚を閉じ、高鳴る心臓を押さえつけるように、右手を胸元に添えて彼女は待つ。

 そして、再び同じリズムで繰り返される叩かれる木の扉。
 間違いない。気の迷いなどではない。
 息が詰まる。足がふらつく。瞳を閉じて天を仰ぐ。
 ああ、始祖ブリミルよ。これは夢なのでしょうか。
 いっそ夢でも構わない、このまま醒めないでいて。
 震える手をドアノブへと伸ばし、ゆっくりと扉を開くルイズ。

 そこに立つのは、メイドを先導役に黒の外套に身を包んだ女性が一名。
 そして、何時まで経っても帰って来なかったクロードだった。
 クロードの顔を見て軽く眉を顰めたルイズだったが、流石にこの状況では文句を言うつもりにもならず、
 とりあえず無言で三人を部屋の中に招き入れる。
 一行が部屋に入ったのを確認し、クロードが後ろ手にドアを閉めた。

 さて、改めて話を聞こうかと思ったところ、メイドに片手で制される。
 思わぬ展開にルイズがきょとんとしていると、懐から杖を取り出すと静かな声で詠唱を始める。

「……ディテクト・マジック? それに、メイドが魔法を?」
「どこに眼が光っているか、わかりませんからね」
 そう言って、悪戯っぽくクスクスと笑うメイド。
 一方のルイズはわけが解らない。
 クロードの顔を見ても冷や汗をびっしりと浮かせて、視線を窓の外に向けている。
 それでは、と今度はもう一人の黒衣の人物に視線を向ける。
 フードを下ろしたその顔には見覚えが──────

「あれ、シエスタ?」
「は、はいっ」

 そう。外套の下に隠されたドレスに身を包んでいたのは、シエスタだった。
 いつもとは全く別の服装で、まるで印象が違っていて全く気付かなかった。
 いや、それ以前に何故、彼女がこんなドレスを着ているのだろう。
 ヴァリエール公爵家の娘であるルイズには、この衣装がどれほどの品かは一目でわかる。
 最上級のシルクを最高の職人たちが己の誇りにかけて織り上げた、純白の清楚なドレス。
 少なくとも、住み込みの奉公人の給金程度で手に入るような品ではないはずだ。

「うふふっ、まだ気付かないのね、ルイズったら」
 そう言ってくすくすと笑う。

「えっ……ああっ!」
 そこまで言われて、ようやくルイズはメイドの顔を見る。そしてようやく気付いた。

「あ、アンリエッタ姫殿下っ!?」
「ルイズ、ルイズ! ああ、懐かしいルイズ!」
 思わず膝を付くルイズを、アンリエッタが優しく抱きしめる。
 メイドに抱きしめられる貴族。ある意味シュールな光景ではある。

「姫様! このような下賎な場所へおいでになるなんて……」
「ルイズ・フランソワーズ! そんな堅苦しい他人行儀はやめて頂戴!
 私とあなたはおともだち、おともだちではありませんか!」
「いけませんわ、そのような身に余る勿体無いお言葉を……」
「やめて、やめて頂戴、ルイズ。ここには枢機卿も母上も、欲の皮の張った宮廷貴族たちもいないのです。
 あなたにまで、そんな他所他所しい態度をとられてしまったなら、私はどうすればいいのですか?
 私とあなたは、幼い頃に一緒に中庭で蝶を追いかけて遊んだ仲ではありませんか!」
「ええ、二人で服をひどく泥で汚してしまって……侍従の方に手ひどく叱られてしまいました」
「そう、そうよ、ルイズ! クリーム菓子を取り合って争ったことも─────」

 かくして、しばし二人の少女の思い出話に花が咲く。
 くびきから解き放たれ、何に縛られることもなく笑いあう二人。
 それはまるで二匹の子猫が無邪気にじゃれあうかのようで、とてもとても微笑ましい光景だった。

「あの……ところで姫殿下?」
 さて、いつまでも想い出に浸っていられるわけでもなく。
 鳩が豆鉄砲を食らい、夢から引きずり出されたような表情でルイズは首を傾げる。

「その、殿下のそちらのお召し物は……?」
「ああ、これ? これは、ね─────」
 問いを受けたアンリエッタはにっこりと微笑み、視線をクロードとシエスタに向ける。
 それを見てルイズも視線を、すっかり置いてけぼりにされていた二人へと向ける。

