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鋼の使い魔-22


 トリステイン王軍は、空軍を除き、常設2個旅団で形成される。
 第一旅団は貴族子弟の憧れたる魔法衛士大隊を擁する幻獣騎兵科であり、近衛任務もここに含まれる。
 第二旅団は各種歩兵を纏めた緒歩兵大隊で作られている。
 さて、所謂弱小貴族が出世する為には文官より武官を選んだ方が早い、というのは異界の黄金獅子な銀河帝国皇帝も選んだとおりであり、その目指す先の多くが
先述の魔法衛士大隊を始めとする幻獣騎兵科を選ぶ。
 斯く有名たる魔法衛士大隊であるが、その起源は実のところ、国内で賄える竜騎兵に供する風竜火竜が足らなかったところから来ており、ゆえに
隣国ゲルマニアを始め、諸外国では同じような兵科はあまり見られない。
 例えば魔法衛士大隊の場合、三種の幻獣による三つの中隊から成る。一つは9頭のグリフィンからなるグリフィン中隊。15頭のマンティコアからなるマンティコア中隊。
21頭のピポグリフからなるピポグリフ中隊、と言った具合。
 グリフィンは高度と速度で風竜と伍するものの航続距離に欠け、マンティコアは運動性と高度で劣るものの、高い戦闘能力がある。
ピポグリフはマンティコアよりも高い高度を飛び、グリフィンよりも長い距離を駆けるが、純粋な戦闘能力でいえば低い。代わりに、扱いやすく数が比較的揃えやすい。
 以上のように、華やかたる古国トリステインの、華やかたる兵士たちにも、国柄からくるさまざまな事情があった。



 その日、王都トリスタニア郊外に作られし王宮を警備していたのはマンティコア中隊だった。
 騎兵による見回りといっても、今は一応平時である。幻獣付きの騎兵が一人、付き添いの兵士が一人か二人。それを一班として、王宮の各位置に配していた。

 そんな中、上空より風を切る青い物体が遠くより迫るのを、ある騎兵が駆るマンティコアは捉えた。
 騎兵がそれを認識した時、既にその青い物体は目の前を過ぎ去り、王宮の中央部を吹き抜ける中庭に落ち、着陸していた。
 マンティコア騎兵は降り立った青い影――それは風竜の幼生体だった――を確認するや、持ち場から跳ねるように離れ、中庭を埋めるように包囲した。
 謎の侵入者たる風竜は、数人の人影を背に乗せている。
「杖を捨てろ!」
 騎兵達は軍杖を抜き、その先を人影に向けていた。
 人影たちは総勢4人。年端も行かない婦女子が三人、血で汚れた服を着た男が一人だ。
 男と婦女子のうち二人は、手に持っていた剣と杖を手元から話したが、一人、目立つチェリーブロンドの少女は、騎兵達の前に一歩進み出る。
「アンリエッタ王女殿下より密命を受けて参上した、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールでございます。急ぎ殿下へお取次ぎを願います」



 『無垢なる過失は罪か、それとも罰か』



「なに、ラ・ヴァリエールとな」
 毅然と言い放ったルイズの前に、一人の男性が現れた。彼もまた、周りの騎兵と同じくマンティコアにまたがっているが、周囲のそれよりも
マンティコアは一回りほど大きく、また男自身の格好も派手なものになっていた。
 この男、マンティコア中隊を預かるド・ゼッサールという。彼は上から下までルイズの姿をよく見てから、こう言った。
「卿がラ・ヴァリエールの者であることを証明できる品はあるかね」
 言われたルイズは思ってもみなかったのだろう。ほんのわずかだが、たじろいだ。
「そ、それは…」
 そのわずかな挙動をド・ゼッサールは見逃さなかった。
「この者らを捕縛せよ」
 隊長の号令があった以上部下は即座に反応し、一度は下げた杖を再び構えて飛びかかろうとした、その時。
「待ちたまえ。マンティコア中隊長殿」
 ド・ゼッサールの背後より声が掛かった。
「マザリーニ枢機卿か…」
 振り向けば法衣に丸帽子を被ったこの国の宰相を務めるマザリーニが立っている。
「彼女は間違いなく、ラ・ヴァリエール公の息女であるよ。私が証明する」
「……左様でございますか」
 ド・ゼッサールは手を振って部下を下がらせると、マザリーニに一礼してその場を後にした。
 何が何やらわからないルイズたちに、マザリーニは近寄る。その姿は遠景から見た以上に……小さかった。
「殿下からの密命、であったな。道すがら教えてくれるかね?ミス・ヴァリエール」



