あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

虚無と狂信者-08




「何でアーカードと戦うの?」
寝そべりながらルイズは自分の使い魔に聞く。彼は何事かと少女を見る、その瞳が真剣さと憂いを宿していたため、アンデルセンは答えた。
「私がイスカリオテであり、奴が吸血鬼であるからです。」
ルイズは続けて問う。
「それだけの理由であんな化け物と闘うの?」
アンデルセンは黙って頷いた。ルイズは、今度はあの少年を思い出す。
「サイトもあなたの様になるの?」
彼は考えた。あの弱いただの子どもを。優しさと勇気しかその身に持たない少年を。
「彼は私とは違う。彼は自分の意思を神と同等に信仰しています。自分の心に沿っています。
私は神しか信じていません。それがイスカリオテですから。」
そうなのだ。あの少年が信仰しているのは己でしかないのだ。
ふとあのプロテスタントの、怨敵の主たるあの女を思い出す。
絶望の中であっても心の中に闘志と、人間としての矜持を持ったあの宿敵。
あいつが吸血鬼に囲まれた時、あの女と同じ目をしていた。
あいつはあいつの心に反したモノに立ち向かうだろう。
たとえ吸血鬼でも軍勢でも。
実際にあいつはそうやって幾度も死に掛けている。
「あなた馬鹿よ、それにあいつも。」
涙ぐみながらのその少女の言葉を否定できなかった。
ふいにドアがノックされた。


「大丈夫ですかサイトさん!どうしたんですか!?」
シエスタが中庭にやってきた時、サイトが水浸しの半裸姿のまま中庭で気絶していた。サイトは頭を振って起き上がる。
「シ、シエスタ…大変だ!侵入者だ!」
シエスタの顔色が変わる。ここトリステイン魔法学院には貴族の子女が多数在籍している。メイジの巣窟ゆえに危険は高いが、
それでも誘拐するならば相応の旨みはある。さらに辺りの惨状を見るに侵入者のメイジは水のトライアングルはあるだろう。
「シエスタはオスマンさんに!俺はアンデルセン神父を呼ぶ!」

「そうですか、アルビオンに…。」
深夜の来訪者、アンリエッタ王女の依頼は、かいつまんで言うと内戦状態のアルビオンへ行き彼女の恋文を奪還することだった。
はっきり言ってブリミル教の連中が何人死のうと何兆人しのうとこのアンデルセン神父にとってはどうでもいいことだ。
たかだかラブレター如きで国家間同盟がどうこうなることも彼には分からないところであるが。
そして内戦状態の国に親友たる少女を送り込む、この王女の頭の中身はそれ以上に理解不能だった。
そんなことをするのは親友と装いながらその実利用し尽そうとする悪党か、何も分かっていない愚か者だろう。
彼女はおそらく後者であり、そんなのが王女とはいかがなものだろう。
「すいません、このようなことを貴女に頼むなど、しかし私が頼れるのはあのおぞましい吸血鬼を打ち倒した貴女しかいないのです。」
その言葉に合点がいった。オスマン老だろう。おそらくこの女王に懇願された彼は自分のことを言ったのだ。
自分達が吸血鬼を狩ったと知っているのは彼とコルベール位のものだ。それならせめてルイズを含めてではなく自分のことだけ言えばいいのに。
自分だけならともかく、敵だらけの所へ行き、この少女の命も無事に事を終えるのは困難を極める。
「わかりました、このルイズ。一命に替えてもその任務果たしましょう。」
アンデルセンは溜息をついた。もしこの任務の危険性を解って受けているのなら自分やサイトと同じく大馬鹿野郎だろう。
しかし、この少女はおそらく分かっていまい。
「おお、ありがとうルイズ!あなたは私の大切なお友達ですわ。」
じゃれあう二人の少女を神父は内心冷やかに見つめていた。