「ええっと、これは、その……」
 クロードは困ったように頬を掻いて。

「あの、その……はわわわわ」
 シエスタは緊張のあまり顔は真っ赤、完全に脳がオーバーヒートを起こしているようだった。










 さて、時間は少し遡る。

「……で、これからどうしましょう?」
 ひとしきり土下座を済ませた後、クロードが改めて対策を練るために話しはじめる。

「どうするも何も、その……私には会わなければいけない人がいるのです」
 アンリエッタはそう言って胸の前に手を添える。

「で、でも、どうやって? 見つかったら大騒ぎになっちゃいますよ?」
 横から不安そうに至極真っ当な意見を述べるのはシエスタ。

「問題はそこだよなあ……その、アンリエッタ殿下。
 変装する魔法や、姿を消す魔法ってありませんか?」
「私の属性は水ですから、フェイス・チェンジは使えませんわね。
 姿を消す魔法も存じませんし……申し訳ありません」
「い、いや、そんなつもりじゃっ! 僕こそすいません!」
 侘びようとするアンリエッタに、慌てて先手をとって頭を下げるクロード。

 クロードとて軍人の端くれ。トリステイン王国の代表者の一人であり、
 権威そのものとでも言うべきアンリエッタの存在がどれほど大きなものであるかは承知しているつもりだ。
 そんな人に迂闊に頭を下げられてしまっては、下げられたこちらが困ってしまう。
 変な噂が広まってしまうようなことがあれば、ルイズへの迷惑どころかトリステイン魔法学院全体の責任になってしまうおそれすらあるのだ。
 部外者である自分がそんな責任を負えるはずもなく、クロードにしてみれば必死である。
 シエスタもその辺りの事情を重々承知しているのだろう。
 或いは単純に天下の王女殿下を前にした緊張からか、全身をガチガチに強張らせて眼を伏せている。

「でも、どうしよう? 皆が寝静まるまで待つって言うのは駄目……ですよね」
 あからさまに表情を曇らせるアンリエッタを見て、意見を引っ込めると同時に溜息を吐くクロード。
 だが、実際にこの3人で学生寮に乗り込むとなると、いかんせん目立ちすぎる。
 クロード一人ならば家出だの何だので言い訳の一つも効いたかもしれないが、
 この状況では迂闊なことを言えばアンリエッタの素性がバレてしまうかもしれない。そうなったらアウトだ。
 父のように口や頭が回れば何とか切り抜けられるかもしれないが、自分がやる分には自信が無い。

 シエスタに別行動を取ってもらったところで、3人が2人になるだけで何の解決になるわけでなく。
 だからと言って彼女を一人で学生寮に乗り込ませるのは、それはそれで心臓に悪すぎる。
 はてさて、どうしたものか。

「……ん?」
 ふと、二人の方に視線を上げると、なにやらアンリエッタがシエスタのほうをまじまじと見ていた。
 一方のシエスタと言えば、王女殿下の視線に射抜かれ、身じろぎ一つ出来ずに固まっている。

「……あ、あのう、姫殿下?
 そそそそその……私、何か殿下の御心に触るようなことを……?」
「ああ、ごめんなさい、シエスタさん。吃驚させてしまったようですね」
 やっとの思いで搾り出したシエスタの怯えた声に、アンリエッタが穏やかな微笑みとともに答える。
 そして、その笑顔を年頃の少女らしい悪戯っぽいものに変えて。
 さらに唇に指を添えて、こう言葉を続けた。

「実は私、とっても面白い作戦を思いついたんです♪」
「「へ?」」







「……とまあ、こんな調子でシエスタとアンリエッタ姫殿下の服を取り替えて、ここまで来たってわけ。
 何人か擦れ違ったりもしたけど、なんとか気付かれずに済んだよ」
 一通りの説明を終え、溜息混じりに言葉を切るクロード、
 クロードは『運良く』と言ったものの、実際には人の気配のする場所を可能な限り避け、
 さりげなく遠回り等も交えつつ、やっとの思いでこの部屋まで辿り着いたのだ。
 色々と精神的にキツいものがあったのか、左手が胃の辺りを行ったり来たりしている。

「わわわわわわわ私も、こんな立派なお召し物を……はうぅ」
 シエスタもさっきからずっとテンパりっぱなしだ。
 いくらアンリエッタ姫殿下の頼みとは言え、畏れ多くもその服に袖を通し、
 あろうことか貴族に成りすまして校内を練り歩いてきたのである。
 そして、そんな状態でルイズの部屋に上がりこんでいるとなれば無理も無かろう。