 アンリエッタはその日も、王女の執務室兼謁見室で、回されてきた書類の代理決裁をしていた。
 次から次へと持ち込まれる書面を眺めて、アンリエッタはいい加減うんざりしていた。
 やれ、鉄砲水で流れた橋の掛けなおし費用に関して、だの。王室所有の田園の整備費用について、だの。
 各種の役人が既に是非を半ば決めてしまっている事柄に只判をつけて行くだけのような時間に感じられていた。
 それよりもアルビオンへと使わしたルイズやウェールズ王太子の方が気がかりで仕方がなかった。

 暫くして、マザリーニ枢機卿が部屋に来た。恭しく丸帽子を傾ける。
「殿下。ラ・ヴァリエール三女ルイズ・フランソワーズが謁見を希望しております」
 それを聞くや、アンリエッタの心は躍った。
 ああ、ついに待ち望んでいたものが来たわ!
 しかしアンリエッタは、そんな思いを彼女なりに懸命に隠し、枢機卿に向かった。
「そうですか。ではここへ。…ただし枢機卿。貴方にも席を外していただきたいのです」
「なりませぬ」
 その一言にアンリエッタの顔が固まった。対する枢機卿のは目を伏せ気味に、しかしよく聞こえる声で朗々と話し始めた。
「聞けば殿下より密命を受けたとのこと。しかし私めの知る限り、左様なものは存じませぬ」
「当然です。わたくしの判断でルイズに、ミス・ヴァリエールに託したのですから」
 アンリエッタはマザリーニがはっきり言って嫌いだった。もって回った言い方、歯に衣着せぬ讒言、どれもがちくちくと茨を巻いた様であったから。
「アルビオン内乱の杞憂、ゲルマニアとの婚儀を前に、王族とはいえ無用の動きは慎んでもらわねばなりません」
「無用ではございませんわ。密命はゲルマニアとの婚儀を滞りなく薦めるためのものですから」
「ほぅ…それは、それは」
 その言葉にマザリーニは確かに、うっすらと笑う。
「であるなら、もったいなくもトリステインの宰相に任じられたる、この私めにもその密命、拝聴する権利があるかと、思われますが…違いますかな」
 しまった、とアンリエッタは奥歯を噛む。
「違いますかな」
 押すようなマザリーニの声は、堂の入った政治家らしい迫力でアンリエッタに迫る。
「…道理と、思いますわ」
 その迫力にアンリエッタは負けた。単純な力の差であった。
「では、失礼ながらお傍にて、密命のご報告を聞かせていただきますぞ」
 そういうとマザリーニは粛々と執務室の一角に身を寄せ、まるで置物のように静かになった。


 衛兵に呼ばれ、ルイズは謁見室へ入った。傍に立つギュスターヴも同じく、入室を許可された。
「ただいま帰参してございます。姫殿下」
「無事帰参の報を聞けて何よりよ。ルイズ・フランソワーズ」
 席上君主と臣下の礼節を守る二人である。
「では、手紙をこちらに」
 角盆に乗せられた手紙がアンリエッタの元へ渡された。
「手紙を回収できたということは、ウェールズ王太子とも会うことが出来たとみてよろしいですね」
「はい」
「出来れば聞かせて頂戴。かのお方がどうしているのか」