くしゃみをしながらサイトはルイズの部屋のある階まで来た。ルイズの部屋の前に一人の男が座っているのを見つけた。
「何してるんだ?」
こっちを見た男の顔に見覚えがある。確かギーシュとかいうやつだ。二股をかけては女の子に引っ叩かれている彼は色んな意味で有名人なのだ。
その彼は口に指を当てながらサイトの口を覆った。
「今女王陛下がおわすのだ。みだりに騒ぐな。」
その言葉にサイトははっとする。
「それだ、メイジの侵入者がいる。俺も気絶させられた。」
ギーシュはサイトを見る。体中がぐしょぐしょに濡れている。
「水か。まずいぞ!水メイジは人の精神状態を操れる!女王陛下をお守りせねば!」
そう叫びギーシュは扉にアンロックをかけ突撃する。
「女王陛下、お逃げ下さい!」
しかし二人の少女が見たのはギーシュでなくもうひとりの男だった。
サイトはトレーニング中の上半身裸のままで部屋に入って来たのだ。
男性に対する免疫のほとんどない彼女達はとっさに魔法をかけた。
爆発と濁流にサイトはまたも流された。
ギーシュをも巻き添えにして。
濁流は窓ガラスを突き破り、サイトは地面に激突した。
そして自分目がけて降って来るギーシュを見て(これは死んだな)と思った。



結局女子寮は大騒ぎになり、彼らは学院長室に集まった。
「あ、そう。その密命とやらのためにね。ブエックショーイ!!」
シエスタがタオルでサイトの体を拭く。アンリエッタは顔を真赤にして俯いた。ルイズはそっぽを向いて言う。
「そりゃあんたの汚い体見せられたらだれだってそうするわよ。」
「嘘だ!この人振り向きざまに攻撃してきたぞ!あとそうだとしてもお前はもっと悪びれろ。」
アンリエッタは謝罪するが、ルイズはサイトの方を見ようともしない。なおもかみつく彼をアンデルセンがたしなめる。
「こらこら、左の頬を打たれたら?」
「…右の頬を向けよ、ですか?」
「そうです。まあ異教徒と化け物相手だったら別にいいですけどね。」
「じゃあいいじゃないですか。」
とんでもないことを言い出したアンデルセンを遮ってルイズが話を戻す。
「とにかく。話を聞かれたからには協力して貰うわよ。」
「おお、姫殿下、このギーシュ・ド・グラモン!彼らと共に殿下の為に身命を捧げる所存!」
その言葉に今度はサイトとシエスタが青くなる。
「ちょっと待て!俺は嫌だぞ!そもそもそっちが勝手に話すすめたんだろ?!」
「私も…ただの平民ですし。」
「そうでもないじゃろ。」
オスマンが口を挟む。
「サイト君はほれ、自己再生能力を持ち、風竜を手懐けておるではないか。」
アンリエッタがサイトを羨望の目でみる。風竜を手懐けるということは竜騎士並の能力を持つということだ。
さらに見ればルイズの爆破でうけた傷がもう塞がっているではないか。
「そしてシエスタ君の曽祖父は、メイジ殺しと呼ばれた剣士じゃろう。」
その言葉に一同ははっとする。メイジ殺し、戦闘能力においてメイジ以上の能力をもつ戦士の総称。
「あやつはよくそなたの話をしておったよ。飲み込みが早いとな。」
サイトは思い出す。吸血鬼騒動の時のシエスタの動きを。確かに凄いものがあったように思う。
件のシエスタは部屋にいる一同を順番に見ていき、最後にサイトを見て言った。
「サイトさんが行くなら。」
「俺?!」



サイトは悩んだ。そりゃ危険だろう。それにシエスタまで巻き込んでしまう。
しかし、仮にも一国の存続がかかった事件であり、おまけにその結果は自分にも降り注ぐ。
さらに王女様直々の頼みともなれば気分もいい。藁にもすがっているのだこの姫様は。
そこでアンデルセン神父を見る。彼がいるなら大丈夫という考えと彼の足手纏いになるという考えが同居する。
「足手纏いじゃないですか?」
その問に神父はいつもと違うニタリとした笑みで言う。
「お前を助けねばならないならば、そうだな。」
その言葉にサイトはハッとする。確かに自分は彼よりも弱いだろう。
だがそれは大した問題じゃ無い。
彼は見捨てる。自分を。
であるならばあとは自分の気位の問題なのだ。
彼に助けを求めるか。否か。
自分で責任をとるか、とらないか。
震えが起こる。
上等じゃないか。
アンデルセンの言葉はサイトの自尊心を大いに刺激した。
「えーと、とりあえず報酬は?」
ルイズとギーシュは不快そうな顔をするが知ったことでは無い。
曰くアンリエッタのポケットマネーだが、とりあえず平均的平民の一年分の年収はもらえるらしい。
流石にタダで人の為に戦うのは嫌だった。おまけにこっちは仕事を休んで行くのだから。
「もう一つ。これはオスマンさんに頼みたいんですけど。」