「ふふっ、私は何だか子どもの頃に戻ったようで楽しかったわ。
 ねえ、ルイズ。この服、私に似合っているかしら?」
 そんな二人の気苦労など知る由もなく、茶目っ気を利かせてスカートをくるりと翻すアンリエッタ。
 それにしてもこの王女、ノリノリである。

「あああああああ、おやめ下さい、アンリエッタ殿下ぁ……」
「え、えーと、あの、そのぅ……」
 一方、シエスタは既に半泣きで、ルイズはコメントに詰まってしどろもどろになっている。

「んんっ! ……その、アンリエッタ王女殿下?」
 そんなやりとりを見ていたクロードが露骨に一つ咳払いをする。
 眉間に寄った皺を何とか誤魔化そうと、口元を引き攣らせているその表情は何ともぎこちない。
 見る人が見れば、溢れ出しそうな苛立ちを隠そうと必死になっているのがミエミエだ。

 ……シエスタやルイズの気持ちも考えてください。
 主君に面と向かってそうそう迂闊なことを言えるわけないでしょうが。
 って言うか、お願いしますから話を進めてくださいよ。
 リスクを負ってまでここに来たのは、旧交を温めるためですか。
 本当に遊びに来ただけだったら本気で怒りますからね。

 言外にそんな思いを込めたクロードの渾身の一手であったが。

「ああ、ごめんなさい、クロードさん」
 果たして、それを受けてアンリエッタがハタと手を打った。

「私としたことが、再会に浮かれてしまったとは言え、ルイズを一人占めしてしまうなんて……
 せめて一言、恋人である貴方に断りを入れるべきでしたね。
 そう、ルイズは貴方のものなのだから、貴方が嫉妬するのも無理からぬことです」



   間 違 っ て ま す 。 あ り と あ ら ゆ る 意 味 で 。



 ……もう勘弁してつかあさい。
 突っ込む気力すら失い、手で顔を覆って天を仰ぐクロード。


「ちちちちち違います! な、な、何ば仰せになりやがっとりますか、姫殿下!?」
 OK、まずは素数を数えて落ち着きましょうマイマスター。

「いいのよ、ルイズ。隠さなくても。
 クロードさんも素敵な殿方でしょう。とってもお似合いの二人だと思うわ」
 お褒めに預かり、たいへん光栄です。

「そ、そんなんじゃありません! クロードはただの使い魔ですっ!!」
 ただの、と言うにはかなりの希少例みたいですけどね。

「うふふ、ルイズったら照れ屋さんなんだから。
 けれど、そんな風にあまり意地を張らずに、もっと素直になった方が良いと思うの」
 流石は竹馬の友、よくお解りで。

「だ~か~ら~っ、クロードは本当に使い魔なんですってば~っ!」
 おお、もう……


「……ルイズの言っていることは本当です。その証拠に、ほら」
 目の前で繰り返されるやり取りにいい加減うんざりした様子で、
 クロードは自分の左手に刻まれたルーンを見せる。

「あらあら、まあ」
 それを見たアンリエッタの瞳が大きく見開かれ、ようやく得心が行ったように微笑む。

「本当に、昔から貴女は人とは違った子でしたが……相変わらずなのですね。
 貴方が素敵な使い魔を得られて本当によかったわ、ルイズ」
「そ、そんなことありません!
 出来れば、もっと立派な……そう、竜みたいな使い魔が欲しかったです」
「使い魔の力は見栄えだけで決まるものではないでしょう?
 クロードさんは頭も良いし、それにとっても勇敢だわ」

 アンリエッタの言葉を受け、本当かよ、と言わんばかりに眉を顰めてクロードの方へと首を向けるルイズ。
 その表情の渋さと言ったら、とてもではないが麗しの姫殿下に見せられるものではない。
 一方のクロードも手放しに褒めちぎられて照れ臭いのか、気まずそうに頬を掻いて窓の外へと視線を逸らしている。

「そう、あの時の槍で貫かれるような感触と、
 その後にやってきた何だかふわふわするような感じ……
 ああ、あんな経験は私も初めてでしたわ」

 微かに頬を赤らめて目を伏せ、ぼうっとしたような様子で呟くアンリエッタ。


「……」
「……」
「……」


 一方、アンリエッタを除いた三人の顔から血の気が引いていく。


「……説明、してもらいましょうか?」

 ギギギギギ、と言わんばかりにルイズの首が嫌な方向に傾いていく。
 そして、ほぼ背骨から直角に近づいたところでガクン、と、糸の切れた人形のように動きを止めた。
 これではちょっとした、どころではない、ホラーそのものだ。