 ルイズは語る。アルビオンに渡った時点で王党軍は消滅寸前だった事。王党軍の作戦中に巻き込まれる形で偶然接触できた事。
「それほどまでに、アルビオンの王軍は衰退していたのですね」
 まるで他人事のように言うアンリエッタが、わずかにギュスターヴの神経を撫でた。
「それで、その後はどうなったのです」
「それについては…このギュスターヴめが詳しく話します」
 ルイズは少し顔を曇らせる。対してギュスターヴは一歩前にでて毅然として礼をした。
(ほぅ…)
 傍で聞いていたマザリーニの目が光る。
「アルビオン軍と接触の後の事を話す前に、一つ確認したい事があります」
 数日前にルイズの部屋で会った時も殆ど話さなかったこの男は、何等アンリエッタに気負う素振りも見せずに話しかける。
「なんでしょうか」
「殿下は今回の密命に際し、ワルドと名乗る者を遣わし、いくつかの品を我々に届けさせたのは殿下自身の御命によってでしょうか」
「はい。確かに私はグリフィン中隊長ワルド子爵に密命を滞りなく進める為、手紙と指輪を預け、それを届けた後は貴方達の護衛を勤めるように命じました」
 秘かに緊張が走る。マザリーニは一瞬、身体を竦ませ、ルイズもピクリと動く。ギュスターヴは、ほんのわずかに頷くだけだった。
「…お答えしていただき、感謝します」
「よしなに」

 そしてギュスターヴは語った。アルビオンを脱出する為に、王太子が避難船に席を取ってくれた事。玉砕する王軍を言祝ぐために
ワルドとルイズが結婚式を挙げようとした事。
「そういえば、かの方とは婚約者でしたね」
「…はい」
 ルイズの返事は沈んでいたのに、アンリエッタの言葉はどこか浮ついていたように聞こえた。
「…私は万一のためにウェールズ殿下の協力の下、結婚式の会場である礼拝堂に身を隠しておりました。しかし私の主人は心思うところにおいて婚儀を中断し、
その場での結婚を拒絶しました」
「…そう」
「その時、ワルド子爵は豹変し、媒酌のウェールズ殿下ともども主人に杖を向け襲いかかろうとしました。私は隠し身を暴き二方を守る為に剣を取りましたが、
子爵を遺憾ながら取り逃がし、ウェールズ殿下も深手を負われていました」
「!!」
 再び走る緊張。今度はアンリエッタが衝撃を受け、マザリーニは静かに首肯した。
「子爵は主人と、手紙と、ウェールズ殿下の御首を持ってレコン・キスタへ参画する予定であった旨をその場で告白したのです」
「そんな…子爵が…裏切り者だったなんて……」
 学院への道中の折、恭しげに頭垂れていた姿がアンリエッタの脳裏に挿す。
「私は気を失っていた主人を運び、隠し港に残されたボートでその場を脱出し、アルビオンの浮力圏から降りる中で主人のご学友に助け出されました。そして今に至ります」
「そうですか…」
顔を伏せるアンリエッタ
「ウェールズ殿下は最後に傷ついた身体を推して戦場に向かわれました。殿下より言葉を預かっております」
「…あの人は何と」
「『強く生きろ』と。それと…」
 懐を探って『風のルビー』を取り出す。
「この指輪を授けてくれました。私より殿下が持つべきものと思います」
 『風のルビー』は手紙と同じように盆に乗せられて、アンリエッタに運ばれた。
「ルイズ…」
「はい」
「あの方は、私のしたためた手紙を読んでくれましたか」
「私の前で封を開け目を通しました」
「そう…」
 アンリエッタの心が、暗く濃く沈んでいく。
 あの人は私の手紙を見ても、亡命して、生きながらえて欲しいと言っても、首を振らなかった。
 その事実が胸を重くするようだった。