アンデルセンはそんなサイトを笑って見ていた。



学院の宝物庫。そこには予想通りマジックアイテムの他に明らかに異質なものがあった。
手榴弾、ピストル、ショットガン。ショットガンは弾が無いのでつかえないが。ピストルは弾がケースであったので、
ありがたく使わして頂く。スナイパーライフルなんてものもあったが、さすがにそんな技術は無い。
「シエスタはついて来なくていいよ。」
俺はシエスタに言った。
「私分かりましたよ?神父様の言いたいこと。自分の身は自分でってことでしょ。」
次はシエスタがサイトに問う。
「どうして行くんですか?」
俺は思い出す。あのパラディンの戦いを。あの、この世のものでは無い戦いを。
「憧れだよ…。」
全く以て下らない理由だ。
まあ、それで充分だ。

タバサの部屋の前、壁にもたれ毛布だけで寝るベルナドット。百戦錬磨の傭兵隊長はこちらの方が落ち着くらしい。
彼を揺する。ベルナドットは起きて目の前の少年を見る。
「ん?どうしたサイト?」
サイトはオートマチックを彼に見せる。
「ちょっと一時間程でこいつの使い方教えて欲しいんです。」



「マチルダ・オブ・サウスコーダ。」
ロングビルの部屋にその男はやって来た。金色の髭をした仮面の男。
「我々に協力してくれ。」
ロングビルは恍けて言う。
「私はロングビルと」
「誤魔化すな。土くれのフーケ。無駄な話は嫌いだ。」
フーケは背中から杖を取り出す。そこまで知られていたら生かしてはおけない。
杖を振ろうとした。しかしそれより早く懐から男は何かをつきつけた。それは便箋だった。
フーケはそれを開け、しばらくして驚愕の表情を浮かべる。
そして敵意と殺意を持った、泣き出しそうな顔で仮面の男を睨んだ。
「……協力する。」
仮面の男はフーケに聞いた。
「何が書いてあった?私はしらんのだが。」
「…あんたたちの組織の名はなんて言うんだい?」
一拍置いて答える。
「レコン・キスタ」
「そうかい?」
フーケは仮面の男を見ない。
「……地獄へ落ちな。」



学院の門の前で皆が集まる。アンデルセン、ギーシュ、ルイズ、シエスタが待っている。
「サイトさん遅いです。」
「時間は守ったぜ。」
皆動きやすく目立たない格好をしている。サイトはいつもの十三課のコートだ。
「きゃあ、何すんのよ。」
見るとルイズが何やらデカイモグラに襲われている。服がはだけるルイズを、ギーシュとサイトはしっかりと凝視する。
ふいにモグラが吹っ飛んだ、何事かと見ると。幻獣に跨った一人の男が現れた。
ギーシュが攻撃しようとするも、風の魔法であっさり跳ね除けられる。
「待て!僕は味方だ、魔法衛士グリフォン隊隊長ワルド子爵。」
そいつは辺りを見回して言う。
「いつも婚約者がお世話になっている。」
その言葉に一同はポカンとするが、サイトはにっこりと肩を叩き、ワルドにドンマイと声をかけた。

「はあ、行っちゃったな。馬で追いかけるのかしんどいな。」
ワルドはルイズを乗せてグリフォンで駆けて行く。ぼやくギーシュを尻目にサイトは指笛を吹く。シルフィードがご機嫌でやって来た。
「きゅいきゅい」
「こらくすぐったいよ。」
ギーシュがあんぐりとした顔でこちらを見ている。
「はは、何だ。この高貴な僕を騎乗させる権利をその竜に与えても。」
「さあ、行こうか。」
「待ってくれ!」
ギーシュは頭を下げる。なかなか好感が持てる態度である。
「シルフィードに頼めよ。」
半信半疑といった顔でシルフィードに頭を下げると、彼女は頷いた。
「いいってさ。」
「随分賢いんだな。素晴らしい」
そう言い頭を撫でるギーシュ、乾いた笑いがつい出てきた。



