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Persona 0-09



 Perosna 0  第九話


 タバサはきつく唇と噛みながら目の前の少女を睨みつける。
 蒼と白のレースがふんだんに使われたドレスを翻しながら、くるくると舞い踊る少女を見ていた。
 迷い込んだこの場所で現れたもう一人の自分の姿を見ていた。
「貴方は、誰?」
「もう分かってるんじゃない?」
 もう一人のタバサは姉を慕う童女のように笑う。
「わたしはあなた、あなたはわたし。“タバサ”を殺したい“シャルロット”としてのあなた」
「――!?」
 もう一人のタバサは、いやシャルロットは笑う。
 まるで汚いものでも見るような眼でタバサをあざ笑う。
 そんな折、氷の天幕の向こうから一人の女性が現れた。
「かあ、さま……!?」
「おお、寂しい思いをさせてしまったわね。私の可愛いシャルロット」
 つかつかと危なげない足取りで女性はシャルロットの隣へと歩み寄り、そしてその頬に惜しみないキスの雨を降らせる。
「かあさま!」
 タバサは叫ぶは女性はまるでタバサのことに気がついていないようにシャルロットに夢中だ。
 そんななかでシャルロットだけが子供特有の残酷な目でタバサを見ていた。
「お母様、シャルロットを抱きしめてくださいな」
「勿論です、私の可愛いシャルロット」
 そう言って親子はぎゅっと抱きしめあう、その光景に胸が締め付けられたタバサは思わず走り出していた。
「かあさ――!?」
 そんなタバサの頭上から赤い液体が降り注ぐ。
 前しか見ていなかったタバサは防ぐ暇さえなくまともにそれを被ってしまった。
 ぬるついた感触と鉄錆の匂い、すぐにタバサはそれが何なのか気がついた。
 血だ。
「あ、ああ……」
「たとえかあさまが元に戻っても、血塗れのわたしを抱きしめてくれる訳ない」
 母に抱きしめられながらシャルロットは笑う。
「いや……」
「あなたは二度と“シャルロット”へは戻れない」
「いや……」
 笑い掛ける自分と同じ顔の少女の言葉にタバサは一歩後ずさる。
「“タバサ”と言う人形に成りきることも出来ない」
「――!?」
「だってそう、初めは利用するために近づいたツェルプスーの娘にあっさり懐いてしまったんだから」
 くすくすとシャルロットは笑う、もう一人の己をあざ笑う。
「けれど気づかれてる」


 夢見るような表情でシャルロットは母の胸へと顔を寄せた。
「“タバサ”がキュルケを利用するために近づいてきた薄汚い娘だって気付かれてる。」
「違う……」
「だから“タバサ”はずっと一人、ずっとずっと一人きりでもがき続けるだけ。叔父様を殺すなんて無理だってわかってるのに、いつかやってみせる? ばっかじゃない?」
「違う……!」
「本当はもうとっくの昔に諦めてる、けれど諦めたことを認めたくないから人形のふりをして逃げてるだけ。おかしい、おかしい、ああ、おかしい」 
「違う!!!!」
 血を吐くようなタバサの叫びを、シャルロットはやはり嘲笑う。
「だからこそこんな童話に縋りたいんでしょう? 誰も助けてはくれない自分を、なんの報酬も望まずに助けてくれる勇者様」
 そう言ってシャルロットが投げ捨てたのは、何度も何度も読み返されくたびれた絵本、『イーヴァルディの勇者』
「やってこない勇者を待ち続……」
「黙れ!」
 タバサはマントの内側に仕込んでおいた予備の杖を抜き放つと、シャルロットに向かって突貫した。
「お前なんか……」
 唱えたのはタバサがもっとも得意とするウィンディ・アイシクルの呪文。
「私じゃ……」
 憎悪を冷やし固めたような鋭利さを持ついくつもの氷柱が宙に浮かび、シャルロットへ向かって殺到する。
「なっ!?」
 だがその氷柱が貫いたのはシャルロットを庇った母の姿。
「あ……」
 タバサの脳裏に自分の代わりに毒の杯を呷った母の姿が何度も何度も明滅する。
「あああああああああああああぁぁぁぁぁ!」
 絶望に揺れるタバサの手に、シャルロットの手が重なる。
 母の姿をしたものの顔からカランと白い仮面が転げ落ち。
 次の瞬間、タバサの体から闇が溢れた。

 一人の少年がその部屋に駆け込んできたのは次の瞬間のことだった。
「くそっ、また間に合わなかったのか……」
 右手に“平和の作り手”たる銃を構え、背中に“かつての相棒を模した剣”を下げた少年は苦い言葉を吐いた。
「けど救ってみせる、絶対に……」
 少年は銃を構え、
「――ガルム!」
 己のなかのもう一人の自分を解き放つ。