「……姫様」
「…なんでしょう」
「お預かりした指輪を返却したいと思います。ウェールズ殿下のお言葉ではこれはトリステインの秘法『水のルビー』であるとの事。いやしくも私のようなものが
持ち続けるのは不敬と思いますゆえ」
 言ってルイズが取り出すのは正真正銘『水のルビー』である。
 これにはマザリーニ只一人が衝撃を受けた。目を見開き、唖然としている。
 アンリエッタは伏せ気味に手を振って答えた。
「いいえルイズ。それは貴方が持っていなさい」
「しかし」
「…ラ・ヴァリエール家は王家庶子を開祖とする名門中の名門です。始祖より続く秘宝を預からせるに足る家だと私は考えます」
「……謹んで、拝領させていただきます」
 ルイズがルビーをしまい、場を一礼して退室の許可をもらおうとした時。
「あいや。失礼ながら、私めに発言の機会を下さりませぬかな、殿下」
 脇で静かに聴いていたはずのマザリーニが歩み出た。


「……なんでしょうか。枢機卿」
「殿下がこのたび、ラ・ヴァリエール嬢を使わした経緯、このマザリーニも納得のいたすところにございます」
「それは結構です」
「ですが、いくつか得心しかねる点がございます」
「……それはなんでしょうか」
「まず一つ。衛士大隊の中隊長格の将兵を独断で動かされた件。もう一つは王宮で管理している秘宝を無断で動かし、あまつさえ
臣下に下賜されようとした件についてでございます」
 瞬間に、ルイズの肩身が居竦む。
「ワルド子爵めが貴族派のシンパであり、ウェールズ殿下を暗殺せしめんとした事はこの際捨て置いて考えていただかれますかな」
「捨て置け…と……」
 捨て置け。
 私が愛したあの人を殺した、その事実を捨て置けと。
 マザリーニの淡々とした言葉にアンリエッタは言葉が出ない。
「大隊小隊長格以上の指揮官将兵は、一時的に隊を離脱する場合、戦時でないかぎりその日時、理由、そして事後報告をした書面を提出する事になっております。
密命など特殊な任務を帯びた場合もそれらを証明する署名がいるのです。それらを用意できますかな、殿下」
 ぎり、と歯を噛む音がギュスターヴの耳に聞こえた。
「もう一つ、秘宝を動かすに際しても、それらを監督するものがおります。下賜されるのであれば、その旨を各種庁に際し通達する文書をお書きして頂かねばなりません」
 ぎりり、と今度はルイズにも音が聞こえた。
「以上の点につきまして、後に殿下に深くお話させていただきたく思います」
 臆面もなく、マザリーニは滔々と話したかと思うと、アンリエッタの言葉を待つように静かになった。
「………いいでしょう。何一つするにも書面がいるというのであれば、いくらでも用意しましょう」
 声の端が上がっているアンリエッタの精神は炎が吹き出そうなほど憤りを上げていた。
 アンリエッタとマザリーニのやり取りをぴりぴりとした中で聞いていたギュスターヴとルイズである。
 ギュスターヴはともかく、ルイズはその空気で身体に穴が開きそうだった。
「…ですが、水のルビーの件についてはこの場で下賜させます。書類の記載事項については追って官庁に知らせます。それでよいでしょう?」
「殿下がそうなさるのであれば、私は何も」
 しれっと言い放つマザリーニに苛立たしげな顔を見せてやりたかったが、アンリエッタはルイズの手前、それを繕った。
「……ごめんなさいなルイズ。今日はこれで」
「あ……はい。謁見を許していただき、有難うございました」
 ギュスターヴとルイズの謁見は、こうして終了した。