「タバサ!大変よ!」
タバサの部屋にキュルケがやって来る。タバサはナイトキャップをかぶったまま親友の話を聞く。
「今朝方ダーリンとルイズがどっか行っちゃったわ。あなたの使い魔で追って頂戴。」
「ダーリン?」
タバサは首を傾げる。キュルケのダーリンでは示す人数が多すぎる。
「決まってるじゃない。あの勇敢なるアンデルセン神父よ!」
タバサは溜息を付き、今起床したセラスは異質なものを見る目で彼女を見る。
「だって格好いいじゃない?私のアーカードと素手で殴り合ったのよ?渋いし優しげなオジサマよねー。」
セラスは(うわぁ…この人見る目無いな…)と心の中で呟いた。
タバサはアンデルセンにキュルケがアプローチをかけた場合をシミュレーションする。一秒で結果が出た。
「おのれ神に仕える私をかどわかす悪魔め。ズバン!AMEN」
「…リアルね…。」
親友の創った寸劇に顔を蒼くするキュルケ。ふと疑問が湧く。
「あんた最近明るくなったわね。」
彼女は答えない。しかしキュルケは至極嬉しそうだった。そこにベルナドットが頭を掻きながら入って来る。
「そういや昨日サイトの奴が銃の使い方聞きに来たぜ。自分がブッ飛ばされなくなっただけだけどな。」
その言葉にタバサの顔色が変わる。それがわかったのはキュルケだけだが。直に状況が読めたタバサはセラスに命ずる。
「出発用意」
キュルケもついてくる気らしい。
「オッケー!アーカード連れてくるわ。」
その彼が果たしていい方にことを運ぶかは疑問だったが、止める前にキュルケは出て行った。



「全くなによ。あいつら、一緒に竜なんか乗っちゃってさ。そんなにメイドがいいかしら。」
上空ではシルフィードが四人を乗せて飛んでいる。
「ほう、あの中に好きな人でもいるのかな。」
ルイズは真赤になって首を振る。だが次にサイトに抱きつくシエスタを見て歯ぎしりした。
(いいもん、私にはワルド様がいるもん。)

「きゃあ、高いです!」
そう言いサイトの背中に胸を押しつけるシエスタ。しかしサイトが着ている13課のコートは厚手の為、あまり効果は無い。
「しっかりつかまってろよ……ん?」
サイトが前方の異変に気づき、シルフィードに合図する。
崖の上から矢の群れが襲いかかった。シルフィードは矢の届かぬ高度まで退避した。
しかし、ワルドとルイズの乗るグリフォンはそうする前に止まってしまう。ワルドが風の壁を作り、矢を防ぐがいつまでもつだろうか。
「どうしますか?アンデルセン神父!……神父?」
見ると風竜の上に彼の姿は見えない。彼を探すと、どうも右側の崖の上に飛び乗ったらしい。
敵の群れは、上から降って来たアンデルセンによって恐慌状態に陥る。なにせ人を紙のように切り裂き薙ぎ払い、
傷を受けても瞬時に回復し、さらに悪鬼のような笑みを浮かべているのだから当然だ。
一方はもはや良いだろう。それではともう片方側の敵の群れを狙う。しかし、そちらもどこか様子がおかしい。
見ると敵はこちらも逃げまどい、中には自分から崖下に飛び降りる人間までいる。
そんなことができるのは一人しかいない。
上空を見ると籠をぶら下げた翼人が見えた。
そして崖の上には赤ずくめの服の狂人が、口から血をたらして立っていた。



戦闘の気にあてられ闘争本能が剥き出しとなったアーカードと、アンデルセン。
二匹の獣の睨み合いに一同は戸惑う。その対峙を止めることができる、ある意味最重要キーパーソンである二人は、
「ななななによキュルケ!こんどは人の使い魔に手を出そうって言うの?この色狂い!あなた本当に人を愛したことがあるの?」
「あーら、あなたに婚約者がいたなんてね。じゃああたしがどうしようと勝手じゃない?独占欲だけは一人前ね。」
と、喧嘩している。お互いに油を注ぎ合うような激しい喧嘩だ。
そのためあの男二人は心置きなくおっ始めようとしている。
しかもこの二人結構主人思いであるからさらに悪いことになっている。
サイトはタバサにあの少女二人を落ち着かせるよう目配せした。
ほぼ同時に化け物二人が武器を取り出す。それと同時に意を決しサイトが間に入る。
「まあまあ二人ともおちつい…。」
「「あ」」
ドン!! ズシャ!!
銃声と共にサイトの眉間に穴が空き、背中に二本の銃剣が突き刺さる。
サイトの体が力を失い手足がだらりと垂れる。
唖然とする一同。
ベルナドットだけがかろうじて彼の名を叫ぶことができた。