「やめろクマ、やめろー!」
 クマのぬいぐるみのような体を剣が引き裂いていく、だがクマは何度切り裂かれようとその度に立ちあがった。
 まるで何かに取りつかれたようにシャドウたちに向かっていった。
「クマっ!?」
 だが勝てない、それどころか手も足も出ない。
 傷だらけになりながら、クマは地面をたたいた。
「なんでクマにはなんの力もないんだクマ!」
 みんなが倒れている、ルイズもギーシュもキュルケも。
 動けるのはクマしかいないのに。
「なんでクマはこんな役立たずなんだクマ!」
 クマは泣きながらもう一度向かっていくが、しかし再度剣のシャドウに斬りかかられるだけ結果となった。
「クマァァァァ……!」
 倒れたクマを容赦なく氷でできたドラゴンが踏みつぶす、メキメキと音を立てクマの“殻”がきしみを上げる。
「ごめん、ルイズちゃん、キュルケちゃん、ギーシュ」
 クマは泣いた、今この時ほど自分の無力を情けなく思ったことはなかった。
「クマじゃみんなを助けられないクマ」
 ぎゅっと拳を握る、ルイズたちに酷いことをしたこいつらが許せない、初めてクマの心に“憎悪”と言う感情が芽生えた。
 許せない、許せない、許せない。

 ゆ・る・せ・な・い。

 ――がぁぁぁぁあ!?

 まるで怯えるように氷のドラゴンはクマの体からその前足を退けた、さきほどまでクマを嬲っていた剣たちも委縮したように動きを止めている。
「クマは……ボクは…………」
 クマはぶつぶつと呟き続ける、その体からはゆっくりと黒い靄のようなものが立ち上り始め……



「ヴァナディース!」
 猛烈な炎が燃え上がったのは次の瞬間だった、氷のドラゴンは凍った体が燃え上がると言う異常事態にその場を転げ回り、氷の剣は跡形もなく蒸発していた。
 立ち上がったクマは見た、満身創痍で立ち上がる赤毛の女神の気高き姿を。
「はぁい、お・ま・た・せ」
 傷だらけの体でしなを作るキュルケは、痛ましいと同時に酷く美しい。
 それと同時にキュルケの体から燃え盛るブレスレットを身につけた、炎のような深紅の髪の女性の姿が浮かび上がる。
『私は恋愛と豊穣司りし者ヴァナディース! 涙を流せし我が半身よ、その涙我が指で救い取り、輝く黄金へと変えてご覧にいれましょう』

 名乗りと共にヴァナディースは呪文を唱えると、気を失って浅い息を吐くルイズとギーシュに燃え盛る火炎を噴きかけた。
 だがその炎は二人の体を燃やすことなく、瞬く間にその傷を癒していく。
「さてとっとと片づけちゃいましょう、クマちゃんサポートお願いね?」
「おう、ぜーんぶクマにお任せクマ!」
 泣き笑いでクマは答えた。
 あれほど怖かった氷の竜が今は全然怖くない。
 ――いつの間にかクマの体からあふれ出した靄は跡形もなく消えていた。 







 その入口を見つけたのは偶然だった。
 見知った匂い、懐かしい匂いに導かれるように徘徊している最中に、偶然入り込んでしまっただけ。
 本来ならあの場所からしか入れないはずなのに、とソイツはいぶかしんだがもともとまともな知性すら残ってはいない。
 だからきつい入口に無理やり体を押し込んで、あちら側の世界に体を滑り込ませた。
 あちら側に“彼女”がいることが、匂いと、そして見えない繋がりから分かっていた。
 ソイツは瞬く間に“彼女”が向かった方角を向けて身体を傾けると、まるで獣のように走りだした。
 高く、高く、吠え声を上げながら。
 ――……イィィィィィィズゥゥゥゥゥ!

 “大いなる冬”へと駆けつける。

 ――ルゥゥゥゥィィィィィィィズゥゥゥ!



 その後姿を眺めながら、一人の男がにやにやとした笑いを浮かべていた。
 すべてをあざ笑うかのごとき嘲笑は、その獣が行く先にも送られている。
 だがその男は同時に苦しそうに顔を歪めていた。
 見ようによっては半死半生の病人がまるで息絶えようとしている寸前まで、楽しい見世物に昂じようとしているかのように見える。
「素晴らしい。この“這い寄る混沌”の導きなしに、これほど素晴らしい闇を現出させるとは」
 その男は高々と笑い声をあげると、ゆっくりとその体を透けさせていく。
「そうでなくては“ペルソナ”を与えてやった甲斐がない、見せてみろ“平賀才人”お前の“願い”がどれほどの地獄を作り出すか、私はお前たちのなかでずっと見ているぞ!」

 くはははは、くはははははは、くはははははははははは。

 混沌とした笑い声を背に獣は走る、ただまっすぐに“彼女”のもとへ。





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