「ちっ、違いますっ!
 クロードさんはそんな破廉恥なことをしようとしたわけではなくて!
 ちょっと、うっかり姫殿下をブン殴って、気絶させてしまっただけなんですっ!」

「 ほ う ほ う 、そ れ で そ れ で ? 」

「……あっ」



 たまらぬ地雷であった。


「いや、違うんだってば、ルイズ!
 なあデルフ、お前からも何か言ってやってくれよ!」
「んー? まあ、別に間違ったことは言ってないだろ」
「待て待て待て待て待て! 誤解を招くような言い方をするなーっ!」

 明らかにデルフの口調は面白がっている。
 話がややこしくなるからと口を挟ませなかったことが不満だったらしい。

「───つまり、畏れ多くも姫殿下を腕ずくで失神させ、暗がりに引きずり込んだあげく、
 あ~んなことやこ~んなことをいたしていたと、そう言いたいわけね?」

 腕を組み、見る者の恐怖を駆り立てずには居られぬ笑みとともに上半身をにじりよらせるルイズ。
 それを目にした途端に涙目になって、クロードの背に隠れてしまったシエスタを、果たして誰が責められよう。
 そのクロードもまた、圧倒的な殺意を前にして、あー、うー、などと意味不明な言葉を繰り返すばかり。

「わ、わかった! まずは落ち着いて話し合おう、ルイズ!」
「黙れ下郎。私はその薄汚れた口を開くことを許可していないわ」

 クロードの必死の言い訳も、有無を言わせぬ威厳と気品に溢れた声にピシャリと遮られる。
 シエスタに至っては既にガン泣きだ。あまりのプレッシャーに泣き声を上げることは許されていないが。
 猛り狂う怒りが魔力の奔流として具現化でもしているのか、ルイズの髪を燃え上がる炎のように揺らめかせている。

「降服も抵抗も無意味よ、あんたに許可されるのは贖罪のみ。
 なあに、気にすることは無いわ。姫殿下を陵辱せしめた使い魔の主が無事で済む道理は無いものね。
 せめて、決着は私自身の手で。それが主として貴方にしてやれる最後のことよ」
「はわわわわ……ル、ル、ルイズ様! おやめくださいっ!」
「シエスタ、何時か貴方が父様や母様……ヴァリエール家の者に会ったら、伝えて頂戴。
 ルイズは使い魔を御することすら叶わぬ、貴族を名乗るもおこがましい愚かな娘であったと。
 せめて最期は誇り高く、ヴァリエールの名に恥じぬよう、己の不明を命でもって贖った……とね」

 後にクロードとシエスタは、口を揃えてこう語る。
 この時のルイズの姿は、恐ろしくも神々しく、そして美しく。
 それはまるで世界の終焉を司る天使のようであった、と。


「……ルイズ、どうしたの? そんな声を出して」

 そんな中、唐突に耳に飛び込む魔の抜けたアンリエッタの声。
 空気の読めぬことではルイズに劣るとも勝らない彼女でなくては、このような真似は出来なかっただろう。
 そして、その声を発したのが彼女だったからこそ、烈火のごとく猛り、竜巻の如く荒れ狂うルイズの心にも
 ギリギリのところで理性という一筋の光が差し込んだ。

「ああ……ああ、姫殿下!」
 ルイズは瞳を涙で潤ませ、アンリエッタの眼前に跪いて涙ながらに訴える。

「どうか、どうか何も仰せにならずに、この私に自決をお許し下さいませ!
 使い魔の罪は主の罪。畏れ多くも御身の純潔を穢したその所業、万死に値します!」
「何を言っているの、ルイズ!? わたくしにそんな残酷なことを言わせないで頂戴!
 あなたが居なくなってしまったら、わたくしは本当にひとりぼっちになってしまうわ!
 愛する人と信じられるおともだちを失って、私にこの世界でどう生きていけと言うのですか!?」
「ああ、私ごときにそんな勿体無いお言葉を……これで何も思い残すことはございませんわ。どうか、御慈悲を」
「嫌! 嫌よ、ルイズ! 貴方にこの場で死ねなどと、言えるわけがないでしょう!?
 貴方を喪うくらいならば、私のこの命を始祖に捧げます! だから、そんなことを言わないで!」

「アンリエッタ姫殿下……!」
「ああ、ルイズ……!」

 ひしと抱き合い、感極まっておいおいと泣き出すルイズとアンリエッタ。
 何はともあれ、かくしてクロードとシエスタの眼前に迫った破滅の危機は去ったのである。


「後で覚えてろよ、デルフ……」
「あ~ん? 聞こえんなあ~」


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