「いいですか皆さん、任務に大事なものは個人の力ではありません。それはチームワークです。わかりますね。」
少年は皆が見ているなかを歩き回りながら話している。背中に銃剣を刺したまま。
眉間から取り出した銃弾をいじりながら。
「どんなに強くても、チームの和が乱れている集団は失敗するものなのです。分かりますね?
特に そ こ の 大 人 二 人!!!ちゃんと聞け!!」
サイトはアーカードとアンデルセンの方を指差す。神父は優しい神父様モードのほほ笑みをし、
アーカードはなぜか幼女の姿になっていた。
「誤魔化すな!あんたら一体いくつだ?」
「60ちょいです。」
「500歳から数えてないぞ。」
「よしその人生の大先輩に一言、もっと大人になってください!」
「「すいませんでした」」
一同は化け物二人を押しているサイトにびっくりした。次にサイトは少女二人を睨む。
「あのさ、この人たちこうだって分かってんじゃん?じゃあなんで喧嘩するの?ちゃんと止めろよ!」
「すいません。」
「何よ…、平民のくせに。」
その言葉にサイトはルイズを冷たい敵意の籠った眼で睨む。ルイズははっとしたが、横を向く。
サイトはそんな彼女を見て、舌打ちしてそっぽを向いた。 
「ギーシュ!」
「な、何だね?」
「…これ抜いてください。お願いします。」
サイトがギーシュに背中を向ける。二本の銃剣が刺さっており、血が染み出ている。
ギーシュは恐る恐る銃剣を掴み、抜こうとするが力が足りず抜けない。
こまったギーシュは横にぐりぐりしながら、釘を手で抜くようにじっくり引き抜こうとする。
痛切な悲鳴が辺りに響いた。



「であああアホかお前は!痛いだろそんな風にしたら!」
「い、いやしょうがないだろ!?こんなことしたこと無いんだから!」
「常識で考えてよ!それくらい!もおー…」
あまりに痛かったのかサイトはその場に崩れ落ちる。
「常識なさすぎるよみんな!主にアーカードさんと神父―!」
「そうか…そんな馬鹿げた回復力を持ってても、痛覚はあるんだな…すまなかった。」
「…いい…許す。」
ベルナドットが思いっきり銃剣を引き抜いた。一瞬呻いたあとのサイトに、タバサがヒーリングをかける。
「ありがとうございます。」
「立てるか?」
よろよろと立ち上がりシルフィードによじ登る。そして一向は旅を再開した。

「いや、彼は凄いメイジだな!なんという回復力だ、おまけに風竜まで操るとは!」
そうか、そんな風に見えるのだな。と思いながらルイズはさっきのサイトの目を思い出す。
命を助けてもらっておいて
自分のせいであんな目にあわせて
あんな言い草したら怒るに決まってる
彼は竜の上でメイドやタバサやキュルケと楽しそうに話している。
その光景に沸々とした怒りを感じていることに自分で自分が許せなかった。

サイト、シエスタ、キュルケ、タバサ、ギーシュ、ベルナドットがシルフィードに乗って行く。
セラスの持つ籠の中にはアーカードとアンデルセン。中の状態は言うまでもない。
(ベルナドットさん、置いていかないでください~~)
一番ババを引いたのがセラスであった。


「なんたる差別!!こっちは50スゥの安宿一部屋に三人で泊まるってのに!」
豪勢な貴族用の宿に泊まる彼らに文句をつけるベルナドット。
「まとまるのは危険」
「経費に限りがあるのだ、すまない。」
「十分でしょ。」
「そーですかー」
憤懣冷めやらぬベルナドットはサイトとシエスタの方を向く。
「お前らも何か言ってやれ!」
彼らは黙ってある方を指差した。見ると、アーカードとアンデルセンが不穏な空気を流している。
ベルナドットは納得した。この空気に一晩は耐えられないだろう。特にサイトは。
セラスやギーシュは置いてかないでという目で見ている。ベルナドットは全力で無視した。
「んじゃいこうぜ」
彼らは早足で宿に向かった。シエスタはサイトの腕を組んで。
その姿にルイズは「うー」と唸った。

その様子を遠くで見ている女性がいる。気配を殺し、笑いながら。
「かくして猟場は猟師の手の中に。
有象無象の区別なく 私の弾道は許しはしないわ。」
そしてその横では熱帯用オーバーコートに身を包んだ長身の男が静かにアーカードを見ていた。








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