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ナイトメイジ-12


王都を出て二日目
ラ・ロシェールに到着した馬車はこの町で一番の宿である「女神の杵」亭の前で止まり、ルイズ達はここを一夜の宿と決めた。
荷物を持って部屋に入り、一息ついたところでルイズが唐突に切り出す。
「ずっと思っていたんですけど……いくらお忍びで秘密の計画でも姫様に平民、しかもメイドの格好をさせておくわけにはいかないと思わうんです」
「そうですか?わたしはこれでもいいですけど」
「そうはいきません!それに、この宿の者達はみんな変な顔をしていましたよ」
理由は簡単だ。

まず馬車から降りるときのギーシュの行動。
「どうぞ、お手を」
「ええ、お願いします」
貴族に手を取られ、馬車から降りる世にも不思議なメイドが出現していた。

次に「女神の杵」亭に入ろうとしたとき
「いらっしゃい……ま……せ」
この宿の主な客層は貴族であるので従業員は貴族に対応する方法は十分に知っている。
「ええ、よろしくお願いしますね」
だが彼は今、混乱していた。
このやたら品のいいメイドはいったい何か。
おまけにメイドは手ぶら、後から宿に入ってきた貴族の方々が荷物を手に一杯持っている。
いったい何の冗談か?
この道十年以上のプロではあるものの、彼は動揺を隠しきれずにいた。

「でしたら皆さん私をメイドとして扱えばよろしいのではないでしょうか」
この場にいる貴族にそんなことできるはずもない。
服がメイドだろうがピエロだろうが水兵服だろうが王女は王女なのだ。
「というわけで、メイド役は姫様以外がやった方がいいと思うんです」
「私はよろしいですが、誰がやるのですか?」
「そりゃ……使い魔のベルが」
「えーーーーー」
眉は八の字、唇はゆがみまくり、おまけに心底嫌な声である。
そういえば、この使い魔は雑用が嫌でわざわざシエスタに妙なことをしていた。
「えーい、いいからやりなさい!」

というわけで、ベルと服を取り替えてみた。
「……」
ベルの胸はぶかぶか。
「あの……この服、胸がきついです」
アンリエッタの胸は明らかに締め付けられている。
ぶっちゃけサイズが合っていない。

というわけで、ルイズがアンリエッタと服を取り替えてみた。
「……」
ルイズの胸はぶかぶか。
「あの……ちょっと胸がきついです」
アンリエッタの胸囲は明らかにルイズの制服に収まる許容範囲外。
ぶっちゃけ服が小さいし、ボタンがはじけそうになっている。
「ベル!」
「ルイズ!」
「強く生きましょう」
「ええ、負けないわ。私たち」
ワケのわからないところで通じ合う二人であった。
「二人とも本当に仲がよいのですね」
限定的には全くその通りである。