 待合室で待っていた二人と合流し、王宮の外で待たせていたシルフィードに乗って学院へ帰る運びとなった。
 ルイズは指にはめた『水のルビー』を、指先で撫でていた。
「ねぇ、ルイズ」
「…何よ」
 キュルケの問いかけにもルイズはどこかぼんやりと答える。この様子では話をまともに聞きそうにない、とキュルケは思った。
「……なんでもないわ」
「何よ、もったいぶって」
「なんでもないわよ」
「言いなさいよ」
 ふぅ、とため息を吐き、キュルケはゆっくりと話し始めた。
「…もし、ゲルマニアの皇帝がアンリエッタ王女を愛するつもりが無いとしたらどうする?」
「へ?」
 何を言い出すのか、とルイズは思った。
「ゲルマニアにとってね。今回の婚約と結婚っていうのは単に軍事協約と始祖の権威を分けてもらうだけの話じゃないのよ」
「何よ、それ……」
「例えばね。ゲルマニアの商工ギルドや金融ギルドに、トリステインの貴族はたくさん、借金をしているの。知ってる?」
「まぁ、少しは……」
「そういうところはね、今回の婚約と協約で二国間の親密度が上がると仕事がしやすくなるの。トリステインは国土は狭いけど、まだ手付かずの資産がいっぱいある。
なんて考えている連中も少なくないわ」
「…」
 ルイズのまるで与り知らぬ話ばかりであった。
「他にもあるわよ。今のゲルマニアの皇帝一族って精々5代、6代くらいまではゲルマニアの中の一領主でしかなかった。そこで今回の協約が成功すれば、
始祖の時代から続く国一つを味方に出来るわね」
 キュルケの語る話は、何処までも生臭い。どこか迂遠な言い回しが鼻についた。
「さっきから何が言いたいわけ?」
「…ゲルマニア皇帝とアンリエッタ王女の婚儀は『確実に』成功するわ。だってその方が利益になるもの。国と国との間のやり取りで
人一人の思いを汲み取りあっていたらきりがないわ」
 ざわり、とルイズの肌を何かが駆け抜けた。
「キュルケ…何で手紙のこと……」
「ちょうど聞いちゃってたのよねぇ。ごめんなさいな」
 しかし口とは裏腹に、キュルケは悪びれもしない。
「でもあの時姫殿下は」
「手紙を取り返して、と言った?」
「!!」
 ルイズの顔が凍りつく。
 あの時アンリエッタ殿下は『どうしよう』とは言ったが、『どうかしてくれ』とは言わなかった。アルビオンまで行ったのは、あくまでルイズの申し出があったからに過ぎない。
 さらにキュルケが続けようとしたが、ギュスターヴはそれを止めた。
「やめておけ、キュルケ」
「ギュス」
 ギュスターヴのその、ルイズを慮るような仕草が神経を逆撫でた。
「…なによ、何よ。なによ!二人して!私は友達の手紙を返してもらいに行っただけよ!」
「そんな詭弁は無理」
 差し込むようにタバサがぽつりと言った。
「貴女は、王女の政治的瑕疵を繕う為に動いた」
「タバサ、あんた…」
 たじろぐルイズ。タバサも手紙の一軒を知っているのだと気付いた。
「それに、王女が思っているより瑕はずっと浅い。これは事実」
「うぅっ」
「そういうことを教えてあげるのが本当の友人だと、私は思う」
「……」
 ルイズはもう、言葉が出なかった。『お前の行動は無駄骨だった』と言われた方がどれだけ楽だろうか。

「…ギュス、ターヴ」
「…なんだ」
 搾り出した声を向けたのは、傍らの使い魔だった。
「キュルケや、タバサのいうこと…全部知ってたの……始めから、アルビオンに入る前から、姫殿下の手紙を回収するのが目的だって知ってたの」
「…ああ」
 ルイズの震える声は風竜の上を流れていく。
「手紙一つじゃ、婚約が崩れたりしないって、判ってて、それでも着いて来たの」
「……ああ」
 くわっと目を見開いたルイズの拳が、ギュスターヴの胸を撃った。
「バカァ!」
 バシバシとルイズの小さな両拳が叩きつけられる。ギュスターヴはそれを身じろぎもせず受け止めた。
「バカバカバカバカ、あんた大バカよ!情けでもかけたつもり?!」
「そんなつもりはない」
 はっきりと、ギュスターヴが答える。
「なら、どんなつもりよ」
「……アルビオンという国を見てみたかった。この目で」
「…それだけ?」
「それだけさ。一応、お前の使い魔ということにもなっているし」
「……バカね。本当に…本当に…」
 ギュスターヴの胸を撃ちながら、ルイズは俯き、嗚咽する。
「本当の馬鹿は……私よ…」
 ルイズの思いを無視して、シルフィードは一路、魔法学院へ向かうのだった。



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