というわけで、ギーシュと服を取り替えてみた。
「まて、まちたまえ!やめてくれ。僕にはそんな趣味はない、ないんだ!あーーーー」

というわけで、ワルドと服を取り替えてみた。
「まてまてまてまてまつんだ!ひげはどうするんだい?そこ!カミソリを用意するのはやめてくれ!!」

「よく考えたら、今から服を取り替えたら余計おかしな感じで目立っちゃうわね」
「言われてみればそうなんだけどね」
そろそろ空腹を覚えたルイズ達は少し早めの食事をとっていた。
「そうよね。あれじゃコスプレにもなってないし……アンリエッタ、そこのお肉取って」
「コスプレって何よ。あんた時々、ヘンなこと口走るわね……って、姫様に何やらせてるのよ!」
「今はメイドのふりしないといけないんだからいいじゃない」
「少しは遠慮しなさいよ!」
一方的に一触即発となっているルイズの横でアンリエッタが不器用に切り分けた肉を差し出す。
「ルイズもどう」
「いただくわ」
ルイズはそれを当然のように受け取り、口に入れてかみしめる。
肉の脂がじわっと広がる。
「ねえ、ルイズ。あなたもメイドのアンリエッタさんの主人役が板についているわね」
「うぐ」
ガチンとフォークを噛んでしまう。
無意識に実家での習慣が出てしまった。
「ルイズ、気にしないで」
「でも、姫様」
そして、アンリエッタはルイズの耳元に口を寄せ、周りに──主に同席している男二人──に聞こえないようにささやいた。
「あのお二人が気の毒ですから」
二人、つまりワルドとギーシュはすっかり疲れて果てていた。精神的に。
おかげで食がなかなか進まない
「もっと、早く気づいてほしかったよ」
「まったくだ……」
先ほどの件でどのようなことになったか……二人の貴族としての、いや男としての名誉のためにあえて聞かないでいただきたい。
なお、ワルドの髭は無事であった。
ちっ
「さて、と」
焼いた肉を飲み込んだベルは跳ねるように立ち上がり、指先に付いた脂をぺろりとなめる。
「ちょっと、出かけてくるわね」
「どこに行くのよ、トイレ?」
「ちがうわよ」
「じゃあ、どこよ」
「風に当たってくるだけよ」
ベルは手をりながら、バタリと扉を閉める。
その後に聞こえた小さい足音もすぐに消えていった。


日が沈んでから、まだあまり経っていない今は通りを行き交う人々も多い。
その中でも最も多いのは、明日の出向に備えている船乗り達だ。
逆に旅客がちらほらにしか見えないのは、アルビオンで起こった戦乱のせいだろうか。
ベルことベール・ゼファーはあるときは人の流れに身を任せ、あるときは逆らっていた。
風変わりな服に目をつけた船乗りが彼女の肩に手をかけようとするが、まるで霞でもつかもうとしたかのように手は空を切ってしまう。
もう一度、と追いかけようとしたが既にベルの姿は人混みの中に隠れていた。
そうやって、何処かに向かい歩いていたベルは唐突にステップを踏み、路地の中に飛び込んだ。
もちろん追いかけていく者はいない。
普通ならそのはずなのだが、彼女に続いて黒いマントの男が飛び込む。
そして、路地に置かれた何が入っているかもわからない木箱の間をすり抜けて奥に走る。
少し──一分足らずだ──走ると男は足を止めた。
もう走る必要はないからだ。
この路地は行き止まり。奥にあるのは壁だけである。
そして、その壁を背にベール・ゼファーが男を待っていた。
「どんな用事があるかは知らないけど、レディをこっそりつけ回すなんてマナー違反じゃないかしら」
ベール・ゼファーは指を立てた右手を揺らしながら目の高さに上げていく。
「まずはその顔を見せてもらいましょう」
ぱちり。指を鳴らす。
同時に生まれた光の玉が、男とベール・ゼファーを照らした。
揺れる光のなかに男の顔が浮かび上がっていく。
ベール・ゼファーはその顔がいかなる物か好奇心を隠さずに両目を開いていたが、すぐに表情を曇らせた。
「ふぅ……」
男の顔など見える物ではない。
なぜなら、男の顔は白い仮面に覆われていたからだ。
「やぁめた」
万華鏡のように表情を変えるベール・ゼファーには既に好奇心は影も形もない。
代わりに憮然とした表情を男に見せる。
「少し相手してあげようと思ったけど、これじゃ興醒めね」
ベール・ゼファーが地面を蹴り、後ろに飛ぶ。
壁しかない後ろにだ。
「相手をして欲しかったら、もっと面白い物を見せなさい」
男の目の前でベール・ゼファーの手足が壁の中に吸い込まれていく。
慌ててももう遅い。
体も壁の中に入り、顔もすぐに消える。
気付けば彼女の姿はどこにも見えない。
男は壁に走り寄り、ベール・ゼファーが吸い込まれた壁を音を立てて殴りつけたが、堅い音を聞くだけに終わった。


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